神戸市須磨区の私立滝川高校で3年生の男子A君(当時18)が飛び降り自殺した事件で兵庫県警は9月17日、同級生の
少年B(17)を恐喝未遂容疑で、
25日にはやはり同級生の少年2人を同じ容疑で逮捕した。
A君は7月3日午後、授業中に「トイレに行きたい」と席を立ち、校舎の5階から飛び降りて自殺した。ポケットから発見された遺書には、
〈借金が増えて夏休みが終わるまでに返せない。責めないで〉
などと書かれていたという。県警の調べでは、少年BからA君に、金銭を要求するメールが頻繁に送られていたことがわかっている。
逮捕された少年らは昨年、A君を含む5人で「フットサル同好会」を結成していた。学校側は「仲良しグループと思っていた」と説明するものの、内情は
「仲良し」などではなかった。
「メンバーは『嘘をついたら一人1万円払う』というルールを作っていたが、A君だけが集中して金銭を要求されていた。メールの内容から推定して、総額
で50万円近く要求されていたようだ」(捜査関係者)
それだけではない。少年らはインターネット上にあたかもA君自身が作ったようなホームページを作成し、A君の住所、氏名などの個人情報を公開。さらに
A君の下半身を露出した写真まで掲載した。
学校側は9月21日にようやく正式にいじめの事実を認めたが、インターネット上の掲示板には、
「学校は以前からいじめを把握していた」
「いじめ隠蔽のために校長が、逮捕された少年にA君の棺を持たせた」
などと”内部告発”的な情報も書き込まれていた。
「被害者の親御さんに『男手が不足でしたら手助けします』と声をかけた。それで一番親しい子たちが棺を担いだんです。彼らがいじめてたなんて、その
時点で思わないじゃないですか」(桐山智夫校長)
だが、実際には地域の人々もいじめの存在に気がつき始めていた。
A君がよく通った飲食店の店員はこう振り返る。
「ある日、『Aがいじめられてる』と聞いて本人に問いただすと、『じゃれてるだけや』とはぐらかされた。『俺が文句言ったるわ』といっても、『様子
見ますから』って止められて、しばらくして『もう解決しました。ありがとうございました!』って電話があった。今考えると、心配させないためのウソ
やったんかもな」
ただ、学校の近くでは数人分のカバンを持たされたA君の姿が目撃されている。優しすぎるA君の性格が災いしたのか。
遺書には、いじめた複数の同級生が名指しされていたとも報じられたが、捜査関係者はこう明かす。
「実際はいじめた少年の個人名はもちろん、恨みつらみも書かれていなかった。ただ〈今まで育ててくれてありがとう〉という両親への感謝の言葉と、
〈仲間はずれになりたくなかった〉などと書かれていました」
あまりに切ない最後の言葉――。 (本誌・小宮山明希、山岡三恵)
最終更新:2008年02月09日 21:29