ツンのちデレデレ
御坂美琴はとある公園の自販機の前に立っていた。
時刻は昼の12時を少し回ったところ。
美琴はお金を入れてザクロコーラかヤシの実サイダーのどちらかにしようとボタンを指差し迷っている。
そんな迷っている彼女に後ろから声がかかった。
「御坂ー! 今おまえ暇かー!?」
美琴がここにいる理由でもあったその声の主は上条当麻。
美琴は上条がいつもここを通るので、もしかしたら会えるんじゃないかとドキドキしながら待っていたのだ。
しかしあまりに唐突だったために美琴は自販機の押すボタンを間違えた。
ハバネロパイナップルジュース―――。
「……あ、アンタねぇ! いきなり大声でビックリする…じゃな、い?」
思い切り振り返ったが、いない。
声の主が、上条当麻がいない。
しかし何か足元にある。いや、いる。それはまるで土下座をしたツンツン頭の制服姿の男子高校生のようだった。
彼は額を地面に押し当てこれ以上は小さくならないであろう体制で土下座していた。
「あのさ、安いのは認めるけどそんな用事だけで一週間も私に頼るのはどうなのよ?」
「いえ。お礼はもちろんさせていただきます」
「あ、当たり前よそんなの!」
「で・す・か・ら!」
「ぅお」
「今は一刻の猶予もありません。私上条当麻とご一緒頂けないでしょうか?」
「…はぁ。で? 今日は何の特売なわけ?」
「お一人様2点限りの納豆と牛乳で御座います」
「はいはい。じゃあ行きましょうか」
その言葉を待ってましたかのように顔を上げて満面の笑みを見せる上条。
その笑顔に美琴は不覚にも頬を赤らめてしまう。
(まったくもうこいつは! ひ、人の気も知らないで!)
スーパーから出てきた上条と美琴は笑みを浮かべている。
上条はお目当ての特売品&タイムセールの戦利品ゲットで満足の笑み。
美琴は上条と嬉恥ずかしの買い物デートでご満悦の笑み。
しかしあまりに買いすぎた為、袋が3つになってしまい美琴が上条の寮まで持っていってあげることとなった。
「何から何まですみませんねぇ、御坂さん」
「べ、別にいいのよ。一番軽いやつだし…そ、それにもっと一緒にいたいし…」勿論この台詞はデクレシェンドである。
「ん?」
「(こ、こんな彼女みたいこと…はっ! ち、違うわよ? 困ってたから! 困ってる人を助けるのは当然よね! うん)」
美琴は周りから見れば仲のいいカップルのシチュエーションに顔を真っ赤にして俯きながら歩いている。
上条はそんな美琴を見て荷物重いか? と言ったが美琴は首を振ったので?の表情をしながらも帰路を歩いて行く。
「そういや御坂。お礼」
「ふぇ?」
「お礼。何がいい? 財布を苦しめない事なら何でもしてやるから」
「え? な、ななっ何でも? じゃ、じゃあさ! うーんうーん」
「まぁ寮に着くまでに考えとけよ」
その後美琴はあれもいいしこれもいいしと悩み続けた。
上条は一体どんな事をさせられるのだとうかと少し恐怖を抱いたが、今の上条家にとって激安の食材は必要不可欠だ。
とあるシスターが食べ盛りなので。
なので上条は考えることをやめた。
そして2人は寮の前まで帰ってきた。
上条は重かったろ? 本当ありがとなと言い、美琴から袋を受け取った。
もちろん美琴は上条の部屋に行きたかったので少し不満な顔をして袋を渡す。
「で、決まった?」
「う、うん」
「お。なになに? 上条さんに出来る事なら何でも聞いて――」
「………………して」
「え!」
「……モーニングコール」
「あ、あぁ。モーニングコールね。ビックリした…」
「あ、明日から一週間! 朝7時にモーニングコールね! い、いいい一日でも忘れたらもう一週間追加!」
それから御坂美琴お姉さまの幸せな一週間が始まったのだった。
一日目。AM6:00。月曜日。
美琴は目覚めていた。
5時半には起きており、シャワーを浴びて布団の上で携帯を前に正座している。
「まさか楽しみすぎて目が覚めるとは思わなかったわ」
携帯を開き時間を確認する。
「…ま、まだ6時か。私どんだけ緊張してるのよ」
そんな美琴が出すオーラに何かを感じたらしく隣のベッドで寝ていた白井黒子が目を覚ます。
「ん…? お姉さま? 今日は随分とお早いですのね?」
美琴はベッドから飛び上がるほどドキっとした。
白井の声が心臓にわるかったのか暫く息を荒げていた。
「はぁ…はぁ…。く、黒子。お、おはよう」
「お、お姉さま? どうしましたの? どこかお体が優れないので?」
「う、うぅん。ちょっとビックリしただけだから…」
「そうですか。…あら? シャワーをお浴びになられたのですか?」
「う、うん。何か目が覚めちゃって。あは、あはは」
「はっ! 今ならお風呂場にお姉さまの残り香が! お姉さま! 黒子もシャワーを浴びてきますわ」
「い、いってらっしゃーい」
美琴は黒子が風呂場へ入るのを確認すると携帯を握りしめ布団に包まった。
(うふふ。早く7時にならないかなー♪
AM7:02
美琴は毛布に包まって体を震わせていた。
白井はというとまだ風呂場から出てきていない。
時々「お姉さま! お姉さま! あぁあああああ!!」とか聞こえてくるが美琴はそれどころではなかった。
(し、ししし心臓に悪いわね。これは。は、はやく電話かけてきなさいよ! もう2分も過ぎてるじゃな…)
♪~ ♪~ ♪~
【上条当麻】
「きっ…きっ…きっ、来たっ!! あわわわわわわ、あうあうあうあう」
美琴は布団から跳ね上がり、なぜか髪型をチェックし始めた。
そして自分の匂いを嗅ぎ始め変な臭いじゃないわよねとか言い出した。
まぁ要するにテンパっていた。
そして落ち着きを取り戻したのかいざ通話ボタンに指を置いたところで、
(はっ! 今ここですぐに出たらいかにも待ってたみたいじゃない! そ、そんなのダメよ!
これはあいつの罰ゲームというか買い物のお礼というかごにょごにょ……はっ!)
切れた。コール時間49秒。
美琴の時は暫く止まっていたが、やがて携帯を握り締め某ボクサーのように真っ白になってしまった。
(う…うぅ。お、終わった…もう全部終わったわ…)
♪~ ♪~ ♪~
【上条当麻】
「っ!」
美琴は音速の3倍で飛ばすコインよりも早く通話ボタンを押した。しかし――
「も!」
押したはいいが緊張しすぎて、も! としか言えなかった。
(ああああああああああ! 何言ってるのよ私! き、きき…緊張しすぎ!)
『あぁ? もしもし? 御坂か?』
「はぇ!? あ…う、うん。お、おはよう…」
『お、おはよう。おまえ今起きたのか。まぁモーニングコールだからそういうもんかもしれないが…くくっ』
「な、なによ。何笑ってるのよ」
『だって、も! だぜ? なかなか聞けないよな。美琴お嬢様の寝ぼけた声はよ』
「~~~~~っ!! ね、寝ぼけてないわよ! そ、そそそれより電話するのが遅い!」
『あのなー7時ぴったりってわけにはいかないだろうがよ。まぁそれだけ言えれば大丈夫だな。学校頑張れよ』
「え? あ…うん。頑張る…」
『じゃあまたなー。俺飯作らないといけないからさー』
「う、うん。ま、またね」
…………。
「ふー、朝からちょっとエキサイト…もといシャワーを浴びすぎてしまいましたわ。…あら? お姉さま? お姉さま?」
「ふにゃー」
「お、お姉ざばばばばばばばばばっ!!!」
2日目。AM6:10。火曜日。
美琴動き出す。着替えとタオルを持ち、風呂場へと消えていった。
「昨日の反省を生かし、学校の準備をしている時間くらいに電話がくるタイミングの方がいいわね」
「さすがに昨日は早すぎたわ。今日は冷静に行くのよ」
「心を無に」
「無に」
「そもそもモーニングコールなんだからギリギリまで寝ててもいいんだからね?」
「アイツの電話を心待ちにしてるわけじゃないんだから。だ、だから言ってやるのよ」
「あら? おはよう。もう起きてたけどご苦労様」
「…だ、ダメよ。折角電話してきてくれるんだからもっと素直に」
「おはよー…。まだ眠いー。何か目の覚める言葉言ってー」
「…とか? んー。私のキャラじゃないわね」
「で、でも! もし『ほら美琴。起きないと遅刻しちゃうだろ?』とか『もう…美琴はお寝坊さんだな』と、とか!」
「『美琴…起きないと、ちゅ、ちゅちゅちゅ…チューしちゃうぞ?』とかだったらどうしようー!」
「どうしようどうしようー! えへ、えへへへへへ、へへへ」
「……お姉さまとお風呂ご一緒にと思いましたが今行くと危険な気がしますわ」
AM6:50
美琴は風呂からあがるとふらふらーとベッドにダイブした。
そして携帯を開き時間を確認する。
もちろん例のモーニングコールが楽しみなので足はパタパタさせていた。
「あと10分かー。なんかお湯にあたりすぎたせいでのぼせちゃったわ…ま、まずい。ここで…寝る、わけ、には―――」
………。
「――ま? お姉さま?」
「んぁ?」
「お姉さま? そろそろ起きないと学校に遅刻しますわよ?」
「黒子ー? ……え! い、今! 今何時!?」
「今は―――7時45分になりますわね」
「はぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
「ど…どうなさいましたの、お姉さま。 今朝はサンドイッチだったので走りながらでも食べられますわよ?」
「で、でで…電話は……モーニングコールは……?」
そして美琴は携帯を開く。カエルの目はバッチリ何かを受信していたらしく光っていた。
不在着信3件。
【上条当麻】コール41秒。
【上条当麻】コール33秒。
【上条当麻】コール60秒。
「…」
「お、おねえ…さま?」
「……、う…うぅ……」
「そ、そんなちょっと寝過ごしたくらいで泣かないで下さいまし!」
「く、黒子ぉー…ん?」
よく見ると何か留守番メッセージが録音してあるようだ。
そういえば60秒以上コールすると留守電に繋ぐ設定にしたような。
ま、まさかっ―――
美琴は恐る恐る留守電メッセージを再生した。
『もしもし、御坂? おまえな! どんだけ起きないんだよったく! 一応留守電に入れておくから電話してないとか言うなよな?
昨日といいおまえ朝弱いのか? …まぁいいや。早く起きろよ? 上条さんもこれからご飯だからさー。じゃまたな!』
「…」
「お、おねえ…さま?」
「……、ふ…ふふ……」
「そ、そんな泣いてるんだか笑ってるんだか分からない顔で笑わないで下さいまし!」
「ふふふ、ふふ、ふにゃー」
「お、お姉ざばばばばばばばばばばばばっ!!!!」
PM9:30
「黒子ー? 私もう寝るねー?」
「え? あ、はい。随分とお早いですのね? 朝寝坊しないためですの?」
「え!? う、うん。そうね。や、やややっぱり早寝早起きは生活リズムを構築する上で―――」
「はぁ。まぁおやすみなさいですわ」
「お、おやすみー」
(今朝のお姉さまは確かにモーニングコールと言いましたわ。お姉さまがこれ程までに待ち焦がれる相手と言うと…)
黒子は美琴が寝たのを確認するとアサシンの如く忍び寄りカエルの携帯を掴んだ。
万が一の事も考え黒子は美琴からテレポートで距離を取り、着信履歴を確認しはじめる。
着信履歴は『上条当麻』の名前が大半をしめてあった。
黒子は確か学校が終わったら美琴に電話したと思ったが、これを見る限りバッチリ履歴を消されていた。
(あ、ああ、あのボンクラがあああああっ! お、おお、お姉さまの一日は黒子との甘い会話から始まりますの!
邪魔はさせませんわ! 邪魔はさせませんわーーーーっ!!)
黒子はマナーモード+振動無しにして携帯を美琴の枕元に戻した。
3日目。AM6:30。水曜日。
美琴は目を覚ました。いつもは携帯の目覚ましで起きていたが今日は普通に目を覚ました。
「う、うわ! もうこんな時間じゃない! 目覚まし鳴らなかったわよね? 消しちゃったのかしら…
と、とにかくすぐにシャワー浴びないと!」
美琴は着替えとタオルを持って風呂場に行こうとするが既に誰かが入っていた。
まぁ、相部屋なので白井黒子以外いないのだが。
美琴は扉のシルエットに向かって話かける。
「く、黒子!? 入ってるの!?」
「あら、お姉さま? すみません、先に入らせていただいてますわ」
「そ、そう。まだかかりそうなの?」
「すみません。今入り始めたばかりでして…、軽く浴びる程度ですので20分くらいしたら出ますわ」
「20分…わ、わかったわ!」
(プランA完了ですわ)
美琴は20分以内に学校の支度をする。
制服出して、シャツだして、靴下だして、今日の授業で使う教科書の類を鞄にぶち込む。
漫画で見たら恐らく3,4人はいるんじゃないのかと思うほど美琴はあせっていた。
(早く準備してシャワー浴びないと! あいつから電話かかってきちゃう!!)
AM6:45
「お姉さまー? あがりま――」
「黒子! 待っていたわ! 私すぐに入ってきちゃうわね!」
「は、はい。どうぞごゆっくり…」
美琴は脱衣所のドアの前で待ち構えており、黒子を入れ違いで入っていった。
「…ふむ。予想通り学校の準備をして待ってましたわね。携帯は、と」
白井は机の引き出しから何やら携帯充電器のような小型の機械を取り出すと美琴の携帯にセットした。
実はこの機械携帯を充電するものではなく、携帯の残りバッテリーを正確に測れる機械。
普通の状態なら何分で電池切れになるか、会話をしていたら何分で切れるかなど。科学最先端は余り使わなそうな物も生み出すのだ。
(ふむふむ。会話で12分ですか。もう少し電池使ったほうがよさそうですわね)
そう言うと黒子は自分の携帯から美琴に電話をかけ通話状態にした。
もちろん美琴が風呂場から出てくるまで通話状態にしておき、服を着ている時に自分からの着信履歴を消しベットに戻す。
マナーモード解除も忘れない。
ちなみになぜ美琴の携帯はこんなに電池が少ないかというと昨日のうちに白井が色々やっていた。
そしてそんな事を知らない美琴が風呂場から出てくる。
(プランB、C完了ですわ)
AM6:55
シャワーから出てきた美琴は身支度をしていた。
(ギリギリ5分前ね。危なかったわ)
「お姉さまー。朝ごはん食べに行きましょうー」
「え!? う、うん。…あー、私はもうちょっとしたら行くわ」
「あら。お腹減ってないんですの?」
「そ、そういうわけじゃないんだけど…。電話が…」
「電話? 持っていけばよろしいじゃありませんの」
「そ、そうだけど…」
「ささ。行きましょう、お姉さま」
「あ、ちょっと黒子ー」
(プランD完了。いよいよ最後の締めですわね)
美琴と白井は寮の食堂行くと既に他の寮生も疎らにいて空いている席に座る。
今日の朝はバイキング形式になっているのだが美琴は何故か取りに行かず、ソワソワしている。
「…? お姉さま? ご飯取りに行きませんの?」
「う、うん。もうちょっとしたら…」
「そうですか。では、わたくしは先に取りに行ってますわね」
「うん。いってらっしゃい。黒子」
美琴は黒子に(引きつった)笑顔で送ると携帯を確認する。
もう7時5分。そろそろ着てもいい頃だが――
♪~ ♪~ ♪~
【上条当麻】
(きっ…きた! 初日は待ちすぎたけどきょ、今日は…………………………………このくらいで!)
「も、もしもし~…」
美琴は全然眠くないのだが眠そうな声をして電話に出た。
私はアンタからの電話なんか忘れちゃってたくらい熟睡してたのよというツンデレ思考で。
しかし、そんな素直になれない美琴に白井の積み重ねてきたプランが炸裂する。
『ピロン… ピロン… ピロン…』
「あ、あら? もしもし? もしもーし?」
なにやら電子音だけで上条の声は聞こえない。
「んー? 寮内は県外じゃないし…はっ! ま、まさか!」
そう言って美琴は携帯の画面を見る。
そこにはバッチリ電池切れのマークと共に全アイコンが点滅していた。
「ああああああああああああああああああ!!! な、なんで!? 昨日の夜ちゃんと充電したのにぃぃぃぃぃいいいい!!???」
朝。お嬢様の朝。
そんな寮内の食堂からはウフフだのオホホだの聞こえてきそうな雰囲気だっかが、この美琴の一言で全てをぶち壊した。
周りからは「み、御坂様? どうなさいましたの?」「なんですの今の?」「御坂! 飯くらい黙って食え!」だの色々言われたが、
美琴はそれどころではなかった。
「と、とにかく充電! 充電しないと!!」
美琴は周りの視線に気付きもせず食堂を飛び出して行った。
しかし白井は後を追わない。何故なら白井のポケットには2人分の携帯充電器が入っているのだから。
(計画通り――――ですの)
PM6:45
朝の騒動から美琴は寮監にキツくお仕置きを受けたがそんな事は些細な事だった。
美琴は帰ってくるなり白井の挨拶をスルーし、ベットに倒れ込んだ。
ちなみに充電器はバッチリ元の場所に戻してある。抜け目無し。白井黒子。
「う…うぅ…」
「お、お姉さま? どうなさいましたの…?」
「く、黒子ぉ…こ、コレ…」
美琴が持っていたのは黒焦げたカエルだった。
正確にはカエルの携帯。
何故こうなったかと言うと、朝美琴は充電器が見つからないあまり自分の電気で充電して会話しようとしたらしいのだが、
失敗し携帯をショートさせてしまったらしい。
もしかしたら普段の彼女なら成功したかもしれないが余りにも焦っていたのでとのこと。
「電池もすぐ切れちゃうし…どっちみち寿命だったのかなぁ…」
「そ、そうですわね…ズキズキ」
「まぁ機種は変えないんだけどね。でも在庫少ないらしくて取り寄せなんだって。一週間後くらいに来るって言ってたけど」
「そ、そうなのですか…そ、それは……残念でしたわね…ズキズキ」
「はぁ…」
「ど、どうなさいましたの? お姉さま?」
「……なんでもない。う…うぅ…」
「お姉さま…」
上条当麻からのモーニングコール。
3日目にして終了。
4日目。AM7:03。木曜日。
上条は美琴にモーニングコールするべく携帯を取り出す。
「そろそろかけるか。それにしても御坂。あいつこの4日間でまともに出たの一回もねぇじゃねえかよ、ったく…」
そんな文句を言いつつも上条は美琴へコールする…はずだったのだが、コール出来ない。
『只今電波の届かない所にあるか、電源は入っていない―――』
「…………またか。昨日は最初はコール出来たけど2回目以降これだし。留守電も入れられないしで」
上条は携帯をポケットにしまうと、朝食の準備をする。
今日の朝ごはんは昨日の特売品『朝のともだち』たる名前の6枚切りの食パン。
それと牛乳にマーガリン。上条当麻の精一杯の朝食である。
上条はその6枚をもはや習慣的に、自分1枚インデックス5枚と配った。
「いつもありがとうなんだよ、とうまー」
「いいんだよ、インデックス。まだあると思って帰ってきたら無いっていう絶望感に比べたら、目の前でおいしく食べてもらった方が涙出ないし」
「もぐもぐもぐもぐ…」
「…食パン両手で交互に食う奴初めて見たぜ」
上条は1枚のパンを心ゆくまで堪能すると鞄を持って部屋を出た。
もちろんだるいし、腹も満たされていないのでいつもの台詞が口から漏れる。
「不幸だ…」
そんな彼の目の前に少女が飛び出してきた。
上条は俯いていたためその少女とぶつかってしまい転びそうになる。
「おっ…と。すみません。ちょっと余所見してて……って、おまえは」
「あはようございますですの。上条当麻さん」
「白井、黒子だっけ?」
「覚えていただいて光栄ですわ。突然ですがお願いがございますの」
「はぁ? ほんと突然だな、おい。…で何だよ?」
「今日の放課後お時間宜しいでしょうか?」
PM6:44
白井は常盤台の寮まで戻ってきていた。
美琴はというと昨日の携帯故障+上条からのモーニングコールにありつけないショックで不貞寝してしまっている。
もちろん学校へは行ったのだが、朝の異様なテンションの低さに白井はさすがにやりすぎたと思いプレゼントを買ってきたのだ。
「お姉さまー。お姉さま、起きてくださいまし」
「んー…ん? 黒子ぉ? 何? もうご飯だっけ?」
「それはもうすぐですわ。それよりお姉さま。あの殿方よりお姉さまへプレゼントがございますのよ」
「殿方ぁー? プレゼントぉー? ………………ええええええ!!!???? あ、あああアイツがっ、わっわっわわ私に!!???」
「はい。どうぞですの」
そう言って白井は美琴に綺麗に包装された真四角の小箱を差し出した。
美琴はさっきまで寝ていたとは思えないほど目をギラギラさせて、胸をドキドキさせてその小箱の包みを解いた。
「……目覚まし時計?」
「はいですの。お姉さまが電話に余りにお出られないから目覚まし時計を、と」
「…そっか。携帯壊れちゃったし、あと3日じゃ電話出来ないもんね」
「携帯が壊れてしまったことはあの殿方には言っておきましたわ」
「…」
「それにちょっとしたサプライズもございますの」
「え? なによそれ?」
「朝になってのお楽しみ、ですわ」
「???」
「ささっ、もうご夕食が出来てる頃ですわ。お姉さま、一緒に行きましょう」
「あ、うん。…あれ? 黒子も何か買ってもらったの? その小さな袋」
「え? あぁ、これは自分で求めた物ですわ。中身は耳栓ですの」
「………………………なんで?」
「街を誰かの血で汚さないためですわ」
5日目。AM6:55。金曜日。
美琴はまだ布団の中にいた。起きてはいるのだがだるくて起きる気になれないといったところ。
でも早くしないとシャワーも浴びれないし、ご飯も食べれないしでもぞもぞしている。
そして美琴はあと5分だけー…と言った時―――
『御坂ー。起きろー。朝だぞー。いつまで寝てるんだー』
「―――え!?」
美琴はガバッと体を起こすが周りにその声の主はいそうにない。
隣のベットで白井は寝ているようだが、それ以外にこの部屋に人はいなかった。
「気の…せいよね。あはは…アイツの声が聞こえるとか、私いよいよおかしく―――」
『そろそろ起きないと遅刻するんじゃないのかー』
「なってない! やっぱり聞こえる! ど、どこから!? 携帯は壊れてるし…ん?」
美琴は昨日白井から渡された目覚まし時計を持つ。
なにかを警告しているようにランプがチカチカと可愛らしく光っており、目覚めの時間だと言う事を教えてくれているようだ。
「でも鳴らないわねコイツ…私、止めたかし――」
『もう…み、みさ…んん! 美琴は、お寝坊さんだなー』
「こ、こここコイツだああああああ!!! コイツが喋ってたぁああああ!!!」
『御坂ー。起きろー。朝だぞー。いつまで寝てるんだー』
「あ…あぁ…」
目覚まし時計から聞こえてくる上条当麻の声は美琴にとって最高の目覚ましになった。
上条の言葉は棒読みだが、それでも美琴は嬉しくて顔を赤らめずにはいられない。
美琴はその時計を自分の胸に押し当て少し強めに抱きしめた。そうすると体中にその声が響き渡り幸せな気分になれる。
時計に録音されている台詞は3つだけだったが、美琴はそれだけで十分だったのか目覚ましが切れるまで止めることなく聞き続けた。
そしていつの間にか体のだるさが消え、心が軽くなった気がしたので美琴は笑ってしまった。
「あは。こんなので喜んじゃうなんて…」
美琴は時計を枕元に戻すと、一回だけ背筋を伸ばし着替えを持って風呂場へと消えていった。
その足取りは軽くシャワーの音が聞こえると同時に鼻歌も聞こえてくる。
「………た、たたた耐えるのですわ。お、おおおお姉さまの為ですもの。と、ところでこの耳栓全くもって役立たずですわね」
昨日白井は放課後に上条を連れて雑貨屋へ買い物に行ったのだ。
そこで美琴の携帯が壊れたから朝起きる事が難しくなったのでと上条に時計を買わせた。
その時計は声が録音できるやつで一番安いやつだった。白井は用意してあった台詞が書いてある紙を上条に渡し、その言葉を読ませた。
自分で考えた台詞で、聞いても怒りを覚えないようにしたのだが、万が一の事も考え一緒に耳栓も購入した。
それが白井の言うサプライズだったのだが、実はもう一個――――
6日目。AM6:50。土曜日。
美琴は夢の中にいる。ふわふわと気持ちいい。
夢の中では上条との幸せライフを送っていて、いつものように夢なら覚めないでほしいと思うところだが今朝は違った。
私にはあの目覚ましがある。
あの目覚ましがあれば起きても幸せになれる。
そして―――
『御坂ー。起きろー。朝だぞー。いつまで寝てるんだー』
『そろそろ起きないと遅刻するんじゃないのかー』
『もう…み、みさ…んん! 美琴は、お寝坊さんだなー』
………。
「ふにゅ…」
美琴の顔は完全に緩みきっていた。
幸せを噛み締めるように目を閉じているが口元からは甘い溜息を吐き、頬や耳は真っ赤になっていた。
今日は学校は休みなので、しばらくこのままでいようと思ったが目覚ましの声が止まってしまったので起きることにした。
―――が。
「御坂ー。起きろー。朝だぞー。いつまで寝てるんだー」
また上条の声が聞こえてきた。
あれ? おかしいな。時間過ぎたらもう鳴らないはずなのに…。
「あれ…? なんで当麻っち(時計の名前。当麻+ウォッチ)また鳴ってるのー。まぁ、気持ちいいからいいんだけど」
「美琴はお寝坊さんだなー」
「そうよー。だって大好きな当麻の声で起きたいからゆっくりしてるんだもん」
「だ、大好きなんですか」
「うん。大好きー。えへへー、とうまぁー。とー、…ま?」
御坂美琴の時は止まった。
何か目覚ましの台詞違うんじゃない? って言うか今普通に会話したわよね?
そして美琴は恐る恐る毛布から顔を出してみる。
「…」
いない。
ホッと胸を撫で下ろす。隣のベットを見るが白井もいなかった。
シャワーかしらと思った美琴は当麻っちを持って時間を確認する。
「げ。まだ7時半じゃない。黒子休日にこんな時間に起きるなんて…」
そう言った時にまた時が止まった。
おかしい。7時に目覚ましセットしたんだから鳴っても5分か10分。
でも今は30分。さっき鳴ったばかりなのになんで30分?
その時美琴は何かが背後にいるような気配を感じた。
美琴の体は白井のベットの方を向いて横になっているため、ゆっくりとゆっくりと視線を壁側に向ける。
そこには。
「…」
ツンツン頭の。
「あ…」
「よ。おはよう」
不幸そうな顔をした。
「あ、ああ…アンタ……」
「やっと起きたか。いやーどうよこのサプライズ。つっても考えたの白井だけどな」
美琴が恋する上条当麻が。
「なっななな…い、今の……聞こえてて」
「あ? 当麻っち? …いえいえ! 聞こえてませんよ? 大好きな当麻の声で起きたいとか聞こえてないですから!」
「~~~~~~~~~ッ!!!!!!」
顔を真っ赤にして立っていた。
「なんでアンタがここにいるのよ!!!! しかもバッチリ聞いてるじゃないーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!」
「どおおおおおおおおおおおおおおおおお!!???」
「ふにゃーーー! ふにゃーーーーー!! ふにゃーーーーーーーーー!!!」
美琴は上条以上に顔を真っ赤にし、上条に電撃を浴びせる。
…はずだったのだが、いち早くそれに感知した上条は美琴の手を握り電撃を封じ込めた。
「あ、あっぶねぇ! おまえその可愛らしいかえるパジャマにもコイン忍ばせてあんのかよ!」
「ふにゃー!!!」
「お、おいコラ! 暴れんな! つか力強っ! もってかれる! 腕持ってかれる!!」
「わっ忘れろーーーー!! 全て忘れろーーーー!!! 記憶を消してくれるーーーーーーーーー!!!」
「やばい! 今手を離すのはやばい! 絶対死ねる。楽になれる。でも死ぬのは嫌だーーーー! 朝はパン一枚でもいいから死ぬのは嫌だああああ!!!」
「離せこのバカーー! 女の子の寝顔見るなんてアンタって奴はホントに―――」
「うぉ―――」
上条はよく耐えた。美琴のテンパリ時の怪力から。しかしここまでのようだ。
上条はこれから起こるであろう映像が予想できた。恐らく美琴のどこか恥ずかしい所に顔を埋め、それにさらに激怒した美琴が
上条を振りほどき電撃を浴びせるという映像が。
…はは。不幸だ。
ちゅっ。
…ん? 手はちゃんと握っている。他の所には当たっていない。
左手はベットの柵にかかっている。美琴の体にさえ触れていない。
首から下の感覚もいつもと変わりない。が。
首から上。特に唇がいつもと違った。
柔らかい何かに押し付けられているような? いなような?
唇が押し付けられているため息を吸う事が出来ず、苦しくなっていく。
ついには耐え切れなくなり口を開けるとさっきまで押し当てていた何かも同時に開く。
そのタイミングが成せる技かどうかは定かではないが、舌に何かが触れた。
味なんか全く感じなかった、というか感じる状態ではなかったのだが。それはとても官能的な触感だった。
まぁ要するに上条が美琴にキスしていた。
おはようのちゅーをしていた。
上条は状況を理解したのかゆっくりと美琴の唇から離れる。
離れる時に熱も一緒に無くなっていったのだが、自分の唇と美琴の唇とで何かよくわからない水の端が出来たため一瞬にして顔を真っ赤に染めた。
「あっ…あああああの。み、さか…さん。こ、こここコレは、その…事故というか。不幸というか、何と言うか…」
「ふぇ…? あ…は……ぇ」
美琴の目は完全にとろけきっているが上条の目だけを見ている事は分かった。
「い、今の…私……あの…」
「ち、違…くないけど! 絶対あれだぞ! あれっていうのはアレで、だ…だから……!」
「あ、ああああアンタと…!
「きっキスじゃないからな!!」
「キッ!!???」
ボン!ボボン!ぼぼぼぼぼ…と美琴の顔が真っ赤になり、沸点を越えたのかと思うほど湯気が出た(気がした)。
美琴は手を振りほどくと顔を隠ししばらくいやんいやんしていた。
「わっ私…こ、コイツと。きっキスぅを……」
「み、御坂…さん?」
「う…」
「う?」
「嬉しい…」
「…ぇ」
嬉しいと顔を上げて言った美琴の顔は本当に幸せそうで顔全体を使って喜びを表現している。
恋する乙女はファーストキスは絶対に好きな人とと思っており、理想のシチュエーションとは違えど相手が相手なら嬉しいに違いない。
上条はそんな美琴の言葉と満面の笑みに、今まで築き上げてきた精神と理性が圧倒的な何かに粉砕される衝動に駆られ動けなくなってしまった。
「う、嬉しいなー。私のファーストキスがこ、ここコイツとなんて…えへへ」
「……ふ…」
「えへへ…へ?」
「ふぅ…」
「ちょ…」
「ふにゃー」
「わあああああああっ! ちょ、ちょっと! アンタ大丈夫!?」
AM9:13
白井は浴室からではなく部屋のドアから入ってきた。きちんと常盤台の制服を身にまとい風紀委員の腕章をつけて。
「ただいま戻りましたわー」
「あ。黒子おかえりー。どこ行ってたの?」
「おはようございます。ちょっと風紀委員の支部の方に忘れ物をしてしまいまして」
「そうなんだー、…えへ」
「…お姉さま。何か機嫌がいいみたいですわね?」
「そ、そそ…そうかなぁ。そんな事…ない……けど」
「言っておきますが今日は特別ですわよ。寮監が朝からいないからであって、あの殿方もなかなか頷かなかったんですから」
「わっわかってるわよ! ……ありがとね、黒子」
「………いいんですの。それより今日はどこにも出だしませんの? お姉さまが休日に部屋にいるなんて珍しいですわね」
「うん。これから行くとこ」
「…お姉さま? と、常盤台は出歩く時も制服姿と義務付けられてますのよ?」
「大丈夫大丈夫♪ 今日寮監いないんでしょ♪」
「…お姉さま? ち、ちなみに聞きますけど…どなたとお出かけになられるのですか?」
「へ!? や、やーねぇ黒子ったら。ひ、1人で行くに決まってるじゃない! あは、あはは」
「でしたら! わたくしもご一緒――」
「ダメ」
「うっ。………………と、ところでお姉さま。実はここにわたくしがこの前買った下着があるのですが、ちょっとサイズを間違えてしまいまして」
「………とか何とか言って私に穿かせようってんでしょ」
「ま、まさかそんなわけありませんわ!」
「ふーん。じゃ、じゃあ貰っておこうかしらね。す、捨てるの勿体無いしね。うん」
「え……………………………おねえ、さま?」
「た、たまにはね、気分転換も大切よね! じゃじゃあ私もう行くから! ありがとね黒子~~」
「お姉さまああああああああっ!!!」
美琴は白井から下着入りの小袋を受け取るといそいそと部屋と後にした。
白井は呆気にとられていたがしばらくして正気に戻る。そしてどっと冷や汗をかき自分のベットに腰掛けた。
「まっまさか…サービスしすぎましたの? カマをかけた下着さえも持っていかれるとは……」
「後を追うしかないですわね。わたくしのサイズでしかも布小さめのを選んだ下着なんかお姉さまが穿いたら―――」
「…」
「おねえさまああああああああああああああっ!! ぴっちぴち!!! ぴっちぴちですわあああああああああああああああっ!!!!」
白井はいつの間にかベットに仰向けになっていると何やらしだした。
それは何とは言わないが、テレポートの演算が出来ないような何かをしているようだ。
何をしているんだろうね。分かる人いますか? ちなみに僕はわかりませんね。
そして事終えた白井は美琴のベットへと歩み寄り目覚まし時計を手に取った。
「はぁはぁ…こ、この目覚まし……こいつがやっぱりいけなかったんですわ…中身を確認すれば全部分かるはずですわ」
白井は目覚まし時計の時間をアラームが鳴る時間まで戻す。
確か録音した台詞は
『御坂ー。起きろー。朝だぞー。いつまで寝てるんだー』
『そろそろ起きないと遅刻するんじゃないのかー』
『もう…み、みさ…んん! 美琴は、お寝坊さんだなー』だったはず。
『美琴ー。起きろー。朝だぞー。いつまで寝てるんだー』
「あ、あら? 今美琴って……?」
『いい加減起きろよなー。遅刻するぞ? あの場所で待ってるぜー』
「…………今、何つった?」
『ほら美琴。遅刻したら何だっけ? ほ、ほっぺにch―――』
消した。アラームを消した。
「お、お姉さま。まさか…まさかあの類人猿に! 認めませんわ許しませんわ信じてますわあああああああ!!!」
「……そ、そうですわ。ちょっとこの目覚ましに」
7日目。AM6:57。日曜日。
美琴と白井は既に目を覚ましていたが起きあがる動きは起こさない。
美琴は昨日門限ギリギリに帰ってきたがとても満足気な顔をしていた。
あの例の小袋はというと渡した時よりもちょっと膨らんでるように見えたような、見えないような?
そして白井はドキドキしていた。
目覚ましのアラームに。
(ふふ。お姉さま。今目を覚まさせてあげますわ。黒子のあま~いこ・え・で♪)
(えへへー。早く鳴らないかなぁー。楽しみだなー。当麻っち♪)
(ドキドキドキ)
(どきどきどき)
カチッ―――
(きたっ!)(きましたわっ!)
『おねえさまぁ~ん。起きてくださいましぃ~』
「……………………………………へ?」
(や、やややりましたわ!)
『遅刻してしまいますわよ? それとも黒子が直接起こしにくるのをお望みですのん』
「と…当麻っち? な、なんで黒子の声に……黒子っちに…」
(せっ成功ですわ! お姉さま! 嬉しすぎてぷるぷる震えてますわ!!)
『お姉さまぁん。今参りますわね? 黒子はっ黒子はもう我慢できませ――カチッ』
「……………黒子ぉ」
(――はっ! お姉さまが呼んでいる! 黒子を待ってるんですわ!! 今行きますわね!!!)
「黒子ぉ?」
「おねえさまぁあああああああああああん!! おはようござ――――」
「何してくれちゃってるのよ!! アンタはぁああああああああああああああああああっ!!!!!!」
「あああああああああああああああああああああああっ!!!」
『待ってたのに! 楽しみにしてたのにぃいいいいい!!!!』
『あぁああああああ! お、お姉さま!! 朝からっ朝から激しすぎますわあああああ!』
『誤解招くような事言うなぁああああ!!!』
『あああああああ~~!!』
「…ふむ。また御坂と白井か。さて、今日は首を90度曲げるだけでは済まさんぞ」
眼鏡をかけ直した寮監が208号室のドアノブに手をかける。
その日美琴は上条とデートの約束をしていたが、集合時間になってもなかなかこないので上条は不幸だと連呼していたとか。
その時間に美琴と白井は部屋で気絶していた。もちろんベットにいるわけではない。
寮監のロックで極められた後、そのまま投げ出されて部屋の隅にぐったりしている。
その後目を覚ました美琴が、当麻っち改め黒子っちの示す時間を見て光の如く駆け出したのはまた別のおはなし。