とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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中と外を守る者たち



(結局、あの子は何だったんだろう…)
『ん、とうま? とうまなら心配ないよ。』
『とうまは何があっても、絶対に帰ってきてくれるんだから』
あの絶対的な信頼。しかも、帰ってくる、って。

いつも会ったとき、アイツは一人だった。男友達といたのは見たけれど。
…女の子の影は、無かったのに。
なんでこんな不安になるんだろう…
なんでこんなイライラするんだろう…


9月のある日。
シェリー=クロムウェルが学園都市に侵入し、テロリスト騒ぎを起こした数日後である。
あの日、白井黒子に無理やり現場からテレポートで連れ去られ、あのシスターの事は有耶無耶になってしまった。
とはいえ、その日自体は、真剣な顔の上条当麻の横顔を間近で見てしまい、その顔が脳裏から消えなかったのだが。
(いつもはふにゃけた顔してんのに、たまにイイ顔すんのよね…)
自分の為に戦ってくれた、あの運命の日のことも思い出し、顔が緩む。

しかし、そんな思いに影を落とすのが、あのシスターである。
考え込んでいるうちに、自然といつもの自動販売機前に立っていた。
(あーもう!落ち着かないったら!)
足元も確認せず、イライラ感にまかせて蹴りをブチこもうとした、その時。
軸足の左足裏に大きめの小石を巻き込んだ美琴は、バランスを崩し、盛大にすっ転んだ!

(! やっちゃった!)
石畳の上なので、転んで砂まみれというような事はなかった、が…
左足首から痛みがズキン!と頭に襲いかかってきた。
(う、、、捻ったな)
ひとまず、向かいのベンチまで、痛みに耐えながらたどり着く。
(いつっ、、、ちょっとこれは…動けないわね。黒子…は仕事中か)
自然と上条の顔が浮かぶ。
(ヒーローだったら、来なさいよもう!)
我ながら理不尽だ、と突っ込みながら、断続的にくるズキン!ズキン!という痛みに耐える。


上条当麻は、ブルーな気持ちで、帰途についていた。
小萌先生から、夏休みの宿題をやらなかった罰がわりの特別課題が降りかかってきたのである。
わざわざオリジナルの課題を作られたからには、これは逃げられない。
「はあ、不幸だ…なんて、今回は言っちゃいけないよな…」

自動販売機の横を通り過ぎようとしたとき、ベンチにお馴染みの常盤台中学の制服が見えた。
御坂美琴であっても、まあ別に用はないしな、と思いつつ通りすぎようとしたが、
こちらに向けている背が、制服が汚れている、というか破けているように見えて、ハッとした。
(まさか乱暴とかか!?)
回れ右をして駆けつける。
「おい、どうした!?」
御坂美琴が、潤んだ瞳で振り向いた。

髪型の時点で、もう美琴だというのは分かっていた。彼女なら乱暴のセンもないだろう。
「お前…なんかボロボロじゃねーか」
差し障りのない場所の砂を払ってやる。
美琴は顔をプッとふくらませて何も言わない。
「…蹴ろうとして転んだな。…まったく」

美琴は王子様の出現による、驚きと喜びと痛みでパニックになっていた。
理由を言うのも恥ずかしく、もう顔をふくらませて顔を背けるしか無かった。
そして理由を見事に言い当てあられ、みるみる真っ赤になっていく。

上条は美琴の脂汗に気付く。
「お前、どこか痛めたな?足だろ?見せてみろ」
初めて美琴は口を開いた。
「いい!大丈夫だから!」
「バッカヤロ!つまんねえことに意地はるな!応急処置すんぞ!」
迫力に圧倒された美琴は、しぶしぶ左足首を指差す。

「捻ったか。ちょっと靴下脱がすぞ。ベンチに横になれ」
「ええ!ちょっと…」
「恥ずかしがるんじゃねーよ。短パンだし恥ずかしいトコは見えねーだろ」
上条はそう言いながら、カバンから包帯と湿布、折りたたみ式の添え木を取り出す。
「な、なんでそんなものが…」
「俺のカバンは教科書は入ってないけど、ケガに備えてのモノがな」

ルーズソックスをやさしく脱がす。美琴は痛みを噛み殺している。
「やっぱり腫れてるな…ちょっと痛いが我慢しろ」
湿布を貼り、添え木を90度に固定して包帯でぐるぐる巻いていく。
美琴は痛みも忘れ、唖然と上条の手さばきを見つめている。
「ま、こういうのに慣れてるってのもナンだけどな…」
照れくさそうに上条はつぶやく。

「よっし、これでいいだろ。あとはちゃんとした医者にだ、な」
「あ、ありがとう…」
「ルーズソックスとシューズ、袋に入れたからカバンに入れとくぞ。さーてそれじゃ」
上条は首を回し、肩をゴキゴキっと動かす。
「俺のカバンもってくれ」
「え?」
ベンチの上に仰向けになっていた美琴のお腹の上に、2人分のカバンを置くと。
「よっしいくぞお!」

上条は美琴の背と足に手を突っ込み、お姫様抱っこの状態で持ち上げた。

「ちょ、ちょっと!」
「バス停までいくから。俺の首に両手巻き付けてくれ。カバンは腹で支えろ」
「いや、はずかしい、はずかしいぃぃ!」
「お前の足見ればケガによるものだって分かるから!いいから早くしろ!腕もたねえ」
美琴は恥ずかしさでオーバーヒート状態だったが、半ばヤケクソで上条の首に腕を回した。

(ち、近い!)
あの、真剣な横顔が、また。ややアングルは違うが。
上条は、美琴の視線を感じてか、下を見ようともしない。
走っているうちに、お腹に置いてあるだけのカバンがずり落ちそうに感じ、やや半身を上条側に寄せる。
腕がしびれ、もう少し腕を深く絡める。

そうこうしてるうちに、バス停近くに来るあたりでは、もうお姫様抱っこどころか、
…どうみても美琴と上条は抱き合っているようにしか見えなかった。
もう2人は何も考えないように、していた。

バス停に着いた時には、美琴は上条の右胸上あたりに顔を押し付けていた。
押し付けていなければ、上条の顔の何処かに触れそうだったからだ。
しかし、押し付けていればこそ、上条の匂い、汗の匂いが鼻腔をくすぐる。
「み、御坂?」
上条は着いてようやく、美琴を見たが、…ものすごく幸せそうに微笑んで眼を瞑っている。

ゆっくりと、バス停のベンチに美琴を降ろす。
足がどこかに触れたのか、ふわっとしていた顔がゆがんでしかめっ面になる。
「いたた…」
「大丈夫か?」
「うん…ごめんね、重かったでしょ」
「ああ」
美琴は頬をふくらませてパンチを打つ振りをする。

バスがつき、上条は美琴に肩を貸すような体勢で乗り込む。
美琴は2人席を横座りにして独占している。上条はその後ろの席から乗り出すようにして話しかける。
「患部をできるだけ下にしないようにな」
「うん」
「まーここまでくりゃ、あとはスグだな」
「寮監いるから、降りたとこまででいいからね…ありがとう」
「いや、中まで行く。逆に寮監先生にどう処置したか説明しねーと」
「そんな、そこまで」
「お前な、いいから任せとけ。たまには人にゲタ預けるって事、覚えろよ」
「…」

美琴は湧き上がる想いを必死に押さえつけていた。
勘違いしちゃいけない。夏休み最後の日に分かったはず。
コイツにとっては、困ってる子を助けてるだけ。特別なことなんかじゃ、ない。
でも、私のこの想いは、……


寮前のバス停に着き、再び肩を借り、降りた美琴は安堵の溜息をつく。
寮は目の前であり、上条は美琴を支えながら、扉を開ける。
エントランスには数人の寮生がおり、…大騒ぎが発生した。
なんせ男性の闖入に、エース御坂美琴の負傷である。

「なんの騒ぎだ!…御坂!?」
「す、すみません。足をくじいて、この人に連れてきて貰って…」
寮監は上条をちらっと一瞥したが、てきぱきとまわりに指示し始めた。
駆け寄ってきた女の子たちに上条は頷くと、少しずつ美琴から離れ、美琴を渡した。
美琴は、上条を潤んだ目で見つめてきたが、何も言わなかった。

「君は…上条君だな。ちょっと来てもらいたいが、いいか?」
上条は、何故寮監が自分の名前を知っているのか、疑問には思ったが、
「分かりました。伺います」
と、そのまま寮監に付いていった。
一瞬振り返り、美琴に口だけで笑いかけ、軽く手を振って。


「粗茶だが、どうぞ」
「いえ、お構いなく」
ソファーに腰掛け、対面する寮監と上条。
「ああ、アイツですが、1時間ほど前に足捻ったみたいです。L字固定して、湿布だけ貼っておきました。」
「的確だな。ありがとう」
寮監は立ち上がり、電話で指示を行い出した。
「数分で医者が来る。まあ捻挫なら、君の処理をやり直すだけだろうな」
「軽い捻挫でしょうね。数日で治るでしょう」
「応急セットは新しいのを後で渡す。本当に助かった」
「はあ…ところで何か御用ですか?名前知ってるのにも驚きましたが」

「いや、常々話したいと思っていたのでな」
眼鏡の奥で眼が光る。
上条は嫌な予感がし始めていた。

「…私には守るべき子どもたちがいる。そう、あの子たちだ」
寮監はお茶で一息入れる。
「君は御坂だけでなく、白井も知っているのだな?」
「ええ」
「正直、あの2人はこの寮内ではトラブルメーカーだ。寮内で力は使うわ、門限破りの常習だわで」
「…それはそれは(ま、そりゃそうだろーな)。」
「そしてその度ごとに、私の制裁を受ける。受けても受けても、懲りずにまた受ける。
 しかし、だ。本来、本気を出せば、あの2人は私など一蹴できる。
 …分をわきまえた、本当にいい子達だ…」
寮監は静かに眼を瞑る。

「さて、君に今回来て貰ったのは、改めて礼を言いたかったからだ」
「礼?」
「私がどうにもできなかった事があった。8月半ばの御坂美琴だ。」
「8月…半ば。」
「毎晩のように門限を破るんだが、明らかに憔悴し、日を追う毎にひどくなって行く。
 さすがにこの状態は私も(門限破りを)黙認せざるをえず、かといって何が起こっているのかも分からない」

「ところが、何も手を打てずにいるうちに、彼女は見違えるほど復活した。
 夏休み最後には君と逢い引きをするほどまでに」
「い、いやアレはー!」
「本来、懲罰モノだが、君は恩人だということで、不問にしたがな」
「恩人?」

「無能力者上条当麻が、学園都市最強、第一位の超能力者を倒した、という噂…」

上条の肩がビクッと震える。
「御坂美琴が復活したのは、その噂と同時だ。」
「…あの噂は、上のほうが結構即効で消したと思ってましたが」
「立場上、その手の噂には早くてね。とはいえ、完全に信じられるものではなかったが…
 あの逢い引きの相手の名が上条当麻と知って、ピースは繋がった。あとはこの場で確認、だけだ」
寮監は眼鏡を外し、手は眼鏡を拭きつつ、上条を見つめる。

「まあ隠すほどじゃないし、実際俺一人で倒した訳じゃないですけどね…
 そもそも第一位を倒したから御坂が救われる保証もなかった話でしてね。
 結果オーライという奴っす」
寮監は眼鏡をかけ直すと、ため息をついた。
「それでも、彼女は救われた…本来、救うべき大人たちが、彼女のあまりにも強大な力に惑わされ、
 本来はか弱い中学生という事に気付かず、『勝手になんとかなるだろう』と…」
「…」
「彼女のことだ、全部一人で抱え込んで、誰にも相談しなかったに違いない。違うか?
 でも君は、そんな彼女の見えない悲鳴に気付き、真正面から壊してくれた。
 私は…我々は、一生悔いを残すところだった」

上条は腕を後ろに組んで、ソファーに深々と座り直す。
「俺は俺が助けたいと思ったから、助けただけで。まあでも…
 御坂や白井を色眼鏡で見ないで欲しいってのはあるなあ。
 ほんとアイツらただの中学生のガキだし。レベルなんて気にする必要ないっすよ」

「ふん、高校生のガキに説教されて納得する寮監か…困ったものだな」
寮監は苦笑しながら、
「まあ心にとどめておこう。
 そして今後も…悪いが外ではあの子たちを、よろしく頼む。
 内では私がしっかり守る。こんなことを頼めた義理でも無いがな」
上条は立ち上がった。
「大丈夫です。俺は少なくとも御坂を…白井も助けます。他の子たちも手が届く限り。
 大きな事を云うな、って言われるかもしれないけど、俺はいつだってそのつもりです」

寮監も立ち上がりつつ、
「そんな台詞を普通に言ってのける男がいようとはね…しかも高校生か。
 私も若ければな…」
「眼鏡外せばいいのに」
ぼそっと上条が呟く。

「!?」
「まあ内では睨み効かせないと、ってのがあるから分かるけど。
 出歩くときは眼鏡取るのがいいんじゃないっすか?すっげー美人じゃないですか」
「な、何を言っている! な、長く引き止めてしまったな!
 男子禁制だが、君は来ても私が許す。色々情報が知りたい、また遊びに来てくれ。」
「ええ、機会があれば。御坂によろしくお伝え下さい。じゃあ…」


そうして上条は去った。…小さなフラグを、また残して。



■おしまい


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