転移世界では高級将校は軍人であり、外交官であり、政治家でなくてはいけない。戦前戦後の交渉、制圧地域の統治等、地元勢力を無視しては成り立たない為である。
しかし階級社会である転移世界の諸国は平民出身の将校が応対にあたると、いかにその将校が実力ゆえに高い地位をもっていても相手は侮辱されたと感じ、交渉が難航または禍根を残す事になるのである。
そこで華族出身の物が外交の任に当たることになった。
これが典礼参謀という新しい役職である。
軍はその身内意識から外務省などの外部の人材を入れる事を良しとせず
レムリア派遣軍の
有馬典礼参謀のように一介の中隊長からでも出自が華族であるならばと登用した。
しかし一口に典礼参謀といってもその内実は様々である。
まず文字通りの『御飾り』である高位の者と、『実働部隊』である比較的軽輩の者。
軽輩の中でも本人の適正により、『外回り』か『内仕事』かに分けられる。
彼等、典礼参謀の職務は、大雑把に分けて次の三種類が揚げられる。
『軍の外交官として、相手国の有力者との調整を行い、軍の行動を円滑なものとする』
『司令官に対し、この世界に対する儀礼一般、風俗に対する助言を行う』
『その肩書きを利用して、情報収集を行う』
これ等の全てを行う者もいれば、どれかを主任務とする者もいる。
この職分を見ると、
有馬典礼参謀が普段おこなっている行動が、かなり本来の任務からは逸脱していることが分かる。
これは彼が『典礼参謀』だけではなく、『陸相補佐官』も兼ねており、陸相(つまり帝國宰相)直属で動いているからだろう。
その為、彼の権限は大きく、たとえ有馬典礼参謀より階級が上の者が率いる軍の部隊でも彼の要請があれば、部隊を貸し出さなくてはいけないほどである。
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最終更新:2006年05月13日 14:16