シェアワールド@霧生ヶ谷市企画部考案課

暮香さんのさがしもの に

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匿名ユーザー

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 間借りしている小さなビルの薄暗い階段を登る。
 度重なる事務所半壊&全壊の末、ついに立て付けが悪くなったドアを強引に開け、なんとなく狭苦しい事務所に着いた俺は、ソファに腰を下ろし、紙袋から取り出したハンバーガーを思い切り頬張った。
 気がつけば生活の一部として欠かせないものになっている昼食のハンバーガーを咀嚼しながら、ランディはなんとなく、しかしこの上なく嫌な寒気を覚えていた。
 それは、虫の知らせや第六感と言うべきかもしれない。
 いきなり扉が開き、おどおどした小学生っぽい女の子を無理矢理従えた、サブマシンガン両手に満面の笑みを浮かべる女の姿を見た時、彼は自身の感覚が正しかったことをよーく理解した。
 神よ、もしいるなら聞いてくれ。
 確かに女の客に訪ねてきて欲しいとは思ったし、願いを叶えてくれたことには感謝する。
 が、できれば次からは普通の女で頼む。
「出前アルヨー!」
「…デジャヴか?」
「くたばるアルヨーっ!!」
「わけわかんねぇよ!!」
「わーっ、暮香さんっ、なにぶっ放してるんですかーっ!!
あー、ソファーも机もむちゃくちゃです…」
「弁償ならできないわっ!」
「できてもこういうことはやらないでくださいよぅ…
いつも謝るのは私なんですから…
というか、どこでマシンガンなんて手に入れたんですかぁ!
日本ですよ、ここ!?」
「もちろん、アウトローライセンスを私が持ってるからに決まってるじゃないの!」
「そんなバカな!
俺だって手に入れるのには色々面倒が…」
「ふっ、道で落ちてたのを拾ったのよ!!!」
「そんなバカなっ…!!!」
「それ明らかに別人のじゃないですかぁ!!!」
「愚問ね!
申請所に行って引っ越したって説明してきたのよ!!!」
「名前は!?」
「親が離婚したって説明したわ!!」
「いや、苗字はいいとして、名前!」
「洗礼名ということで説明しておいたわ!!」
「そんなことで許可が通るんですかッ…!?」
「クソッ、なんか今すぐ仕事投げ出して帰りてぇよ…」
「探偵さん、元気だしてください…
暮香さんを前にして、この程度の被害で済んだことを幸運ととるべきなんです…」
「そうか…ありがとうよ、嬢ちゃん…」
「そうそう、今日は探偵のランディ・シンプソンさんにちょっと聞きたい事があって来たのよっ!」
「「今更っ!?」」

 …で、渋々話を聞いたところだ。
 どうやら、このマシンガン女…南 暮香というらしい…が、なにか重要らしいものを失くしたらしい。
 正直知ったこっちゃねぇ、ってところだが…
 信用商売である探偵業、話も聞かずに追い払ってはどんな噂が立つかわかりゃしねぇ。
 それに、泣きそうな顔で繰り返し謝罪するもう片方の少女…璃衣子とやらを見てると、子犬でも相手にしてるような気分になっちまって、どうも追い払うに追い払えない。

「…で、結局私が探してるものって何!?」
「それを俺がわかるかっ!
あんた自身ですらわかってねぇことを!」
「探偵ならわかりなさいっ!」
「無茶を言うな!
俺はシャーロック・ホームズを名乗った覚えはねぇ!」
「探偵ってのは、あれが基本スキルなのよ!!」
「当の探偵を前に決めつけるんじゃねぇ!!
よく聞け南さんよ、今時の探偵の主な基本スキルは尾行、んで主な仕事は不倫の調査だよ!」
「そ、そうなんですかぁ…?」
「あ、いや、そればっかってわけでもねぇけどよ…」
「ふーん…探し物なら探偵だと思ったんだけど…まぁいいわ!
探偵でもわからないのなら、人にさがしものの正体を尋ねるのは無理そうねっ!
なら、私は別のルートで探すまでよっ!」
「だからその探偵に対する先入観をどうにかできねぇのか!?」
「というか、そんな安直な考え方でここに来たんですかっ!?」
「とりあえず、腹が減ったわ!!」
「聞けよ、人の話は!!」
「情報収拾を兼ねて昼飯よっ!!
いくわよ、りいこっ!!」
「ご、ご迷惑をおかけしまし…
 ひぁっ、まだ謝ってませんからちょっと待っ…
 ひ、引っ張らないで~…」
「じゃ、お邪魔したわねっ!」

「…い、行っちまいやがった…
 ったく、来るも帰るも騒々しい…
 …いや、というか、どうしてくれるんだこの事務所の惨状は!?
 ついこないだ修理したばっかだってのによぉ!
 …っ、バカヤロッー!
 てめぇら二度と来るんじゃねぇ!!」

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