誰一人欠ける事なく
「…ここは?」
目を覚ました美琴は辺りを見渡す。そこはひたすらに真っ白な世界だった。―――何も無い、誰も居ない。
そう考えた時、ふと背中に気配を感じた美琴は振り返る。するとそこには御坂妹が立っていた。
そう考えた時、ふと背中に気配を感じた美琴は振り返る。するとそこには御坂妹が立っていた。
「ねぇ、ここって何処だか分かる?」
辺りを見回しながら美琴は御坂妹に尋ねる。
「――ごめんなさい」
美琴の問いに短く答える御坂妹。哀しそうな瞳を浮かべる彼女はいつも別れる時の様に一度だけ頭を下げるとそのまま振り返り歩き出す。
「ちょっと!どこ行くのよ!?待って!待ちなさいってば!」
突然背を向けて歩き出した御坂妹の後を慌てて追う美琴。だがその距離は一向に縮まらない。それどころかどんどん離れていってしまう。
「待って!行かないで――――!!」
そう叫んだ瞬間美琴は目覚める。
「美琴!?随分うなされてたけど大丈夫か?」
「…ここは?さっきのは…?」
「…ここは?さっきのは…?」
ぼやけた目で辺りを見回すと心配そうに見つめる当麻に気が付く。先程見ていた夢を思い出そうとするが、上手く思い出せない。
でもそれは嫌な夢だった。とても辛い夢だった。そう思っていた美琴だったが、その思考は当麻によって遮断される。
でもそれは嫌な夢だった。とても辛い夢だった。そう思っていた美琴だったが、その思考は当麻によって遮断される。
「ここは病院だ。お前は能力の使いすぎで気を失ったんだとよ。全く無茶な事しやがって…ひとまず無事だったから安心したぜ」
そう言うとふーっと息を吐き、力を抜く当麻。美琴の右手を両手で包むように握ったまま椅子に腰掛ける。
…ここはいつもの病室。ただ違いがあるとすれば今回は心配する側、される側が反対という事だ。
…ここはいつもの病室。ただ違いがあるとすれば今回は心配する側、される側が反対という事だ。
「…ああ、そっか私…」
「悪かったな、一方通行呼ぶのが遅くなっちまって」
「悪かったな、一方通行呼ぶのが遅くなっちまって」
申し訳なさそうに語る当麻。彼は二人と別れた後、教えられた住所に向かって走っていたのだが、最短ルートを通る為に土御門に連絡をしていた。
そこで事情を話すと一方通行のアドレスを教えてくれた為、そのまま連絡を取り現場に急行させ、自分は真上に放たれた電撃を見て救急車を呼んでいたのだった。
そこで事情を話すと一方通行のアドレスを教えてくれた為、そのまま連絡を取り現場に急行させ、自分は真上に放たれた電撃を見て救急車を呼んでいたのだった。
「ううん、当麻なら絶対間に合わせてくれるって信じてたから」
「そっか、ありがとな」
「それで皆は?」
「打ち止めは眠ってる。一方通行が付いてるから心配ない。番外個体は御坂妹の所に行くってさ」
「…!!そうだ、あの子達の所に行かなきゃ…」
「そっか、ありがとな」
「それで皆は?」
「打ち止めは眠ってる。一方通行が付いてるから心配ない。番外個体は御坂妹の所に行くってさ」
「…!!そうだ、あの子達の所に行かなきゃ…」
当麻の言葉を聞いた瞬間、意識を失う前に見た番外個体の顔と、先ほど見た夢がフラッシュバックのように甦る。
そして一気に不安になった美琴は体を起し、ベッドから出て立ち上がろうとするが、まだ力が戻りきっていない為に上手く立ち上がれずによろめく。
そして一気に不安になった美琴は体を起し、ベッドから出て立ち上がろうとするが、まだ力が戻りきっていない為に上手く立ち上がれずによろめく。
「まだ力が戻ってないなら無理すんな。今はゆっくり休んでろって」
倒れ掛かる美琴の両肩を掴む当麻。そのままベッドに戻そうとした所で美琴が手で制す。
「そんな事言ってられない。あの子達は今きっと苦しんでる、だから一刻も早く助けてあげないと…」
「美琴…分かった」
「美琴…分かった」
真剣な言葉にその意味を察して彼女に肩を貸し、病室を後にする。暫くして、妹達がいつもいる部屋に辿り着く二人。
「…り…まま…ミサカは……提案し……」
「…人の…なら…ほうが……」
「…人の…なら…ほうが……」
ノックをしようとしたところで、中から妹達の会話が少しだけ聞こえた。気になったが、そのままコンコンっとノックをすると中に入る。
中にはネックレスを付けた御坂妹と番外個体が椅子に座っていた。二人は部屋に入ってきた二人に驚くと、同時に立ち上がる。そして
中にはネックレスを付けた御坂妹と番外個体が椅子に座っていた。二人は部屋に入ってきた二人に驚くと、同時に立ち上がる。そして
「お姉様にお義兄様?こんな所まで来てどうされたのですか?とミサカは二人の訪問に驚きを隠し切れません」
「もう体の方はいいのかな?」
「お姉様はもう少し休んでいたほうが良いでしょう、とミサカは肩を借りているお姉様を心配つつ提案します」
「…気に入らないわねその態度。あんたらそんなに私達の事が信用できないの?」
「「………」」「…美琴?」
「もう体の方はいいのかな?」
「お姉様はもう少し休んでいたほうが良いでしょう、とミサカは肩を借りているお姉様を心配つつ提案します」
「…気に入らないわねその態度。あんたらそんなに私達の事が信用できないの?」
「「………」」「…美琴?」
肩を借りる美琴を気遣う二人。それはいつもの彼女達となんら変わらないように思えた。
だが美琴は見抜いていた。その言葉を発する二人が自分達に顔だけ向けて、目が合わないように視線を逸らしていた事に。
だが美琴は見抜いていた。その言葉を発する二人が自分達に顔だけ向けて、目が合わないように視線を逸らしていた事に。
「思えば妹達はいつもそうだった。私が悩んでる時、辛い時はいつも明るく励ましてくれた。いつも私の事を優先していた。…それはどうして?」
「それはお姉様に笑っていて欲しいからだよ」
「それはお姉様に笑っていて欲しいからだよ」
美琴の問いに答える番外個体。その言葉を聞いた美琴は右手を強く握り締め、二人を睨みつけるように見る。そして声を張り上げこう言った。
「私は妹達を苦しめてまで手に入れる幸せなんていらない!!私が望んでるのは皆が笑っていられる世界なの!
その中にはアンタ達も入ってるのよ!?何でそんな事もわからないのよ!?なんで自分達の辛い事や悩みを隠そうとするのよ!」
「「………」」
その中にはアンタ達も入ってるのよ!?何でそんな事もわからないのよ!?なんで自分達の辛い事や悩みを隠そうとするのよ!」
「「………」」
美琴は我慢できなかった。自分が苦しんでいる時はそれに気付き、手を差し伸べてくれた癖に、自分の時は何も言わず黙っていた事に。
悩みがあるなら言って欲しかった。一人で抱え込んで傷ついてなんて欲しくなかった。そんな想いがその言葉から滲んでいた。
美琴の言葉に二人は黙り込む。そして番外個体が軽く溜息を付くと隣に立っている御坂妹に話しかける。
悩みがあるなら言って欲しかった。一人で抱え込んで傷ついてなんて欲しくなかった。そんな想いがその言葉から滲んでいた。
美琴の言葉に二人は黙り込む。そして番外個体が軽く溜息を付くと隣に立っている御坂妹に話しかける。
「…ねぇ、もうやめにしない?これ以上隠そうとしたってなんにもいい事ないよ?」
「――ですが!」
「そんなものは優しさでも相手を思いやる気持ちでもない。妹達は二人に嫌われるのが怖いだけ。
ミサカは負の感情を拾い易いように作られたからどんな事を隠そうとしても無駄だよ?これ以上隠すつもりならミサカが代わりに全部喋ってあげる。
さあどうするの?今まで二人の側に居た10032号が全てを話すのか、それともこのままミサカに任せるのか」
「…」
「――ですが!」
「そんなものは優しさでも相手を思いやる気持ちでもない。妹達は二人に嫌われるのが怖いだけ。
ミサカは負の感情を拾い易いように作られたからどんな事を隠そうとしても無駄だよ?これ以上隠すつもりならミサカが代わりに全部喋ってあげる。
さあどうするの?今まで二人の側に居た10032号が全てを話すのか、それともこのままミサカに任せるのか」
「…」
番外個体の言葉に俯く御坂妹。そんな彼女をただ黙って次の言葉を待つ三人。
少しの間があって御坂妹は顔を上げる。そして真っ直ぐに二人を見つめる。
少しの間があって御坂妹は顔を上げる。そして真っ直ぐに二人を見つめる。
「分かりました。ではミサカがお話します、とミサカは今まで隠していた事を話す決意をします」
「そう、ならミサカは少し外に出てるね。…ああ、少しでも嘘を付いたらすぐに乱入するからそのつもりで」
「そう、ならミサカは少し外に出てるね。…ああ、少しでも嘘を付いたらすぐに乱入するからそのつもりで」
番外個体の言葉にコクリと頷く御坂妹。その動作を満足そうに見つめると彼女は部屋を後にする。
御坂妹は二人を椅子に座らせ、自分もまた椅子に座る。そして抱えていたものをポツポツと語りだす。
御坂妹は二人を椅子に座らせ、自分もまた椅子に座る。そして抱えていたものをポツポツと語りだす。
それは二人が付き合い始め、自分の想いが叶わないと知った頃のこと。妹達は何をすればいいのか見失っていた。
そんな時ふと気付いた。二人が自分と会う度、不自然だった事に。
作ったような笑顔。はぐらかすような言動。妹達はそれがとても悲しいと思った。
そして同時に『二人に限ってそんな事は無い』と思いつつも、自分達がいる所為で二人を苦しめているのではないかと思ってしまった。
ならせめて、二人を支えていこうと、二人が幸せである事を自分たちの幸せにしようと心に決めた。
その時から今までやってきた事に何一つ嘘は無い。ただ二人に笑っていて欲しいと思いながら行動した。
そんな時ふと気付いた。二人が自分と会う度、不自然だった事に。
作ったような笑顔。はぐらかすような言動。妹達はそれがとても悲しいと思った。
そして同時に『二人に限ってそんな事は無い』と思いつつも、自分達がいる所為で二人を苦しめているのではないかと思ってしまった。
ならせめて、二人を支えていこうと、二人が幸せである事を自分たちの幸せにしようと心に決めた。
その時から今までやってきた事に何一つ嘘は無い。ただ二人に笑っていて欲しいと思いながら行動した。
だから初めて目の前で仲良く手を繋いだ光景を見た時は、自分達の前でも幸せでいてくれるんだと思い涙が出た。
この部屋で『大好きだからね』と聞いたときは本当に嬉しかった。こんな自分を好いてくれる事に…側にいてもいいという許しをもらった気がした。
それからは今まで以上に二人と過ごす時間は楽しく感じられた。その時だけはそんな不安を忘れ確かな幸せを感じていた。
でも、今回の一件でまた事件に巻き込んでしまい迷惑を掛けてしまった。
そう思った時、今まで抱いていた不安が一気に膨れ上がり思考を覆い尽くした…妹達がいる以上、二人は幸せにはならないんだ…と。
だからもう二人の前から居なくなろうと思っていたのだと…。
この部屋で『大好きだからね』と聞いたときは本当に嬉しかった。こんな自分を好いてくれる事に…側にいてもいいという許しをもらった気がした。
それからは今まで以上に二人と過ごす時間は楽しく感じられた。その時だけはそんな不安を忘れ確かな幸せを感じていた。
でも、今回の一件でまた事件に巻き込んでしまい迷惑を掛けてしまった。
そう思った時、今まで抱いていた不安が一気に膨れ上がり思考を覆い尽くした…妹達がいる以上、二人は幸せにはならないんだ…と。
だからもう二人の前から居なくなろうと思っていたのだと…。
そこまで話すと御坂妹は『これが妹達が抱えていたものです』と言う。今までずっと黙って聞いていた二人だが、美琴が口を開く。
「それで妹達は何処に行くつもりだったの?」
「国外の施設へ移動するつもりでした、とミサカは先程の番外個体とのやり取りを思い出しながら答えます」
「…馬鹿ね、そんな事をして私達が喜ぶとでも思ったの?」
「ですが同じ事があればまた巻き込んでしまいます、それにミサカ達はその事に耐えられないのです、とミサカは苦しい胸の内を明かします」
「国外の施設へ移動するつもりでした、とミサカは先程の番外個体とのやり取りを思い出しながら答えます」
「…馬鹿ね、そんな事をして私達が喜ぶとでも思ったの?」
「ですが同じ事があればまた巻き込んでしまいます、それにミサカ達はその事に耐えられないのです、とミサカは苦しい胸の内を明かします」
その言葉に美琴はハッとする。そしてあの時を思い出す。
『――――これ以上辛い思いをさせてしまうのは、妹達にとって、とても耐え難い事なのです』
あの言葉は妹達の悩みの一端ではなかったのかと美琴は思う。…もし自分があの時それに気づいてあげられればここまで追い詰める事は無かったのかもしれない。
そう思うと急に悔しさと申し訳なさがこみ上げる。
『――――これ以上辛い思いをさせてしまうのは、妹達にとって、とても耐え難い事なのです』
あの言葉は妹達の悩みの一端ではなかったのかと美琴は思う。…もし自分があの時それに気づいてあげられればここまで追い詰める事は無かったのかもしれない。
そう思うと急に悔しさと申し訳なさがこみ上げる。
(私は自分の悩みや不安ばかりをぶつけて、全然この子達を見ていなかった…本当姉失格ね…でも…)
目の前の御坂妹を見る。あの明るく振舞っていた時のような面影は無く、心なしか肩が小さく震えているようにも見える。
彼女のこんな小さな姿を見たのは初めてだった。
美琴は少しだけ考える…ここまで追い込まれてしまった妹達をどうすれば安心させられるのか?
彼女のこんな小さな姿を見たのは初めてだった。
美琴は少しだけ考える…ここまで追い込まれてしまった妹達をどうすれば安心させられるのか?
(そっか、だからこの子達はあの日を使ったのか…本当、頭がいいんだか悪いんだか…でも『今』の私はそんな回りくどい事はしない)
美琴は流星の日に自分がされた事を思い出してクスリと笑う。昔の自分だったらきっと出来なかった。でも今は出来る。
先に助けてもらったから、揺るぎない想いを受け取り、信じる事が出来たから。
そして美琴は御坂妹に言葉を掛け始める。
先に助けてもらったから、揺るぎない想いを受け取り、信じる事が出来たから。
そして美琴は御坂妹に言葉を掛け始める。
「迷惑だなんて思わないわよ、ただこうなる前に相談して欲しかった。気付いてあげられなかった私が言っても説得力無いけどね。
それに言ったでしょ、妹達は大切な妹なんだから絶対守るって」
「…」
「妹達は私に『妹達の幸せを思ってくれるのなら笑ってください』って言ったわよね?私も同じ、妹達が笑ってないと幸せになんてなれない。
『私達』は誰か一人欠けたら駄目なの。だから皆で幸せになりたいと思うなら…おいで」
それに言ったでしょ、妹達は大切な妹なんだから絶対守るって」
「…」
「妹達は私に『妹達の幸せを思ってくれるのなら笑ってください』って言ったわよね?私も同じ、妹達が笑ってないと幸せになんてなれない。
『私達』は誰か一人欠けたら駄目なの。だから皆で幸せになりたいと思うなら…おいで」
椅子から立ち上がり両手を広げる美琴。笑顔を浮べ、怯える子供を優しく呼ぶように…
その姿に美琴と当麻を交互に見て迷いを見せる御坂妹。今すぐにでも飛び込みたい、でも飛び込んでしまえばまた迷惑を掛けてしまう事になる。
その仕草からそんな御坂妹の葛藤を読み取った当麻が口を開く。
その姿に美琴と当麻を交互に見て迷いを見せる御坂妹。今すぐにでも飛び込みたい、でも飛び込んでしまえばまた迷惑を掛けてしまう事になる。
その仕草からそんな御坂妹の葛藤を読み取った当麻が口を開く。
「難しい事は考えなくていい。今の自分に素直になればいいんだよ」
「!」
「!」
当麻の一言を聞いた瞬間に御坂妹は美琴に飛びつく。そして美琴はしっかりと受け止め強く抱きしめる。
「妹達の居場所はここだから、妹達の想いが変わらないように、私の想いも決して変わる事は無いわ。だからもう自分を責めるのはやめなさい」
「…ぅ…グスッ…」
「…ぅ…グスッ…」
ずっとここに居てもいいんだと教えるように強く、強く抱きしめる美琴。御坂妹はコクコクと頷きながら涙を流す。
「あ~よしよし、ごめんね今まで散々悩ませちゃって。これからはちゃんと相談してよね。いつでも力になるから」
「そういうこった、困った事があったらお互い様、いつでも助けに行くぜ?」
「そういうこった、困った事があったらお互い様、いつでも助けに行くぜ?」
立ち上がった当麻は御坂妹の背中側に回り込むと美琴の腕の中で泣き続ける彼女の頭を撫で始める。
「ちょっとー、あんまり目の前でそんな事しないでくれる?」
「これくらい良いだろ?それになんかほっとけないんだよ」
「…グスッ…」
「…もう!本当しょうがないわね…」
「これくらい良いだろ?それになんかほっとけないんだよ」
「…グスッ…」
「…もう!本当しょうがないわね…」
この男は…と美琴は思い当麻をジト目で見るが、腕の中でしがみ付き、嗚咽を漏らす御坂妹を見て、小さく息を吐くとまあいいかと顔を緩ませる。その時…
「もう終わったみたいだね、折角だからミサカも混ぜてよ!」
バーン!っと勢い良く扉が開き突然部屋に入ってきた番外個体。そのまま近づき美琴と当麻の肩をガバっと抱きかかえる。
「ちょっと!いきなり何すんのよ!?」
「何って歓喜の抱擁って奴?んーこの抱き心地は最高だね!」
「く、くるしいです、とミサカはお姉様とお義兄様に挟まれながら息がしづらいことを告げます…」
「何って歓喜の抱擁って奴?んーこの抱き心地は最高だね!」
「く、くるしいです、とミサカはお姉様とお義兄様に挟まれながら息がしづらいことを告げます…」
もぞもぞと動く三人を引き寄せるように腕に力を込める番外個体。すると腕の中の三人は更に密着する。
「わ!ちょっとくっ付け過ぎると色々ヤバイ!離してくれ~」
「んん~?何がやばいのかな~?…きゃはは!!そういう事か!10032号は恥ずかしくてたまんないね!あ、それとも嬉しい?」
「んん~?何がやばいのかな~?…きゃはは!!そういう事か!10032号は恥ずかしくてたまんないね!あ、それとも嬉しい?」
当麻は逃げようとするが、思いの他番外個体の力が強く抜け出せない。
そして10032号の思考を読み取った番外個体が悪乗りし、ニヤニヤしながら腕の力を更に強くする。
そして10032号の思考を読み取った番外個体が悪乗りし、ニヤニヤしながら腕の力を更に強くする。
「な、何の事ですか?とミサカはシラを切ってみます」
「…!ちょっと離れなさいよ!あんた達どさくさに紛れて当麻にくっ付くな―――!!」
「…!ちょっと離れなさいよ!あんた達どさくさに紛れて当麻にくっ付くな―――!!」
御坂妹の態度とその状況に気付いた美琴は顔を赤くして抗議する。
「またこのパターンか!?あーもう幸せだー!!」
「幸せ!?当麻!妹に抱きついて幸せってどういうこと!?」
「へ!?だっていつも不幸って言うと怒るじゃねぇーか!?」
「時と場合ってのがあるでしょうが!」
「…お義兄様はミサカに抱きつくと不幸なのですね、とミサカは落ち込みます」
「あ~あ、お義兄様の酷さは天下一品だね、これはミサカも落ち込むよ」
「幸せ!?当麻!妹に抱きついて幸せってどういうこと!?」
「へ!?だっていつも不幸って言うと怒るじゃねぇーか!?」
「時と場合ってのがあるでしょうが!」
「…お義兄様はミサカに抱きつくと不幸なのですね、とミサカは落ち込みます」
「あ~あ、お義兄様の酷さは天下一品だね、これはミサカも落ち込むよ」
思わず放った当麻の言葉に敏感に反応する三人。
美琴は顔を真っ赤にして怒り、妹達はガックリと肩を落とす…が、顔は少し笑っている。どうやらからかっているだけのようだ。
美琴は顔を真っ赤にして怒り、妹達はガックリと肩を落とす…が、顔は少し笑っている。どうやらからかっているだけのようだ。
「何でいつも俺ばっかりこんな扱いなの!?もーなんでも良いから離してくれー!!」
「いつまで経っても乙女心を理解しようとしないからそんな事になるのよ…馬鹿当麻」
「あ、そうそう今海外の妹達からの気持ちが届いたんだけど聞いてみる?」
「いつまで経っても乙女心を理解しようとしないからそんな事になるのよ…馬鹿当麻」
「あ、そうそう今海外の妹達からの気持ちが届いたんだけど聞いてみる?」
三人を解放しながら番外個体はニコニコとした顔でそう告げる。
美琴と当麻は突然の言葉にキョトンとした顔でその言葉に頷く。
美琴と当麻は突然の言葉にキョトンとした顔でその言葉に頷く。
「学園都市居残り組みばかりいい思いしてズルイ!って。さっきから嫉妬に燃える感情がミサカに流れ込んできてるよ。
それと…ミサカ達を受け入れてくれてありがとう、これからもずっと大好きだよ。だってさ」
「そ、そうなんだ…ありがとうって伝えておいて」
「おっけー、それで二人に1ついい事教えてあげる。妹達は…」
「…!!!駄目です!それは言っては駄目です!とミサカは番外個体の暴挙を阻止します!」
「きゃはは!いいじゃん別に、聞かれてまずい事じゃないんだからさ!っていうか二人に聞いて欲しいんでしょ?」
それと…ミサカ達を受け入れてくれてありがとう、これからもずっと大好きだよ。だってさ」
「そ、そうなんだ…ありがとうって伝えておいて」
「おっけー、それで二人に1ついい事教えてあげる。妹達は…」
「…!!!駄目です!それは言っては駄目です!とミサカは番外個体の暴挙を阻止します!」
「きゃはは!いいじゃん別に、聞かれてまずい事じゃないんだからさ!っていうか二人に聞いて欲しいんでしょ?」
美琴と当麻は先ほどまでの重たい空気が一変し、バタバタ騒ぐ二人に唖然としている。
番外個体はそんな二人を見ながら、飛び掛かってきた御坂妹を華麗に交わし、ニヤニヤしながら言葉を続ける。
番外個体はそんな二人を見ながら、飛び掛かってきた御坂妹を華麗に交わし、ニヤニヤしながら言葉を続ける。
「妹達は今最高に幸せなんだって!でも恥ずかしくてとてもとても言えないんだって!!」
そう言い残すと番外個体は部屋を飛び出した。
「…あの野郎(番外個体)全部吐き出して逃げやがったな、とミサカは心が丸裸にされてしまったことに恥ずかしがりながらも毒づきます」
「…ふふ、ようやく調子を取り戻したみたいね。もう大丈夫?」
「はい、ではこれからもよろしくお願いします、とミサカはお二人に頭を下げつつ答えます」
「…ふふ、ようやく調子を取り戻したみたいね。もう大丈夫?」
「はい、ではこれからもよろしくお願いします、とミサカはお二人に頭を下げつつ答えます」
そう答える御坂妹の顔はスッキリしていた。ペコリと頭を一度下げると二人を交互に見る。
その視線は二人をしっかりと見つめ、逸らされる事は無かった。
その視線は二人をしっかりと見つめ、逸らされる事は無かった。
「これで今回も一件落着か?相変わらず上条さんは空気な訳ですが無事解決して安心しましたよ」
「空気って…はぁ…当麻はいつまで経っても当麻よね」
「それがお義兄様らしくて良いのでは?とミサカは相変わらずなお義兄様に呆れつつ同意します」
「??」
「空気って…はぁ…当麻はいつまで経っても当麻よね」
「それがお義兄様らしくて良いのでは?とミサカは相変わらずなお義兄様に呆れつつ同意します」
「??」
何の事か全く分かっていない当麻を見て二人は溜息を付く。一瞬呆れたような顔をするが、二人は顔を合わせるとくすくすと笑い出す。
――丁度その時、部屋のドアがまたしてもバーン!と勢いよく開けられた。三人はその音に驚き、入り口を見るとそこには…
――丁度その時、部屋のドアがまたしてもバーン!と勢いよく開けられた。三人はその音に驚き、入り口を見るとそこには…
「お姉様ー!助けてくれてありがとう!ってミサカはミサカは命の恩人に勢い良く飛びついてみたりー!!」
言い終わる前に電光石火の勢いで打ち止めが美琴に飛びつき体に頬ずりを始める。
美琴が視線を打ち止めからドアに向けるとそこには…
美琴が視線を打ち止めからドアに向けるとそこには…
「クソガキィ!調子に乗ってンじゃねェ!さっきまで寝てたンだから少しは落ち着きやがれ!」
「全く、手間かけさせやがって、とミサカ10039号は番外個体を引きずりながらも部屋に入ります」
「お久しぶりです、とミサカ19090号はお義兄様とお姉様に挨拶をします」
「…やっほう」
「全く、手間かけさせやがって、とミサカ10039号は番外個体を引きずりながらも部屋に入ります」
「お久しぶりです、とミサカ19090号はお義兄様とお姉様に挨拶をします」
「…やっほう」
続いて部屋に入ってきたのは一方通行、10032号、19090号、そして何故か妹達の二人に両脇を抱えられ、ズルズルと引きずられている番外個体だ。
「なんかぞろぞろと来たわね、っていうか番外個体は一体どうしたの?」
「すぐそこで交通事故に遭っちゃった」
「テメエが勝手に体当たりしてきたンだろうが!」
「すぐそこで交通事故に遭っちゃった」
「テメエが勝手に体当たりしてきたンだろうが!」
先ほど部屋を飛び出した番外個体は廊下を走っていたのだが、角から出てきた一方通行とぶつかり、反射によって弾き飛ばされて壁にぶつかってしまったのだ。
いつもなら電磁波の反射によって気付くのだが、先ほど自分で言った言葉に気をとられすぎて気付かなかったらしい。
いつもなら電磁波の反射によって気付くのだが、先ほど自分で言った言葉に気をとられすぎて気付かなかったらしい。
「自業自得ですね、とミサカ10032号は番外個体の間抜けっぷりに笑いを堪え切れません」
「まあまあそんな事はどうでもいいですから席に着いててください、とミサカ10039号は促しつつも椅子が足りないので調達に行きます」
「面倒なので全員お茶でいいですね?とミサカ19090号はせっせと準備を始めます」
「えージュースがいいってミサカはミサカはぶーたれてみたり」
「まあまあそんな事はどうでもいいですから席に着いててください、とミサカ10039号は促しつつも椅子が足りないので調達に行きます」
「面倒なので全員お茶でいいですね?とミサカ19090号はせっせと準備を始めます」
「えージュースがいいってミサカはミサカはぶーたれてみたり」
鼻で笑う御坂妹、早速おもてなしの準備に動く10039&19090号、そして打ち止めの我侭炸裂といつものにぎやかさが戻ってきた。
そんな光景を他所に、当麻は片手を少し挙げて一方通行に話しかける。
そんな光景を他所に、当麻は片手を少し挙げて一方通行に話しかける。
「おー、一方通行。ありがとなこいつ等を助けてくれて」
「それはこっちの台詞だァ、礼を言うぜ超電磁砲に三下ァ。テメエ等が頑張ったおかげでコイツを失わずに済ンだんだからなァ」
「…アンタに礼を言われる日が来るとはね、でもこれは当然の結果よ。皆が頑張ったんだから」
「それはこっちの台詞だァ、礼を言うぜ超電磁砲に三下ァ。テメエ等が頑張ったおかげでコイツを失わずに済ンだんだからなァ」
「…アンタに礼を言われる日が来るとはね、でもこれは当然の結果よ。皆が頑張ったんだから」
一方通行の礼に答える美琴だが、彼の意外な言葉にそっぽを向いた彼女の顔は少しだけ赤くなっていた。
「ところでどうしたんだ?なんか用でもあるんじゃないのか?」
「あァ、ガキが来たがってたのと、今後の事について少し話があるンだが」
「あァ、ガキが来たがってたのと、今後の事について少し話があるンだが」
それは――と続けようとした所で19090号がテーブルにお茶を並べ始め、素知らぬ顔でこう言った。
「お茶が入りましたのでどうぞ、とミサカ19090号はコップを置きつつ流れをぶった切ります」
「ジュースじゃなーい!ってミサカはミサカは下位個体の融通の利かなさに憤慨してみる!」
「うるせェクソガキィ!!」
「じゃあアナタがジュースを買ってきて!ってミサカはミサカは上目使いで懇願してみる!」
「チッ、ったく何がいいンだ」
「「「「「「 やはりコイツは…… 」」」」」」
「ジュースじゃなーい!ってミサカはミサカは下位個体の融通の利かなさに憤慨してみる!」
「うるせェクソガキィ!!」
「じゃあアナタがジュースを買ってきて!ってミサカはミサカは上目使いで懇願してみる!」
「チッ、ったく何がいいンだ」
「「「「「「 やはりコイツは…… 」」」」」」
流れをぶった切られた一方通行は何故か打ち止めを怒鳴りつけるが、結局ジュースを買いに行ってしまった。
そんな第一位の姿を見て打ち止め以外の6名は同じ事を思うのだった。
一方通行が部屋に帰ってくるとテーブルを囲うように全員が椅子に座っていた…
と思ったら打ち止めだけは美琴に寄りかかるように彼女の膝の上座って、足をパタパタさせていた。
そんな第一位の姿を見て打ち止め以外の6名は同じ事を思うのだった。
一方通行が部屋に帰ってくるとテーブルを囲うように全員が椅子に座っていた…
と思ったら打ち止めだけは美琴に寄りかかるように彼女の膝の上座って、足をパタパタさせていた。
「ンだァ?この異様な光景は…」
部屋に入った一方通行の第一声。言われて見れば当麻以外全て『御坂』なのだ。
それを知っているものだからこそこのシュールな光景に圧倒されるのだろう。彼は席に着くと打ち止めにジュースを渡し、本題に入る。
それを知っているものだからこそこのシュールな光景に圧倒されるのだろう。彼は席に着くと打ち止めにジュースを渡し、本題に入る。
「ンで今後の事なンだが、どうする?」
「どうするって言われても…どうすんの?」
「要は今後打ち止めが攫われたらどうするって事だよね?簡単簡単、一方通行が常にくっ付いていればいいの」
「ぶふー!て、テメェ!なンつー事言いやがンだ!」
「!このロリコンが!部屋を汚さないでください!!とミサカ19090号は憤慨します!」
「な!?テメェ!今なンつった!?」
「どうするって言われても…どうすんの?」
「要は今後打ち止めが攫われたらどうするって事だよね?簡単簡単、一方通行が常にくっ付いていればいいの」
「ぶふー!て、テメェ!なンつー事言いやがンだ!」
「!このロリコンが!部屋を汚さないでください!!とミサカ19090号は憤慨します!」
「な!?テメェ!今なンつった!?」
さらっと放たれた言葉にちゃっかり買ってきたコーヒーを噴出す一方通行。
それを見た19090号はロリコン発言をした後、何かを言う一方通行を完全に無視して、ブツブツ言いながら雑巾で綺麗に拭き取っていた。
そんな彼女を横目に10039号が口を開く。
それを見た19090号はロリコン発言をした後、何かを言う一方通行を完全に無視して、ブツブツ言いながら雑巾で綺麗に拭き取っていた。
そんな彼女を横目に10039号が口を開く。
「なるほど、それは盲点でした、とミサカ10039号は番外個体の提案にノッてみます」
「えーミサカはやだー、ってミサカはミサカは提案を却下してみる」
「…」
「えーミサカはやだー、ってミサカはミサカは提案を却下してみる」
「…」
番外個体の意見に同意した10039号だが当の本人である打ち止めが即拒否。
一方通行はその言葉にしょんぼりと肩を落とすが、そんな彼を妹達はニヤニヤしながら見ている。
また始まったと言わんばかりに当麻と美琴は揃って溜息を付くが、このままでは話は進まないので当麻が『それはそうと』と切り出した。
一方通行はその言葉にしょんぼりと肩を落とすが、そんな彼を妹達はニヤニヤしながら見ている。
また始まったと言わんばかりに当麻と美琴は揃って溜息を付くが、このままでは話は進まないので当麻が『それはそうと』と切り出した。
「今回はどうやって打ち止めの居場所を知ったんだ?」
「ああ、それはこれ」
「ああ、それはこれ」
当麻の疑問を聞いた番外個体がポケットから小さな端末を取り出す。
「打ち止めの持ってる携帯電話のGPS機能を使って、こいつで場所を特定って感じにね」
「なるほどな、じゃあ簡単だ。それぞれの携帯のアドレスを交換すればすぐ連絡できるだろ」
「それもそうね。それじゃ早速…あれ?そういえば私の携帯って何処いったの?」
「なるほどな、じゃあ簡単だ。それぞれの携帯のアドレスを交換すればすぐ連絡できるだろ」
「それもそうね。それじゃ早速…あれ?そういえば私の携帯って何処いったの?」
スカートのポケットに手を入て携帯を取り出そうとした美琴だが、携帯電話を持っていないことに気付く。
すると番外個体がポケットから携帯電話を取り出し、忘れてたと言いながら美琴に返す。
すると番外個体がポケットから携帯電話を取り出し、忘れてたと言いながら美琴に返す。
「…よくよく考えたら…あんた中見て無いわよね?」
あの時はとにかく助ける事に頭が行っていた為、携帯を見られるということを失念していた。
もし中を見られたら…そんな不安が頭をよぎる。
もし中を見られたら…そんな不安が頭をよぎる。
「さすがにそんな事しないよ、…でもごめん、画面は通話切った時に見ちゃった」
「!!!!」
「ちなみにミサカ達も番外個体から映像が送られてきたので知っています、とミサカ10039号は懇切丁寧に説明しました」
「み、見てるこっちが恥ずかしくなりました、とミサカ19090号はツーショットの画面を思い出し頬を赤らめてみます」
「あんなに密着し」「わー!うわー!もうそれ以上言わなくていいから!!」
「!!!!」
「ちなみにミサカ達も番外個体から映像が送られてきたので知っています、とミサカ10039号は懇切丁寧に説明しました」
「み、見てるこっちが恥ずかしくなりました、とミサカ19090号はツーショットの画面を思い出し頬を赤らめてみます」
「あんなに密着し」「わー!うわー!もうそれ以上言わなくていいから!!」
待ち受け画面を見られ、更に妹達全員が知ってしまった事に真っ赤になった美琴はバタバタと両手を振り、10032号の言葉を遮る。
反面、見られたのが待ち受け画面だけで良かったと内心安堵する彼女であった。もしメールなんか見られたら…
そんな事を考えていると、当麻が呆れたような声でこう言った。
反面、見られたのが待ち受け画面だけで良かったと内心安堵する彼女であった。もしメールなんか見られたら…
そんな事を考えていると、当麻が呆れたような声でこう言った。
「今更隠す事でもねーだろ?」
「それでも恥ずかしいのよ!まあいいわ…んじゃアドレス教えてよ…」
「それでも恥ずかしいのよ!まあいいわ…んじゃアドレス教えてよ…」
何でアンタはそういうこと平気で言うのよ、と続けながらも番外個体に催促する美琴。
ところが番外個体は少し困ったような顔を浮かべ、『あ~』と言い、左手で頭をガシガシと掻く。そして
ところが番外個体は少し困ったような顔を浮かべ、『あ~』と言い、左手で頭をガシガシと掻く。そして
「ミサカは携帯電話なんか持ってないよ?必要性が無かったし維持できる余裕は無いからね」
「…それじゃ困るから、買ったげるわよ。後で行きましょ」
「本当に?…あー、やっぱやめとく」
「へ?何でよ?お金の事なら気にしなくていいわよ?」
「そうじゃなくて『またお前等ばっかり!』って。今ミサカネットワークがものすごい事になってるからね」
「最近多いよねってミサカはミサカは下位個体の暴れっぷりに頭が痛くなってきたり…」
「…それじゃ困るから、買ったげるわよ。後で行きましょ」
「本当に?…あー、やっぱやめとく」
「へ?何でよ?お金の事なら気にしなくていいわよ?」
「そうじゃなくて『またお前等ばっかり!』って。今ミサカネットワークがものすごい事になってるからね」
「最近多いよねってミサカはミサカは下位個体の暴れっぷりに頭が痛くなってきたり…」
首を横に振りながらネットワーク内の混乱を語る番外個体。打ち止めもうんうんと頷く。
美琴はそんな彼女達を見て、携帯電話を番外個体に買い与える事を断念する。
美琴はそんな彼女達を見て、携帯電話を番外個体に買い与える事を断念する。
「…なんだか大変ね…じゃあ一方通行に買ってもらうのはどう?」
「あァ、構わねェよ。今後こういうことがあったら困るしなァ」
「あァ、構わねェよ。今後こういうことがあったら困るしなァ」
美琴の提案に迷う事無く頷く一方通行。ミサカネットワーク内でもあのロリコンならおっけーという結論が出る。
「なら決まりだね、携帯電話手に入れたらアドレス送るよ」
「分かった。でも1つ気になる事があるんだけど、打ち止めの携帯が捨てられた場合はどうする?」
「分かった。でも1つ気になる事があるんだけど、打ち止めの携帯が捨てられた場合はどうする?」
当麻の疑問に全員が黙る。どうやら打つ手が無いらしい。
「おいおい、今回ってかなり運が良かった…?」
「一応命令が飛んだ時に分かるんだけど、遠くに連れて行かれると辛いかな」
「では発信機等の小型の追跡装置を衣服などに身につけるのはどうでしょう?とミサカ10032号は提案します」
「それしかねェな。それもついでに俺が用意しといてやる」
「今日は随分太っ腹だね!ってミサカはミサカはアナタの言動に驚いてみる!」
「まァな、今回は気付てやれなかったからなァ…、今後は迅速に動けるようにしてェンだよ」
「一応命令が飛んだ時に分かるんだけど、遠くに連れて行かれると辛いかな」
「では発信機等の小型の追跡装置を衣服などに身につけるのはどうでしょう?とミサカ10032号は提案します」
「それしかねェな。それもついでに俺が用意しといてやる」
「今日は随分太っ腹だね!ってミサカはミサカはアナタの言動に驚いてみる!」
「まァな、今回は気付てやれなかったからなァ…、今後は迅速に動けるようにしてェンだよ」
その言葉には重みがあった。普段一緒に行動する事が多いだけに、一番気付くのが遅れてしまった事を悔いているようだった。
だが次はそうはさせない、一番最初に助けに行くのは俺だ。という気持ちが溢れていた。
その真剣な表情から一方通行の想いを感じた妹達は内心で喜びながらも纏めに入る。
だが次はそうはさせない、一番最初に助けに行くのは俺だ。という気持ちが溢れていた。
その真剣な表情から一方通行の想いを感じた妹達は内心で喜びながらも纏めに入る。
「では、今後は打ち止めに異常が見られた場合、番外個体に連絡。番外個体は一方通行、お姉様、お義兄様へ連絡を行う
という流れでよろしいですか?とミサカ10032号は確認を取ります」
「相変わらずミサカ達は役立たずですが、よろしくお願いします。とミサカ10039号はしょんぼりしながらもお願いをします」
「ンなこたァねェよ、テメエ等が演算補助してくれなかったら助けられなかったンだぜ?」
「結局ここに居る人間の一人でも欠けたら駄目って事だな。…あれ?俺いなくてもいいじゃん」
「当麻は私達の帰る場所になってくれればいいの。それと相手が悪ければ当麻の出番だからね?」
「三下はここぞという時の切り札なンだよ」
「はあ…?そうなんですかね?」
「ンじゃ、早速調達に行きますかァ。行くぞ、打ち止め、番外個体ォ。
…そォだ、あのクソッたれの目的は解らなかったンだけどよォ、とりあえず『制裁』加えといたぜ」
という流れでよろしいですか?とミサカ10032号は確認を取ります」
「相変わらずミサカ達は役立たずですが、よろしくお願いします。とミサカ10039号はしょんぼりしながらもお願いをします」
「ンなこたァねェよ、テメエ等が演算補助してくれなかったら助けられなかったンだぜ?」
「結局ここに居る人間の一人でも欠けたら駄目って事だな。…あれ?俺いなくてもいいじゃん」
「当麻は私達の帰る場所になってくれればいいの。それと相手が悪ければ当麻の出番だからね?」
「三下はここぞという時の切り札なンだよ」
「はあ…?そうなんですかね?」
「ンじゃ、早速調達に行きますかァ。行くぞ、打ち止め、番外個体ォ。
…そォだ、あのクソッたれの目的は解らなかったンだけどよォ、とりあえず『制裁』加えといたぜ」
一方通行は去り際に物騒な事を呟くと部屋から出て行く。
そして打ち止めと番外個体も一度だけ頭を下げると一方通行に付いて行った。
残された5人は一方通行の『制裁』が気になったが、冷たく放たれたその言葉が恐ろしかったので聞かなかったことにした。
そして、静まり返った部屋で美琴が口を開く。
そして打ち止めと番外個体も一度だけ頭を下げると一方通行に付いて行った。
残された5人は一方通行の『制裁』が気になったが、冷たく放たれたその言葉が恐ろしかったので聞かなかったことにした。
そして、静まり返った部屋で美琴が口を開く。
「私達もそろそろ戻る?」
「そうしますか、一応あの医者に見てもらってから帰るか?もう大丈夫っぽく見えるけど」
「もうすっかり大丈夫よ。折角だし皆でどっか遊びに行く?」
「いえ、今日は色々あって疲れていますのでミサカ達は残ります、とミサカ10032号は気遣いのできる妹である事をアピールします」
「そう?まああんた達がそう言うなら無理強いはしないけど」
「はい、それでは本日はありがとうございました、とミサカ10032号はお礼の言葉を述べつつ二人を見送ります」
「それじゃあまたね!あ、今度黙ってたら承知しないからねー」
「そうしますか、一応あの医者に見てもらってから帰るか?もう大丈夫っぽく見えるけど」
「もうすっかり大丈夫よ。折角だし皆でどっか遊びに行く?」
「いえ、今日は色々あって疲れていますのでミサカ達は残ります、とミサカ10032号は気遣いのできる妹である事をアピールします」
「そう?まああんた達がそう言うなら無理強いはしないけど」
「はい、それでは本日はありがとうございました、とミサカ10032号はお礼の言葉を述べつつ二人を見送ります」
「それじゃあまたね!あ、今度黙ってたら承知しないからねー」
そう言うと美琴は当麻の手を取りドアに向かう。二人は部屋を出る直前に振り返る。『またな』と当麻が言うと、
三人はニコッと精一杯の笑顔を浮べる。それを見た当麻と美琴も笑顔で返し、部屋を後にするのだった。
三人はニコッと精一杯の笑顔を浮べる。それを見た当麻と美琴も笑顔で返し、部屋を後にするのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
病院からの帰り道、例の医師から帰宅の許可を得た美琴と当麻は街の中を歩きながら激動の一日を振り返っていた。
「それにしてもあいつ等があんな事抱えてたなんてな~、全くそんな素振りは無かったんだが…」
「あの子達らしいわね。でもきっと分かってくれたから大丈夫」
「そうだな。…あいつ等は美琴と同じだったんだな」
「…そうだね」
「あの子達らしいわね。でもきっと分かってくれたから大丈夫」
「そうだな。…あいつ等は美琴と同じだったんだな」
「…そうだね」
それはかつて美琴がDNAマップを提供した所為で彼女達を苦しめたと、それなら自分を犠牲にしてでも救おうと思っていた時と同じだったと彼は言う。
互いに願ったのは相手の幸せ。望んだのは皆が笑っていられる世界。それは同じだったはずなのに、言葉に出来なかった事でお互いが傷ついてしまった。
互いに願ったのは相手の幸せ。望んだのは皆が笑っていられる世界。それは同じだったはずなのに、言葉に出来なかった事でお互いが傷ついてしまった。
「そう考えるとあの子達に先に動かれたのは悔しいわね…」
「仕方ねーんじゃねーか?美琴はそこに俺と付き合うことで更に負い目を感じてたわけだし。それに、もしこの立場が逆だったとしたら美琴が先に動いてたと思うぜ?」
「それは…そうかもしれないけど、当麻とあの子が付き合ってる所なんて考えたくないわ…」
「仕方ねーんじゃねーか?美琴はそこに俺と付き合うことで更に負い目を感じてたわけだし。それに、もしこの立場が逆だったとしたら美琴が先に動いてたと思うぜ?」
「それは…そうかもしれないけど、当麻とあの子が付き合ってる所なんて考えたくないわ…」
俯きながらそう語る美琴を見て思わず顔が緩む当麻。そして少し落ち込んでいる彼女に声を掛ける。
「助けるのが遅くなっちまったけど、これで全部解決したんだ。心置きなく笑って過ごせる日々が来るんだぜ?だからそんな顔すんなよ」
「うん…そうだね」
「うん…そうだね」
右手で頭をぽんぽんっとすると、美琴は気恥ずかしそうに顔を上げる。当麻は右手を頭から下ろし、美琴と手を繋ぐと思い出したように口を開く。
「そういやさ、気になった事があるんだけど、番外個体って負の感情を読み取りやすく作られたって聞いたけど、
そんな感じじゃ無かったよな。それどころか妹達を支えてたように感じたが…」
そんな感じじゃ無かったよな。それどころか妹達を支えてたように感じたが…」
単純に考えれば妹達の負の感情で動けばあんな行動にはならない筈だ。そんな当麻の疑問に『それは多分』と美琴が答える。
「あの子は負の感情をいつも見てるからこそ小さな希望や幸せを大きく感じられるんじゃないかな?だからその想いを大切にしたいと思ったんだと私は思う」
その結果が妹達を支える事に繋がったんだと、番外個体は負の象徴でありながら、妹達の本心の塊なのだと美琴は続ける。
「なるほど、それならあの行動は納得できるな」
「ただそう考えると、あの子達がどれだけ窮地に立たされてたのか再認識させられるわね…」
「ただそう考えると、あの子達がどれだけ窮地に立たされてたのか再認識させられるわね…」
打ち止めを助ける時の事を思い出しながら美琴はそう呟く。あの時の番外個体は全ての感情を殺したかのように冷たい態度だった。
絶望の果てに選ばざるを得なかった決断。そんな所まで似てるなぁと美琴はあの日の自分、あの橋の上での事を思い出し笑みを零す。
絶望の果てに選ばざるを得なかった決断。そんな所まで似てるなぁと美琴はあの日の自分、あの橋の上での事を思い出し笑みを零す。
「本当に当麻と出会えてよかったわ、ありがとね。私達を救ってくれて」
「なんだよ突然?」
「当麻やあの子達と出会えて、こうやって支えあっていくのっていいなぁ~って思っただけよ!」
「なんだよ突然?」
「当麻やあの子達と出会えて、こうやって支えあっていくのっていいなぁ~って思っただけよ!」
美琴はそう言って笑顔を見せると当麻の右腕に抱きつく。当麻は少し恥ずかしそうに左手の人差し指で頬を掻くと、
「俺の方こそ…一緒に居てくれてありがとな」
短く言う当麻だが、記憶を失った自分を好きになってくれて、そしていつも側に居てくれる美琴に感謝していた。
その事を感じ取った美琴は『えへへ』と言うと抱きしめる力を強くする。
…とその時、急に強力な力を感じ、美琴はハッと顔を上げる。手を繋いでいたら気付かなかっただろうが、腕に抱きついていたため感じる事が出来たようだ。
誰だか分かった彼女は当麻から離れ放電する。するとその力の持ち主がとんでもない速度で接近してくるのを感じた。
当麻は突然の行動に『どうした?』と言うが、その答えはすぐに現れた。
その事を感じ取った美琴は『えへへ』と言うと抱きしめる力を強くする。
…とその時、急に強力な力を感じ、美琴はハッと顔を上げる。手を繋いでいたら気付かなかっただろうが、腕に抱きついていたため感じる事が出来たようだ。
誰だか分かった彼女は当麻から離れ放電する。するとその力の持ち主がとんでもない速度で接近してくるのを感じた。
当麻は突然の行動に『どうした?』と言うが、その答えはすぐに現れた。
「やっほう、また会ったね。ちょっと立て込んでるからとりあえずアドレスだけ教えて。後でこっちからも送るから」
「番外個体?なんかあったのか!?」
「いいからいいから!早く教えて!第一位に見つかっちゃうから!」
「はぁ!?あんた一体何やらかしたのよ?」
「ちょっとした悪戯!これ見たら分かるから早くアドレスを!」
「番外個体?なんかあったのか!?」
「いいからいいから!早く教えて!第一位に見つかっちゃうから!」
「はぁ!?あんた一体何やらかしたのよ?」
「ちょっとした悪戯!これ見たら分かるから早くアドレスを!」
真新しい携帯電話を開く番外個体。その待ち受けには…
極上の笑顔で抱きつく打ち止めを少し照れた顔で受け止めている一方通行だった。
極上の笑顔で抱きつく打ち止めを少し照れた顔で受け止めている一方通行だった。
「打ち止めと相談して不意打ち撮りしたらキレた。今追われてるから急いでるの!」
「あんた等…その悪戯癖は少し自重しなさい…」
「あんた等…その悪戯癖は少し自重しなさい…」
半ば呆れ気味の二人からアドレスを受け取ると『じゃ!』と言い残して去ろうとする番外個体。っとそこへ…
「みィ~つけたァ…覚悟は出来てンだろォなァ…スクラップの時間だぜェ!!」
「げ、見つかった!?」
「げ、見つかった!?」
番外個体の背後から打ち止めを右腕で抱えた一方通行がドス黒いオーラを放ちながら現れた。
その声に振り向いた彼女の表情は青ざめる。そして
その声に振り向いた彼女の表情は青ざめる。そして
「やっばー、じゃねお姉様、お義兄様!!」
「テメェ!待ちやがれ!」
「また会ったね、ってミーサーカーーー……」
「テメェ!待ちやがれ!」
「また会ったね、ってミーサーカーーー……」
バチィ!!っと電気を発生させ逃走する番外個体をすかさず追う一方通行。二人に気付いた打ち止めは挨拶をしようとするが、
一方通行の右腕にがっちりと掴まれて、二人の横を一瞬で通り過ぎていった。…ドップラー効果を残しつつ。
嵐のように過ぎ去った三人を唖然とした表情で見送った二人は顔を見合わせると笑い出す。
一方通行の右腕にがっちりと掴まれて、二人の横を一瞬で通り過ぎていった。…ドップラー効果を残しつつ。
嵐のように過ぎ去った三人を唖然とした表情で見送った二人は顔を見合わせると笑い出す。
…戻ってきた日常。それはとても騒がしくてドタバタとしたものだが、そこには確かに皆の笑顔がある。
でもそれは誰かが欠けてしまえば失われてしまう。それを知った『彼等』はこれからもこの幸せを大切にしようと、守っていこうと思うのだった。
でもそれは誰かが欠けてしまえば失われてしまう。それを知った『彼等』はこれからもこの幸せを大切にしようと、守っていこうと思うのだった。
――――――――
――――
…その後、番外個体からアドレスと共に一枚の画像が送られてくる事になる。
その画像には極上の笑顔で腕を伸ばし、人差し指を立てる打ち止め。
その打ち止めを少し鬱陶しそうに抱く番外個体。
その二人を囲むように、薄い笑みを浮べた三人の妹達が写っていた。
その画像には極上の笑顔で腕を伸ばし、人差し指を立てる打ち止め。
その打ち止めを少し鬱陶しそうに抱く番外個体。
その二人を囲むように、薄い笑みを浮べた三人の妹達が写っていた。