2022年のKOTYeは、底なし沼のような虚無と息もできない熱波の低クオリティが蹂躙跋扈する、悲しみと苦しみに血塗られた餓鬼と畜生が死地を彷徨う駄文の百鬼夜行のような年だった。
才なくとも創作ができ、生者と死者が六道の狭間で揺れ動く冥府魔道の時代、その混迷のカタストロフは開いてはいけないパンドラのデスノート『悪魔と夜と異世界と』が頂に上ることで決した。
「クソゲーとは何か?」という一つの命題に新たな碑文が刻まれた一方で、我々は不安を抱いた。この先クソゲーは何処に向かい、どう変わっていってしまうのか、と……。
そして本家である据置版KOTYが史上初の該当作なしとなり、活動休止が告知されたことで、運命の黒い糸は静かに綻び始めた。
『修羅の国』と評された人外魔境が唯一のKOTYとなったクソゲー界は、亡者が一筋の漆黒の光を求めて彷徨う時代に突入したのだ……。
昨年とは違い、今年のKOTYeは1月作品から盛況だった。
その口火を切ったのは、戯画の汎用ヒト型欠陥兵器『JINKI -Unlimited-』。
戯画と言えば長年KOTYeを賑わせてくれたいぶし銀のベテラン工兵。その戯画が本年度を以って事実上の解散を表明し、本作が着火させる最後の火種となったわけだが、注目された中身は期待に見合った大型地雷だった。
実質3周しなければいけないという長期戦にも拘わらず、開幕からユーザーデバッグモードを発動し、パッチを当てないと進行不可になるなど掴みは完璧。
それを踏まえた上で、本作の基本スペックから見てみよう。
まずADVパートは、令和どころか平成でもあまり見ない程お粗末だ。
バックログや音声リピート機能はなく、次のボイスまでの音声再生機能なんてのもない。既読スキップもなければAUTOモードもない。ギャラリーモードは差分表示がなく、回想は全周クリアまで実質お預け。
シナリオはスーパーコーディネーター級の新主人公の基本無双であり、無能と化した歴代主人公とヒロイン勢は終始すげーすげーを連発。カタルシスも何もなく、本当に原作者が監修したのか、逆に興味がわく内容である。
登場キャラこそ女性ばかりで華やかそうに見えるがそれは罠。綺麗な薔薇には棘が付き物と言わんばかりの凌辱リョナ特化構成なので、遊ぶ側にもそれなりに耐性を求められる。
フレームレートは起動時の状態で常に全力全開天元突破。調整するオプションすらなく、プレイ時は絶えずPCクラッシュに怯えながら遊ぶ羽目になる。
続いて、本作独自の部分について触れる。
『JINKI-U』の目玉は、段ボール箱を被った姿をコスプレと言い張るような、寂寥感溢れる出来のRTSパートである。
グラフィックはシムシティ2000レベルのビル街、キン消しを並べたようなロボット群、攻撃に至っては色付きのつまようじや矢印ビームと揶揄されるほどのクオリティであり、かの「SSα」を彷彿とさせる。
AIの調整や挙動にも問題があり、指示を出した味方キャラが壁に引っ掛かって五里霧中になったり交戦中にエンジンでも止まったかのように動かなくなりその間に即死級の攻撃を食らってゲームオーバーになるのは日常茶飯事。
言わば自分以外は全て敵とでも言わんばかりの枷にしかなっておらず、そんな介護職員気分をプレイヤーは余儀なくされる。
戦略性等は微塵もなく、やる事と言えば、基本逃げ回りながらゲージを溜めて必殺技をぶっ放つことだけ。
また本作にはレベル制が導入されているが、この調整もクソである。経験値は中盤から数万、その後は数百万単位と超サイヤ人並みのインフレを起こすため、レベルを上げて物理で殴るKOTY戦法は困難であり、結局適正レベルでの攻略を余儀なくされる。
仮に武器レベルも含めてMAXにしても敵もガンガン固く強くなっていくので、爽快感は皆無に等しく、戦闘はただただゲー無となっていく。
だがこれにも増して問題なのは、何より「劣悪極まりない操作性なのにキーコンフィグすらない点」だろう。
ユニット選択→武器とサポートキャラ選択の過程後に、右クリックを押せばサポートキャラが削除されてやり直し。戦闘ではマウスホイールをクリックすれば必殺技という仕様なのにスクロールさせると視点が変わるため誤動作連発。
キーボードの入力部位も一切変更できず、マウスは右手から離れないのに、左手は虚空を彷徨い今日も誤入力を頻発するなど四面楚歌状態だ。
MMOやFPS経験者なら分かるが、PCゲームにおいて操作性という点はゲームの快適さだけでなく面白さに直結する。それがズンボロで娯楽失格という有様では何処に価値を見出せばいいのか。
かくして人は同じ過ちを繰り返す……。
『JINKIーU』は挨拶代わりの核地雷としてKOTYeの大地を爆裂四散、それに影響されたのか、2023年は黒く暗い影が光を侵食する一年となっていく。
二番手として壇上に上がったのは、3年連続エントリーとなるNorthBoxの『高嶺の花と魔法の壺』。
公式のあらすじで肝心の女性キャラの名前を出さないという斬新さでKOTYe民の心を掴んだ本作は、骨どころか脊髄まで削ったかのような所謂抜きゲーである。
男キャラ如きにはボイスどころか絵すら必要ないというツイフェミもニッコリな人権のなさで繰り広げられる内容は、毎度おなじみの「適当にずっぷずっぷして終わり」。
お家芸であるHシーンを冷めさせるBGMは健在であり、雅な琴や笛の音を流したかと思えば突如盛大なヴァイオリン演奏に転調するという和洋折衷ぶりは、
「ヌかせたいのかい、笑わせたいのかい、どっちなんだいっ!?」と思わざるを得ない。
ゲームの容量を公式で4倍増しに表記したり、ピストンシーンでチ〇コを異空間に消失させるなど匠の技も見せ、本作は見事住民のツボを突いてみせてくれた。
そして恐れていた事態が訪れる。
前年から顕著であった『低価格帯ノベルゲーム』がこの世の全てを覆い尽くさんと攻勢を仕掛けてきたのだ。
KOTYeにおける、「大航海時代」ならぬ「大低価異時代」の幕開けである。
先手を切った海賊1号は、NTR界のワールドレコード保持者、アトリエさくらの『他人棒でイキ狂い快楽に溺れていく最愛妻~見せつけられた快楽に絶頂する妻の痴態』。
前年から月イチペースながらRすらないNTRガチャというイリーガルポジションで完全に追跡対象となった当メーカーだが、その奈落方向の実力は今年も止まる所を知らなかった。
ヤリサー常連だった主人公と過去に妻と肉体関係にあった間男との三角関係という構図なのだが、書くべき中心点があらゆる事態でブレッブレ。
冒頭からNTRビデオレターではなく、普通のAVを送るというジュラル星人並みに回りくどい作戦で動揺を誘うのだが、開封したのは妻ではなく主人公という稚拙さ。これでは只のプレゼントである。
その後もフェラなのにチ〇コの先が額まで届いているなど文章とイラストの不一致の連発や、頻繁な誤字など、真面目に作る気がないのが丸わかりなスペクタクルな内容が続き、
最終的には全裸だった間男が1クリックで服を蒸着し、全裸だった妻も一瞬で下着を瞬着するなどやりたい放題。
間男は「妻の事は気に入ったが自分の女にするのは面倒くさいので二人で共有しよう」と提案するが、それを断っても、主人公は、
「別に抱かれたいならいいさ!その代わり今まで通りの生活を続けてくれるんなら問題ないから!」と返答する懐の深さを見せつけるが、それが間男の提案と何が違うというのか。
前年からまるで成長していないNTRの舐めっぷりに住民も辟易。唯一「その前に一度イクからちょっと待ってて」という名言に一部の住民が心トキメく結果となる。
ならばフルプライスの本気を見せてやると軍が出撃させたのは、こちらも常連evoLLの『ラブカフェ~童貞な俺でも、巨乳女先輩と同棲できるってマジですか?~』。
選択肢は最初の僅か一つという中身は、「エロゲーなんだからエロ要素以外の描写は全て非現実的だが何か問題でも?」いうある意味潔さを感じる内容だ。
同棲約一ヶ月程度で主人公に心を許したヒロインは、肝心の一ヶ月の過程すら省かれ処女からあっさり股を開き、
バイト先がカフェだというのに客との会話は丸々カット。モブに至っては台詞が三ヶ所のみ。
ハーレムルートに至っては描写はともかく、実は主人公の妄想オチで〆るという酷い扱いよう。
そんな中住民の心を強く揺さぶったのが、射精を「放精」と変えるハイセンス。KOTYeの歴史に、また一つ名言の1ページが刻まれた瞬間だった。
その後も選評ラッシュは終わりがないのが終わりと言わんばかりに続く。
快楽堕ち+ふたなり+異種姦と亜種系属性のよくばりセットに、調教描写を削って代わりにバトルファック要素を詰め込み需要不明にした『虜囚の女ヒーロー~怪人たちとの闇の狂宴~』。
パッチを当てないと誤字脱字の弾幕で読めたものではないテキストにあらんばかりの設定詐欺を詰め込み、ダメ押しで嫉妬がボンバーという迷言も残した『Aphrodisiac-女神の欲望ー』。
そして春になると露出狂が閑静な住宅街を出歩くように、温かい狂気もやってくる。わるきゅ~れの『病みつきヤンデレハーレム!』だ。
冒頭でヒロインに「誤字脱字が多すぎる」と言わせた矢先から、誤字脱字を連発するなど完璧なブーメランで住民の心を掴むと、
ヒロイン三名からは、自作の主人公グッズに塗れた部屋で逆レイプ、スタンガンと手錠で身動きを取れなくしてから逆レイプ、睡眠薬を盛って眠らせた後に逆レイプと、主人公は弥が上にも絞られ続ける。
精液の表現にも一癖あり「オス汁」「生殖汁」「遺伝子汁」とバリエーションを増やして表現の自由を広げたり、Hシーンの最中のBGMを、突如激しいクラシック調に切り替えユーザーを病ませようとするなど配慮も抜群だ。
手抜きこそ随所に感じ取れるが、それを「笑い」に転用できる作り手のセンスが溢れた本作は、「(クソゲーは)こういうのでいいんだよこういうので」を現した作品といえよう。
その後も住民は追跡対象を中心にエロゲー発掘に勤しみ続けると、掘れば掘るだけクソゲーが出土されるゴールドラッシュに突入。
主人公の声が合わなさ過ぎてクッキー☆級のミスキャスト感溢れる『上司の巨乳騎士団長は俺の肉オナホ!~年下恋人から中出し漬けで寝取って孕ませ穴に!~』。
かつてKOTYeで選評も届いた『淫らに堕ちる、最愛彼女』から選択肢も背景も流用した挙句、オモチャどころかただのビッチだったというオチで終わる『好きだった幼馴染がクラスメイトのオモチャになっていた件』。
不意に忍び寄る百合の中の肉の棘を回避し『星と乙女が占う未来』もお縄にかかった作品だ。本作は百合ライクの全年齢版にR-18要素を追加し成人版にした低価格ADVである。
ほほう、では百合えっちが入っているのかね? と思った諸君、残念ながら不正解。ではチャラ男によるNTRか!? と思った諸君、それも不正解。
答えは「名前、CG、ボイス、立絵、台詞、全てがない謎の男とのHシーンの挿入」である。
何をご冗談をと思うだろうが、実際そういうブツが入ってるんだから始末に負えない。
「百合に男」は確かに強烈なクソ要素であり嫌悪感爆裂魔法級ではあるが、だからといってここまで無味乾燥な代物をぶち込むとは何を考えているのか。
一部からは女性キャラの妄想オナニー説もあり、完全に蛇足。戦場に舞い降りたトラブルメーカー並みに来るな近寄るなと言いたくなる問題作であった。
次々に選評投下と発掘作業を兼任する住民だが徐々に疲弊していたのも確かである。ここらで一つ笑える一品はないのか? そう訴え始める住民が気まぐれに掘り起こした女土偶が、
ZIONの『ワケありJK従属学園~強制絶頂は終わらない~』。
低価格帯ながら原画は素晴らしく、どこぞのママに見せたい程であるが、肝心な内容は借金まみれの堕ちたセレブお嬢様がFラン学校に転校させられ、男たちの性処理をしていく、というもの。
しかし主人公は余程の肝っ玉なのか潜在ビッチだったのか、処女喪失からいきなり「ヌアァーーー…」と迫真の悶絶絶頂をしてくれる。
またモブキャラの名前は「S1」「男子生徒A、X」果てには「α」という盛り沢山な固有名詞で構成されており、誰が何者なのかさっぱり分からず、
竿役には名前なんて必要ねえんだよという開き直りすら感じる。
他にも「性的な知識は月並みにある」「敏感な子宮口を亀頭が消しゴムのように削ってくる」「男根の美味を味わう」といった、
中学生が文学的表現を試みて玉砕したような愉快な日本語が目白押し。「放精」まで完備している。
昨今は絵がいいならシナリオは適当でもいいという風潮があるが、世の中には絵すらダメな作品もごまんとあるので、これはこれで歓迎すべき傾向かもしれない。
続いて発掘されたのは、グレースケールに糞の色を塗った『淫堕の姫騎士ジャンヌRe:BORN~オーガの仔種を注がれる気高き姫!~』。
本作は2006年に発売された同名作品に新規シナリオを追加した所轄リメイクものである。
その内容は、新撮りを行わず旧作の部分は旧作の声優のままなのに、新規のシナリオには全く違う声優を起用するという迷采配。
そして肝心の新規シナリオは、スキップすれば僅か13秒で終わる夢オチというやる気のなさ。しかもこれでフルプライスである。
幸いこれではまずいと思ったのか、メーカーは公式サンプルで新規絵の9割を閲覧させてくれるので、それを見れば大体の目標は達成できるだろう。
これで、一息つけると思ったのか? 無駄だ。大魔王と大高価異からは逃れられない。
ヒロインと主人公が急接近するイベントがアナニー中に取れなくなったペンを取ってもらうというけつなあな確定シュールギャグさが光る、
『ナマイキユメちゃんはおにぃとメチャクチャHしたい!~ギャルと教師のドキドキ同棲生活~』。
令和のこの時代に未読も既読もPC環境が悪いとスキップできないうえに字が小さすぎて見えづらいバッグログと一つも褒めるところがないへっぽこUIを搭載した、
『ママ僕だけを愛して…~キモデブ息子を溺愛する母の歪んだ愛情~』。
そんな中、クリトリスを肉棒に変えて白兵突撃を敢行する一人の女体化戦士がいた。名を『女体化転生したボクはふたなりで無双する!?~でもお姉ちゃんたちには絶対に勝てません!~』。
本作の主人公は童貞のまま死んだ男であり、転生先では女体化している。そしていつも意地悪をしてくる姉に一転攻勢を仕掛けてやろうと目論み、逆にカウンターされるという心底情けない話だ。
しかし異世界モノの筈なのに家屋や道路の造型が全て日本そのものであり、「異世界とは一体……うごごご」と墳飯する事必至である。
特に主人公のノリは、80年代シュールギャグとでも言うべき壊滅的な大馬鹿さん太郎であり、ふたなり化して姉を犯そうとするもアイテムを取られ逆に犯されれば、
僕は負けてない、僕は屈したわけじゃない、とサムライ8級の苦しい言い訳に走る。そればかりか、転生前に脳みそを置いてきてしまったのか、それとも元々中身がなかったのか、
「お腹がポンポコダヌキになる」「精液が出発進行する」「頭も体もぽあぽあのぷあぷあだ」といった愉快で気の毒な言語センスを用いてプレイヤーをドン引きさせてくる。
転生前に何を勉強していたのか。おまえは姉を押し倒す前に、まず国語を受精卵あたりからやり直した方がいいと忠告してやりたい。
そして色んな意味で問題作だったのが未踏の秘境から数々の珍作を送り出してきたアパタイトの『清純ヒーロー×ビッチ堕ち!!~悪の組織に調教される乙女の心の移ろいは…~』。
アパタイトと言えば「俺たちゃ裸がユニフォーム」「常識は糞と一緒に流した」とでもいうべきアンプレセテンディドな作風で場を盛り上げるkotyeのモーツァルト的存在だが、その作風は今回も平常運転。
本作は所謂調教モノ。つまりいかにしてヒロインを嬲り、辱め、快楽堕ちさせていくかを事細やかに描けるかが肝要なのだが、
……なのだが、捕らわれたヒロインが「普通に調教して。もっと正々堂々と」とコメントするなど抵抗感の歯車が錆びついて嚙み合っていない。
また敵組織はとてもアットホームであり、朝食に炒飯を出したり、朝に体操をさせたり、シャワーも浴びさせるなど令嬢お付きのメイドの様な献身ぶり。
この他にも、米と野菜のどちらを育てるかヒロインと会議、助産師がいないからという理由で種付けを断念、
ローンが残っている事に苦悩しヒロインに同情される、挙句帰るのを許可する等、とても悪意がある集団とは思えない。
おそらくこれは小学生に見せる「よい子は調教をしていけませんよ」という教材か何かなのだろう。18禁で教育を施すという粋な計らいが光る一品だった。
続いて紹介するのは、『またしても』という枕詞が付くアトリエさくらの『妻、宇佐見恋を抱いてください 〜夫公認公開恥辱NTR〜』。
本作を一言で例えるなら、「全員が痛い」。ヒロインは電車内で痴漢されるのだが、散々脳内で相手を罵倒するのに結局最後までさせるという謎思考の持ち主で、
間男に、セフレが産気づいたからおまえの力が必要なんだ、というあからさまな噓に騙されホイホイ付いていく脳内お花畑の間抜け振り。
その間男も事あるごとにセフレが複数いることを自慢するが、気色悪いおじさん構文を多用する変人であり、そもそも女に困ってないのに電車内で痴漢をするというリスクを負う時点で頭の螺子が外れている。
主人公に至っては、実は妻も含め犯される女を見て興奮する寝取らせ性癖者である事が発覚し、完堕ちルートでは妻に完全に愛想をつかされ、別ルートでも妻を貸し出して興奮する有様のダメ人間。
このようにメインメンバーが全員アホではまともな寝取られなど描写できる筈もなく、不条理ギャグのようなシーンがひたすら続く。
もはやNTR好きというより、KOTYe住民にアピールしているかのようなダークマター振りは別の意味で期待に応えてしまった。
これは同ブランドに限った話ではないが、NTRモノは展開が固定されているからこそ、受け取り手にNTR本来の持ち味である黒い絶望感を与えにくいというハンデがある。
最初からNTRですと提供するのは、余程優れたシナリオでない限り、スカムカルチャーといえどハイワロに過ぎないのだ。
その後もアトリエさくらは、山なしオチなし意味なし+多すぎる誤字=『堕とされた義姉~憧れていた義姉がクラスメイトの手で快楽調教させられていく~』や、
ヒロインが子種欲しいがために半ばノリノリでHする阿婆擦れ振りで転落堕ち感が皆無な『背徳の強制種付け~愛する妻の子宮(なか)に注ぎ込まれるほかの男の精液~』など、
多くの変作をノルマのように出し続けるが、それが「いつものさくら」以上の関心を集められたかは些か疑問である。
その後も低価格帯の作品は止めてと言われて止める馬鹿はいないとばかりに輩出される。
盗聴を題材にしており、ヒロインは録音した性行為で興奮する性癖なのに肝心の部分がサイレントリスニングな『カノジョの性癖ー盗聴×妄想ー』。
オタクに優しいギャルをテーマにしていながらギャル感がまるでなく、ストーリーはただひたすらずっぷオトマトペの『ギャル姉妹~ハーレムタイムが止まらない!~』。
そして極め付けが、NTRと妖刀村正を組み合わせたような傀作『調教カテイ~性開発された肢体は元カレを忘れられない~』である。
本作は『ママ僕だけを愛して…』を世に送り出したTRYSETBreakなのだが、あれほど散々問題視されていた崩れたジェンガのようなUIをそのまま流用している。
すなわち未読も既読も環境次第でスキップできず、バックログは米粒サイズ、コンフィグ画面は意味不明な森林の背景に、アニメもないのにアニメーションon・offの項目。
その様は令和の超空間か? などと住民を畏怖させる始末。
肝心な中身だが、学生時代に間男に調教されたヒロインは男性不信となっているが、ゲーム中では結婚済であり、挙句再会した間男にはお別れセックスという名目であっさり股を開くという貫禄の設定崩壊。
その後も裏で快楽が忘れられず間男との交際は続き、快楽堕ちしたヒロインは「人妻になった分余計気持ちいい」と屑女ぶりを発揮するのだが、
夫は夫で、竿役に精神汚染され、NTRている様を見せられ「勉強になる」などと発言したり、それどころか「誰の子供かわからないなんて興奮する」などと精神病棟の介護士と薬が必要な状態に陥り、
最終的に夫はなんと間男に「去勢」されるというサイコホラー。ここまで酷いと「このゲームを作ったのは誰だぁ!?」と問い詰めたくなるが、
なんと本作にはエンドロールすらないという尻尾の先まで超空間リスペクト。
変化球を投げろと言われてバッターを惨殺するようなピッチャーをマウンドに立たせてはいけない、そういう地獄甲子園風ルールを改めて考えさせられた一品だった。
『侵・性奴会~美人会長と爆乳書記の調教日報~』も忘れてはならない。
入院するほどの重傷を負った主人公が生徒会に贖罪という建前の調教をしていくという本作であるが、あらすじで教室に赴くとなっているのに、最後まで教室に行く描写がないという伏線のぶん投げっぷり。
説明不足解説不足はこの点だけに止まらず、そもそも何故主人公が重傷を負うハメになったかもよくわからないし、
代償として何故ヒロイン達が体を捧げる事になったのかもプレイヤー視点だと何一つ不明である。
この問題点は肝心の調教の過程にまで侵食しており、内容は「やらせろ」→「こんな奴に悔しい……ビクンビクン。でも感じちゃう」→「よかった」を中年男性のオナニーのオカズのように代わり映えしない清々しい程のワンパターン。
勿論各キャラに割り振られた様々な作中設定も、ゲーム内では何一つ生かされることはなく、もはやbotに肉棒を挿れ続けているような錯覚にすら陥る。
なお、生徒会では持ち物検査で手に入れたエロゲーの話題で持ち切りなのだが、そういったプレイをご所望しているあたりただの好き者の集まりなだけかもしれない。
以上が2023年上半期が終わった時点でのクソゲー一覧である。
あれ、なんか多くね?と思った人、その通り。この時点で選評数23本。前年の19本を既に上回るという異常事態。そしてその約8割が低価格帯。
もはやこの業界に情熱を傾けるまともなメーカーなどいないのか? と住民は唖然茫然となった。
そんな下半期、猛暑で日本が業火に苦しむ中、均衡を破ったのは、……やっぱりアトリエさくらだった。『俺の幼馴染がエロ配信をしていた件~地味な彼女の裏の顔はエロエロな配信者でした~』。
本作は今までさくらが得意としていた、馴れ初めを数クリックで解説して後は各々が想像しろを廃止し、ヒロインとの描写も比較的深く誤字脱字含めても書き込まれている。
しかしその代償として、肝心なHシーンの尺を削っては本末転倒だろう。
基本的にヒロインは過激な配信をしてそれが徐々にエスカレートしていき……というのは話として悪くないのだが、如何せん掲げるべきNTR感が5ミクロン程度に薄い。
勿論主人公に寝取らせ属性を一つまみする悪癖も健在で、NTRモノとしてはあまりに作りが粗雑で中途半端。
恒例行事にテコ入れをしたかったという思いは伝わるのだが、あちらが立てばこちらが立たずでは伝わるものも伝わらないという課題作であった。
そして猛暑がひと段落した中、スレに一線級の不発弾が発掘される。
それこそがかつて凌辱モノで多くの戦果を得た、老舗ルネの『エルフェンキング』だ。
90枚を超えるCG、豪華声優陣、そしてかつてのルネの十八番ともいえる凌辱、付け入る隙はどこにもないと思われていた本作だが、
開けられた箱には魔法陣グルグルの失敗作のようなクリーチャーが入っていた。
まず肝心の凌辱描写だが、うまい棒の穴に割り箸を挿れ続けるような極めておざなりな描写になっている。
前提として本作には裸や下着の立ち絵差分というものが存在せず、対象キャラを選んだあとは、工程や流れという段階をほぼ無視し「ブッ込んでいくんで世露死苦ぅ!」とばかりにHシーンが始まるのである。
相手をじわじわと責めてトドメに、という凌辱モノの要ともいえる導入が欠けており、場合によっては既に挿入済みだったり、部下に輪姦させるというものも多い。
エロゲというのはHな「シーン」の集合体であり、事前の精密な描写が必要不可欠。エロい画集など幾らでも転がっているこのご時世だからこそ、見せる側を興奮させ、魅了する演出が要求とされる。
しかし本作は、「テキストとボイスと複数のCGをパッケージする」という概念がなく、凌辱描写はいずれもCG1枚の単発に多少の差分を添えただけ。プレイヤー視点での心理面を揺さぶるシチュエーションが根本的に描けていない。
凌辱の肝たる部分を省いて「Hシーンだぞ、ヌけよ」では、どれだけCG枚数があろうとただのカラー絵に堕ちてしまうことを、メーカーは理解っていないようだ。
攻略対象こそ8人と豊富だが、その分各キャラが没個性となってしまい、凌辱はさもベルトコンベアで流れてきた弁当にバランを入れる作業。
これではもはや顔と声が違うだけの万能精液便器である。
そもそもシナリオ自体、「ぼくのかんがえたさいこうのちからでえるふをやっつけておかしまくる」という小学生が考えた読書感想文並みの陳腐さで、
神から与えられた何でもできるチート魔法で人間たちがエルフに一転攻勢するという、同人界隈を見渡せば幾らでも既視感がある代物なため目新しさは皆無。
しかもこの力は主人公の独占ではなく、やろうと思えば仲間にすら幾らでも分け与えられるため、凡百のならず者が一瞬で魔法自慢の兵と化し、戦力差をあっさり覆すシナリオにおいてのお任せ安心潤滑油。
ここまでくるとうだつの上がらない弱者男性が人生の一発逆転を賭けて執筆した某界隈の三流小説となんら変わりはない。
アマチュアならそれも許されるだろうが、それを商業作品を提供するプロがやるのは言語道断だろう。
主人公は傭兵の大将というより山賊のお頭という印象で、知性や狡猾さというのが全く感じ取れず、力を得てからは完全に天狗ムーヴの性欲魔人。
言動も昭和時代の体育教師のように粗野で乱暴な糞主人公と化すため、これならオークやゴブリンさん達の方がまだ竿役として適材という有様。
そして何よりも問題なのが、これが手間暇をかけて完成させたフルプライスのゲームであることだろう。
「如何に手を抜いて作るか」が傾向とされる昨今のクソゲー界隈において、金と時間と労力を費やして世に送り出した自信作がクソだった、という点は住民に高く評価され、
『エルフ』は、本年における最も悲劇的な存在として、その痕跡を確かに刻むことに成功したのである……。
平和は長く続かない。次に出現したのは「おまえはもういい。座ってろ」と枕詞が付くアトリエさくらの『恋人・亜依理(あいり)を抱いた他の男達~愛する恋人が俺の元から去った理由(わけ)』。
本作は複数の章に分かれて構成されており、間男のポジも変化するのだが、肝心な中身はサイコパスが白い粉をキメながら思いついた叙述トリック。
1章主人公はヒロインと偶然再会するのだが、既にヒロインには彼氏(2章主人公)がいるので、本来ならもはやここで話の拡がりなどありえない。
しかし「この話は早くも終了ですね」となるとライターの預金残高も増えないので話は続き、結局1章主人公は駄々っ子のような逆ギレで彼氏と別れろとヒロインに迫り、
対するヒロインは、あなたとは付き合えないと説明しておきながらベッドに誘い肉体関係を持つという、いつもあなたの心の中にいるポルナレフ展開。
3章主人公に至っては固有名詞があるだけで秋の木枯らしの如く空気、ヒロインは「あーわたしNTRれちゃったぁーw」とばかりに他の男の所へ赴き、最終的に1章主人公と結ばれてエンディングである。
プレイヤー視点からすれば何から何まで「ホワッツ?」な展開が続くが、言い換えれば「主人公は亜依理。男は皆舞台装置」とすれば話の流れにも合点がいく。
だが、それがNTRブランドが掲げるNTRかというとあまりに疑問符が残る。マスターアップしながら直前までHPを未完成のまま放置する等盤外戦でも活躍し、
改めて、我はKOTYeにありと声高らかに宣言したのだった。
季節も残すところ冬のみ、そろそろ年末の魔物が蠢き出そうとする気配を住民が感じ取る中、縮地法を用いて主人公とプレイヤーに急接近する三人娘がいた。名をTinkerBellの『せをはやみ。』
土地の淫欲の呪いを防ぐべく三人娘とSEXし続けるという王道の抜きゲーシナリオではあるのだが、本作は遠近法が完全に無視されている。
どういうことかというと、説明も脈絡もなく、話の流れや状況を完全に無視して、女性キャラの立ち絵が突如顔面接近のド迫力になり、モニター前の人間を「IYAAAAAAAAA!!」と驚かせるのである。
それはいつ何時起こるかわからないので、プレイヤーは爆弾処理の気分で慎重にクリックしながら、絶えず危険に備える外ない。
その様は作画崩壊も相まって「精神的ブラクラ」「野獣の眼光」とでも評すべきか。
一方でシステム面も酷く、非常に見難いフリガナは勿論、「アクメーター」「むんむんほかほか機能」「特殊効果」など、
onにしても何が付与されるのかさっぱり分からないコンフィグなどもポイントが高い。
余計な味しかしない隠し味を仕込んだ結果何もかも台無しになるという、シェフのおすすめできない一品といえよう。
その後はタイトルで調教としながら調教するシーンもなく、迫る娘に主人公が流されるだけで、AI妻とはわけのわからないテレフォンセックスなど、
コンセプトがあらゆる面で崩壊している、スワンの血統を継ぐ疑惑が掛けられた『AI(愛)妻と娘への調教生活』の選評が届く。
やれやれ、ようやく今年も終わりか……、そう一時的に安堵した住民だが、思いがけない黒船の奇襲を受けることになる。
海外の住民から、『JINKIーU』の第三の選評が届けられたのだ。
剝がした筈の化けの皮には、まだ三枚目が内包されていたのだ。それでは解明された全貌を補足していこう。
まずフレームレートの問題だが、一応外部ソフトを用いる事で出力を下げる事は出来る。だがその場合本来の想定外の起動手段なせいか、動作は文字送りすらカックカクのバッキバキで結局使い物にならない。
オプションも酷い。キーコンフィグすらないのは先に述べた通りなのだが、ESCで終了で戻るが右クリック、そしてオプション画面から戻る場合は右クリック後に左クリック。
この時戻る前にESCを押してしまうと右も左も使い物にならなくなって動作が詰む。「つまり、どういうことなんだってばよ!?」ESCキーは触れてはいけない。そう思っていればいい。
また本作が既読スキップもAUTOモードもない苦行極まる周回プレイ物である事は解説したが、ボリュームがあるかと言うとそうでもない。
「苦労は3倍なのに中身は1/3だな!」とでも言わんばかりにあからさまなシナリオ削除が散見され、
登場キャラの交流や掛け合いといったゲームに必要な本筋が明らかに抜けている。これでは登場人物に感情移入などできようもない。
音周りもかなりキツい。単調なBGMを適当なタイミングでループさせているため、RTSパートは虚無も相まって体は闘争ではなく睡眠を求める。
RTSパートの出来が無惨なのは技術的な問題もあるので仕方がないが、ステージは100以上あるのにマップは既視感漂う使い回しという「サモンライド」構成な事も追記しておこう。
以上が、『JINKIーU』の深淵の果てに設置された地獄の窯の底の錆の如き特級呪物の全貌である。
その潜在能力は、意図しない「年末の魔物」であり、住民を戦慄させるには充分な破壊力を持っていた。今年はこれで決まりか……? そう思わせるほどに。
しかしここはKOTYeである。最後の最後まで勝負は分からない。判定は一先ずお預けとなり、煩悩を濃縮する除夜の鐘は鳴り響いた。
そして年が明けて予備期間。住民はいよいよラストスパートに向けて静かに動き始める。
胸が締めつけられるような不安と恐怖入り混じる緊張感の中、果たして今年も何かがやってきてしまうのか……? そう危惧していた住民だったが、
やはり「それ」は登場してしまった。約束された闇の異邦人が今年も現れたのだ。
その名は、『モラトリアム~ブルーアワー幸せの時間~』。前年『悪魔と夜と異世界と』で大賞デビューを飾ったWendyBellが満を持して送り出した年末の魔物である。
あれからおよそ一年の歳月が流れ、奴らはどうなったのか……それではその全貌に注目してみよう。
まず前提として、本作は、あれほど『ととと』で問題視されていた「ダッサダサで構築されたシステム面」が直っていない。
4:3の前世代的な画面比率、ちょこまかと無駄に動く立ち絵、「ぷにぷに」「びゅ~」「ぴんぴん」等と何処かで拾ってきたようなウザいSE、
不自由な国語で構成されたあらすじと明らかに違う冒頭などあらゆる面が前作と類似している。容量に至っては1Gを割るという惨状だ。
絵に至っては、強欲な壺フェラの踏襲だけでなく、キャラが一枚絵のたびに本当に同一人物なのか疑問を抱くほど下手糞で安定せず、作画崩壊は日常茶飯事。
主人公は、内面でブツブツ言う癖だけは申し訳程度に治っているが、やはり調子に乗ったりヘタれたりイキったり流されたりという情緒不安定振りは健在である。
ではエロゲとして、「読み物」としての評価はどうか。こちらも凄惨極まる内容だ。
話の前後がまるで一致しない4コマ漫画のような描写をダイジェストのように強引に繋げている為、書くべき要点が圧倒的に不足しており、
ご都合主義も相まって人間が会話し、話が進んでいる感覚が根本的に抜けている。
ヒロイン二人は他国からの留学生なのだが、やはりこの点も描写不足であり、アーシャに至っては架空の国である必要性が殆どなく、異世界交流の方がまだ説得力があるという有様。
子猫のような奔放ヒロイン「アーシャ」と堅物で融通が利かないヒロイン「アデリナ」も、気付けばあっという間に惹かれ合い、気付けば濡れ場に突入している。
ただこれらの問題点だけを見れば、単にライターの実力不足で済まされるのだが、問題は終盤である。
アーシャの正体は実は王族の娘なのだが、彼女が母国に帰ると、他人が作ったパスポートで日本を飛び出し追いかける主人公や、
アデリナを置き去りにしたまま、架空の国の君主制を廃し民主制に移行する計画に割って入る主人公という頭の中身が愉快な超展開も存在する。
一方でアデリナルートは、アーシャが笛を吹かなきゃ話が進まない牛歩恋愛であり、早くなんとかしてくれよ……と思いながら進むシナリオに辟易する事必至である。
余談ではあるが、ダブルヒロインを謳いながら3P等といった甘ったるい展開は存在しない事も補足しておこう。
最後にHシーン。前述した通り絵が壊滅的なためエロゲとしての需要すら期待はできないのだが、更に異常なのが効果音。
挿入中は「ぐちゃ……ぐちょ……」と陸に上がった半魚人のような音が鳴り響き、ピストンが早まれば「ぐちゃぐちょぐちゃぐちょ」と律動し、
射精時には「どぼぉりゅ!」とチ〇ポからスライムのような異物でも飛び出したような音が木霊する。
伝説の『ママⅡ』は目を閉じなければヌけないと言われていたが、本作は目を瞑り耳を塞がなければヌけないという高度な手段を余儀なくされる。
しかも本作はアクチ付きなため、一度導入すれば売り飛ばす事も出来ない、PCに残り続けるウイルス的存在になるのだ。
このように『モラトリアム』は「あらゆる要素がどうしようもない」を芸のうちに昇華しており、プレイした者全員にめくるめく低品質を提供させることに成功している。
そのあたりは流石大賞を世に送り出したメーカーの面目躍如といったところか。
そしてトリはやはりというか何というか、アトリエさくらが食後の下剤を務める。
元探偵というスキルを活かし、無断で作った合鍵やカメラでの盗撮などの違法行為でNTR事情を探ろうとする主人公や心底出来の悪い立ち絵で、
プレイヤーを満遍なく不快に攻め立てる『妻・倉崎(くらざき)桜菜(さくな)の浮気調査~寝取られ妻の淫らな下半身事情』。
誤字の乱舞やCGとテキストの不一致という基本武装、寝取られ済の婚約者とボテセックスという疑問点の残るエンド、
既に見た寝取られビデオレターをPVのように何度も見せてシナリオを水増しする『略奪された婚約者(フィアンセ)~恋人・真澄(ますみ)と弟の秘密』の選評が届き、
激動の2023年は幕引きとなった。
ここで幕の隙間から顔を出すのを許可していただきたい。アトリエさくらは本年度9作品をエントリーさせ自身の持つワールドレコードを更新した。
それでも住民の「いつものアレ」以上の関心を掴められなかったのは、NTRというミームの潜在能力を捉えられていないからだろう。
先に述べた通り、NTRの持ち味は黒い絶望感。言わば劇薬の如し鬱展開である。
プレイヤーを嘔吐させ、インポテンツにし、心的障害を齎せる程の破壊力を本来は必要とされるジャンルなのだ。
それは必ずしもNTRモノである必要はない。純愛モノに不意打ちの様に忍ばせ背後から斬り付けるのも立派な策略だ。
竿役をコメディリリーフの様に扱い、女性役を背徳感とは無縁に振舞わせてはそれを描写する事などできない。
なお2023年中、スレに生粋のNTRリストが現れ、「NTR最高傑作は螺旋回廊。次点でPureMailとフタレター」とコメントし、彼の業の深さを垣間見せた。
アトリエさくらは是非これらの作品を模範とし、改めて発奮し、PTSDを引き起こすようなNTRを描写していただきたいと切に願う。
以上で、本年度のゲームを紹介し終えた。
太陽は奈落へ墜ち、月は神槌を受けて欠け、大地は爆動し、海原は濁渦を巻く。
終末さえ感じさせるアカシックレコードの断片を全て紹介したところで、大賞を発表しよう。
次点は、
『エルフェンキング』。
『モラトリアム~ブルーアワー幸せの時間~』。
そして大賞は、
『JINKI -Unlimited-』。
2023年度のKOTYeは、全月グランドスラムこそならなかったものの、選評数32本、前年比大幅増を記録した。
このエントリー数は歴代最多でもあり、15周年に相応しい数字であるとも言えよう。
しかし大豊作だったのかと言えば実はそうでもない。むしろここ数年の問題点の先鋭化はより顕著となってしまった。
評するならば、ゲームのクオリティが落ちたというより、クソゲーのクオリティの著しい低下である。
問題点が類似化され、ひたすら地味で盛り上がりに欠け、華もなく映えもせず、笑いやネタにもなりえないのだ。
特に低価格帯勢の陳腐さは凄惨極まりなく、この辺りは本家KOTY末期の状況と酷似している。
欠点の画一化は、真綿で首をへし折るかのような拷問となり、住民の心の街路樹を枯葉剤で葉っぱ一枚落ちない様にしおれさせていった。
確かに「安かろう悪かろう」は万国共通だが、値段相応は必ずしも否とは言えない。
かつて低価格帯の唯一神『softhouse-seal』は、ロープライスながらも、RPGやアクションに挑戦したり、主題歌を入れる等ネタ性やインパクト勝負で作品に熱意を込め、人々を大いに賑わせてくれた。
しかし今年のロープライス勢には、そういった気概すら感じ取れない、選評者が血反吐を出してようやく瞬間風速的な話題にできる程度のクソゲーばかり。
いかにKOTYeの精鋭といえど、ゲロうんこ茶漬けや無添加毒マフィンを食わされ続けては体が悲鳴を上げるし、生きて碑を残す気力すら失ってしまう。
粗製乱造が極まり、語っても拡がりが狭く感受も味わえず単純につまらない作品が氾濫した、数に比例しない艱難辛苦の一年だったと言える。
その中には確かに名言はあった。一芸特化を駆使することで個性を捻出し、存在感をアピールせんとする作品は本年度には特に多かった。
「放精」「その前に一度イクからちょっと待ってて」「ぽあぽあのぷあぷあ」「けつあな確定展開」「百合に男」「去勢」etc……。
しかしそれらに第一線を張れる力量はなく、精々が耐用年数1年未満の一発屋芸人の持ちネタに過ぎない。我々が求めるのはマクロであってミクロではないのだ。
故に、本年度のクソゲーに要求されるのは、そういった鬱積した感情を吹き飛ばすかのような、圧倒的『パワー』。
次点以上に選ばれたのは、そんな欲求不満を解決できるに値する選りすぐりが顔を見合わせる構図となった。
老兵が最期に遺した死に水『JINKIーU』。
古豪が心血を注いだ悲劇『エルフ』。
前年王者による低品質の堅守城壁『モラトリアム』。
これらはいずれも殴り合いながら奈落へと堕ちる毒腐拳の持ち主であった。
さて、ここで今一度KOTYeの立ち位置について振り返っておこう。
そもそもKOTYeは、その年一番の「クソ」な「エロゲー」を決める祭典であった。
しかしエロゲーは、コンシューマー以上に「嗜好品」という意味合いが強いため、より多角的な視点での品評が必要とされてきた。
故に「門番」や「選外」の概念はなく、有力視されたものを「次点」とし、その頂に「大賞」の戴冠が与えられるピラミッド制を続けてきたのだ。
思えば我々は創生期以来、「クソゲーとは何か」を探求してきた。
しかし本家KOTYの消滅によって、より深く入りこんだ根本的な課題と相まみえる必要を強いられた。
すなわち、「ゲームとは何か」。もっと言えば、「何故ゲームは作られるのか」。
富、名声、権力、人がゲームを作るモチベーションは数あるだろう。だがいつの時代も、創作の世界で人を突き動かしてきたのは一つだ。
それは、「夢の体現」である。
思い描いた誇大妄想を理想の形に押し込め誰もが笑って楽しめる娯楽に仕上げる、それこそが創造(クリエイト)精神だ。
エロゲーはそれにアダルト要素を一つまみしたものに過ぎない。
その「夢」を構築しようとして、「現実」という高くて分厚い壁にぶつかり、玉砕した末路。それが「クソゲー」となってこの世に生を受けるのである。
しかしその中において、本年度どうしても話題から切り離せないゲームがある。多方面から最低最悪の烙印を押され、某批評サイト年間ワースト1を搔っ攫い、
「何なのだ、これは!どうすればいいのだ?!」と戦慄させた、殉職した夢追い人『JINKIーU』だ。
事実一部からは「今年のKOTYeの大本命」「約束された大賞」と囁かれたこの作品。我々をこれをどうジャッジするべきか。
散々に袋叩きにした後奈落の谷に蹴り落とすのが正解なのか。一番石を投げた数で勝敗を決めるのが正解なのか。
だが、今一度待って欲しい。そんな評価はネットを探せば何処にでも転がっている。今更KOTYeでやる意味がない。
厳正な評価を下すのは勿論だが、やるからにはKOTYeでしか出来ない批評を持ってこの作品に応えるべきだろう。
成程、確かに『JINKIーU』は過去のKOTYe大賞と比較しても遜色のないクソゲーだ。
ストーリーは希薄、あって当然の機能すら何一つない、RTSパートは欠陥だらけ穴だらけ。正直、褒めるところを探す方が難しい作品である。
だが、プレイした者なら分かるが、『JINKIーU』の問題点は、詰まる所「未完成」による要因であるのが大きい。
出来ている部分をパッチワークの様に強引に繋げ、エンディングを付けただけ。そのため一線級のクソゲーでありながら、ショボさばかりが目に付いてネタとして挙げられる箇所に乏しい。
歴代KOTYe大賞等と比較すると、強烈な個性やインパクト性に欠け、単純にクソ要素の手数だけで構成されている感は否めない。
じっくり時間をかけてシステムの不備や出来の悪い部分を修正し作り込めばそれなりの物になっていた可能性は高い。しかし「現実」というクソゲーが、たらればを許さなかった。
解散を表明し、自身の死期を悟り、誰にも看取られる事なく縁側の下で静かに逝こうとするメーカーに、割り振れるような予算も技術も人員も何一つない事は容易に推測できるだろう。
すなわち、可能性の塊ではあったが、現実という壁に潰され何一つ成就できなかった悲劇性にこそ、『JINKIーU』の問題点は集約されていると言える。
かくして産まれた漆黒のエレクトリカルパレードの輝きは、「これはひどい」がそれ以上の語り口の拡がりを持たない本年度のクソゲーとは一線を画していたといえよう。
戯画からすればさぞ無念であろう。悲愴な駄作になると分かっていながら、徒花を作らなければいけなかった苦しみは察するに余りある。
されど死する時すら前のめりと最期までエンターティナーたれという姿勢こそ、我々は評価する。一人の老兵の生き様と死に様が遺した物語は充分に語り継ぐに相応しいものであった。
そして誰からも愛されなかった悲哀を優しく胸で抱き「よくやった……お疲れ様……」と労いの言葉を投げ掛ける。そんな温情もあってもいいだろう。
故に、本年度の大賞を、『JINKI -Unlimited-』とし、その遺碑に献花と祈りを捧げるものとする。
近年におけるSNSの発達は目覚しいが、その方向は多様性を源流としたインターネットという無限の空間でネタを楽しむ場ではなくなりつつある。
KOTYeは所轄ネタスレではあるが、ネタだからといえば何もかも許されると思っているのか、という声も少なからずあるのが実情だ。
事実本年度も、絵・キャラクター・主題歌・シナリオ、全てが最高な出来でありながら、最終決戦の絵画対決において、能力で幻覚を見せて勝利という「そうはならんやろ」と味噌がついた、
構想8年の結晶『サクラノ刻』の選評が届いたことで一部に波紋が及んでいる。
Kotyeが外部スレ故に、大きな混乱こそなかったが、スレ住民を「ゲテモノ食いの食材の味が分からぬ味盲者の集まり」と宣い断罪する者もいたほどだ。
確かにゲームをクソゲーと扱うのは、人が思う以上に勇気がいる行動ではあるだろう。ましてやそこにカタルシスやエンタメ性を求めるなど、異文化コミュニケーションもいいところだ。
我々は決してクソゲー認定者ではないと主張するが、所詮場末の俗物の偏った価値観など、大多数の前では容易く一蹴され存在を否定されるが道理だ。
そうでなくても、市場の縮小、大手の解散、低価格帯の大量流入、そして本家の活動休止……。
クソゲーを語る場は年々狭まっていっている。
これを言ってはお終いだが、折角高い金を出してゲームを遊ぶのだから、誰もが支持する名作だけをプレイしておけばいい、というのはいつの時代も同じだろう。
『KOTY』も、逆説的に万人に受け入れられるものならば、企画自体が成り立たないのである。
それでも我々が今日までクソゲーが語ってこれたのは、人が持つべき二つの究極のモチベーションによって支えられてきたからだ。
それは、『憎悪』と『愛』である。
例えば愛する者が殺され、復讐を誓う。例えば愛するものと生き別れ、己が地獄にいようとも再会を想って死力を尽くす。
その時、人はとてつもない力を発揮する。それは普通の人間には成しえない文字通り「全霊」だ。
思えばクソゲーオブザイヤーという企画は、その二つのモチベーションによって支えられてきた。
クソゲーを掴んでしまった怒りという『憎悪』を、皆と分かち合い笑って昇華する『愛』へと変えることで存続してこられた。
確かにゲームは大衆娯楽であり商品である以上、売れてもいなければ支持されてもいないものに価値を見出すのは難しいだろう。
しかしどれ程のクソゲーでも、樹海の中の泉の一滴を優しく手で掬う者。そんな人がいてもいいのではないだろうか。
エロゲ業界は終わった。そう囁く者もいる。それが本当かどうかは我々には分からない。
事実ガラパゴス化された日本のゲーム産業で、極めてニッチな人々にしか需要がない世界が先細りの一途を辿ることは予てから想像が付いていた。
コンシューマー市場ですら、携帯機が消滅し、製作費は高騰し続け、大半のサードは撤退、大手も過去の遺産とシリーズ物で食い繋いでいるのが現状だ。
実際、今の子供はゲームを遊ばなくなったと言われており、買い支えている層は高齢化の一途を辿っている。
しかしどんな形にしろ彼らはプロであり、商品を売ってお金を稼ぐ側である。どれだけ苦しかろうと言い訳をしていてはプロ失格だ。
例え彼らが断末魔の咆哮をあげたとしても、それはユーザーの耳には決して刺さらず、クソゲーとして粛々と処理されるだけである。
だからこそクソゲーをネタの肴として語り合い、面白おかしく馬鹿らしく楽しむ行為はある意味で健全な行為だと思う。
『KOTY』のようなイベントで、皆がネタを笑っていられるうちは、日本のゲーム産業にはまだ未来があると思われる。
それが完全に断たれた時、その時が、この業界の本当の「終わりの始まり」を指しているのではないだろうか。
その為に、我々はどんなに道険しくとも最前線に立ち続ける。
闇なくして、光は輝く場所は失うように、
雨なくして、晴れを悦ぶ者はいないように、
名もなき修羅達は今日もクソゲーの、心躍り焦がれる物語を後世に残すため今日も黒檀をかじり、汚泥を飲み込み続ける。
いつか終わると分かっていても、まだ終わらせることはできない。我々の痕跡が、誰もが笑って過ごせる安寧の時を招くと信じて。
最後に、心が強い正統後継者と住民の魂の決意表明を持って、2023年度のクソゲーオブザイヤーinエロゲーを締めさせていただこう。
「ただの住民じゃねえぞ。何度でも心の強さで立ち上がってクソゲーをプレイし選評にするド級の住民! ド住民だ!」