とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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猫も好きだけど…



「にゃんこパーク?」
『う、うん。猫専門の動物園みたいな所なんだけど、そこにアンタについてきて欲しいの。』
 ━━━にゃんこパーク━━━
 学園都市に存在する世界最大の、猫好きの猫好きによる猫好きのためのテーマパーク
 世界中の猫はもちろんの事、あらゆる猫用品、猫グッズ、さらには猫の歴史博物館等々、猫に関するものなら全て揃っていると行っても過言ではない。
 そんな猫好きにはたまらないテーマパークだが、ある一つの問題があった。
「なんでまた俺なんだ?白井とかと行けばいいじゃないか。」
『ほ、ほんとは私もそうしたかったのよ?でもね、電撃使いって常に電磁波を発していて、それが猫に影響を与えちゃうの。だから電磁波を発していると入園お断りって事になっちゃうのよ。』
 そういえば妹達も電磁波のせいで猫に嫌われていたなーと思い出す。
「なるほど、それで俺の出番と。」
『う、うん。…ダメかな?』
 カレンダーを見て予定を確認する。
 次の日曜日は補習も無く、暇なはずだ。
「次の日曜日なら一日空いてるから、その日でも良ければ付き合えるぞ。」
『ほ、ほんと!?じゃあ、10時に○○の前で待ち合わせでいい?』
 OKをだすと電話越しでも分かるぐらい喜びをにじませた声が聞こえてきた。
「りょーかい。それにしてもそんなに行きたかったのか?ずいぶん嬉しそうだけど。」
『う。そ、そうよ!ずっと行きたいって思ってたのよ!他に理由は別に…ゴニョゴニョ。』
「はいはい、それじゃ日曜日にな。」
『うん。遅れたら承知しないからね!』
 ピッ

「あいつずいぶん嬉しそうだったな。結構可愛いところもあるんだな。」
 猫に対する気持ちの1/100ぐらい自分に向けてくれてもいいのになーと思う。
「ま、せっかくだし俺も楽しませてもらいますかね。」
 だがしかし、上条は気づいていなかった。
 御坂美琴の電磁波を抑え続ける、と言うのが何を意味するのかを。

 某月某日、日曜日AM10:32、上条と御坂はにゃんこパーク入り口に到着した。
「へー、ここがそうなのか。たしかにこれはすごいな。」
 外壁には一面、世界中の猫の絵が所狭しと並べられていた。
 入り口のゲートも巨大な猫となかなかに凝っている。
 外から見ただけで、猫への並々ならぬ愛情が感じられた。
「外観見てても仕方ないし、早く行こうぜ。……どうしたんだ?手なんか出して?」
「……アンタ、今日の趣旨忘れたの?」
「今日の趣旨って、お前の電磁波を……。」
 電磁波を打ち消すには御坂に触れ続けていなければいけない。
 そして目の前には手を差し出す御坂。
「あー…もしかして。上条さんは今日一日、御坂さんとおてて繋いで仲良しこよしなわけですか?」
「その通りよ…、今更嫌なんて言わないわよね?」
「別に嫌とは言わないけどさ…。」
 ジト目で御坂を見る。
 顔を真っ赤にして逸らし、突き出した手はブルブルと震えている。
「(そんなに嫌なのを我慢してまで見たいのかねぇ…。)ハァ…、まあお前が良いなら別にいいよ。」
 そう言って御坂の手を掴む、が
「ひゃ!?」
 つかんだ瞬間振りほどかれてしまう。
「な、なんだよ!手を繋がないといけないんだろ?」
「う、うるさいわね!わかってるわよ!」
 しばらく上条の右手を凝視していたが、意を決したように目を固く閉じ、震える手で恐る恐るつかむ。
「(そこまで露骨に嫌がられると傷つくんだけどな…。)そんなに力入ってたら今日一日持たないだろ。もうちょっとリラックスできないのか?」
「分かってるわよそんなこと…。(落ち着ける訳ないじゃない…!)」
 手を繋ぐだけでこの騒ぎである。
 今日一日持つのかと、上条の心配も尤もだ。
「ほら、手を繋ぐのが目的じゃないだろ?早く行こうぜ。」
「あ、うん。(ほんとはこっちが目的で、猫はついでなんだけどね…。どうせこいつにはそんな事わかんないわよね。)」
 そう、御坂の目的はにゃんこパークに来るのは口実で、本来の目的は上条と恋人気分でデートなのだ。
 その第一段階はなんとかクリアしたのだが…
(無理無理!手を繋ぐだけでこれなのに、これ以上できる訳ないじゃない!)
 前途は多難であった。

 この日は休日と言うこともあり、パーク内にはカップルもそこそこ見受けられた。
 そのほとんどは上条達と同年代のカップルであったのだが
「…どう考えても見られてるよなこれ。」
 やはりと言うかこの二人は目立った。
 二人は、と言うより常盤台生が男連れで居る、と言う事なのだが。
 それが端から見る分には、仲睦まじく手を繋ぎ、初々しい彼女を彼氏がエスコートしている。
 否が応にも目立ってしまうのである。
(ただの友達が手を繋いでるわけないし。この状態、さすがに恋人みたいに見られちまうのかな?兄妹、は無理があるしな…。)
 チラリ、と隣を見る。
 そこにいるのは笑顔の似合う才色兼備の美少女。
 なるほど、この子が恋人なら彼氏も鼻が高いだろう。
 目立つ理由も頷ける。
「(こいつも笑ってれば可愛いんだけどな。ん?笑ってる?)どうした御坂?急にニコニコしだして?」
「ふぇっ!?え、別に笑ってなん…いや、えっと、あ、ほら!私あそこに行きたいなーなんて!」
「あそこって、世界の猫イギリス編ってところか。」
「うん、そこ。ほら、早く行きましょ!」
「うおい!引っ張るなって!なんで急に元気になってんの!?」


「ねえ、みてみて!この子私の手なめてる、かわいいー!うちに連れて帰りたいぐらい!」
 普段猫に避けられている反動だろう。
 御坂は当初の目的を忘れ猫に夢中になっていた。
 その顔はいままでに上条が見たことの無いほどの笑顔であった。
(ふ、不覚にも御坂にときめいてしまった…。クソッ、こいつこんな顔するなんて卑怯だろ!)
「どうしたの?ぼーっとしちゃって。アンタもせっかくなんだからこの子達と触れ合いなさいよ。ねー?」
「ッ!な、なんでもない!…御坂、ちょっと猫から離れろ。」
「えー、何よ急に。」
 不満そうな顔をするが、何事かと猫から離れる。
「そのままじゃ両手が使えないだろ。」
 そう言って右手を御坂の頭に乗せる。
「あ……。」
「一応これでも姫の事は気遣っているんですよ?」
「うん………えっと、ありがと。」
 そういって先程と同様の笑顔を見せる。
「ッ!ほ、ほら!お前のためにやってるんだから、もっと猫と戯れてこい!」
「うるさいわねー、わかってるわよ。ほら、うるさいお兄さんは放っておいて遊びましょうねー。」
 その後御坂は口では悪態をつくものの、終始笑顔だった。
(………やばいな、俺。相手は御坂だっていうのに。いつもと違う面を見ただけで…。)
 そう思いつつも御坂から目を話すことができなかった。

「あら、上条ちゃんじゃないですかー。奇遇ですねー。」
(ギクッ!)
「こ、小萌先生!?な、なんでこんなところに?」
「え、先生って?え、知り合い?」
「う、うん。こう見えてうちの担任…。」
 え、なんで子どもが!?と言う御坂の声は黙殺する。
 上条としては知り合いにこの状態を見られることは避けたかった。
 女の子と、手をつないで デート。
 なんとか言い訳する方法を考えていたが
「先生もですね、たまには本物の子猫ちゃん達に癒されたいのですよ。ところで上条ちゃんは…、はっはーん。先生お邪魔だったみたいですね。それじゃあ後は若いふたりに任せて邪魔者は立ち去るんですよー。」
 捲したてる。
「あ、先生ちょっと!」
 上条ちゃんがんばるのですよーと手をひらひらさせながら去っていった。
 上条には言い訳する時間すら与えてもらえず頭を抱えていた。
 これがもし小萌先生からクラスメイトにばらされたらと思うと
「………不幸だ。」
 そう言わずにはいられなかった。
 一方の御坂は、上条との仲を勘違いされて
「や、やだ、別に恋人なんかじゃないですよ。そりゃあ、嫌いじゃないけど…。」
 などとごにょごにょ言って一人旅だっていた。
 ところが上条の「不幸だ」という言葉を聞くと表情を一変させた。、
「(これバレたら俺どうなるんだろ…。明日学校行きたくねぇ…。)ハァ…。」
「………ごめんね。私のせいで…………。」
「ん?いや、別にお前のせいじゃ…御坂!?」
 上条は隣に目を向けて驚愕の声を上げた。
 御坂の体は震え、この世の終わりのような顔で、目からは涙が溢れそうになっていた。
「ごめんね……私、なんかと、変に、勘違いされて…。」
「御坂…。」
「今日だって、私のワガママで、アンタに、迷惑かけて…。これじゃあ、不幸、なのは、私のせいだよね……。」
 ここでようやく自分が不用意に発した「不幸だ」と言う言葉に、目の前の少女が傷付いたことに気づく。
「御坂違うんだ!俺が不幸だと思ったのはそうじゃなくて!」
「……え?」
「あーなんていうか、御坂みたいな可愛い子と遊びに来てるのがバレたら、クラスメイトにぼこられそうだったからであって…。
 むしろ光栄と言うか、って俺は何言ってるんだ!って、そういう御坂こそ、俺と勘違いされて嫌だったんじゃないか?」
「ち、違う!私はアンタとなら勘違いされたって!」
「え?」
「……あ…。」
 思わず口に出してしまった。
 我に帰ったところですでに手遅れである。
 いくら鈍感な上条と言えど、これは流石に気づかないわけがない。
「あの、御坂、それって…。」
「……………。」
「……………。」
「……………なにか言いなさいよ。ごめんとか、悪いとか。」
「……なんで断るの前提みたいなんだよ。」
「……アンタが私のことどう見てたかなんて、知ってるわよ。」
「まあ、つい昨日までならそれも当たってたかもな。」
「え?」
「なあ、ちょっと聞きたいんだけど。お前の電磁波って、猫以外の動物にも影響あるの?」
「え…?うん。差はあるけど、大抵の動物には影響与えると思うわ。」
「そっかそっか…よし決めた!来週同じ時間に今度は水族館に行こう!」
「は?え?アンタ急に何言ってるの?」
「俺が一緒にいれば、そういう所に行けるだろ?」
「え、だって、そんな事したら、アンタまた勘違いされちゃうわよ?」
「んー、俺は御坂だったら勘違いされてもまあいいかなって?」
「ア、アンタそれって!え、うそ、え?」
「さっさと次行こうぜ。一日券が無駄になっちまうから。」
「きゃっ!ちょっと引っ張らないでよ!」
 自分の気持ちを知ったのにその答え方は卑怯だ、と思った。
 そんな卑怯な少年には罰として、能力を防ぐため、なんて言い訳出来ないようなところに連れて行こう。
 少年がはっきりと気持ちを口にするまで、何度でも、何度でも。

「絶対に言わせてやるんだから、覚悟しなさいよ。それまでは代わりに私が言ってあげる。大好きだよ。」


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