こなたの体育祭
15-458 (ボツワナ)
こなたは、母の仏壇に手を合わせ、母に報告した。
こなた「お母さん、私にも友達ができたよ。」
中学時代友達らしい友達がいなかったこなたに、一緒に行動する友達が出来た。
こなたは生まれて初めて友達っていいなと思う時間を過ごしていた。
中学時代は、話し相手もなく、ゲームを学校に持ち込んで、ゲームに集中することで、
寂しさを紛らせていたこなただった。しかし、高校にはいりやっとその寂しさから開放されたのである。
近日は、かがみ、つかさという友達と、糟日部駅で待ち合わせて学校へ行くぐらい親しい間柄になっていた。
昼食はこの二人の他に、かがみと仲の良いみゆきが加わって四人で食べるというのが日課となっていた。
ある朝、こなたがいつもの時間に糟日部駅の約束の場所でかがみとつかさを待っていた。
いつもかがみたちが約束の場所に姿を現す時間なのに、かがみもつかさも姿を見せない。
こなたは、何かあったのかと思いながら、しばらく待つことにした。
しかし、いつまで立っても姿を見せない。こなたはこのままでは遅刻してしまうと思い。
後ろ髪を引かれる思いでバスにのった。
遅刻ギリギリの時間であったが結構陵桜生が乗っていた。
みんな友達と一緒で、楽しくお喋りしながらの、楽しそうな登校姿であった
なんだか、自分だけ一人で乗っているのが場違いな気になった。
学校に着いたこなたは急いで、上履きに履き替え、教室に向かった。
教室が何だか騒がしい。
こなたがいつも通りに教室に入ると、教室の全員がこなたを見た。
こなたはいったい何があったのだろうと思った。みんな自分のことをじろじろみている。
視線が集中する中、こなたは遠慮がちに、自分の座席にむかい、鞄を席の横に掛けた。
そして、こなたは、いつも通り教室に入り、仲の良いつかさとみゆきに声を掛けた。
こなた「お、おはよう、つ、つかさ、み、みゆきさんおはよう。
きょ、今日どうしたの、糟日部駅でいつもの時間に待っていたのに?」
つかさ「こなちゃん、こなちゃんのお父さんて変態でロリコンな上に、ヲタクなんだってね。
こなちゃん、もう近寄らないでくれる。」
みゆき「私も左様お願いします。
泉さんのお父さんが、体育祭で、泉さんを応援するふりをして、
私達、女子学生の写真を取り捲っていたらしいですね。驚きましたわ。
いやらしい方なんですね。
私は、泉さん一人のことを熱心に撮っていたのだと思い込んでいました。
ところが、泉さんだけでなく学校中の可愛い女子学生の写真を片っ端から、撮っていたなんて、
なんていやらしい方でしょう。
きっと、望遠レンズで、胸だとか、お尻だとかそういうところばかりを狙って撮っていたんでしょうね。
体育祭は飛んだり跳ねたりが多いですから、
私のように凹凸のはげしい者なんかは、
凹凸のゆれる様子なんかを連続写真で撮ったりしたのでしょうね。
泉さんと同じ学校に通っているだけで、いやらしいロリコン親父から、
今にも犯しそうな目で見られ、犯すような目で写真まで撮られてしまうなんて。ショックです。」
つかさ「ゆきちゃん美人だし、スタイル良いし、巨乳だし。
きっとこなちゃんのお父さんから何枚も写真撮られているよ。
娘であるこなちゃんが、ゆきちゃんのこと『歩く萌え要素』とかいっていたから。
私もお姉ちゃんも、みんな犯すような目で見られ、写真を撮られたんだわ。
こんなエロ親父、学校に引き込むことになったのはこなちゃんがいるからだよ。
こなちゃん、存在自体がめいわくなんだよ。」
こなた「な、何があったの?教えてよ。」
つかさ「こなちゃん、今朝、教室にきたらこんな写真が出回っていたの、知っている。」
つかさは何枚かの写真をこなたに手渡した。
つかさ「これこなちゃんのお父さんだよね。みんな凄く怒ってるよ。」
そこには体育祭の日に、陵桜学園の女子学生の写真を取り捲っているそうじろうの姿が映っていた。
しかも、そのそうじろうの撮っている被写体にはこなたが入っていない。
そうじろうのやっていることは、娘の記念写真を残すという名目で、
ロリコン親父が女子高生の躍動する肉体を写真に撮っている姿であった。
つかさ「こなちゃんのせいで、私もゆきちゃんも、お姉ちゃんも、
みんなロリコン親父のオカズにされちゃうよ~。」
みゆき「気持ち悪いですわ。」
こなたは言葉に詰まった。なんと応えればいいのやら。
こなた「ごめん、迷惑かけて。お願い友達でしょ。許して。」
つかさ「友達っていわれてもね~。」
みゆき「友達といっても許せることと許せないことがありますし~。」
こなた「・・・どうすれば良いかわかんないんだ。」
「なんでそんなに責められなくてはならないのか?」こなたはおもった。
自分がやったことではないのだ、あくまで写真を撮ったのは父親なのだが・・・。
しかし、そんな主張の通る様子ではなかった。
こなたは涙声になりながら、
こなた「みんなごめんなさい。迷惑かけたと思うよ。許して。」
こなたは丁寧に謝りなおした。
こなたは精神的に限界であった。そんな時、助け舟が入った。
黒井先生「おい、お前ら何やっとるのや、ホームルームはじめるで。」
黒井先生が来てくれた。こなたは助かったと思った。
黒井先生の登場は根本的にこなたを救うものではなかった。
つかさもみゆきもこなたと視線を合わさないようにしている。
こなたはこの日一日、休み時間は出来るだけ教室の外で過ごすことにした。
教室にいたらどんなときにまた、責められるか解らないからである。
そんなとき廊下を歩いているとかがみとであった。
こなた「かがみ、大変な事になちゃったよ。
お父さんが女子を隠し撮りしているのばれて・・・・」、
こなたは泣きながらかがみに訴えた。かがみがなんとかしてくれることを期待したのであった。
かがみ「知らないわよ。もう私に近寄らないで。私まで盗撮の一味だと思われちゃ叶わないわ。」
こなた「そんなかがみまで、・・・・。助けてよどうしたら良いかわかんないんだよ。」
かがみ「はっきり言って、私もあんたのお父さんの盗撮の被害者かもしれないのよ。
なんであんたを助けなきゃいけないの?」
こなた「そんな、かがみまで・・・。」
かがみ「わかったら、もう私に近寄らないで。」
そういい残すと、かがみは逃げるように去っていった。もはや、こなたには頼る人がいなくなった。
昼食の時間になった。いつもならば、こなたはかがみ、つかさ、みゆきと机を並べて昼食を食べるのだが、
今日からはこなたは一人、屋上で食べることになった。こなたは泣きながら、弁当を食べた。
涙が口の中に入り、弁当がしょっぱくなっていた。
授業が終わって、帰るときもこなたに近づくものはいなかった。
いつもなら、つかさやみゆきが一緒だった。
だが、もはやつかさもみゆきもこなたと行動をともにしようとはしなかった。
こなたは一人で、家路に着いた。
次の日、こなたは、とにかく学校に行かなくてはと思い、学校に向かった。
学校に行けば辛い思いをするだけだが、そうじろうに心配をかけたくないという思いから、
学校に行く外道がなかった。重い足取りで、電車に乗り糟日部駅でおりた。
もしかしたらと思い、今まで糟日部駅のつかさやかがみと待ち合わせた時間に、
待ち合わせ場所に行って見たが、やはり誰もいない。自分は
一人ぼっちだと思った。
教室に着き誰とも会話せず、席に着いた。かがみとみゆきとつかさは三人で楽しそうに話しこんでいる。
こなたの様子を気にするそぶりも見せない。
こなた「つかさ、みゆきさん、盗撮の件は本当に迷惑かけたと思う。心から申し訳ないと思う。
だから今まで通り、仲良くしてよ。」
つかさ「こなちゃんのせいで私達盗撮されたんだよ。
そんなに簡単にこの事件を無かったことになんか出来ないよ。」
みゆき「たしかにそれはありますね。
神聖な学び舎で、欲情した目で婦女子を見るような方とは仲良く出来ません。」
こなたは、そうじろうの盗み撮りの写真がばら撒かれた日以来ほとんど誰とも喋っていない。
寂しさが、胸の中に広がっていた。
こなたは段々学校へ行くのは嫌になり始めていた。学校で話す人がいないからだ。
話しかけても、無視されたり、冷たくあしらわれたりするだけであった。
ある日、ついにこなたは学校に行けなくなった。
家の中に引きこもり、ゲームや、ネットの中に、逃げ込むようになった。
そうじろうは心配し、こなたにたずねた。
そうじろう「いったいどうしたんだ。なんで学校に行けないんだ?」
こなた「どうしても体調がわるくて。」
「そうじろうが盗撮していたせいで学校に行けなくなりました。」とは言えなかった。
こなたが引きこもる日々が続いた日曜日の前日、そうじろうがカメラの手入れをしている。
そうじろう「あしたの日曜日、お父さんでかけるから。」
こなた「出かけるって何処に、」
そうじろう「いやあちょっと、ハハハ・・。」
こなた「もしかしたら、何処かの学校の体育祭?」
こなた怒りがこみあげた。自分がそうじろうの、変態的な趣味のせいでこんなに苦労しているのに、
そうじろうはまだ、変態的な趣味を慎むことなく、
何処かの高校で、女学生の写真を取り捲ろうとしているのだ。
こなたはどうしても我慢できなかった。
こなた「おとうさん、もう、女学生の写真撮りに行くの止めて。」
そうじろう「良いじゃないか。」
こなた「おとうさんが、うちの学校の体育祭で、みんなの写真を撮っているのがばれて、
私がみんなからいじめられているのだから、お願い、写真は止めて。」
そうじろうは頭に血が上った。
そうじろうは、後ろめたい行為を非難されたことで、
逆に怒りが爆発したのだった。
そうじろう「こなた、お前誰の金で学校行けていると思ってるんだ。
ちょっと甘やかすと調子に乗りやがって、
俺をロリコンでキモオタだと思いバカにしているのか。」
そう怒号を上げると、こなたのアホ毛を鷲掴みにした。そして、力いっぱいこなたを平手打ちした。
こなた「きゃあ。」
そうじろう「生意気な!」
こなた「お父さんが、女子学生の写真を撮るから、私は学校で、みんなからイジメられるんだよ。
お願いだから、そんなこと止めてよ。」
そうじろう「おれが何処で何を写真に撮ろうが関係ねーだろ。」
こなたは涙をこぼし始めている。
こなた「ぎゃあ。」
更に、そうじろうは、こなたを連続して往復で平手打ちした。
こなた「うぐぅ、はぁ、ぐうっ」
こなたは殴られる度に、うめき声を上げた。
こなた「お父さんお願い、盗撮なんか止めて。」
この日、そうじろうは、こなたがどんなに頼んでも、女学生の盗み撮りを止めるとは言ってくれなかった。
そればかりか、盗撮を止めてくれと、こなたが言うと、更に、こなたに暴力を振るうのであった。
こなたの気持ちはそうじろうから離れた。そうじろうはこなたのことは考えてくれない。
しかし、学校にも居場所がなく、家にいても、そうじろうの顔は見たくない。
結局、こなたには居場所がなくなってしまった。
こなたは人生に絶望した。近所の薬局で睡眠薬を購入した。一軒だと怪しまれると思い。
いくつかの店に分けて購入した。
こなたは、自分の部屋の中で、人生の最後に見ておきたいものを見た。漫画やアニメのDVDなどである。
しかし、一番の願いは最後に、かがみ達ともう一度会い、楽しい時間を過ごすことだった。
こなたは、かがみ達と過ごした楽しい時間の思い出の品々をみて、楽しかった時間のことを思い出した。
こなた「そういえばかがみ達といろんなところへいったな。
海水浴にもいったし、
コミケに連れて行ったりもしたな、
何年も続けていったコミケだが、やはりかがみ達一緒に行ったときが一番楽しかったな。」
こなた「おかあさんのところへ行くのか。」
こなたは写真でしか知らない母を思った。
こんなところで自殺したら、もし天国で母に逢ったとき、母はこなたを怒るだろう。
こなた「でも、お母さん、もう疲れた。もう良いよね、十分だよね。」
こなたは、母に弁明した。
こなたは、買っておいた睡眠薬を大量に飲み、自らの手首の頚動脈をカッターで切った。
真紅の血が噴出し、意識が遠くなった。
泉こなた享年17歳
翌日、そうじろうは昨日の自分の乱行を恥じた。こんなところをかなたが見たらどれほど悲しむだろう。
そうじろうはこなたにきちんと謝り、そして、もう女学生の盗撮は止めようと決心した。
そうじろう「こなた、昨日は悪かった。もう暴力は振るわないし、
こなたの言う通り、金輪際、女学生の写真を盗み撮るのは止めるよ。
おーい、こなた、怒ってないで返事しておくれ、
本当にお父さん悪かったと思ってる。
ドアを開けておくれ・・・・・。」
中から物音がしない、そうじろうは、いよいよ事の重大さに気づいた。
そうじろう「こなた!いいか?あけるぞ。」
こなたはベッドの上で、手首を切り血まみれになって死んでいた。
そうじろう「こ、こなた!?」
そうじろうはベッドに横たわるこなたを抱えて揺さぶった。
そうじろう「こなた、しっかりするんだ、こなた。目を開けてくれ。」
そうじろうはこなたの胸に耳を当て心臓の音を聞いた。心臓は止まっていた。
そうじろう「こなたぁぁぁぁぁぁ。うわーぁぁぁぁぁ。」
そうじろうは髪の毛をかきむしり叫び声を上げた。
そしてありえない奇跡に期待して救急車を呼んだ。
そうじろう「何でこんなことに・・・。」
「何で」といっては見たものの、責任はそうじろう自身にある。
たかが女学生の写真を撮れなくなるぐらいのことで、
何故あんなに自分が逆上したのか自分でも解らないぐらいだった。
そうじろう「あじゅあぁぁ、ううっ、・・・かなた俺はどうしたら良いんだ。」
後悔に苦しむそうじろうの横でこなたは冷たくなっていた。
救急車が来た、こなたは変死なので司法解剖され、その死因は出血多量だった。
警察は自殺と断定した。警察から冷たくなったこなた無言の帰宅をした。
その日一日、そうじろうは荒れ狂った。家中の物を投げつけて八つ当たりをした。
かなたに続いてこなたまで失うことになってしまったからである。
そんなとき泉家の電話が鳴った。電話主はかがみだった。黒井先生に頼まれて、
学校に来なくなったこなたの様子を伺うためである。
かがみ「高校でこなたさんにお世話になっている、柊ですが、こなたさんはいらっしゃいますか。」
そうじろう「こなたは、自殺しました。
今までこなたと仲良くしていただいたそうで、ありがとうございました。」
かがみ「ええ!自殺ですか。」
そうじろう「何でこんなことになったのでしょうか?」
かがみ「おじさま、こなたさんのことを本当に愛していましたか?」
そうじろう「もちろんですよ。愛しい娘であり、亡き妻の忘れ形見ですよ。」
かがみ「ならばもっとこなたさんの身になって行動すべきだったのでは?」
そうじろう「いつだってこなたのことを考えて行動していましたよ。」
かがみ「おじさまは、こなたさんのことを、娘として愛していましたか?
フィギュアやギャルゲ、育てゲーのキャラぐらいにしか思っていなかったんじゃないですか?」
そうじろう「失礼な!こなたを私は娘として愛していた。たかが友達のあんたに何がわかるというのだよ。」
かがみ「あんたさあ、初対面の時にいきなりハァハァしてやがったし、初詣の時も場所弁えずに盛ってたしな。
心証は真っ黒。遊びにいく度に盗撮されてたんじゃないかと思われても不思議じゃない。
私は、少なくとももう二度と泉家に行く気にはならないな。
自分の友達に自分の父親が欲情している姿を見せ付けられた娘のみにもなれよ。
あんたが親じゃあ、娘の友達は父親が気持ち悪いって言い出して、娘に友達出来なくなるのわからねーのかよ。
だからこなたは死んだんだよ。それじゃあ。」
そうじろう「まて、」
かがみは電話を切った。そうじろうは自分の無神経さがいかに娘を苦しめていたかを知り、
生きる気力はなくなっていた。
そうじろうは、ついにかなたの待つ冥土へと旅立つのであった。
かがみの口からこなたの自殺した事件のことは耳にはいったが、
かがみもみゆきもつかさも興味がないらしく他人事のような顔をしていた。
こなたの自殺は、かがみたちにとって普通の記憶と同じように、
これからの出来事の下に埋もれてゆくだけであった。
終わり。
最終更新:2024年04月25日 21:02