とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part3

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3日目


3日目、朝――
昨日のようにおいしそうな匂いが漂ってくる。
今日は味噌汁がある。上条のテンションは最高潮…彼はベッドから転げ落ちてしまう。
「不幸だぁ。」
美琴はそれを見て微笑んだ。母親にでもなった気になっているのだろう。
上条はそれを見つけてにいっと笑う。不幸なんか気にしてないといわんばかりに。
不幸の代わりに、この生活に慣れてしまった気もなくはない。
でも、今言わないと後戻りできなくなる。――

――「上条さんにあなたのビリビリを使ってくれませんか?」
「い~や!だって、あんた昨日はけがしたでしょう?」
「それでもです。元に戻れるきっかけがそれだったんだよ。」
「それでも、嫌なの!あんたが傷つくのなんか見たくない!」
「おれは、死なないよ。」
「あんたが傷ついたら私は心が持たなくなるの!」
「でも、お願いします。一回だけ高電圧のものをお願いします。」
「そしたら、この部屋はだめになってしまうわよ?」
「それはだめだけど、あそこの河川敷ならいいだろ?」
「今日の夜までに考えておくこと。いいな美琴。いや、美琴お姉ちゃん?」
「いいわよ、考えておいてあげる。それよりもご飯できてるけど食べる?」
「うん。」

一端、上条は高校生の上条にシフトしてまた、今のポジションに戻っていった。
「今日は、どうする?夜までまだまだなんだし、」
「今日は…」
「ん?」
「…うちにいたいんだ。今日は外に出たくない。…お姉ちゃんと一緒に二人でいたい。」
「…グスッ…そ…ん…なあん…たから…」
「泣くなって。かわいい顔が台無しだよ?ね?姉ちゃん!」
「私…こんな…感じの…弟が…欲しかったんだ。」
「!!」
上条は、そんなことを思っていたんだ。と思いながら小さくなった身体で後ろから抱きついてあげた。
「優しいのね…当麻は。おかげで元気になれた。ありがとう。」
「お礼は、身体が元に戻ったら出いいよ…。」

今日は、全く外に出ずに家に二人でいた。
テレビを見て、ゲームをして、
昼寝をして、どうでもいいことで口喧嘩して、
どれもこれも楽しかった。充実した。
上条はひとり、ベランダに行く。
そして、自分の目にアツいものがこみあげてきている。

…俺、死ぬんだよな。もしかしたら、あいつの悲しい顔は見たくない。でも、これに懸けよう。

上条は人生最後の決心をした。
そして、夜を迎える…。高校生の身体の時の服を持って、思い出の河原に向かう。

「…これで、おまえが本気を出さなかったら俺はこのままだ。」
「わかってる。」
「お前が、俺に思ってることを全部託してくれ。」
「…うん。」
「――お前の幻想(アイジョウ)を全て受け止めるっ!」
そう言って、上条は両手を前に突き出した。そして、力を抜いて目を瞑る…。
小さくなってからの思い出が目の前に流れてきた。
…美琴の屈託のない笑顔。そして、今まで見せたことのなかった優しさ。
一つ一つのしぐさ。自分への行為、そして、好意。
彼女とくっつくことができたとき。彼女のにおい、柔らかさ。
…「お姉ちゃんは、まだシャワー入ってきてないんだから、まだお預けね。」
…「今日の晩御飯は何がいい?」
…「はいはい。当麻君は、せっかちなんだからぁ~~。」
…「あれはね、黒子がやったことなのよ…」
…「当麻!」「と~まぁ!」「ねぇ、ってば!」「あんたよ!あんた。…」
彼女の行動、言動の一挙手一投足全てが身体に染み込んでいる。
こう考えてみれば――
私、上条当麻は、御坂美琴(あなた)の幻想に完全に魅了されていました。
大好きです。――あなたとずっと一緒にいられた数少ない時間は忘れない!!

そう心でいいきった。それを読み取ったかのように美琴の声が聞こえる。
「ばかぁ!ばかばかばか!なんで、あんたはそんなにバカなの?」
「こんなバカ、私にしか手に負えないじゃない!?あんたが死んだら誰が面倒みるのよ!」
目を開けると、俯いている少女がいる。涙が頬を通って滴っている。肩が小さく震えていた。とても、悲しそうな顔をしている。

今、自分自身の未来のために死のうとする人間が少女のほうへ近寄り、
その小さな体のほうへ抱き寄せて笑顔でこう言う。
「…俺は、大丈夫だから。美琴の想いを全部受け止めてやるっ!」
そう言い残して、10m位のところにさっきのカッコで立つ。

「…行くわよ。」
周りが静寂に包まれる。そして、静電気の発生音がどことなく発生する。
そして、彼女は電気をためる。
やがて、人間の致死量の10倍の電圧を持つ電気玉があった。
それを、渾身の力で投げた。

――さようなら…。上条当麻は、生まれ変わってきます…。

彼女の巨大なボールが上条の身体をとらえる。数秒の事。
上条は、両手でそれをしっかり受け止めている。
上条の右手は、そろそろ限界にきている。
左手は使い様がなくなってきている。
その時、キュイイイイイイン!という音とともに電気玉は消滅した。
そして、上条はそこに倒れ込んだ。

美琴が大声で嗚咽を漏らしてなく。めったなことでは泣かないのに。

…「ま…だ…世…界は…捨てたもん…じゃない…な」
立つことはできないが、そこにはぼろぼろの上条当麻がいる。
だが、その時彼の身体が衝撃の反動により身体のけいれんを起こしていた。
そして、それは数秒で落ち着き、上条は眠った。

「…あんた、裸で何やってるのよ。」
(え?)
目を開けると、顔を真っ赤にして泣いている美琴の顔があった。
「あ?声が戻ってる!もしかして、上条さんはもとの身体に戻ったのでせうか?」
うん。と頷いて美琴は上条のほうにもたれかかる。
「返事はまだないの?」
「これが答えだ…」静かに美琴を抱いた。このとき、4日目の0:00の出来事である。

「あ!悪ぃ!服着ないと寒ぃな。ここに服があったよな。」
そこには、紙袋が置いてあった。そして…
「その服ね、私が選んで買ったの。良かったら着てよ。っていうか着なかったら、着るまであんたんちで居座ってやる!」
「いいですよ。別に上条さんは。」
一呼吸置いて、上条は笑顔でいう。
「今日、美琴が頑張ってくれたご褒美にこれを着てかえりませう!」

「…あんたは、ほんとに世話が焼けるんだから! これからも世話やいてやる!」
「私はあんたが好きなの。ほかの人が私の事を好きになっても、この気持ちは変わらないの!」
今にも泣きそうな乙女の顔を覆うように優しく上条は抱いてやる。
そして、頭をなでながら言う。
「私、上条当麻は、御坂美琴(あなた)が大好きです。気付いたらそうでした。…」
「…気付くのも、告るのも全部後だしってズルくない?」
「いいんだよ。うん。これで。」
「もう一度言っていい?」
「ん?」
「当麻ぁ!大好き!!」チュッ
「…不k…いや、しあわせだぁぁぁぁ!」

END


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