誰一人欠ける事なく
「んー!ねえ当麻、次は何処行こうか?」
昼食を済ませファミレスから出てきた二人は街に向かって歩いていた。
軽く一伸びしてから隣を歩く当麻を下から覗き込むようしてニコニコ顔で話しかける美琴。
軽く一伸びしてから隣を歩く当麻を下から覗き込むようしてニコニコ顔で話しかける美琴。
「ふぁ~、そうだな~何処でもいいぞ」
口元に右手を当てて欠伸を一度すると、眠たそうな声で返事をする当麻。
「むー、何よそのやる気のない返事は?」
「…お腹いっぱいで眠たくなってきたのですよ」
「…お腹いっぱいで眠たくなってきたのですよ」
当麻はお腹の辺りをさする。そんな彼を見た美琴はむぅっと顔を少し膨らませるが、すぐにはぁ~っと溜め息を付く。
「まあいいわ、じゃあこの後は当麻の部屋で…?」
「ん?どうした美琴?」
「ん?どうした美琴?」
落胆したような声で発した言葉を途中で切り、後ろを振り返る美琴。そんな彼女を不思議そうに見つめる当麻も釣られて後ろを向く。
そして次の瞬間、美琴はバチィ!!っと戦闘で使うような電撃を真上に放った。その電撃はビルの頭を越えた辺りでスッっと姿を消す。
そして次の瞬間、美琴はバチィ!!っと戦闘で使うような電撃を真上に放った。その電撃はビルの頭を越えた辺りでスッっと姿を消す。
「わ!何やってんだ美琴!?」
「ん、ちょっと気になる事があって…」
「??」
「ん、ちょっと気になる事があって…」
「??」
美琴の突然の行動に?マークを浮かべる当麻だが、彼女が見つめる方向の路地裏から人影が飛び出てきた事に気づく。
人影は真っ直ぐこちらに走ってくると、二人の前で立ち止まり右手軽く手を挙げる。
人影は真っ直ぐこちらに走ってくると、二人の前で立ち止まり右手軽く手を挙げる。
「やっほう、お姉様にお義兄様、今日は仲良くデートかな?お姉様の力を感じて来てみたけどお邪魔だったみたいだね」
「あんたは…」
「…番外個体?どうしたんだこんな所で?」
「ミサカは作戦行動中、あんまり時間がないからまた今度」
「あんたは…」
「…番外個体?どうしたんだこんな所で?」
「ミサカは作戦行動中、あんまり時間がないからまた今度」
颯爽と現れたのは美琴をそのまま成長させた姿を持つ番外個体(ミサカワースト)だ。
彼女は美琴の力を感じてここに立ち寄ったのだが、直ぐに立ち去ろうとする。
彼女は美琴の力を感じてここに立ち寄ったのだが、直ぐに立ち去ろうとする。
「待って!急いでるみたいだけどなんかあったの?」
「…別に?何にもないよ?」
「…別に?何にもないよ?」
慌てて引き止める美琴の言葉に一瞬の間を置いて返事をする番外個体。その顔は普段通りだったが、その一瞬の間を当麻は見逃さなかった。
「にしては随分焦ってるみたいだな?無理にとは言わないけど力にはなるぜ?」
「…そうだね、いずれバレると思うし教えてあげる」
「…そうだね、いずれバレると思うし教えてあげる」
当麻の鋭さにこの二人には嘘を付いても無駄だと感じた番外個体は軽く息を吐き頭を掻くと、真剣な表情で二人を見据え、こう告げた。
「妹達の危機、それを止める為にミサカは行動してる」
番外個体から放たれた言葉に固まる二人。言葉の意味を理解していないのか、信じたくないのかは分からない。
そんな二人を無視するように番外個体は言葉を続ける。
そんな二人を無視するように番外個体は言葉を続ける。
「30分くらい前に打ち止めが何者かに捕まったみたい。妹達は奪還に動いたけどさっき待機命令が出たからもう動けない。
そこで再度セレクターを入れて打ち止めの命令を聞かなくてもいいミサカが動いてるって訳。
そうそう、セレクターはミサカの意思で入れたから気にしなくていいよ」
そこで再度セレクターを入れて打ち止めの命令を聞かなくてもいいミサカが動いてるって訳。
そうそう、セレクターはミサカの意思で入れたから気にしなくていいよ」
淡々と状況を話す彼女は首筋を撫でる。そこには以前一方通行との戦いで破裂させられたセレクターと同じものが入っている。
ただ違う点があるとすれば、自らの意思で入れた事と、冥土返し製という事だ。
番外個体は首から手を離すとそれで、と続ける。
ただ違う点があるとすれば、自らの意思で入れた事と、冥土返し製という事だ。
番外個体は首から手を離すとそれで、と続ける。
「ミサカの目的は打ち止めを処分する事」
「…?処分ってどうするつもりなの?」
「…?処分ってどうするつもりなの?」
番外個体の『処分』という言葉に反応し状況が飲み込めない中、キョトンとした顔で質問をする美琴。
「殺すって事だよ」
「「!!」」
「「!!」」
特に感情も出さず、あっさりと言い放った言葉に二人は驚き、ビクッっと体が跳ねる。その表情はガチガチに凍り付いていた。
「恐らく犯人は外部入力で強制命令を下すように仕組んでる。その作業が完了してしまえば妹達はどんな命令でも聞かないといけない。
例えお姉様とお義兄様二人を殺せという命令でもね。時間があれば第一位の力を借りて何とかできるかもしれないけど、多分無理」
「で、でもまだそんな命令が出るなんて…」
「そう、でも既にこの状況が妹達の心を蝕んでる。つーかもう手遅れかもしれないくらいぐっちゃぐちゃだよ。
…打ち止めを殺せば命令は飛ばないから本当の意味での最悪の事態は回避される」
例えお姉様とお義兄様二人を殺せという命令でもね。時間があれば第一位の力を借りて何とかできるかもしれないけど、多分無理」
「で、でもまだそんな命令が出るなんて…」
「そう、でも既にこの状況が妹達の心を蝕んでる。つーかもう手遅れかもしれないくらいぐっちゃぐちゃだよ。
…打ち止めを殺せば命令は飛ばないから本当の意味での最悪の事態は回避される」
最悪の事態――それは強制命令によって妹達が各地で暴れる事。自分の意思ではなく、誰かの手によって。
抗う術を無くした彼女達の心はもう壊れかかっている。だが、命令が飛ぶ前に打ち止めを止めてしまえば、妹達に傷が残ってしまったとしてもその事態は回避される。
そして、その役割を番外個体は引き受けた。妹達を止めるのはあくまでも妹達なのだと。
抗う術を無くした彼女達の心はもう壊れかかっている。だが、命令が飛ぶ前に打ち止めを止めてしまえば、妹達に傷が残ってしまったとしてもその事態は回避される。
そして、その役割を番外個体は引き受けた。妹達を止めるのはあくまでも妹達なのだと。
「そんな…」
「何か手は無いのか!?」
「無いんじゃないかな?かつては第一位やシスターが脳に直接干渉して正常に戻したみたいだけど、
シスターは学園都市には居ないし、今から第一位を呼びに行ってたら確実に間に合わない」
「何か手は無いのか!?」
「無いんじゃないかな?かつては第一位やシスターが脳に直接干渉して正常に戻したみたいだけど、
シスターは学園都市には居ないし、今から第一位を呼びに行ってたら確実に間に合わない」
彼女から語られるのはひたすらに絶望だった。でも二人はそんな事納得できない。出来る訳が無い。
唇を噛み締めながら美琴は考える…どうすれば打ち止めが助かるのかを…
番外個体の言葉から救出に必要な条件を洗い出す。
―打ち止めの奪還、一方通行の存在、場所と敵勢力、残り時間は……まて、一方通行とあのちびっ子は何をした?脳に直接干渉…
そこまで考え、美琴はインデックスとのやり取りを思い出す。
唇を噛み締めながら美琴は考える…どうすれば打ち止めが助かるのかを…
番外個体の言葉から救出に必要な条件を洗い出す。
―打ち止めの奪還、一方通行の存在、場所と敵勢力、残り時間は……まて、一方通行とあのちびっ子は何をした?脳に直接干渉…
そこまで考え、美琴はインデックスとのやり取りを思い出す。
(あの時ちびっ子は歌を聞かせて人間の頭を上書きしようとした…でも自分にはそんな事は出来ない…
なら学習装置…今は手元にPADが無い…だとすると残る手段は――――――)
なら学習装置…今は手元にPADが無い…だとすると残る手段は――――――)
頭をフル回転させて瞬時に最善の答えを弾き出した美琴は顔を上げる。
そして、力の戻った瞳で番外個体を見ると…
そして、力の戻った瞳で番外個体を見ると…
「ねえ、一方通行がいればいいのよね?」
「そうだけど、それがどうしたの?」
「当麻、今すぐ一方通行を呼びに行って。あんたなら居場所知ってるでしょ?」
「分かるけど、今更間に合わないよ?」
「いいから。あんたは私と一緒に打ち止めを助けに行くわよ!」
「美琴?どうする気だ?」
「そうだけど、それがどうしたの?」
「当麻、今すぐ一方通行を呼びに行って。あんたなら居場所知ってるでしょ?」
「分かるけど、今更間に合わないよ?」
「いいから。あんたは私と一緒に打ち止めを助けに行くわよ!」
「美琴?どうする気だ?」
テキパキと指示を飛ばす美琴。その様子に少し疑問を抱く二人。だが彼女は時間が無いといわんばかりに言葉を続ける。
「お願い。悔しいけど私の考えが正しければ一方通行じゃないと駄目だから」
当麻は美琴の真剣な表情に考えがある事を読み取ると『分かった』と言い、番外個体に一方通行の住所と打ち止めの居場所を聞くとすぐに駆け出す。
「私達も行くわよ」
「へぇー、てっきりお義兄様が危険な所に行かせられないとか言うと思ってたけど、信頼関係が出来上がってるみたいだね」
「茶化さないで。時間が無いならさっさと行かないと」
「へぇー、てっきりお義兄様が危険な所に行かせられないとか言うと思ってたけど、信頼関係が出来上がってるみたいだね」
「茶化さないで。時間が無いならさっさと行かないと」
当麻の背中を見送ることなく二人も動き出す。そして番外個体から打ち止めの居場所を聞いた美琴は驚くべき荒業に出る。
地面を勢い良く蹴り前方に駆け出すと、能力を使って街灯やコンクリート内の鉄骨など街中にある鉄を電磁石の要領で次々と渡っていく。
縦横無尽に空中を飛び、恐ろしい速度で進んで行く美琴を見習い、番外個体もそれに続く。
地面を勢い良く蹴り前方に駆け出すと、能力を使って街灯やコンクリート内の鉄骨など街中にある鉄を電磁石の要領で次々と渡っていく。
縦横無尽に空中を飛び、恐ろしい速度で進んで行く美琴を見習い、番外個体もそれに続く。
(流石はお姉様、こんな事できるなんて知らなかったよ。これなら打ち止めの居る場所まで数分も掛からないかも。
…なるほど、それでお義兄様を連れて行かなかったってわけね)
…なるほど、それでお義兄様を連れて行かなかったってわけね)
感心する番外個体を置いてどんどん先へ飛んでいく美琴。
番外個体も全力で付いていこうとするが、その力の差はあまりにも大き過ぎて、付いていこうと考えている間に目的地へと辿り着いてしまった。
二人の目の前には廃墟となったビルが立っている。そして先に到着した美琴が電磁波の反射によって中の様子を伺っていた。
番外個体も全力で付いていこうとするが、その力の差はあまりにも大き過ぎて、付いていこうと考えている間に目的地へと辿り着いてしまった。
二人の目の前には廃墟となったビルが立っている。そして先に到着した美琴が電磁波の反射によって中の様子を伺っていた。
「――中には二人、一人は打ち止めね。どうする?」
「即突入。ミサカは行くよ」
「即突入。ミサカは行くよ」
番外個体の方を見た美琴は判断を仰ぐが、彼女は何の躊躇いもなく中に入ろうと足を動かす。
それを見た美琴は慌てて腕を掴み、中に入ろうとする彼女を引き止める。
それを見た美琴は慌てて腕を掴み、中に入ろうとする彼女を引き止める。
「待って!打ち止めが犯人に人質になってるのよ!?」
「犯人が強制命令を出す前に打ち止めに危害を加える事は無い。もし殺害したとしてもこっちにとっては好都合」
「犯人が強制命令を出す前に打ち止めに危害を加える事は無い。もし殺害したとしてもこっちにとっては好都合」
美琴の言葉に振り返る事なく言い放つ番外個体。そのあまりにも冷たい態度に美琴は悲痛な表情を浮べ詰め寄る。
「なんで…なんでそんな事平気で言うのよ!?あの子はアンタと姉妹でしょ!?」
「それがミサカの役割だから、それにこれは妹達の下した決定事項だよ?」
「…え?」
「それがミサカの役割だから、それにこれは妹達の下した決定事項だよ?」
「…え?」
泣きそうな顔で番外個体を掴み糾弾する美琴。だが、番外個体から告げられた言葉に顔を上げる。
その表情には何故?どうして?という疑問が色濃く浮んでいる。番外個体はその顔を見ても尚、淡々と言葉を続ける。
その表情には何故?どうして?という疑問が色濃く浮んでいる。番外個体はその顔を見ても尚、淡々と言葉を続ける。
「妹達が『また』乗っ取られるような事があれば、妹達を『どんな手を使ってでも』止めて欲しい…ってね」
「な、何よ…それ…」
「今、妹達は自分自身を恨んでる。自分達がしっかりしていれば…ううん、自分達さえいなければ二人が辛い思いをしなくて良かったってね。
…ミサカ達は二人が幸せでいる事を自分の幸せにして、ずっと二人を支えていくはずだった。
だけどそれももうおしまい。どれだけ二人の為になるように動いても、結局ミサカ達の存在は二人の足枷にしかならない」
「…」
「じゃあミサカは行くよ」
「な、何よ…それ…」
「今、妹達は自分自身を恨んでる。自分達がしっかりしていれば…ううん、自分達さえいなければ二人が辛い思いをしなくて良かったってね。
…ミサカ達は二人が幸せでいる事を自分の幸せにして、ずっと二人を支えていくはずだった。
だけどそれももうおしまい。どれだけ二人の為になるように動いても、結局ミサカ達の存在は二人の足枷にしかならない」
「…」
「じゃあミサカは行くよ」
妹達の決定を語る番外個体は美琴を一度も見ることなく廃ビルに入っていく。
その後ろ姿を見送った美琴だったが、我を取り戻し後を追う。
その後ろ姿を見送った美琴だったが、我を取り戻し後を追う。
(…辛い思い?足枷?ふざけんじゃないわよ…んな事あるわけ無いでしょうがあの馬鹿妹!!必ず助けて説教してやるから待ってなさい!)
廃ビルの階段を駆け上がりながら美琴は心の中でそう呟き、密かに怒りを燃やすのだった。
階段を駆け上り、人の気配のある部屋の前に辿り着く。そこは隣のビルの陰になり薄暗くなっている部屋だった。
中入ると、既に白衣を来た男が床に倒れていて、その白衣は釘のようなもので貼り付けられていた。
そしてその横には椅子に座らされ、縄で縛られた打ち止めと、倒れている白衣の男を見下ろす番外個体の姿があった。
階段を駆け上り、人の気配のある部屋の前に辿り着く。そこは隣のビルの陰になり薄暗くなっている部屋だった。
中入ると、既に白衣を来た男が床に倒れていて、その白衣は釘のようなもので貼り付けられていた。
そしてその横には椅子に座らされ、縄で縛られた打ち止めと、倒れている白衣の男を見下ろす番外個体の姿があった。
「お姉様?もう終わったよ、そいつただの研究者かなんかだね。殺っても良かったんだけど、とりあえず気絶させて拘束しといた」
番外個体は美琴の入室に気付くと、犯人を沈黙させた事を告げる。
その手には鉄釘が数本載せられ、軽く上下させてじゃらじゃらと音を鳴らしている。
その手には鉄釘が数本載せられ、軽く上下させてじゃらじゃらと音を鳴らしている。
「そう。それでこれからどうするの?」
「どうするも何も打ち止めを処分した後に、ミサカ達も二人の前から消えてそれで終わり」
「そ、じゃあそんなくだらない幻想なんか私がぶっ壊してあげるわよ。当麻から連絡来ると思うから携帯持ってて」
「どうするも何も打ち止めを処分した後に、ミサカ達も二人の前から消えてそれで終わり」
「そ、じゃあそんなくだらない幻想なんか私がぶっ壊してあげるわよ。当麻から連絡来ると思うから携帯持ってて」
美琴の問いに答えると鉄釘を打ち止めに向ける番外個体。美琴は近づき鉄釘を持つ手をグイっと掴みそのまま無理やり下ろすと、
左手でポケットから携帯を取り出し番外個体に持たせる。
左手でポケットから携帯を取り出し番外個体に持たせる。
「一体何をするつもり?時間が無いの分かってるのかな?」
「うっさいわね、私には電気信号を操る事も学習装置の替わりをする事も出来ない。でも混乱させて書き換えを邪魔する事はできると思う」
「うっさいわね、私には電気信号を操る事も学習装置の替わりをする事も出来ない。でも混乱させて書き換えを邪魔する事はできると思う」
そう言うと美琴は打ち止めの頭を掴むように右手を置く。
「…やめたほうがいい、失敗したらお姉様は一生苦しむ事になるかもしれないよ?」
「ここで何もせずに見捨てても同じよ。なら私は全力で立ち向かう」
「どうしてそこまでする理由があるの?お姉様を苦しめてばかりのミサカ達にそんな価値は」「うるさい!!」
「ここで何もせずに見捨てても同じよ。なら私は全力で立ち向かう」
「どうしてそこまでする理由があるの?お姉様を苦しめてばかりのミサカ達にそんな価値は」「うるさい!!」
何とかして美琴を止めようとする番外個体。彼女を巻き込み、ましてやこんなにリスクの高い行為をさせて失敗でもしたら…
そう思うだけでゾッとする。自分達のためにそこまですることは無い、だからやめて欲しい。
そんな想いから出た言葉は美琴の一喝によって途中で遮られる。
そう思うだけでゾッとする。自分達のためにそこまですることは無い、だからやめて欲しい。
そんな想いから出た言葉は美琴の一喝によって途中で遮られる。
「それ以上言ったら本気で怒るわよ!妹達は大切な妹だって言ったでしょうが!理由なんてそれだけあれば十分よ!」
「…」
「…」
美琴の言葉に思わず黙る。同時に妹達のかすかな『声』がミサカネットワーク内に流れる。
「それじゃ始めるから静かにしてなさい」
(失敗は許されないわよ御坂美琴。今からする事には皆の未来が懸かってるんだから…お願い当麻、力を貸して…)
(失敗は許されないわよ御坂美琴。今からする事には皆の未来が懸かってるんだから…お願い当麻、力を貸して…)
目を閉じ最愛の人を思い浮かべながら深呼吸をする美琴。しかしその手は小刻みに震えてしまっている。
(ミサカ達は…)
絶望の淵に立たされた妹達。それでも先ほどの言葉を聞いて僅かな希望が生まれる。
それを読み取った番外個体は縋るように美琴の震える手に自分の手を伸ばし、そっと重ねる。そして…
それを読み取った番外個体は縋るように美琴の震える手に自分の手を伸ばし、そっと重ねる。そして…
「お姉様、こんな事言えた義理じゃないけど、ミサカ達を助けて…」
「…私はあんた達のお姉様なのよ?必ず助けるから安心して待ってなさい」
「…私はあんた達のお姉様なのよ?必ず助けるから安心して待ってなさい」
重ねられた僅かに震える手の温かさ、そして妹達の心の叫びを聞いた美琴の手の震えは止まる。
(ふふ、やっと素直になったわね。それにしても私とした事が大切な事を忘れてたわ。…当麻だけじゃない、この子達も付いていてくれるなら私は――――)
番外個体の手が離れると同時に『最強』電撃姫の全てを懸けた戦いが始まる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ゲコゲコゲコ、ゲコゲコゲコ
美琴が電流を流し始めてから10分程経った時、番外個体が預かっていたカエル型の携帯電話が鳴る。
改めて見るとヘンテコなデザインだな、と思った彼女だが、そのまま着信主の名前を見ることなく携帯を開き通話ボタンを押す。
美琴が電流を流し始めてから10分程経った時、番外個体が預かっていたカエル型の携帯電話が鳴る。
改めて見るとヘンテコなデザインだな、と思った彼女だが、そのまま着信主の名前を見ることなく携帯を開き通話ボタンを押す。
『美琴か!?今何処にいる!?』
突然電話越しに叫ばれ、思わず耳を離す。そしてチラリと美琴を見る番外個体。
その瞳には脂汗を掻き、苦悶の表情を見せながらも必死で能力を使い続ける姉の姿が映る。
こんな状況で電話になど出られる筈が無い。そう思った番外個体は携帯電話に耳を当て、当麻に告げる。
その瞳には脂汗を掻き、苦悶の表情を見せながらも必死で能力を使い続ける姉の姿が映る。
こんな状況で電話になど出られる筈が無い。そう思った番外個体は携帯電話に耳を当て、当麻に告げる。
「お姉様は今奮闘中だから電話には出られないよ」
『分かった、なら番外個体、正確な居場所が知りたいから今すぐ外に出て真上に電撃を数発打ってくれ』
「おっけー…待って、今デリケートな事してるから電撃は厳しいと思う」
『分かった、なら番外個体、正確な居場所が知りたいから今すぐ外に出て真上に電撃を数発打ってくれ』
「おっけー…待って、今デリケートな事してるから電撃は厳しいと思う」
電撃を放とうとした番外個体は美琴が電気信号に直接割り込んでいる事を思い出す。
自分が電磁波以外の電波を出してしまってはその行為に少なからず影響が出てしまうだろうと考えた彼女は当麻にそう伝えた。
自分が電磁波以外の電波を出してしまってはその行為に少なからず影響が出てしまうだろうと考えた彼女は当麻にそう伝えた。
『…他に方法は無いか?』
当麻の言葉を受け、部屋にあるものを見渡す番外個体。
あるのは自分の鉄釘、白衣の男の銃、机、…駄目だ、ここから一方通行の居場所まで合図になりそうなものは見当たらない。
「チッ!」と舌打ちをした番外個体にかすれる声が聞こえてきた。
あるのは自分の鉄釘、白衣の男の銃、机、…駄目だ、ここから一方通行の居場所まで合図になりそうなものは見当たらない。
「チッ!」と舌打ちをした番外個体にかすれる声が聞こえてきた。
「大丈夫…少しくらいなら…」
「…お姉様…分かった。お義兄様、今すぐ2発打つから良く見てて」
「…お姉様…分かった。お義兄様、今すぐ2発打つから良く見てて」
美琴の途切れながらも出された言葉に頷く番外個体。廃ビルの窓から手を出し、真上に電撃を放つ。
すると一分もしないうちに学園都市第一位、一方通行が窓から飛び込んできた。
すると一分もしないうちに学園都市第一位、一方通行が窓から飛び込んできた。
「待たせたなァ!」
「一方…通行…」
「一方…通行…」
飛び込んできた一方通行は美琴の行動を瞬時に理解する。彼はニヤリと笑みを浮かべ、こう言った。
「上出来だァ、よく耐えたな超電磁砲。後は俺に任せてテメェはさっさと病院に行くンだなァ」
「平気よ…これ位…それより妹達をお願い…」
「ハッ!無茶しやがって、テメェの努力は無駄にしねェよ」
「平気よ…これ位…それより妹達をお願い…」
「ハッ!無茶しやがって、テメェの努力は無駄にしねェよ」
すぐさま入れ替わり打ち止めの頭に手を置き、演算を始める。
あの時の学習装置のデータを思い出しその記憶を元に打ち止めの人格データを書き換えていく。
もう一度自分の大切な人の記憶を消さなくてはならない一方通行は何を思いながら演算をしているのだろうか?
あの時の学習装置のデータを思い出しその記憶を元に打ち止めの人格データを書き換えていく。
もう一度自分の大切な人の記憶を消さなくてはならない一方通行は何を思いながら演算をしているのだろうか?
「クソったれがァ…」
一言だけそう呟くと、ひたすら演算をし続けるのだった。
そしてその様子を暫く見ていた二人だったが、急に美琴がよろめいた。
そしてその様子を暫く見ていた二人だったが、急に美琴がよろめいた。
「ぅ…」
「お姉様!?どうしたの!?」
「ちょっと疲れた…ごめん…後よろしく…」
「お姉様!?どうしたの!?」
「ちょっと疲れた…ごめん…後よろしく…」
番外個体はそのまま倒れ掛かってきた美琴の体を支える。その瞬間美琴から一気に力が抜けた。
一方通行の到着に安心したのと能力の使い過ぎだった。
妹達を救うためにボロボロなってしまった彼女を番外個体はしっかりと抱きしめる。そして…
一方通行の到着に安心したのと能力の使い過ぎだった。
妹達を救うためにボロボロなってしまった彼女を番外個体はしっかりと抱きしめる。そして…
「ありがとうお姉様、ミサカ達を助けてくれて…でもやっぱりミサカ達は――――」
番外個体の言葉を最後まで聞き取ることなく美琴の意識は途絶えた。
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