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**本文 かぼちゃのランタンはあかるいえがお。 ごしゅじんさまにつれられて、くらいよみちをてらします。 かぼちゃのランタンはあかるいえがお。 ごしゅじんさまといっしょに、まちへのみちをてらします。 ふゆをこえてはるがおわって、なつがすぎてあきがきても、かぼちゃのランタンはあかるいえがお。 ごしゅじんさまのあしもとを、あかるくやさしくてらします。 まちからいえにかえったとき、ごしゅじんさまはかぼちゃのランタンを、やさしくなでてくれるのです。 ハロウィンのひには、ごしゅじんさまとまちをねりあるきました。 このひ、かぼちゃのランタンは、あかるいえがおがみんなのにんきものです。 かぼちゃのランタンはおもいました。 ごしゅじんさまといっしょに、ずっとよみちをてらしていたいな。 あかるいえがおでおもいました。 ふゆをこえてはるがおわって、なつになったあるひ、かぼちゃのランタンは、よみちをてらしませんでした。 ごしゅじんさまがまちへいかなかったのです。 かぼちゃのランタンは、さびしいのをがまんしてつぎのひをまちました。 つぎのひも、かぼちゃのランタンはよみちをてらしませんでした。 ごしゅじんさまがそとにでてこなかったのです。 かぼちゃのランタンは、とてもさびしいのをがまんしてそとをみつめていました。 そのつぎのひも、そのまたつぎのひも、かぼちゃのランタンがよみちをてらすことはありませんでした。 かぼちゃのランタンは、とてもとてもさびしいのをがまんして、ごしゅじんさまがそとにでてきてくれるのをまちました。 あるひ、かぼちゃのランタンとごしゅじんさまのいえに、ねこがやってきました。 ねこは 「こんにちは、かぼちゃくん。ごしゅじんさまをしんさつしにきたよ」 といいます。 かぼちゃのランタンはねこがなにをいっているのかわかりませんでしたが、 ごしゅじんさまをそとにつれてきてほしい、とおもいました。 ねこはふたりのいえにはいると、しばらくしてからかえっていきました。 ごしゅじんさまは、きょうもそとにでてきませんでした。 つぎのひもねこがやってきました。 かぼちゃのランタンはそとをみつめていました。 つぎのひもそのつぎのひも、ねこはやってきました。 でも、ごしゅじんさまはそとにでてきませんでした。 あるひ、ねこがいつものようにやってきたときも、かぼちゃのランタンはそとをみつめていました。 かぼちゃのランタンには、みちをてらしてわらうことのほかに、なにもすることができないのです。 それをみたねこは、かぼちゃのランタンのあたまをやさしくなでてくれました。 かぼちゃのランタンには、ねこがないているようにみえました。 なつがおわり、あきになりました。 ごしゅじんさまはまだそとにでてきてくれません。 かぼちゃのランタンはそとをみつめながら、そろそろまたハロウィンのきせつだな、とおもいました。 ことしも、まちをごしゅじんさまとねりあるけたら、どんなにしあわせだろう。 かぼちゃのランタンはそとをみつめながら、ごしゅじんさまのことをおもいました。 あきがさらにふかまったあるひのことです。 ついに、ごしゅじんさまがそとにでてきてくれました。 かぼちゃのランタンはおおよろこびです。 ごしゅじんさま! ごしゅじんさま! またまちへいこう! ハロウィンももうすぐだよ! なぜかちいさくなってしまったごしゅじんさまはかぼちゃのランタンをみてわらうと、 「まちへつれていってあげられなくて、ごめんね」 そういって、かぼちゃのランタンをやさしく、やさしくなでてくれました。 そこにねこがやってきました。 ねこはおおあわてでごしゅじんさまのもとへかけよると、 なにかをいいながら、ごしゅじんさまをいえのなかへつれていってしまいました。 かぼちゃのランタンは、まちへいけなかったのはざんねんでしたが、ごしゅじんさまがそとにでてきてくれたのでがまんしました。 まちへは、またあしたいけばいいとおもったのです。 ですが、 つぎのひ、ごしゅじんさまはそとにでてきてくれませんでした。 それでも、かぼちゃのランタンは、だまってそとをみつめていました。 まっていれば、またきのうのようにそとへでてきてくれるかもしれないと、ごしゅじんさまをまちつづけます。 そのつぎのひも、そのさらにつぎのひも、かぼちゃのランタンはごしゅじんさまをまちつづけました。 ただずっと、そとをみつめながら、まっていました。 ごしゅじんさまは、そとへでてきませんでした。ねこはまいにちやってきました。 ねこがやってきました。 かぼちゃのランタンはごしゅじんさまをまっています。 そのひは、ねこのようすがいつもとちがいました。 いつもよりずっとながく、かぼちゃのランタンとごしゅじんさまのいえにいます。 かぼちゃのランタンは、ねこはなにをしているのだろうとおもいながら、ごしゅじんさまをまっていました。 ねこはそのひ、かえっていきませんでした。 つぎのひ、かぼちゃのランタンとごしゅじんさまのいえに、たくさんのひとがやってきました。 みんな、ふだんとちがうふくをきています。 かぼちゃのランタンは、きょうはまだハロウィンじゃないのに、どうしてだろう。とおもいました。 かぼちゃのランタンは、ふたりのいえからかえっていくたくさんのひとたちが、どうしてかなしそうなかおをしているのか、よくわかりませんでした。 かぼちゃのランタンはそとをみつめています。 すると、ねこがでてきました。 ねこは、ほかのひとたちとちがって、かなしそうなかおをしていません。 かぼちゃのランタンは、どうしてだろうとおもいました。 するとねこは、とつぜんなきはじめました。 かぼちゃのランタンはそとをみつめています。 ねこは、ないています。 かぼちゃのランタンはそとをみつめています。 ねこは、ないています。 かぼちゃのランタンは、ねこがないているりゆうが、なぜかわかりました。 つぎのひ、かぼちゃのランタンはなにもしていませんでした。 ねこは、やってきませんでした。 ごしゅじんさまは、そとにでて、なでて、まちへつれていってくれませんでした。 つぎのひ、かぼちゃのランタンはなにもしていませんでした。 ねこは、やってきませんでした。 ごしゅじんさまは、そとにでて、なでてくれませんでした。 つぎのひ、かぼちゃのランタンはなにもしていませんでした。 ねこは、やってきませんでした。 ごしゅじんさまは、そとにでてきませんでした。 かぼちゃのランタンは、もうごしゅじんさまとあえないことがわかってましまったのです。 つぎのひも、そのつぎのひも、かぼちゃのランタンはなにもしていませんでした。 そのひ、まちはハロウィンのおまつりでおおさわぎでした。 かぼちゃのランタンは、なにもしていません。 かぼちゃのランタンは、まえのとしのハロウィンをおもいだしていました。 ごしゅじんさまがかぼちゃのランタンをつれてねりあるいてくれたときのことをおもいだしていました。 でも、もうごしゅじんさまは、かぼちゃのランタンをつれてねりあるいてはくれないのです。 かぼちゃのランタンは、とてもとても、かなしくなりました。もう、なにもしたくありませんでした。 まちはハロウィンでにぎやかですが、かぼちゃのランタンとごしゅじんさまのいえは、とてもしずかでした。 かぼちゃのランタンは、なにもしたくありません。 いまもむかしも、かぼちゃのランタンにとっては、ごしゅじんさまはすべてです。 ごしゅじんさまがいなくなってしまったなら、かぼちゃのランタンはもうなにもすることがなくなるはずです。 まちのほうから、ねこがなきながらはしってくるのをみたときも、なにもしたくありませんでした。 かぼちゃのランタンは、なにもしたくありません。なにもできないのです。。 それでも、ねこは、なきながらはしってきます。 ねこは、なきながら、かぼちゃのランタンめがけてはしってきます。 「ハロウィンにいこう!」 ねこはいいました。 かぼちゃのランタンは、ごしゅじんさまいがいのひととハロウィンにいきたくなんてありません。 ねこのことばも、きにしませんでした。 「ハロウィンにいこう!」 でも、ねこはつづけていいました。なきながらいいました。 かぼちゃのランタンはなみだをながすことができませんが、ねこがないているのがかなしいからなのはわかりました。 なら、どうしてねこはハロウィンにいきたいというのでしょう。 かぼちゃのランタンにはわかりません。ふしぎそうなかおで、ねこをみました。 「それでも、おれたちはまちへいくんだ。 きみのごしゅじんさまは、さいごまできみとハロウィンにいきたいといっていたんだ だから、ハロウィンにいこう!」 ねこは、あいかわらずなきながらいいました。 それは、ごしゅじんさまからかぼちゃのランタンへのさいごのことばです。 かぼちゃのランタンは、ねこをみました。 ねこは、ずっとないたまま、かぼちゃのランタンをじっとみています。 かぼちゃのランタンはおもいました。 いまもむかしも、かぼちゃのランタンにとっては、ごしゅじんさまはすべてです。 ごしゅじんさまがいなくなってしまったなら、かぼちゃのランタンはもうなにもすることがなくなるはずでした。 でも、まだです。まだ、さいごのことばがのこっていると、ねこはいいます。 かぼちゃのランタンはおもいました。 ごしゅじんさまはもう、そとにでてくてくれません。 ごしゅじんさまはもう、やさしくなでてくれません。 ごしゅじんさまはもう、まちへつれていってはくれません。 それでも、まだぜんぶおわったわけではないのかもしれません。 かぼちゃのランタンは、ねこのめをみました。 ねこはないていましたが、めはないていませんでした。なにかをしようという、このままではおわりたくないというめでした。 かぼちゃのランタンは、そのめをつよくみつめました。 それはまるで、うなずいているようなまなざしでした。 かぼちゃのランタンは、くらいよみちをてらします。 ねこにつれられて、ハロウィンでもりあがるまちへといそぎます。 かぼちゃのランタンは、くらいよみちをてらします。 これからもてらしつづけるかもしれませんし、てらすのをやめるかもしれませんが、 きょうだけはぜったいにてらしつづけようとおもいました。 ここでみちをてらさないと、ごしゅじんさまがかなしんでしまうきがしたのです。 たとえもうあえないとしても、かぼちゃのランタンは、ごしゅじんさまがかなしむのだけはいやでした。 かぼちゃのランタンは、あかるいえがおで、くらいよみちをてらしました。 そしてそのひ、まちのハロウィンのおまつりには、 「とりっくおあとりーと!」 ないているような、なのにわらっているような、そんなふしぎなかおをした、ねことかぼちゃのランタンがさんかしていたそうです。 おしまい。
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