とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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もしも美琴が上条の妹だったら



2月の夜。辺りはかなり冷え込んでいた。
上条はとある夜道を歩いていた。

「あー寒い…ん?なんだあれ」
目の前には不良らしき人が数人、少女を囲んでいた。
要するにたちが悪いナンパだ。
「ねぇ俺たちと一緒に遊ばない?」
「…」
「帰りはいつになるかわかんねぇけどな」
ぎゃははと大笑いする。

「すみませーん、いやー連れが迷惑かけましたー…ってえぇ!?美琴!?」
少女は上条美琴…上条当麻の妹だった。
学園都市第3位、常盤台のエースと言われ、無能力の上条とはまさに真逆の存在だった。
「え?なんでお兄ちゃんが!?」
「いいから逃げるぞ!」
美琴の手を引っ張り、全力疾走する。
「って待てよ!テメェら!」
不良も追っかけてくる。

しばらく走り続け、人がいない河原へ出る。
途中で美琴が我慢できなくなり、不良に電撃を撒き散らし今に至る。

「はぁはぁ…お前ちゃんと手加減したよな…」
「はぁはぁ…え?あぁ、ちゃんと手加減したわよ」
息切れしながら答える。
「そんで美琴…、また夜遊びか?」
美琴はよく門限を破って夜道を歩きまわる。
普通の女の子なら不良に絡まれたりして危ないのだが美琴は例外だ。
いくら不良に絡まれても美琴は学園都市第3位の超電磁砲だ。
たかが無能力者の不良ごときに手こずることはない。
「いいじゃない、私の勝手でしょ」
「まぁ一応お前は俺の妹だ。妹の心配して悪いか?」
「うっ…わかったわよ、程々にするわ」
何故か頬が赤く染まる。だが暗いので上条にはわからない。
「あぁ、じゃぁそろそろ帰るか、一応寮まで送ってやるよ、もう暗いし」
めんどくさそうに頭をポリポリ掻く。
「あ、ありがとう…」

あれから兄の上条と別れ、白井を呼び出しテレポートを使い
どうにか寮監にばれずに帰ることができた。

「お姉さまもあまりお兄様の迷惑かけちゃいけませんわよ?」
「はいはい、わかってるわかってる」
いつも言われることなのでそこまで気にとめない。
「はぁ、今日は一体どうしましたの?」
念のために美琴に問いかける。
「あぁ、夜道歩いていたら馬鹿な不良どもに絡まれたのよ。何かしてきたら焼いてやろうかと思ったんだけど
あの馬鹿兄貴が助けに来たのよ」
少し安堵しているように話す。
「流石お姉さまのお兄様ですわ!お姉さまの貞操をちゃんと守って…黒子も、黒子も負けていられませんわ!」
うへへと笑い、ハイテンションになる。
「ちょっと黒子!もう遅いんだから静かにしなさい!てか貞操って何よ!」
しばらくぎゃぁぎゃぁ騒ぎ、結局寝不足になった。

2月13日 PM1時―――とある高校

授業が終わり昼食の時間となっていた。
「明日はバレンタインやでカミやん?妹からチョコ貰うん?」
青髪がやけにテンション高めに話しかけてくる。
「さぁな?アイツ同居人がいろいろ大変だって言ってたぞ」
「妹からチョコ貰えるなんて幸せぜよ、カミやん」
「俺は土御門みたいにシスコンじゃないからあまり実感湧かねぇよ」
めんどくさそうに話す。

毎年妹の美琴からチョコを貰うのだが、何故かそのあと不機嫌になる。
(はぁ…毎年こんな調子じゃ体持たないぞ…)
周りから見れば仲が良い、ごく普通の兄妹だ。
だがケンカになるとそれが一変する。
妹は超能力者、超電磁砲だ。あらゆる電撃を使い攻撃してくる。
普通の人ならやられるが、上条には幻想殺しが宿っている。
あらゆる電撃が来ようが右手に触れれば打ち消せる。だが怖いものは怖い。

「おーいカミやん?」 「大丈夫かにゃー?」
目の前で手を振っても反応しない。
「電撃って怖いよなぁ…」
「「???」」
不思議そうに顔を見合わせる2人。
それからしばらく上条はボーっとしていた。

―PM17時30分

学校から下校し、ついでにスーパーで買い物を済ませた所だ。
「ふふふーん、ちょうどタイムセールしてあって助かったぜ。これで上条さんは一週間乗り切れます!」
周りから変な目で見られてるが、機嫌が良いのでまったく気にならない。
歩いていると目の前に空き缶がある。
「今日の俺は一味、いや二味も違うぜ!こんな空き缶如きどうってことない!」
ジャンプで華麗に避ける。

「残念だったな神様!今日の上条さんは珍しくついてる…ちょっ!?なんで着地地点にバナナの皮が!?」
うおおおおと掛け声を挙げ空中で走るももう間に合わない。
見事にバナナの皮を踏み円を描くようにこける。
「痛てぇ…あぁやっぱ不幸だ…ん?」
ビニール袋からなにかが潰れたような音がした。
取り出してみると卵が全滅していた。
「ああ…貴重な卵が…不幸だ―!!」
思いっきり叫ぶ。見ていた人も哀れむような目で見ている。
すると何処からか声が聞こえた。

「ちょ、ちょっと馬鹿!なに道端で尻もちついて叫んでるのよ!」

「あ?なんだ美琴か…いつものごとく不幸な上条さんですよー」
なにやらいじけむしになっている。
「あぁもうだらしない!立ちなさいよ!まったく妹の私まで恥ずかしいわ」
美琴の手をとり、立ち上がる。
「卵…貴重な卵が…」
念仏のようにブツブツ唱える。
「はぁ…情けない…私が卵かってあげるからそれで我慢しなさい」
上条にとっては今の一言は天使の声に聞こえた。
実は今までにも何度か美琴に経済面、生活面などで助けられたことがある。

「いいの?」
「いいわよ別に」
「まじかよ!美琴ありがとう!こんな素晴らしい妹がいて上条さんは幸せですよ!」
いつものことなのだが美琴も兄に喜ばれるとうれしい。
「んじゃスーパー行くわよ」
「おう」
二人で来た道を引き返しスーパーへと向かう。

―PM18時00分

スーパーで卵を買って帰宅することにした。
タイムセールが終わっていて少し高めの卵を買うことになったが美琴がおごってくれた。
「いやー美琴ありがとうな」
卵も手に入りご機嫌だ。
「お礼はいいって、兄妹でしょ?」
ここまで似てない兄妹があっていいのか?と時々思ってしまうくらい出来が良い妹だ。
一緒にいると美琴の友達が『彼氏?』とか訪ねてきたりする。
「あぁ、てか晩飯どうしよっかな」
しばらく考え込む。すると美琴が声を掛けてきた。

「ねぇ、じゃぁ今日は私が料理作ってあげようか?」
「いや流石にそれは悪いって、しかももう暗いし」
一応同居人にも迷惑がかかるんじゃないかという考慮だ。
「いいの、たまには私の料理食べさせてあげるんだから、…もしかして嫌?」
妹の美琴は昔から涙腺操作ができるらしい。いつもこの目で上条はやられる。
(ううう反則だ、これは反則だ…)
「あぁ、わかったわかった料理頼む。え?なんでまだその目なの?お願いその目やめて!」
美琴は昔から人懐っこく喧嘩っ早い。
一緒にいるとよくわかるのだが何より涙もろい。
喧嘩で負けて泣いたり、ドラマや映画を見て泣いたりする。今だ上条も扱いに慣れてない。
「あはは…じゃぁ行きましょ(制御間違えて本当に泣くかと思った…)」
美琴は美琴で内心ひやひやしていた。
「あ、あぁ」
美琴に引っ張られ歩き始める。

―PM18時25分

ようやく寮につく。
すると隣人の土御門に会い『相変わらず仲がいい兄妹だにゃー』と言われた。
本人はそこまで自覚はないのだが美琴が恥ずかしがり、何故か上条に電撃を放つ。
「ちょッ!?美琴電撃打つのやめて!上条さん死んじゃいますから!」
隣で土御門が笑っている。何故かぶっ飛ばしたくなるがその気持ちを抑えた。
「まぁカミやん健戦を祈るぜい」
逃げ出すように部屋に入る。一応幻想殺しで美琴の電撃を打ち消し部屋に入る。

「卵しまってと…美琴?どうしたんだ何か顔赤いぞ」
指摘されたのも関わらず反応がない。
数秒後にハッっとした様に否定する。
「べ、別に赤くなんかないわよ!それより料理よ、せっかく卵かったんだからオムライスでいい?あと材料足りてる?」
「え、あぁいいぞ。材料は足りるから問題ないけどな、いやー楽しみだなー」
ベッドに座りテレビをつける。
その姿を見てクスッっと笑う。これが平和な日常なのかなと考える。

「あれエプロンは?」
制服が汚れるので一応エプロンが必要らしい。
「ん?そこの棚の中になかったっけ?」
棚を開けて探すが見つからない。
「ないわよ?」
「ちょっと待ってろ。あれここら辺に入れた記憶が…、あったあったこれでいいか?」
「うん、あいがとう」
エプロンを受け取りエプロンを着る。
「ん?どうしたの」
美琴が上条の視線に気づき問いかける。
しかし上条は何も言わない。
いやなんでも と言って再びベッドに座る。
(ううう、言えない…『エプロン姿が似合ってる』とか絶対言えない…)
ついには頭を抱え込む。
年頃の女の子のエプロン姿は純情少年にはすさましい破壊力なのだ。

数十分後ようやく料理ができた。

皿を運びテーブルまで持っていく。
「なんかここまで任せっぱなしだとすごく罪悪感というかなんというか…」
自分だけ楽な気がして何かやろうとするも美琴に止められる。
そして美琴、上条が座る。
すると美琴はオムライスの上にケチャップで何かを書いている。
カエル…ゲコ太だ。
「お前まだゲコ太好きだったんだな」
ちょっと呆れたような口調で言う。
「な、いいじゃない!人によって趣味趣向はそれぞれでしょ!」
頬を赤く染め叫ぶ。
「あーはいはい。じゃぁ、美琴さん、上条さんにも何か書いて下しあ」
美琴にオムライスを渡す。
「はいはい、ふふ~ん♪」
鼻歌交じりで何かを書いている。
「あ、えーっと、その、なんだ?またゲコ太?」
「ピョン子よ馬鹿兄貴」
よくみるとリボンが書いてあった。
「まぁ、ありがとな。じゃあ―――」
「「いただきます」」

まずは上条が一口。
「美味しい…?」
一応美琴はオムライスを作るのは初めてだったので美味しくできてるか自信がない。

「はぁ!?なにこのオムライス!?すごいふわふわなんですけど!美味い、すげぇ美味い!」
上条の今まで食べたオムライスの中で一番おいしかった。
それを聞いて安堵する。
大切な人に食べてもらい、美味しいと言われた。それでもう満足だ。
「いやーお前料理上達したな。あとでレシピとか教えてくれ」
満足そうに話す上条を見て嬉しそうに笑う。
「ふふ、料理ってね、レシピや食材も大切だけど一番大事なのは何かわかる?」
「???えっと…愛とか…?」
いきなり言われても答えれないのでなんとなく答える。
ちょっと唐突すぎたかなと思う。
「まぁ正解よ。大事なのは気持ち。大切な人のために一生懸命作った料理って美味しくなるのよ」
「気持ちねぇ…じゃぁこの料理にはお前の気持ちがこもった料理なワケか、ありがとな美琴」
「え、あ、どういたしまして…」
恥ずかしいのか顔が赤くなってるのがわかる。
上条は無意識に女心を揺さぶるようなことを言う。もちろん妹でも例外ではない。
(お兄ちゃんって自覚がないから罪よね…)

PM19時30分

晩飯を食べ終わる。
時刻はもう7時半だ。もうバスは走っていない。
美琴を学生寮に送るために外へ出た。
暗い夜道を歩く。といっても店の電気、蛍光灯なので十分明るいわけだが。
「あ、そうそう美琴、ちょっと寄り道していいか?」
「え、別にいいけど…何処に行くの?」
一応上条に尋ねる。
「ん?そこの店」
指を差されたほうを見ると、クリスマスでもないのにイルミネーションが付けてある小さい店があった。
「見たことない店ね…」
「まぁ俺は2回目なんだけど…ちょっとここで待っててくれ」
そういって店へと走り出す。

「うう、寒い…」
無理もないが2月の夜だ。今の気温はおよそ5度くらいだろう。
美琴は常盤台の制服にマフラーだ。
何時間もたっていると流石に風邪を引いてしまう。
「あの馬鹿兄貴…女の子を一人で寒い所で待たせるんじゃないわよ…」
そんなことを愚痴ってると声が聞こえた。
「いや悪い、待たせたな、寒かっただろ?」
「べ、別に寒くないわよ」
美琴の性格をよく理解してるのでただの強がりだとわかった。
上条の顔が少しにやけてるのが分かり話題を変えようとする。
「で?何買ったのよ?」
不機嫌そうに尋ねる。
「あぁコレな」
ビニール袋の中にはラッピングしてある手の大きさ程の袋があった。
「美琴プレゼントだ。いや正確に言うと今日のお礼かな」
「私に…くれるの?」
なにやらモゾモゾしている嬉しいのかなと考える。
「お前以外にあげる奴いねぇよ。あと開けていいぞ」
ラッピングしているのを丁寧にはがし、袋を開ける。
中にはそう、手袋が入っていた。
「お前がどんな奴が好きかわからなくて困ったもんだ。まぁそれはどうでもいいんだけどさ。
「え、どうして?」
「どうしてって…言っただろお礼だって。あとお前の手を見たら分かったんだけどさ。寒いなら寒いって言えよ。
隠さなくてもわかるんだよ、俺はお前の兄だ」
隠し事するとすぐわかるのは唯一俺とおまえが似てるところだけどな と言い頭を掻く。
「うん…あのさ、手袋、はめてもいい?」
「あぁいいぞ」

「似合うかな?」
「あぁ似合ってるよ」
それを聞いて幸せそうに笑う。
しばらく歩いていると学生寮の近くまで来ていた。
「あ、もうここでいいよ。ありがとねお兄ちゃん」
笑みを浮かべ手を振りながら寮へ走っていく。

(もしお兄ちゃんが兄妹じゃなかったら私…お兄ちゃんと…)




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