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2021年総評案2 大賞:Cuteness is justice


【2021】 クソゲーオブザイヤーinエロゲー板 総評審議所
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/game/58649/1643644901/
107: 総評2 ◆vq7OBokoT2 :2022/03/26(土) 15:47:15 HOST:M106073135224.v4.enabler.ne.jp
自分で設定した日程より早いですが、
総評の第3版を公開します。
https://writening.net/page?RJW5E3

104の予定を大幅に変更し、大賞理由を改定しておりますので、
前のものと比べてどうかの意見を頂ければと思います。
例によって締めは2パターンあります。
個人的には①ですが、わかりやすさは②かと思っています。

作品紹介の具体化についてはある程度進めましたが、
作品毎の構成を大幅に変えない程度に留めています。
改めて、追加してほしい要素のご意見を頂ければと思います。
宜しくお願いいたします。

《以下外部リンクより転載》

2020年、エロゲ業界のみならずあらゆる界隈を巻き込んだ不況と混乱の中で催されたクソゲーオブザイヤーinエロゲー板(KOTYe)は前代未聞の病に見舞われた。
不快な主人公、地雷ヒロインにご都合主義展開とクソのストロングスタイルを備えながら、文章すべてにキラキラルビ乱用という細菌を混ぜ、
未知のパンデミックを引き起こした『LOVE・デスティネーション』がKOTYe2020を制したのである。
発足してから13年という月日が流れたKOTYeにおいて、未だに新しいクソ要素が発見される事態に歴戦の勇者も驚嘆の声を上げた。
こうして2020年の幕は閉じたが、2021年も旅を続ける住人達の胸には期待があった。
「今年はどんな魔物が現れるか、はたまた現れないのか」
KOTYe2021の冒険者達が乗り込むキャラベル船は、新たなる香辛料を求めて航海を続けるのである。

3月下旬、2021年のKOTYeはまさかの来訪者に慌ただしく動き始めた。
桜の開花がパンデミックで傷ついたこの国に春の到来を告げる頃、春告鳥としてウグイスカグラの『冥契のルペルカリア』がKOTYe開幕の知らせを伝えてきたのである。
上質なシナリオで固定ファンを掴んでいる同ブランドだが、届いた選評は実態とあまりに乖離した宣伝文句に踊らされた、哀れな白鳥の叫びであった。
青春譚、恋愛譚、幻想奇譚の3つをコンセプトとした本作であるが、前2つは形骸化され、実際は虚構世界で展開される陰々滅々としたエピソードが続く。
各登場人物の長く重苦しいモノローグにより陰鬱さを極め、選評者をして「一個も明るい話が無い!」と言わしめた。
これを「ブランドの作風」と言えば聞こえは良いが、単に「ご新規さんお断り」とも取れる為、擁護派からも一定の支持を受けてしまう。
かくしてKOTYeに飛来した『冥契』であったが、このような予想外の良作ブランドが到来する例は本年の特徴である。
仮に『世間』で評価されていたとしても、『事実』として発生している購入者に対する裏切りまでは正当化出来ず、本年のバトルロワイヤルは振り子の原理を伴って少しずつ拡大していく事になった。

ウグイスカグラからのまさかの選評という衝撃的な幕開けに続く事になったのは、同月に発売されたCalciteの『女勇者と幻想カジノ~求む亜人巨乳美女ギャンブラー~』である。
何を隠そう、Calciteはかつて大賞作『SEX戦争』を輩出した名門のスワンアイの流れを汲むブランドである。
定番ジャンルとして異世界物の抜きゲーを続けてきた同ブランドだが、ついに4作目でダウトとなった。
ご都合主義展開や活かしきれないキャラ設定とクソゲーのお約束を抑えた本作あるが、最大の問題点は流用によるCG数の水増しである。
全60枚のCGの内、他から触手や背景の入れ替え、左右反転で作られたと思わしきものは26~7枚と半数近くを占める。
ED絵まで立ち絵改変で誤魔化す為、シナリオだけでなくCGまで投げっぱなしであり、これだけでフルプライス失格のドラといえるが、それ以外の配牌も悪い。
異世界ギャンブルものとしての掘り下げが不十分で、登場するイカサマも「カードに傷を付ける」など、小学生の悪戯レベルである。
オーラスにはゲーム内ミニゲームのブラックジャックでブラックジャック(役)が存在しないというチョンボまで発見される。
スキップ可能とはいえ、製作陣が如何に付け焼刃のギャンブル知識で本作を手掛けたかの証左と言えよう。
これに立ち絵増殖やらエロシーンで突然シーン回想の挙動やらのバグも合わさりクソの役満となった。
安牌の異世界物を掴んだと思ったら、ババ抜きのババだったといった事態にスレ住人には失笑が溢れることとなった。

久しぶりに落ち着いたGWとなった日本を尻目に、「失笑なら任せろ」と言わんばかりに登場したのが、4月末に発売したばかりのevollの『とっても明るい!お嬢様の満喫☆夢のどすけべ生活』である。
前年に、「風が吹けばストッキングが消える」でお馴染み『絶品バーガー』を送り込んだ新鋭が新たな方向性を携えて馳せ参じた。
本作の問題点はコンセプトの崩壊による安定感の無さである。
「とっても明るい!」と題した本作であるが、シナリオは「バスジャックで誘拐したら、被レイプ願望のあるお嬢様に逆脅迫され仕方なく凌辱」という複雑怪奇なものである。
馬鹿ゲー狙いと思われるが、ぶれたコンセプトは凌辱ものとしても馬鹿ゲーとしても満足することは無い。
主人公が凌辱に向いておらず、行為に入る前に挿入される鼻血や童貞臭いモノローグの演出がプレイヤーをいらだたせる。
それに続くのは、ピロートーク代わりの辛辣なH品評会制度であり、「主人公に感情移入出来ないのにダメ出しされる」という新手の言葉責めをしてくる。
一方のギャグはというと、「メイドが牛乳ととろろを入れ替えた」「言葉のダメージで9999のダメージが飛び出るのが見えた」など、バカゲーを馬鹿にするようなネタには乾いた笑いすら出ない。
全体的に何をしたかったのかが伝わらず、珍走団の如きライターの迷走っぷりには甚だ迷惑である。
前作『絶品バーガー』を下回る料理を出された美食家をして「エロゲから離れた方がライターの為」と評せしめ、スレ住人は大いに舌鼓を打つのであった。

6月に入ると前年にエントリー作を出したSAKURADOGから『家出ギャルを拾ったので育ててみた』が梅雨らしい陰湿システムで突き出される事となった。
ゲームを一回閉じると起動しなくなり、再インストールを要求と初っ端からイラつかせる本作であるが、まだ掴みに過ぎない。
最大の問題はマウス左クリック以外の操作が出来ない事であり、息子をイカせる前に人差し指がイカれるという事態を引き起こす。
シナリオも設定を活かしきれない微妙さだが、ヒロインのイメチェンをCG差分とせず、41枚の内半分が被りという手抜きには、「お前は抜くんかい」と購入者が激怒しても仕方がない。
かくして「抜く為の利便性が低すぎて、エロゲに数えたくない」と断罪された本作は同ブランド2年連続のエントリーを飾ったのであった。

梅雨の湿気を吹き飛ばすべく、自らのアイデンティティーさえ吹き飛ばした勇者一行が続けてKOTYeを訪れた。
5月に発売されたpanacheの『ぱられるAKIBA学園』がタイトル回収に参上したのである。
度重なる延期を重ね、当初の予定より丸一年遅れで発売されたその姿は、初志貫徹とはいえない事が容易に窺い知れる内容であった。
本作のあらすじは異世界で勇者ヒロイン達一行とともに魔王を倒し、オタク文化を広めながら世界を復興するという意外と骨太なものである。
復興描写の都合上、筋の通った世界設定が求められるはずだが、本作は世界観を安定させる前にヒロインのキャラが安定しない。
体験版範囲を過ぎると4人中3人が別人のように変貌し、読者を千錯万綜の渦に巻き込んでしまう。
委員長属性の勇者はネガティブモブに、吟遊詩人エルフは騒音お姉さんに、頭脳派魔導士は破壊行為中毒にともはや別世界の有様だが、変貌しない聖女も元からイカれている為、結果として全員属性地雷と化す。
世界観についてもそもそも教育・文化そのものが無い為、オタク文化の布教以前に国家体制作りからやる事が満載であり、踏む段階が多すぎて製作者が転倒事故を引き起こしている。
貴族たちの腐敗した実情という無駄にリアルで気分を害する設定を挟んだと思えば、識字率が低い設定を踏み倒し遊戯王カードを普通に読むモブと、真面目に読むのがバカバカしいだけである。
おおよそシナリオには期待できない拙さであるが、エロについても覚束ない。
個別ルートなのに大半が3Pとアブノーマルなシチュが多い癖、巨乳ヒロインでもパイズリはゼロと「何をもってこの配分にしたのか」と小一時間問い詰めたい。
まさしく異世界ものの悪手の見本市であるが、本年は「異世界」や「ファンタジー」という文言が多数見受けられる作品が多い。
本作は「人気のジャンルのはずなのに鬼門」という流行の先駆けとして、『幻想カジノ』ともどもクソのコレクションに収められることとなった。

夏の終わりが近づく9月、「俺たちの百物語はこれからだ」と妖怪が襲い掛かってきた。
8月発売、ももいろPocketの『ぶっかけ陰陽師絵巻 ~Hなお祓いいたします~』の慟哭である。
同ブランドはスワンアイの正統後継者として2019年の『カスタムcute』、2020年の『姫武将』に続き3年連続の参戦となった。
本作は陰陽師の主人公が巷に蔓延るHな呪いを精液で解除する和風ファンタジー抜きゲーであるが、素材を活かすどころか、そもそも素材が間違っている。
妖怪が跋扈する古風な世界観に場違いな現代風衣装のヒロインや同ブランドの前作『姫武将』から流用したドットの粗い背景と、のっけから躓いて立ち上がる事は無い。
肝心のCGについても、親戚のCalcite『幻想カジノ』から「CGを流用して水増し」を伝授されており、フルプライスにもかかわらず実質1jksを下回るが、これで終わらないのが正統たる所以である。
環境依存のバグにより、CGモードで流用を確認しにくいように白い靄を発生させる隠ぺい工作まで搭載している。
テキストも陳腐なモノローグにより実用性は骨抜きにされ、「腹にぶっかける」を選んだのに、腹を写さないCGを無理くり誤魔化そうとする所業にはタイトル詐欺も甚だしい。
本筋は主人公の妖怪呪い考察が大半を占め、ヒロインとのイチャイチャも端折ったまま、ボスとの戦闘といった山場も立ち絵流用戦闘CGの前には興ざめである。
この時点で壮絶な出来であるが、そこはやはりスワン系、システム周りにも救済は無い。
かつての同門ブランドの大賞作、みるきーぽこの『孕らぽこ』に倣い、ノーヒントのぶっかけ三択を間違えるとルートが消えたり、途中で終わるという不親切仕様を搭載している。
これにセーブ&ロードで対処しようとすると、前作同様の5~6秒の暗転が首を絞めてくる有様である。
そんな惨たらしい本編の出来に飽き足らず、10月末にはDL版を某所の10本1万円セールに登場させ、前代未聞の売り逃げを実行したのである。
わずか2か月で税込9,680円の本作が実質1,000円と9割近い値下げとなり、発売日に購入したユーザーに哀悼の意を表したい。
一方で、白昼堂々の逃走劇に対し「もともと1,000円で売る事を想定して作ったのでは?」と邪推の声も上がってしまう。
こうしてCG流用、愚昧なエロ描写、無味乾燥なシナリオ、悪辣なルート周りに価格暴落と悪の陰険五行説を提唱したももいろPocketは
同ブランド3度目の正直にして同系ブランド3代目の大賞というクソ大河の完成に向け名乗りを上げたのである。

妖怪の跳梁跋扈にどんよりした雰囲気の中、10月になると大河ドラマの主役の座を取り返すべく、まさかの真打が登場した。
歴史もので評価の高いインレから『源平繚乱絵巻 -GIKEI-』が一ノ谷の戦いさながらの崖下りで奇襲を仕掛けて来たのである。
本作は現代の主人公が過去にタイムリープして、源義経として源平争乱の時代を戦い抜くというあらすじである。
プレイ時間30時間超、2回のループを挟んで実質一本道の本作は、純粋に歴史ものを期待した層を憤死させる怒涛の最終盤が問題である。
度重なるタイムリープで過去の歴史改変の影響が現代に現れる設定を展開する一方、最終盤ではそんな設定かなぐり捨ててパラレルワールドと決めつけ、ボスの悪霊と少年漫画さながらのドッカンバトルに挑む。
途中も無駄にテンポを損なう義妹ヒロインの歴史蘊蓄がちりばめられているが、「太陽以外で最も明るい星」で金星をシカトするなど、いかがでしたかブログ並みの信憑性には首を傾げざるを得ない。
せめてエロに救いを求めても、魅力的な女体化武将達にエロシーンは存在せず、現代から一緒に来たヒロイン二人で計5回と諸行無常を感じさせる。
勇壮な歴史絵巻たる中盤まで懐疑的にみられてしまう顛末に「神は細部に宿る」という言葉の重さを?み締めるのであった。

『GIKEI』の非業の最後を見届けたスレ住人が対峙したのは、5月の発表当初より夏の怪物……むしろラスボスとして危険視されていた大作であった。
8月発売Vanille Macaronの『Cuteness is justice』がタイトルに合わぬ禍々しい姿でこの混乱に畳みかけてきたのである。
ファンタジー世界を舞台にしたやりこみ育成SLGと銘打った本作であるが、ブランド処女作にしていきなり三部作構想、HPだけで分かる低品質、それでいてほぼフルプライスと悪臭を通り越して腐乱臭を漂わせており、かねてより追跡対象となっていた。
かつて圧倒的な画力で頂点に立った『ママ2』になぞらえて、「見えている地雷」と称されたその実態を紐解こう。
本作のストーリーは亡国の皇女リンを調教師の主人公が拾い、Hを含めた調教育成を施して、亡国の再興を目指すという壮大なもののはずだが、
冒頭から「エンパイアエルフ王国」「ドワーフ王国」とひねりの無い固有名称を前に安っぽさを感じざるを得ない。
ジャンルとしては『プリンセスメーカー』に連なる昔ながらのコマンド式育成シミュレーションであるが、SLGパートでは能力の増減に関するヒントが見当たらない。
ちょっとした能力の不足で即BADENDに直行する難易度に対し、マニュアルやパッケージにヒントは出ておらず、攻略には情報サイトのBugBug記事が必読となっている。
このような理不尽さに加えて、本旨のやりこみを困難にする古臭いシステムがプレイヤーを苦しめる。
周回前提のゲーム性でセーブは行動選択画面しか出来ない上に10個しか作れず、コマンドの度に切れるスキップや、場面切り替えで頻出する読み込みロードの嵐とストレステストの如き賦役が待ち受けている。
これを補うエロはというと、そもそもCGのクオリティが商業水準に到達していない。
キャラ毎に絵柄が安定せず、同人レベルとされた塗りが「見えている地雷」とされた所以であるが、射精断面の白濁液に黄色い粒が混じるグロ画像が発見されるとスレを恐怖のどん底に陥れた。
添えられるテキストも「、」(読点)の位置がぐちゃぐちゃで読みづらく、形容詞の対象や主語が行方不明になる稚拙なものである。
何とか理解したとしても3クリックで射精するものや、普段弱気な主人公がHでは急にハイテンションになる豹変ぶりでは失笑をかっさらう出来である。
実用性は全く期待出来ない惨状であるが、例によって調教コマンドのエロシーンは省略出来ず苦役の一部と化す。
絶え間ない地獄の果てに登場するラスボスは一枚絵のモブトカゲであり、三部作の一作目とはいえ、苦役の代価の盛り上がりの無さに辟易するだけである。
ノーヒントかつやりこみに不便なシステム、商業失格のCG、我流点整を欠くテキストと税込8,580円の体裁をなしておらず、ラスボス級の圧倒的な戦闘力はスレを論争に巻き込んだ。
「2,000円の同人としてなら許せる」「いや、むしろ同人に失礼」
程度の問題ではあるが、否否両論入り乱れた本作は本年のKOTYeのセンターとして、最後まで引き合いに出され続ける地位に君臨したのである。

ラスボス襲来に沸き立つスレであったが、そこに流行りの異世界エルフが魔弓ならぬ魔球を投じてきた。
North Boxの『エルフのお嫁さん ~ハーレム婚推奨~』がスクランブル登板してきたのである。
異世界ものに学園ものを合わせヒロインはエルフと、抜きゲーとしては置きに行った作品に見えるが、絵以外の褒め所が無い。
シナリオは食事とセックスを往復し、舞台装置の学園のせいで異世界設定が死ぬという共食いが発生している。
一方でエロシーンはお祭り風のBGMが自家発電を牽制し、タイトルの「ハーレム」要素も4回の3Pと4人フェラ一回ではただの見せ球に過ぎない。
終いには終盤の展開が各ルートで重複し、プレイ内容も代り映えしない為、強打者のゲッツーの如きデジャブを感じさせる。
こうして宣伝された大半の属性が死に絶え、多様な購入者のストライクゾーンを避ける魔球と化した本作に対し、スレ住人は見送り四球を選ぶのであった。

エルフによる魔球を見送り、塁に出た先に待ち受けていたのは天使と悪魔の凸凹バッテリーであった。
QUINCE SOFTの『ごほうしアクマとオシオキてんし』の降臨である。
1月の発売直後もプレイ中に挟まる読み込みロードの多さから話題となった本作であるが、秋深まる11月に未知の問題が発覚しKOTYeに召される事となった。
大筋としては更生の為に天使に連れてこられた悪魔2人が過疎化にあえぐ離島の旅館を手伝う事で盛り返していく町おこしものであるが、そんな触れ込みも悪魔の戯言に過ぎない。
ダイジェスト進行であれよあれよという間に島は盛り上がり、ヒロインとの交流要素も省略気味である。
エロの導入も強引そのもので、仕事中に突然大浴場でおっぱじめ、何をしに来たのかを忘れる展開は「欲情しにってか!」とのツッコミとともに嘲笑の的となった。
そんな僅少な描写力に対して、膨大なのはフレームレートである。
本作はまるでベンチマークテストの如く、システムが許容する最大負荷をかけてフレームレートを暴走させる。
高スペックGPUではゲームの軽さで負荷が上がりきらないものの、密かに無駄な電力を消費するこの仕様は昨今叫ばれるSDGsの対局を行くものであり、
選評者をして新タイトル「こっそりグラボにオシオキべんち」としてクソの禁書目録に収められることとなった。

悪魔にるPCの強制労働を目の当たりにした衝撃も冷めやらぬ中、12月に入って現れたのは怠惰なバカ女であった。
11月末に発売されたばかりのCalciteの「ニート娘を更生させよ!性技があれば生きていける」が同ブランド2連勤を果たすこととなったのである。
本作のシナリオはニート更生員の主人公が社会不適合者のヒロイン達を更生させて就職を目指すというものであるが、
税込7480円のミドルプライスながら、メーカー推奨1.5GBに対し、ゲーム容量が302MBしかない。
『ママ2』の悪夢を思い出すような数値だが、そのダイエット法はとにかくセリフをケチる事である。
売りとされたヒロインを更生する展開は1周+各ヒロイン個別1回で終了し、途中の交流描写をカット。
CG40枚、シーン数36と体裁だけはまともであるが、モノローグが水増しされたエロシーンではなかなか声が聞こえない。
「しゃべれよ!ちゃんと喘げよ!イクの早すぎるよ!」の三重苦には右手も職務放棄してしまうだろう。
おまけにBugBug記事以外で未告知の風俗堕展開も強引展開の末のやっつけ仕事であり、難病の闘病資金の為に風俗勤務という意味不明な展開には開いた口が塞がらない。
システムも完成度が低く、説明書通りに右クリックが動作しない、クイックロードでタイトルに戻る、シーン回想の範囲設定ミスなど、大小さまざまな不手際が脇を固める。
風俗堕ちの末、ヒロインが出演したAVの男優名がなぜか「Man」と、厚顔無恥な出来に「ニートに働かせる前に、お前が働け」と製作陣に物申したいところである。
一方で前作がスワン系の新奥義「CGを流用して水増し」を咎められた為、反省したのか。
続く本作は卑怯な真似に頼らない正統派のクソゲーとしてKOTYe2021の社員名簿に名を連ねる事となった。

12月も末に差し掛かり年の瀬の足音が聞こえる頃、まさかのブランドから年内最後の選評が投下された。
シルキーズプラスの「ふゆから、くるる。」が同系ブランドで初めてKOTYeの門を叩いたのである。
本作は同ブランドがすみっこソフトより引き継いだSFミステリ、四季シリーズの最終作であるが、最終盤の解決パートを除き問題が山積である。
全体の1/3を占める導入パートでは、理路整然さの欠片もないヒロインが主人公の話も聞かずに明後日の方向に脱線しまくる。
メインの推理パートでも読者が推理する為に必要な情報が開示されず、事情聴取でさえミスリードさせる会話劇には、十戒を唱えたノックスも草葉の陰で激怒するに違いない。
これに加えてエロシーンでは、百合をPRしたにもかかわらずふたなりを混入させ、属性を持たない選評者を阿鼻叫喚たらしめた。
独特な作風でファンからは好評を得た本作であるが、本編の常識にとらわれない世界観をエロにまで持ち込む姿勢にスレ住人も感嘆するのであった。

2022年を迎え、例年通り1月の予備期間に突入した。めぼしい有力作をあらかた平らげたスレ住人たちは大賞談議に華を咲かせていたが、そこに早馬が届き、事態は風雲急を告げる事となる。
CIRCUSの『D.C.4 Plus Harmony ~ダ・カーポ4~ プラスハーモニー』の非道な行いが告発されたのである。
曲芸商法と言われる悪辣な作品展開を続けてきた同ブランドの末端がついにKOTYeの捜査縄にかかったのであった。
本作は全年齢版『D.C.4』の18禁移植作であるが、罪状はシンプルに「手抜き移植」であった事である。
18禁化の都合上、CVの変更を余儀なくされた本作であるが、本編シナリオの一言一句を一切変えずに解き放たれ、ファン層に刺さる毒矢と化した。
加えて、本編終了後の追加要素であるエロにも埋伏の毒が仕込まれている。
メイン・サブ合わせて8人のヒロインに各4枚のCGであるが、その大半を流用して2回使うという誰得仕様を搭載したのである。
死の商人たるCIRCUSの売り方に辟易する者もいたが、同時に「曲芸にしては良くやっている」と罪深い擁護まで飛び出し、スレはヒートアップする事となった。

そして最終日の1月31日。選評締め切りまであとわずかのところで、立て続けに3本の選評が襲来し、KOTYe史上まれにみる電撃戦が展開されたのである。
その先鋒を務めるのはPrincess Sugarの『プリンセス☆シスターズ!~四姉妹は全員あなたの許嫁~』である。
外国のお姫様四姉妹とのイチャラブをお題目に据えた本作であったが、萌えゲーを期待させておいて、その実態は虚無シナリオの抜きゲーである事からKOTYeの舞踏会に連れ出された。
ヒロインは一人を除いて自ら股を開く尻軽であり、それに発情するだけの竿と化した主人公には「空気」以外の印象を持つことは無い。
イチャイチャ要素のはずの日常描写もひたすら虚無で、「記憶喪失がフライパンで治る」などの寒いネタではお茶も濁せない。
美麗CGにより抜きゲーとしては佳作に成り得るものの、エロ以外で未読スキップを推奨する本作は、文字通り最終日の動乱の姫始めとして役割を果たす事になった。

そんなビッチ姫の窮地を救うべく、怪しい勇者が颯爽と戦場に現れた。
6月発売のキャラメルBOXいちご味『下戸勇者~下戸は飲まねど酒池肉林!~』の推参である。
実は8月の時点で選評が届いていた本作であったが、「語る気が失せる」という選評者の言を持って、さらなる潜在力の高さが期待、もとい危惧されていた。
そこに通りすがりのハンターが決死行を仕掛け、最終日2本目の追加選評として、勇者よりも魔王というべき恐ろしい全貌を解き明かしたのである。
本作はドラゴンクエスト3を元ネタとする異世界抜きゲーだが、パロディゲーの本懐であるネタ要素にこそ罠が敷き詰められている。
DQ3「アリアハン」の町にちなんだ「アリエヘン」を始め、選択肢ループや戦闘テキストのパロ、モンスターいじりなどなど、輝く息の如き寒いネタがTPOをわきまえずに展開される。
エロシーンすら侵食し、「会心の一撃」と叫びながらピストンされても、抜けず笑えずの二兎を追うものと化すだけである。
震災のトラウマ「ぽぽぽぽ~ん」をもじった呪文など、もはや元ネタのジャンルすら統一感が無く、DQを既知かどうかは些末な問題でしかない。
むしろ元ネタを知っている事で、DQヒロインを馬鹿にしたような茶番に激しい炎の如き怒りを沸き立たせるだけである。
ネタ以外ではRPG風世界観の描写はやたらと凝っているが、抜きゲーで貨幣制度について語られたところでさして意味が感じられず、クリアまで15時間弱の徒労の一部と化している。
いくら緻密な設定を展開し、終盤でそれらの伏線を回収したところでコレジャナイ感を漂わせるだけである。
もう一方の本懐であるエロについては、CG70枚、シーン数33の見かけに反して、その半数以上がハリボテである。
各エピソード冒頭のチラ見せH、需要不明な主人公の女体化逆レイプ、和姦用とはいえオホ声を台無しにするゆったりBGMと、実用性を損なうシーンが入り乱れる。
凌辱で悪役然たる主人公も和姦中に「はぐれ狩り」もといDQあるあるを語りだし、抜き所をバシルーラしてしまう。
求めていない本筋を優先する為描写が安定せず、CGが良くても使えないというお預けは、本作の需要のはき違えを象徴する展開と言えよう。
この時点で圧巻の攻撃力だが、本編を支えるシステム周りは鉄壁である。
未読一択で声が重なりまくるスキップや、ボイスの音量設定がキャラ毎のみでちまちま調整を要求と、使うに堪えない化石システムがしっかり守りを固める。
止めとばかりに確認ダイアログから簡単に背景をブラックアウト出来る立ち絵鑑賞用バグも確認され、ようやく解剖が完了となった。
寒いシナリオとおざなりなエロという二刀流で、地獄の帝王の如き本作はDQシリーズの魔王にならい、最後に進化の秘法によって真の姿を現したのである。

魔王の踏み荒らした大地を砂漠に変えるべく、最終日のトリを務めたのはDESSERT Softの『彼女(ヒロイン)は友達ですか?恋人ですか?それともトメフレですか?Second』である。
2019年エントリーのシリーズ前作が甘酸っぱいヒロインとのイチャイチャ同棲からの急転直下のハーレム性奴隷bot化で顰蹙を買ったのに対し、
本作は評価されていた日常イチャイチャ描写を大幅削減し、改悪したハーレムエロを増量した罪で再び御用となった。
イチャイチャが薄い分、性奴隷化してもショックは少ないとも取れるが、前作比およそ半減のプレイ時間で、売りのネタ要素すら削減されてしまっては擁護のしようもない。
本作で登場する「露骨にハーレム結成に向けて立ち回る妹」は前作の「策士妹」と悪い意味で対照的な存在であり、同ブランドを三年連続のKOTYeハーレムに導く原動力となった事を付け加えておく。

以上、全エントリー作品16本が出そろったところで、本年の大賞および次点を発表する。

次点は、
『ぶっかけ陰陽師絵巻~Hなお祓いいたします~』
『下戸勇者~酒は飲まねど酒池肉林!~』
そして大賞は、
『Cuteness is justice』
とする。

本年のクソゲーを俯瞰してみると前年の傾向の先鋭化が顕著であると見て取れる。
すなわち作品を手抜きに基づく「価格不相応」の品質と事前情報と実態の乖離による「裏切り」の二大要素であり、多くの作品を貶める事になった。
前者については、パンデミック不況によってエロゲ業界全体の製作サイドが予算不足に陥っていた事は想像に難くない。
一方で後者については非常に解釈が難しく、「自分が理想を抱きすぎたのかもしれない」と選評を書く事をためらう者が続出する事となった。
『冥契』、『GIKEI』、『ふゆくる』、『DC4PH』のように世間からある程度評価されている作品も選評が寄せられたが、
選評者達は口々に悩みを吐露し、その度にスレ住人がたしなめたのである。
「KOTYeはネタスレであり、選評はあくまで『個人の意見』である」と。
本年程KOTYeの原理原則が確認される事はかつて無かったかもしれない。
炎上騒動やクソゲーへの注目など、SNSを含めた一人一人の行動が作品に影響を与えやすい世の中となり、ある意味で選評のハードルが上がってしまったが故の事態と言えよう。
しかしながら、これらいずれの作品もクソの誹りを免れない「裏切り」を抱えており、全体としては凡作以上としても選評執筆に至った心境を咎める事は誰も出来ないのである。
例によって次点以上には、このようなためらいを伴って選評が届いた作品たちとは一線を画す魔物が据えられる事となった。

スワン系の後継者として、飽くなき手抜きで無価値に近づこうとする『ぶっかけ陰陽師』。
ヒントの無い理不尽難度、不便UIに低質なCGと価格不相応の極致たる『Cuteness』。
TPOをわきまえない寒いネタとDQあるあるに化石システムを添えて投げつけた『下戸勇者』
価格不相応、ユーザーへの裏切りとクソの二大要素を携えるいずれ劣らぬ強者揃いであるが、僅差で『Cuteness』が大賞たりえたのは、ひとえに最も「悲劇的な存在」だからである。
ではゲーム制作における本当の意味での「悲劇」とは、いったい何であろうか。
シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を始め、古来より悲劇が人を惹きつけるのは、情熱をもって理想に突き進む登場人物に読者が十二分に共感する事で、後に待ち受ける皮肉な結末に涙するからである。
同様に『Cuteness』も製作陣が意図した理想自体は痛いほど伝わり、多くの共感を集める事になったが、天と地よりも理想からかけ離れた実態がスレ住人たちに憐憫の感情を抱かせることとなった。
壮大なファンタジーの序章を謳いながら、安っぽい固有名称、モブの様なラスボスにただただ呆れ、
やりこみSLGとしては、ロードによるテンポの悪さや試行錯誤出来ないセーブ枠の少なさに辛酸を舐め、
調教シーンでは、塗りの足らないCGと不自由な日本語に対して右手はマウスから離れない。
本来、熱意が伝わる事自体は評価されるべきであり、多少の粗があっても応援したくなるゲームも存在するが、『Cuteness』の場合は熱意の分だけ現実の冷酷さを強調する事にしかならなかった。
BugBug記事において「やりこみSLGの楽しさを伝えたい」と喧伝されているが、プレイして伝わるのはジャンル特有の難易度と作業感であり、
須らく低いクオリティも相まって、むしろ同ジャンルに嫌悪感を抱かせる無慈悲な結果には落涙を禁じ得ないのである。
これに対し、次点となった『下戸勇者』は問題点こそ多いが、気合の入った複数人描写や一部凌辱シーンの実用性は担保されている。
需要があるかはともかく、寒いネタを我慢して読み続ければ冒険ファンタジーとしての楽しみも見いだせる為、大賞にする程救いが無いとは言えない。
単純な無価値さでは随一の『ぶっかけ陰陽師』であるが、かつてのスワン系大賞作『SEX戦争』『孕らぽこ』に比較すると小粒といえる。
悲劇云々以前に取るに足らない茶番であり、手抜き中心のクソ要素では歴戦の猛者達の邪な期待に応えたとは言えないだろう。

『Cuteness』のゲーム性の絶対的な酷さは歴代の魔王達とも遜色無いが、伝わる情熱で心情的評価を持ち上げる事が出来たのは過去の大賞作にはない特徴である。
安価であれば挑戦したいという声も上がり、「間違いなくクソなのに応援はしたい」という矛盾した感情を持たせたが、それでも満場一致で大賞に選出され「懐の深さ」を見せつける事となった。
本作を手掛けた夢追い人の挑戦はエロゲの裾野を広げる可能性を感じさせ、理想を求めて戦う姿勢の重要性を説き、それだけではままならない過酷な現実を示すカタストロフとして語り継ぐにふさわしい。
熱意だけではプロ失格という当たり前の厳しさを教えてくれた『Cuteness』に対し、クソを評するアマチュアの端くれとしてKOTYe2021大賞の栄誉を贈りたい。

かくして、KOTYeの新たな王者が誕生したが、我々の冒険は終わらない。
未だ「クソゲーとは何か」の真理探究の途上であり、エンドロールを迎える時ではない。
業界の斜陽が叫ばれる中で、仮にどんな悲しい終局が待ち受けていようとも、明日に踏み出す一歩を止めるわけにはいかないのである。
悲哀なる王『Cuteness』と同じく、理想を追い求めて彷徨い続けるKOTYeの物語もまだ終わっていないのだから。
「来年はどんな魔物が現れるか、はたまた現れないのか」
好事家たちの冒険は続く。悲劇ではない、誰もが笑いあえるハッピーエンドを追い求めて。

締め案①
最後に、悲劇の代名詞たるウィリアム・シェイクスピアの名言を拝借し、大賞作の『Cuteness is justice』を輩出したVanille Macaronに対し、次回作へのエールを送る事でKOTYe2021の幕を閉じよう。
「『かわいいは正義』という理想を
  成し遂げんとした志を
   ただ一回の敗北によって捨ててはいけない。」

締め案②
最後に、悲劇を象徴する『ロミオとジュリエット』の名台詞を拝借し、慈しむべき大賞作の『Cuteness』に対し、現世の悔恨と来世への期待を示す事でKOTYe2021の幕を閉じよう。
「ああ『Cutness』よ、どうしてあなたは『クソゲー』なの」
最終更新:2022年04月23日 14:09