帝國製品高級化計画の一環であるこの船は、豪華客船1隻を病院船に改装し、各地からかき集めた最良の医療機器や薬剤(その大半が欧米製だった)が搭載されており、乗り込む医師も、選りすぐりの腕利き達だ。
しかも護衛として、特別陸戦隊まで乗り込んでいる。

この船は世界各地を回り、病人を募って治療しているのだ。
その対象は、世界各地の有力者で、現地医療では治療できない程重篤な者。
それ故、病室も豪華であり、付添い人たちの控え室や宿泊施設まで存在する。
加えて患者のプライバシーにも十分配慮し、病人とその従者達毎に区画が割り当てられているため、他の患者とは顔を合わせないでも済む様にされていた。
これ程豪華な『病院』は、帝國国内にも存在しないだろう。

当然、代金も高額で、正に『足下を見た』価格といえた。これが支払えるのは、余程の大富豪か大貴族位のものだ。
だから帝國には、良い小遣い稼ぎになるし、『資料収集』としても役に立っている。
この船に来るのは、自国では到底治療不可能な難症例ばかりであるから、その患者――当然、その国最高レベルの治療が施されている――から様々なことが分かるのだ。

この世界の病気の種類とその治療法。その治療レベル。
そしてこの世界の人間について……
これらの情報は将来、非常に役立つ筈だ。
さて、当たり前のことではるが、全ての患者が助かる訳ではない。
むしろ助からない患者の方が多い。

だが、『この船でなら助かるかも知れない』という思いと、『この船に乗って助かった者も多い』という現実の前には、そのような事実は『些細なこと』でしかなかったのだ。

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最終更新:2006年05月05日 21:13