帝國国内の社会世論
昭和17年半ば~末
帝國は突如として異世界へと『神隠し』に遭う。だが國民に知らされたのは、昭和17年も半ばを過ぎての事であった。この『神隠し』は『転移』と政府から発表されたが、國民にとってはその様な『ハイカラ』な言葉よりも、『神隠し』の方が余程分かり易く現実を物語っていた。
彼等はこの現象を『神隠し』と呼んだ。
國民の戸惑いは殆ど(というよりも全く)無かった。彼等にとって、外国など縁の無い所であったし、どうでも良い事だったのだ。
これが『元の世界に身内を置いて』なら話も違ったであろうが、幸い全ての國民が戻ってきた。海外の権益・領土全てを失ったが、まあそれは『自然災害』みたいな物、不幸だが仕方の無い事だ。家族・親族が無事戻ってきただけでも良しとしなければならないだろう。
そんな事よりも、漸く先の見えない戦争が『終わった』事に、誰もがホッとしていたのである。
昭和18年~昭和19年初頭
この時期の帝國は、未曾有の好景気の真っ只中にあります。
膨大な資源に裏付けられた好景気は、上昇の一途です。
この時期では、本国と一部地域の開発に限定されていますが、その後は帝國影響下の大陸にまで波及していく筈です。今後数十年に渡り、飯の種には不足しないでしょう。
帝國の版図は益々増えていき、夢は広がる一方です。
……と、大多数の帝國國民は考えています。
終わりの見えなかった戦争の終結と、大規模な動員解除。突然訪れた平和(戦争に慣れ過ぎた國民にとって、現在の『師団規模での戦闘』など地域紛争程度でしかない)。
増え続ける邦國―新聞あたりでは『壱千諸侯』と喧伝―と領土。まだ誰も知らぬ未知の大陸。
長年の悲願である大資源地帯の確保。
そして当分は続くであろう(と思われる)好景気……
國民は、この『奇跡』に熱狂していたのです。転移という摩訶不思議な現象も、『奇跡』をもたらした『天佑』として崇めています。
…しかしその経済実態は、マグロの様に止まった瞬間に死亡するという、自転車操業経済なのです。
これは軍が大陸で活発に活動し、予備の備蓄を食いつぶし続けているせいでしょう。何しろ予定外の活動ばかりで、これに大量の輸送船やタンカーが割かれていますし、石油消費量も相当なものです。まあ根本的には、『船が足りない』のですが……
政府首脳部や一部高級官僚、大陸に展開している軍の首脳部――彼等は肌で石油不足を実感している――は、石油不足・資源不足に対して大きな危機感を抱いています。
しかしその反面、一般大衆は無論、大多数の企業経営者もこの危機に気付いていません。 ……まあ、気付いたらそれこそ大変ですが。
皆、資源地帯の確保により安心しきっていますし、国家備蓄量や需要・供給量なんて国家機密です。景気の良い話ばかり(資源地帯確保・連戦連勝・帝國壱千諸侯・動員解除・好景気……)ですし、有る意味仕方が無いでしょう。
(もちろん気付いている人もいますが、気付く程の人は口をつぐんでいます)
最終更新:2006年05月17日 21:06