実のところ、帝国にとってこの戦争は、別にロッシェル王国自体が目的ではなかった。本当の目的は大陸同盟を解体し、その諸国を経済的に(もちろん軍事的にも)、帝国の影響下に組み込む事にあったのだ。

ロッシェル王国はその加盟国であり、中核国の一つでもあった。そのロッシェル王国の脱落は大陸同盟の弱体化、ひいては崩壊に繋がるだろう。そう帝国は判断した。

その後、帝国とロッシェル王国は些細な理由から衝突し、軍事紛争が起こった。この「軍事紛争」はロッシェル王国にとっては全力を傾けた「戦争」だったが、帝国にとっては「局地紛争」にすぎなかった。

そして、帝国には「局地紛争」に止めればならない理由があった。「局地紛争」ならば他の「大陸同盟」諸国に参戦義務は無いのだ。だからこそ帝国は、最初の一撃には第1航空艦隊を
用いたが、その後はロッシェル王国よりも遥かに少ない戦力で戦い続けたのだ。その目論み通りに、他の同盟諸国は参戦を拒否し、形ばかりの資金援助と義勇軍派遣を行ったに過ぎなかった。もちろんこれには帝国の政治工作の影響もある。帝国は既にその傘下にある諸国に、同盟諸国に対する政治工作を命じたのだ(もっとも、一番影響を与えたのは、上陸時に見せた第1航空艦隊の打撃力であったが)。その結果がこの戴冠式だ。

ロッシェル王国の脱落に、「大陸同盟」諸国は動揺した。それはそうだろう、「大陸同盟」の無力さを全世界に曝したのだ。これからは列強の圧力を直に受ける事になるだろう。

そこに帝国は手を差し伸べたのだ。帝国は列強諸国と異なり、領土的な野心を持たない。現に、大敗したロッシェル王国にさえその存続を許した。いま帝国の陣営に入れば、帝国の一邦になることなく、その保護を受けることができるだろう。

その効果は絶大だった。既に多くの国々(大陸同盟に未参加の国々からも!)からの接触があった。彼等は、帝国を盟主とした同盟への参加を打診してきたのだ。そう遠くない将来、大陸をまたいだ大同盟が成立するだろう。帝国は、この世界のパワーゲームに参加する事を決意したのだ。

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最終更新:2007年07月22日 16:49