2020年 総評案 > 総評案4

2020年総評案4 大賞:LOVE・デスティネーション

【2020】 クソゲーオブザイヤーinエロゲー板 総評審議所
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/game/58649/1613181301/
56: 総評4 ◆qZUASUzsaY :2021/03/13(土) 22:32:49 HOST:M106073034065.v4.enabler.ne.jp
クソゲーオブザイヤーinエロゲー板(KOTYe)。一年で一番クソだったエロゲーを決める祭典である。
昨年の大賞となった『崩壊天使アストレイア』は、ひとつひとつは軽視されがちな小さなクソ要素をコツコツ積み上げ、
その相乗効果によって深淵を生み出し、いつクリアできるとも知れない強大なクソゲーとなった。
果たして今年はどのようなクソゲーが我々の前に姿を現すのか。
クソゲーの探求は、レールの無い荒野を経験と勘を頼りに進むようなものである。平たく言えば遭難寸前だ。
そんな中でもクソゲーハンター達は、僅かでも手掛かりとなる情報の交換に余念がない。
KOTYeも気づけばもう13年目、干支で言えば一回り。ハンター達には胸に抱いている祈りがある。
「クソゲーが出ない年になりますように」
だがハンター達は知っている。クソゲーが出なかった年は無いと。ゆえに皆、ハンターを辞められないのだ。
13年目の死神が微笑むのはどのクソゲーか。2020年のKOTYeが今、まだ見ぬクソゲーに向けて走り出した。

暦は3月、KOTYeの干支一回りを祝うかのような選評が早速到着した。
今年のトップバッターを飾ったのは、デビューから2作連続エントリーとなったDESSERT Softの『神様のしっぽ ~干支神さまたちの恩返し~』。
干支モノとあって攻略ヒロインが13名もいるが、その弊害により立ち絵差分は皆無で、モブは当たり前のように立ち絵なし。
一枚絵の差分も削られており、大量の料理が並んだ食卓で1人ぽつんと座る姿はとてもシュール。
個別ルートのシナリオもヒロイン間で2倍以上の格差が生まれており、作りこみ不足を感じさせる。
さらに個別ルート分岐前にヒロインの設定を掘り下げてしまう事で、トゥルールート以外は蛇足とまで言われてしまった。

昨年も次点作『ギルドマスター』を排出したメーカー、アストロノーツ・シリウスも『絶対女帝都市~叛逆の男・カムイ~』を送り出す。
最大の問題点は不要とまで断じられた拠点制圧パート。隣接した地域を適当にクリックするだけでクリアできる。
立ち回りを気にする必要があるのは1ステージだけ。さらに後半になると一本道となり、シナリオの合間にマップをクリックする作業と化す。
また、Hシーンそれ自体のボリュームは長めにあるが、拠点制圧のためには避けて通れず、スキップも遅いため逆にストレスの原因に。
シーン数も各7回で横並びの中、2回か3回しかないヒロインや、7回中3回が主人公の幻覚による他ヒロインとのシーンなんてことも。
こうなると逆に「なぜ各ヒロイン7回で横並びにしたのか」が分からない。
未完成感の強い本作品のラストは、俺たちの戦いはこれからだ!END。幸か不幸か、続編の情報は今のところ来ていない。

春を待たずに新旧メーカーが急発進する中、発売直後から怪しげな電波をビンビン発してハンター達のアンテナを刺激していた、
謎の新ブランドジェイドの『LOVE・デスティネーション』の選評もKOTYe宛に届く。
転生した2周目の人生でハーレムルートを目指す、いかにもなラブコメ風の雰囲気を装っているが、
漏れ聞こえる内容は無予告でのふたなりヒロイン、電波シナリオ、ルビ完備といったもの。
然してその中身は、身構えていたクソゲーハンター達の想像を遥かに上回っていた。

ゲームを開始してまず目につくのは、全ての漢字に振られたフリガナと、どうでもいい部分を強調する傍点である。
それらが一言で済む話をくどい文章にした上、フリガナと傍点を隙間なく詰め込むことで、読み進めるだけで疲労感をプレイヤーに与えている。
漢字とは別の意味のフリガナも多く、無駄に記号を多用する本作を評して曰く「間違った日本語学習ドリル」。
バックログ機能ならそのフリガナも消えるが、そうすると文字列が意味を成さなくなり怪文書と化す。

そういった苦痛を乗り越えて読み解かれたストーリーやキャラクターにも、本作は大きな問題を抱えている。
未来では独裁者にまで上り詰める黒幕に主人公の学園生活が妨害され、
主人公のスーパー両親やヒロインの親に解決してもらう話。4つあるルート全てがこの調子である。
主人公は理想論を口にするだけで行動しない、全身にブーメランが突き刺さるタイプのクズ。
未来の事件知識で火事になるホテルからの避難を呼びかける真っ当さも持ち合わせてはいるが、
その舌鋒は何故か被害者であるヒロインの父親に向けられ、「自分で限界を決めるな」「男なら女を護れ」などと延々と罵倒する。
ヒロインもふたなり娘、淫紋持ち、ガチ百合、露出調教済み姉妹など、予告なしに来られても困る属性のオンパレード。
プレイ内容も脅迫調教、昏睡拉致逆レイプ、ふたなり射精手伝い、首輪付きで半裸散歩などなど、だいぶハードなものが並ぶ。
こんなプレイを求めるのだから当然どこかイカレている。選評者曰く「みんな喋らないでと思った作品はチーズ(2014大賞)以来」。

つまり『LOVE・デスティネーション』という作品は、事前に印象付けられていたタイムスリップラブコメと大きく乖離した、
「ディストピアから過去に戻った主人公が、叶えようとしない夢や理想をつらつらと語りつつ、
地雷属性持ちだったりする電波ヒロインとHentaiプレイしているうちに、最後は親たちが何とかしてくれる」話である。
自力で問題解決したりしないのでカタルシスも得られず、ヒロイン達に感情移入もし辛い。
さらに読むだけでフリガナと傍点がストレスを与えてくる、紛うことなきクソゲーであった。

ゴールデンウィーク明けには、戯画の『ジンキ・リザレクション』がジンキシリーズ10年ぶりのKOTYeへの帰還を果たした。
前作ではロボバトル漫画原作でありながら、アクションシーンを立ち絵と一枚絵だけで誤魔化していたが、残念ながら本作でも進歩は見られない。
シナリオも敵が仲間内で自滅する展開がほとんど。少なくともストーリーを期待して買うようなものではない。
ではエロの方はどうかと言うと凌辱シーンの評価は高い。だが、シーンを回収する道のりが大きく足を引っ張っている。
このゲームは好感度と操縦練度の両ステータスを1日4回の行動で上下させながら、1か月を過ごすという進め方をする。
さてゲームの大きな問題点として、ステータスの確認ができるのは最初のキャラクター選択時のみということ。
そしてイベントの発生条件が日時、ステータス、特定シナリオ読破、さらにランダムで決まる服装と細かすぎる事が挙げられる。
これらが合わさることにより、目隠しをしながらリセマラを強いられる凌辱シーン回収作業となってしまうのだ。
墓から掘り起こしてはみたものの、シナリオもシステムもボロボロだった本作品。眠ったままでよかったのにと思わずにはいられない。

ジンキの腐臭が呼び声となったのか、サガの方から怒られそうなモンスターも姿を現した。
あかべぇそふとすりぃの『墓多DYINGZOMBIES ~Second Chance for BEAUTIFUL LIVE~』である。
この作品の問題点は「アイドル感とゾンビ感の乏しさ」。
ストーリーは主人公達とマフィアのドンパチが主題で、ヒロイン達が認められる理由は歌や演技ではなく、ドンパチから客を守る肉壁としての行動。
さらにゾンビ肌をペイントで誤魔化していると言いながら普通に温泉に入る上に、ゾンビ肌でのHシーンはゼロ。
血液ワインの酔っ払いアイドルも全身シリコンボディのオナホアイドルも、処女喪失シーンでは普通に血が出る。
誰が呼んだか「全然似てない流行り物コスプレAV」。スタッフが性癖を理解していないエロゲーは死産になる。エロゲーを作るなら肝に銘じてもらいたい。

余談だが、あかべぇそふとすりぃがエフォルダムソフトから引き継いだ作品に「騎士シリーズ」がある。
2014次点の『銃騎士 Cutie☆Bullet』から3作連続でエントリーを果たした名門だ(KOTYe的な意味で)。
ゆえに歴戦のクソゲーハンター達は「騎士」という単語に反応してしまう。他にも「忍者」とかは要チェックだ!

さて、次に送られてきた選評はensembleの『Secret Agent~騎士学園の忍びなるもの~』。
本作のあらすじは「忍者の卵である主人公がある事件を解決するため、騎士制度のある近未来的な学園にサポートAIと共に潜入し、
騎士制度を巡るゴタゴタに巻き込まれながら、科学技術忍法で危機を切り抜けていく」といった話である。
――見ての通り、設定が消化不良を起こしている。
特に騎士制度まわりは「AR装備による決闘」「年一回のトーナメントが大学入試」「でも何故か武芸と縁遠いヒロインの姉が入ってる」
「騎士は年500万の学費で支えられる特権階級だが常に赤字」「特権を乱用する騎士の横暴」「抵抗する一般生徒のデモが日常化」
といった感じに設定は山盛りであるが、これらの整合性を取り作中で解決するにはボリュームが致命的に少なすぎた。

6月の終わりにはGLASSESの『メガスキ! ~彼女と僕の眼鏡事情~ 伊波乙葉編』の選評が、発売2日後のハイスピードで到着した。
眼鏡っ娘をウリにしたロープライス物だが、選評者から「眼鏡属性目当てで買うには論外」との烙印を押されている。
ストーリーに眼鏡が関わるのは「ヒロインが落とした眼鏡を主人公が拾った」程度。
そこからヒロインは主人公のことを調べ上げ、後輩として入学し同じ美術部に入って、付き合うことになったらいきなり野外プレイ。
――完全にヤンデレ淫乱ストーカーである。これを眼鏡っ娘と形容するのは、マナマナを眼鏡っ娘と形容するようなものだ。
主人公も独り言が多くておっぱい星人で気持ち悪い言動が目立つ。なんならポージングと称してヒロインを椅子に縛りつける。
抜きゲーはタイトルやジャンルを正しく表記しないとKOTYeに持ち込まれる。不幸な出会いを減らすためにも、メーカーには慎重さが求められるのだ。
まあ、部活は5人未満で廃部だが3人抜けて主人公1人、なんて書いてしまうゲームにそれを求めるのは酷だろう。

続いてninetailの『創神のアルスマグナ』がエントリー。
錬金術学園RPGを謳った本作だが、その実態はドロップアイテム収集ゲー。
さらに敵とは一期一会かもしれない仕様から、新たな敵が出るたびにもっさり動作のリセマラを数十回ほど行うことになる。
コンプリートを目指すほど深みに嵌っていくが、特筆すべき点がないストーリーはプレイの助けにはならなかったようだ。

プラリネの『彼女がアイツで、俺はだれ!?』も発売3日後の高速エントリー。
本作は転生系ラブコメに分類されるはずなのだが、その実態はネットで見た系豆知識トーク。
「銃の歴史」「バイク通学」「店選び」「PC」「学習法」「栄養バランス」「カメラ映り」「地方自治」などの豆知識を、
主人公、ヒロイン、モブの垣根なしに披露することで、キャラの個性を消し去っている。
主人公の合理主義設定や転生設定もライターの実力不足に潰され、本番シーンもヒロイン2人合わせて5回しかなくボリューム不足。
ライターが生兵法で歴史モノに挑んだらだいたいクソゲーと化す。これ豆知識ね。

夏の終わりにはSAGA PLANETSの『かけぬけ★青春スパーキング!』の選評が届く。
制作メンバーは過去に『カルマルカ*サークル』でエントリーを果たしており、不安材料が当たってしまった形となった。
使い古されている「夏の青春学園モノ」という題材をテンプレそのままで調理した結果、共通ルートから緩急のないシナリオ化。
メインヒロイン4人の個別ルートも質が低く、中身はテンプレの繰り返しでスカスカ、キャラクターの性格もブレブレ。
トゥルールートだけは褒められる出来だが、そこに至るまでがダメだった。

さて、2020年は新型コロナウィルスによって数多の産業が被害を受けた年であった。
それはエロゲー業界でも例外ではなく、例えばLoseの『まいてつ Last Run!!』は3か月の延期を強いられた。
だがしかし、コロナ禍がまた違った形でKOTYeに影を落とすことになるとは誰が予想できただろうか。

ステイホームが奨励される中、新ブランドおうちじかんの『Honey*Honey*Honey!』が捕まった。
男女が2m離れて生活する法律の下、廊下を色分けするソーシャルディスタンスな学園を描いたバカゲー……にしたかった画集である。
夫婦を別居させるほど厳しい法律ながら、反対派のテロリストは野放しで、立法後30年経っても何故かビッチがいる。
設定無視が常態化しているのに都合のいい時だけ設定を思い出すようでは、バカゲーといえども世界にノれないのだ。
さらに2m離れた会話を表現する「ディスタンスパッチ」を当てると、パッチを当てる前のセーブデータでヒロインが宙に浮く。
時流に乗ろうとアイデア一発で勝負を挑み、残念ながら途中で力尽きた作品であった。
Hシーンは比較的良質だが、ボイスはあってもBGMとSEが存在しない。こちらも途中で力尽きている。

SUKARADOGの『スケベな処女のつくりかた』の選評が投下されたのは、発売から8か月以上経った10月のこと。
この作品は「ヒロインが最初からスケベ」で、「予告なしのレイプNTR」があったために、選評者への地雷と化した。

11月に入り選評受け付け期間も3か月を残すばかり。前年の総評動画も投稿され、スレ内にはまったりとした空気が漂っていた。
だが束の間の平穏もここまで。今年はこれから大嵐の中を突き進むことになる。

まずはevoLLの『Hではじめた絶品バーガー ~え?ご注文はおっぱいですか~』がテイクアウト。
コミュ障で大柄で怖い顔の主人公が接客のアルバイトを潰れかけのハンバーガー屋で住み込みで始めるという、超展開から始まる本作。
主人公が「お、おお」としか喋らない日常会話と、怖い笑顔で客が逃げるシーン(悲鳴SE付き)ばかりでシナリオは虚無。
また本作の化石UIではメッセージ欄の調整ができず、立ち絵よりも大きなメッセージの顔アイコンも視認性をより悪化させる原因に。

それでも抜きゲーならHシーンさえ良ければ挽回できるのだが、本作は声優とCGにも問題を抱えている。
まずヒロイン声優の演技力が低く、明るいキャラなのにボソボソとした喋り方で演技が合っていない上、声量が小さくセリフが聞き取りにくい。
聞き逃したセリフは辛うじてボイスリピートは出来るが、化石UIにバックログなんて便利機能は無いため聞きに戻ることはできない。
CGも低質であり、店内風景へのエロゲーパッケージ流用は当たり前。一枚絵でヒロインのストッキングが消え去るなどチェックも甘々。
さらにCG差分を最小限にした結果、挿入済みなのに外に出たままのシーンや、太ももに挿入れてるように見えるシーンも。
最終的に残ったのは、効果音とクソゲーハンターの甲高い悲鳴だけであった。

そして次にやって来た選評で、修羅の国には安全地帯など存在しないことを改めて思い知ることになる。
Loseの『まいてつ Last Run!!』。数多くのファンを抱え、安パイだったはずの大作FDがまさかのエントリーを果たした。
しかし冷静になって第一報をよく見てみると、直接的に問題とされそうなのはエロの薄さだけであり、
新規キャラのHシーンは無いものの、それは公式サイトに明記され、各種支援サイトでも告知済み。
追加アニメHシーンは19個。『まいてつ』無印からは半減したが非抜きゲーとしては十分とも言えそうな分量である。
KOTYeにおいてはエントリー≠クソゲー。歴戦のハンター達も安心し、続けて届いた選評の検証に戻っていた。

――だが奴は暴走した。

ErogameScape -エロゲー批評空間-というエロゲーレビュー投稿サイトがある。そこに『まいてつ Last Run!!』のレビューも投稿されて"いた"。
だがLoseは荒れるレビュー欄を問題視。強い要請によってLose作品の全ゲームレビューを削除させる。
エロゲーレビュー史に残る蛮行の結果Loseは大炎上。『まいてつ Last Run!!』の悪評も大きく拡散される。
Yahoo!ニュースにも取り上げられるなど、消すと増えるストライサンド効果の好例になってしまった。
目的は違うとはいえ同じくエロゲーレビューを主とするKOTYeも無関係ではいられない。
スレにはLoseを批判する書き込みが殺到し、レビュー削除後に立った新スレは平時の4倍の速度で1000まで到達。
Loseの一挙手一投足が石炭となって釜に投げ込まれる大炎上、この大暴走は2020年中ずっと続くことになる。

この事態を受けクソゲーハンター達も臨時増発。しかし上がってきた追加選評はいずれも、
「エロの薄さ以外は高品質で、ゲーム単体はガッカリゲー止まり。ただ前代未聞のやらかしで大炎上している」だった。

エロゲー史上空前のレビュー削除事件。それは同時に歴戦のクソゲーハンター達に一つの問いを突き付ける。
「メーカーによるレビュー削除は、KOTYeにおけるクソ要素となりえるか?」
2020年の大賞レースを左右する命題だが、クソゲー達は考える暇を与えてはくれない。Loseの炎上と前後して4本もの選評が届いたのだから。

まずはエウシュリーの『天冥のコンキスタ』が、発売からおよそ半年の時を経て捕獲された。
本作のSRPGパートは「捕獲作業ゲー」。詰んだ時に強くてニューゲームと途中マップの任意スキップがある代わりに、
何度でも入れるフリーマップは無く、ノーコンティニューを目指すならば出てきた敵は全て殺さずに捕獲することになる。
その目的は主に万能通貨「儀式ポイント」を得ること。捕獲した敵を生贄にして入手し、育成やその他あらゆる事に使われる。
装備やアイテムはマップで拾ったものを渡すだけ。装備枠1つ、アイテム枠2つ、任意スキル枠3つとユニット育成の幅は狭い。
一方でパーティ編成の自由度は高く、メインキャラクターを生贄にして儀式ポイントを得ることも可能である。

さて、ここで嫌な予感がした貴方は冴えている。
話の整合性を保つためか、ヒロインを捕獲しても本筋には絡まず、Hシーンのあるモブユニットのような扱いに。
くしくも昨年の次点作『ギルドマスター』と同じ失敗を『天冥のコンキスタ』は繰り返してしまったのだ。
その結果、会話する仲間は一人だけの単調なシナリオを、雑魚ユニットとの戦闘も絡めて徹底的に水増し。
メインキャラクターのはずの天使達はたまに僅かな会話が発生する程度で、捕獲しなければエロすら見られない。
最後には主人公の過去や敵の裏にある事情、ラスボスの違和感の説明まで全部ぶん投げて「俺たちの戦いはこれからだ!」。
この通りシナリオは極限まで薄く引き伸ばされ、さらに打ち切りエンドになってしまっている。

それでもHシーンさえあれば……と思うだろうが、本作ではメインキャラの個別Hは2回だけ。
捕獲して仲間にして1回、Lvを上げてもう1回、これで終了である。感情移入も何もあったもんじゃない。
モブユニット娘にも捕獲時Hが1回あり、天使達にはハーレムHが用意されているものの、それでは補いきれないほどエロも薄かった。

こうして『天冥のコンキスタ』はシナリオという報酬の少ない空虚な捕獲作業ゲーという、醜悪な本質をクソゲーハンター達に暴かれた。
一人の選評者を生贄として。

次いでWonder Foolの『まおかつ! -魔王と勇者のアイドル生活-』もオンステージ。
本作は魔王アイドル育成物語と銘打っているが、魔王との戦いは1クリックで終わり、アイドルの見せ場たるライブも数クリックで終了。
育成物語に至っては、魔王ヒロイン3人をプロデュースすると決まったら、1年後に話が飛ぶ。
ストーリーのメイン要素となる部分が徹底的に省略され、魔王や勇者やアイドルといった設定もことごとく死んでいる。
そして個別ルートに入ったら怒涛のHシーン連打。ノルマ5回を達成したら気持ち程度のシリアス展開からEDに突入する。
ストーリー性を期待して購入したユーザーへの裏切りとなった本作。
CGのクオリティ自体は高いので、ヒロイン達をAV女優だと考え、抜きゲーだと割り切るのが救いの道である。

昨年も次点作『カスタムcute』を排出したメーカー、ももいろPocketも『オレは姫武将を孕ませたい!』で参陣。
主人公がタイムスリップする織田家を中心とした歴史モノだが、残念ながらライターに歴史モノを書くだけの知識が備わっていなかった。
登場人物は主人公とヒロインである信長、光秀、蘭丸、信玄、謙信の5人、あとはモブだけ。秀吉や家康はEDで名前が出るだけの扱いである。
さらに鉄砲の名手たる光秀が腕前を披露する場はなく、本能寺の変における蘭丸の奮戦も全カット。
さらに信玄ルートでEDまで行っても謙信が出てこない。徹底的に登場人物や見せ場を減らして、戦国武将達の個性を潰している。

キャラ立ちに失敗した本作だが、当然ながらシナリオにも問題――いや、厄介な設定を抱えてしまっていた。
「主人公が未来を変えようとしたら消滅する」。いわゆるタイムパラドックスだが、これがシナリオ全体に暗い影を落とす。
具体的には本能寺の変のことを告げられない。これによリ織田家3人のルートは避けられない破局へ突き進む陰鬱なものと化した。
しかし、そもそも織田家の家督争いから本能寺の変まで26~7年分の歴史を駆け足で進めており、
その時点で歴史が大幅に変わってないか? とツッコミを受けるのであった。
また信玄ルートでは、病に倒れた信玄を救うために主人公が2人の子から異能の力を借りて現代に戻るが、
「タイムマシンを作ってでも戻ってくる」はずの主人公は薬すら探さずに数日経過、信玄の生まれ変わりと再会してエンド。
戦国時代に家族を放置している。製作者の中ではこれでハッピーエンドらしい。

Hシーンにおいても前戯と本番で分けているせいか、服装や挿入のチェックが甘くテキストとの矛盾が度々発生。
「ずっぷ」のスワンアイ系列の末裔の血は、「射精に至った!」「彼女の中で放つ!」など射精時の地の文にその面影を残している。
歴史を知らぬライター達の無謀な挑戦は、実を結ぶことなくクソゲーに至った!

地獄の釜の中に届いた4つ目の選評は、「遺影でイェイ!」を生み出したキメラ熟女に定評のあるアパタイトの祖母シリーズ。
その亜種たる『まごかつ~可愛い孫のためなら中出しOK…~』が発売2日後にKOTYeに持ち込まれ、そのおぞましい姿を晒すことになる。

ゲームをプレイして最初に目につくのはCGの低質さ。
一枚絵には構図の乱れが目立ち、精液はペールオレンジ、少年のはずの「マゴ」達も過去作から青年の絵を使いまわしている。
主人公たるマゴ活熟女も、鉄球と評された張りのある乳房が崩れた体形の中で異彩を放っており、
ほうれい線の無い顔と共に、還暦近くであるはずの年齢を行方不明にしている。

シナリオも負けず劣らずトチ狂っている。マゴ活狂いの熟女の視点で進むストーリーは、
「ゲームを買ってあげる」と誘った少年が熟女に欲情できたのでH、欲深くなった熟女はさらに「マゴ」を増やし、最初の2人の反発を受ける。
ここで2人と相談すれば「マゴ」を増やし続けるハッピーエンド、2人と別れれば通報されて逮捕されるバッドエンド。
選評者の「逮捕こそトゥルーエンド」との言葉に、KOTYe民一同深く頷くのであった。

終末の汽笛が鳴り響きスレが大きく荒れ狂う中、選評に導かれて黙示録の四騎士が降り立った。
だがまだまだ災厄は終わらない。これから年末の魔物や年明けに発掘されるクソゲーが待っているのだから。

12月の半ばにはCabbitの『鍵を隠したカゴのトリ-BIRD IN CAGE HIDING THE KEY-』の選評が届いた。
1年以上の延期を経た本作はミステリーADVを名乗っているが、その実態は推理のできないミステリーADVである。
根本的問題として、グランドルートのヒロインが隠している秘密を聞き出さねば推理が進められず、その秘密を他ルートで話すことはない。
この時点で他のヒロイン3人のルートからミステリー要素が欠落することが確定した。
またヒロインが隠していた真実もしょうもないものであり、謎解きを期待したユーザー達は肩透かしを食らわされた。
この作品は、影のあるヒロイン達と洋館でハーレム同棲生活を楽しむゲームと割り切るべきだろう。

年が明けて2021年、三が日を終えたクソゲーハンター達に初仕事が舞い込んだ。
ルネの『巨乳女士官洗脳催眠「お前のような男の命令に従う訳がないだろう」』が敵性物体と識別されたのだ。

本作の最大の問題点は「ヒロインが催眠状態で喘ぐだけ」という一点に集約されている。
フルプライスの抜きゲーらしく、Hシーンはヒロイン3人とモブキャラ合わせて69個も用意されているが、
その中身はほぼ全てが催眠状態で喘いでいるシーンのため、オカズの種類が非常に少ない。
そしてこの「催眠状態で喘ぐだけ」問題は、声優の演技にも影を落としている。
元々は演技が低レベルだと評価されていたのだが、詳しく調べてみるとテキストの方がベテラン声優でもまともに演じられない代物だと判明。
ボイスの大半が喘ぎ声であり、単調なそれに感情の乗った演技を求めるのは無理難題であった。

他にも既視感があり堕とし甲斐のないキャラクター、低レベルなCGやシナリオ、効果音に至ってはフリー素材と、良い所が見つからなかった本作。
選評者がただ一つ褒めたのは、これをフルプライスで販売したルネのクソ度胸だけだった。

エロゲー業界からKOTYeへのクリスマスプレゼント、Triangleの『プリンセスクライシス』も開封された。
本作は魔王が封印されたダンジョンの管理人たる主人公が、4つの種族の姫達の魔王再封印パーティを凌辱するゲームである。
だが物語がダンジョンと周辺施設だけで進むため、種族や国の話はほぼ出てこないため世界観に広がりがない。
主人公は元は人間側のオッサンであるが、若返った姿と仮面で顔見知りのプリンセス達と戦い凌辱する。でも誰も主人公の正体に気付かない。
なんならオッサン姿でHまでする。それでも気付かない。結局最後までプリンセス達には衝撃の正体を明かさずに終わる。
主人公が魔王を裏切るまでも不自然で、魔王が女性だと知る場面が無かったのに、いつの間にか魔王の篭絡が目的となっていた。
このようにストーリーには不出来な部分が多くみられるが、Hシーンの出来は安定しており抜きゲーとしては使える。
だが品質の低いシナリオやゲーム本編に入っていない主題歌はプレイヤーをモヤモヤさせるのだ。

「1か月前まで2020年だったのか。ならばほとんど2020年みたいなものだな。」そんな声と共にKOTYe2020最後のエントリーを飾ったのは、
昨年は一番乗りを果たしたTRYSET Breakの『黒ビッチギャルがキモオタに堕ちるまで ~監禁凌辱配信日記~』である。
本作にH配信シーンを期待した方は残念だろうが、撮影されている場面のCGは全20枚中6枚。そのうち2枚がトイレ盗撮だ。
再生数を求めて内容が過激化するようなこともなく、誘拐がバレるバッドエンドでも配信は手掛かりになっていない。配信とは何だったのか。
シナリオではところどころ怪しい日本語も散見され、黒ギャルに「嗚呼」と言わせる口調も違和感バリバリ。
「せいひんじょーほー」とか書いてる製品ページ担当の努力を見習ってほしいものである。

以上がKOTYe2020にエントリーされた全エロゲー、総勢22本である。
今年は12の月全てでエントリー作が発売される、2013年以来2回目の全月制覇となった。
これより大賞受賞作、および次点作の発表に移りたい。

次点は、
『Hではじめた絶品バーガー ~え?ご注文はおっぱいですか~』
『天冥のコンキスタ』
『オレは姫武将を孕ませたい!』
『まごかつ~可愛い孫のためなら中出しOK…~』
『巨乳女士官洗脳催眠「お前のような男の命令に従う訳がないだろう」』

そして大賞は、
『LOVE・デスティネーション』
とする。

さて、大賞や次点作の選定理由に移る前に、我々は改めてLoseのレビュー削除事件に向き合わねばならない。
「メーカーによるレビュー削除は、KOTYeにおけるクソ要素となりえるか?」

まず、レビュー削除それ自体はゲームの評価を下げるものではない。
何故ならば同様にレビューが削除されたLoseの他作品、『ゴスデリ』や『ものべの』などの評価が下がっていないからだ。
またKOTYeでは伝統的にメーカーの姿勢も問われるが、それは発売前の告知や発売後のバグ対応が主である。
つまりジャンル詐欺やバグ放置での売り逃げへの警戒であり、今回のレビュー削除は売り逃げの亜種に問われるが、
不満点を解消するための追加パッチが出ており、Loseのサポート体制は売り逃げとは程遠い。
したがって今回のレビュー削除の影響は限定的とし、ガッカリゲーに留まる『まいてつ Last Run!!』を次点以上とはしない。

大作の不出来にレビュー削除による炎上が重なって『まいてつ Last Run!!』は1000人からマイナス10点を付けられる作品にはなっただろう。
しかし1000人のマイナス10点よりも1人のマイナス1000点を重視するのがKOTYeの在りようだ。

今年のKOTYeでは各ゲームの長所と欠点を精査し、より「褒められない」「使えない」「やりたくない」物を上位に選んだ。
化石UIと声の演技力の低さとで文章を追うことを困難にしてしまった『Hではじめた絶品バーガー』。
わずかなユニット編成の自由度のためだけに、シナリオやエロを犠牲にした『天冥のコンキスタ』。
ターゲット層たる戦国時代好きこそ、やればやるほど怒りが沸いてくる『オレは姫武将を孕ませたい!』。
低質なCGとシナリオのおかげで、守備範囲外の人間にもヤバイと理解できてしまう『まごかつ』。
注文通りに作ったはずなのに、ゲームを構成する素材全てが低質でクソまずい『巨乳女士官洗脳催眠』。
どれも褒めるところが見当たらず、オカズにも使い難い立派なクソゲーである。

だが大賞作『LOVE・デスティネーション』は、これらの次点作と比べてもなお飛び抜けていた。
ADVの根幹たるストーリーは、主人公が成長しないまま親たちに全てを解決してもらう胸糞モノ。
なおかつその素材たるテキストにすら大問題を抱えており、ただ読むだけで苦痛を与え、バックログも機能不全。
ヒロイン達は特殊体質や特殊性癖の持ち主ばかりであり、次点作には無かった地雷がロシアンルーレットをするかの如く敷き詰められている。
始めから次点作など眼中に無かった。クソゲーとしての地力が違いすぎるのだから。
曲がりなりにも比較対象となり得たのは炎上ゲーたる『まいてつ Last Run!!』だけであり、
その理由もクソゲーとしてのベクトルの差ですらなく、長さと温度を比べるようなミスマッチさであった。
よって、『LOVE・デスティネーション』を2020年で一番のクソゲーであると認め、これを賞する。

今年は5年ぶりのエントリー数20本超えを果たし、歴史にない盤外戦術が見られるなど熱狂の年となった。
5年前の総評が危惧していた「語る」事すら出来ない未来。それはすでに携帯ゲームや乙女ゲームに訪れている。
だが我々はまだまだ元気だ。立ち上がれる限りクソゲーをプレイした感情を選評として書き残そう。
それは何故か。悲しみの共有か、怒りの発露か、苦しみの呻き声か、それらをまとめて笑うためか。
あるいは「こんなクソゲーを二度と生み出さないで」という願いなのかもしれない。

最後になるが、『LOVE・デスティネーション』を制作したジェイドのスタッフ達、
および全ての地雷ゲーのクリエイター達に次の言葉を贈ることで、KOTYe2020の締め括りとしたい。

エロス デスティネーション
「愛の目的地を示したのなら、ちゃんと到着してください」

68: 総評4 ◆qZUASUzsaY :2021/03/13(土) 22:43:26 HOST:M106073034065.v4.enabler.ne.jp
以上です。
以下、想定問答集。

Q.まいてつ及びLoseの扱いは?
A.ゲーム本編が水準に達していないため選外としますが、それはそれとしてネタとして一番おいしいのでイジり倒します。

Q.次点作5本って多いね?
A.例年なら2~4本なのでそれより増えてますが、個人的評価で3位同着が4本あったので全部載せてみました。
 2位がまごかつ、3位はそれ以外の次点4本です。削りたいと思われたら参考にしたいので意見ください。

Q.まごかつの評価が高い。
A.アレを次点以上にしないのは特殊性癖ゲーの審査放棄に等しいと思ってます。

Q.なぜあのゲームが次点じゃないの?
A.褒める部分のあるゲームは基本的に選外にしています。例えばジンキは凌辱シーンの評価自体は高いので、など。
最終更新:2022年02月02日 23:34