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てるてる坊主

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てるてる坊主 04/09/07

  てるてる坊主の話になった。

  晴天を祈る為に、生贄を首吊りにして捧げる効果の全く保証されない呪術であるが、あまりにも簡便であることから暇潰しの一種として作成されることが多い。

  作成するには塵紙と糸に輪ゴムと油性の筆記具があればよい。ここまでは合意したものの吊るし方で紛糾した。

   「首から吊る」
   「頭の天辺から吊る」
   「背中から吊る」

  冷静になって作成手順を思い起こしてみると、手前の場合は首から吊るすが、しかしそれは残酷であるばかりか吊るされた姿が俯き加減で効果の程が疑問である旨の反論があった。頭の天辺から吊るす派は、作成に於いて頭の形を整えて首を縛る前に脳天を貫通させねばならず、丸めた脳を包んで首を縛る標準的な手順から大きく外れることで、それは少々煩雑ではないかと疑義を呈した。糸の貫通など形が整ってからでも針を使えば問題ないとの弁明が為されたが、たかがてるてる坊主に針まで使うのは大人気ないと切り捨てられた。背中から吊るす派は、主に強度と安定度が攻撃された。

  吊るし方は統一など不可能である事が合意されて、次に容貌の提示に移った。油性か水性かで揉めることはなかったが、その表情で再び意見が分裂した。鼻を書くか書かないか、口は開いているか閉じているか、笑みを浮かべた曲線の口か、真一文字か、への字か、点か。目は点であることに全員めでたく同意したが、眉毛の形でついに口汚き罵倒合戦に突入した。ハの字か、逆ハの字か、一一か、あるいは書かないか。

  組み合わせの多さが災いし、同盟関係を結ぼうにも誰と誰が似ているのか判断不可能であり、じゃあ作ってみようとの提案は「そこまでする程の事じゃない」と却下され、何故てるてる坊主如きが激論の対象になるのか理解出来ないまま、場の回転数がいよいよ絶頂に達したと思しき頃、誰かの「顔なしじゃ駄目か?」発言により突然の沈黙が訪れた。各々それまでの興奮を照れつつ、これは時間潰しの話題として絶妙なものであることを認識し、さりげなく話題は逸れてゆく。

  しかし今考えてみれば、顔は書いてある方がよい。布ではなく塵紙を使うことで、微妙な湿気を吸収して顔が萎びてあれば雨の予感・ぱりぱりに乾いてあれば晴れる予感の、顔を見て雨かどうかが判断出来るような科学の力が結集された「予報するてるてる坊主」の作り方と容貌を知りたく思う。
 
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