「まったく局長は
マガイモノ使いが荒くて困るよ……」
「まあ贅沢言うな、都市伝説調査チームの設立を見逃してくれたくらいだから」
channelは黒影が帰った後にポケモンの都市伝説をまとめて幻の『ゴーストブラック』の情報を絞り出していた。
これが事実ならとても厄介なアベンジャーズを相手取ることになる、クリーピーパスタはゲームの垣根を越えてプレイヤーに危害を加えるものも多数存在しているからだ。
ツナカユリコが可愛く見えてくるというか実際今では可愛い看板娘なのだが、とにかく危険度は段違いだ。
「こういうときは他のオカルト組織やメイドウィンも頼るか……」
「他のオカルト組織ってなんだよ、解体センターはこういうの管轄外って聞いたぞ?」
「もはや管轄ってなんだ……とりあえずこの件は文字通りのブラックボックス、慎重に取り扱っていこう。」
少しずつポケモンのクリーピーパスタのデータをまとめていき、危険度や認知度、対策などを一気にデータ化させていき本格的な調査に乗り出していく。
ユリコも未だにゲームの攻略を進めようと奮闘しているが、ホワイトハンド以外にも
しかしこんな世界を作り出したゴーストブラックのメイドウィンは何者なのだろうか……。
そんな事を考えながらポケモンの通信交換を行い、調査がてらにゲームしているとノックする音が。
「お客さんの調査とか想定してる?」
「とりあえずこのだらしない姿を見せないようにしなくては……」
たくっちスノーとミリィは触手のように成分を伸ばしてぱっぱと後片付けを終えてユリコを自販機に案内していつでもお茶を出せるように、お客さんが出てきても恥ずかしくないようにしてみたのだが、扉を開けてきた者を見て即座にちゃぶ台をひっくり返すが如くテーブルを蹴り飛ばして直撃させる。
何故なら、その来たお客さまというのはポチだったからだ……。
「帰れ」
「帰れ」
「二人して酷くない!?」
ポチに関しては水ぶっかけたくなるような態度でさっさと帰れと言わんばかりの顔をする二人、今回の話そういうアレじゃないので、ポチがガチで絡むレベルのエロ展開とかないやつなので、3作連続でポチ注意報の注意書きしたくないので……とマジで絡んで欲しくない様子を見せる。
「もしかして俺が出るたびにエロいこと起きるって思われてる?」
「思われてるも何もそうだろうが!仕事のついででエロが混ざって、それが無視出来ない段階なの!」
「……じゃあ聞くけどどんな都市伝説のネタ持ってきたの?」
「乳首券とか言ったらぶっ飛ばすからな」
「いや乳首券は普通に俺が大量作成して有志に売り出してるけど……」
「もしもし特盟?」
「まってまってまってまってまってまって」
マジで
マガフォンでTELしようとするたくっちスノーとそれを必死に止めるポチ。
ちなみに『乳首券』もれっきとした都市伝説の一つであり、少年向けの漫画雑誌で乳首を描写するほどの過激なお色気展開を通すために必要なチケットのようなものが存在しているという噂があり、突然お色気要素に走った漫画はこの乳首券を手に入れたと囁かれている都市伝説である。
無論このネタもだいぶ前に否定されている。
「違うんだって、俺が頼みたいのは調査と揉み消し!今の風潮をなんとかしてもらいたいんだよ」
「風潮をなんとかって、結局どういう都市伝説なの?」
「八尺様なんだけど……」
「帰れ!帰れ!帰れ!!お前がなんかやらかしたのは分かる!!」
「さっきから俺の事をエロしか無い男みたいに言わないで!!」
◇
改めて八尺様とは今となっては有名な都市伝説。
尺とは昔の身長を現すものであり、八尺だとおよそ2メートル以上。
白いワンピースに帽子を被った幻想的な見た目の女性であり(実際は見た目は曖昧らしい。)、『ポポポ』という声で鳴く。
主に雰囲気に似つかわしくない田舎で目撃されて子供を連れ去っていくという神隠しに近い話である。
……その八尺様がポチのすぐ隣にいる、ずっしりとソファがお尻の圧力で沈み高身長で見下ろすような姿勢になっている。
「それで八尺様直々の依頼なんだけど、君達の力で八尺様を怖い怪異に戻して欲しいんだよね」
「怖い怪異って言われてもねえ……」
だがしかし時代は進んだ、結局のところ実際に遭遇していない人からすれば八尺様はただの背がデカいだけの美女でありもはや彼女に怖いというイメージはなくなった。
今となっては恐怖の存在ではなく男の子が大好きなデカ乳清楚見た目のお姉さんであるが、これもある種ミーム汚染であるため本人としては由々しき事態であるという。
何せパソコン越しで聞いているツナカユリコも「もしかして自分も他人事ではない……?」と言いたげな真っ青な感じになっていた。
再確認するが、八尺様は魅入られた子供が謎の失踪を遂げるというものだがどうにもインパクトが薄い。
「2メートル40センチってつまり身長240センチってことだろ?確かに昔ならめちゃくちゃデカいけど今ならそんな怖いって大きさでもないよな」
「これに関しては昨今のデカ女ブームというか🍈が悪い」
「でも巨乳だったり美人ってわけじゃないんだよね?」
「一応不明だけど最初の目撃例が今そこにいるからなぁ……」
都市伝説や洒落怖の恐怖とは理解が及ばない、人の手に及ばないような恐ろしさがあってこそだ。
くねくねや猿夢もそういうところがあってこそだが、八尺様はもはやそういうものである、デカいだけの女。
そういった風潮を八尺様自身はどう思っているのか、さっきからポポポしか喋らないので分からない。
「こういうのって創作だと流暢に喋ってることが多いから変な気分だな……」
「でもまあ、モデル雑誌で見るのと生で見るくらいの若干の違いは感じられるな」
「たくっちスノー君たのむよ、彼女をまた昔のように怖い存在に変えてもらいたいんだ」
「でもポチだって八尺様のエロいの描いてたでしょ?」
「うん」
「……」
「そういう時に怒れないからダメなんだよ八尺様は」
「ギャーッ!!パソコンから電気ショックが!!」
ユリコのパソコン越しのオシオキをポチが受けながらたくっちスノーとミリィは八尺様をどうするか考える。
怖いものに変えるなら八尺様の被害をより恐ろしいものに変えていく方向性にシフトしたほうがいいだろう。
「たとえば失踪するんじゃなくて惨殺処刑されるとか?」
「そういうグロテスクなのはちょっと……って顔してるな」
「そういえばクリーピーパスタに似たような事例の都市伝説なかったっけ?」
「スレンダーマンのことか?」
スレンダーマンとは海外で知られるのっぺらぼうで真っ白な肌、スーツを着た男性のような見た目の怪異であり名前の通り細身で八尺様のように背が高い。
八尺様と違うところは人を連れ去るのどころかその姿を見ただけで鼻血を出しながら精神異常を引き起こす『スレンダー病』を発症するという危険度であった。
「スレンダー病の原因は有名なSAN値ピンチってやつだね、時空でも理解を拒むような存在に出会うと脳が耐えきれなくなって死ぬとかよくあるからね」
「じゃあスレンダーマンに会うのってまずいんじゃ……」
「えっ?ああうん、スレンダーマンに関しては大丈夫だって」
当たり前のように八尺様の単語を翻訳しているポチ、女性に関する様々なデータを一瞬でプロファイリング出来る彼は八尺様の言葉を翻訳することも容易であった……こんな単語いつ使えるのか分からないなと思いつつも話を聞いてみると……なんと、スレンダーマンの正体はメイドウィンであり炭と同じ掃除屋だという。
ただしどんな世界を管理しているのかも本名も未明、分かっていることは『零代目』と呼ばれていること……そして、都市伝説で目撃されるスレンダーマンとは特注のスーツであること。
「掃除中にうっかり生きてる人間見つけてそれが都市伝説になったらしいよ」
「めちゃくちゃ過失じゃん」
「そう、だから新時代でバレて人気が急落して掃除屋といったら炭さんに頼ることが多くなったんだってさ」
「それで話を戻すけど八尺様の見た目はもうイメージの変えようが無いから見るだけでヤバいって感じにしていこう」
「でもそれだと上手く差別化しないとくねくねと被るんじゃないかって」
「それはそうだな……」
くねくねもまた田舎で目撃される都市伝説であり、存在を視認してそれを理解してしまったらくねくねと身体をしならせながら発狂してしまう。
確かに八尺様も白いし合わせないと下手したら八尺様がくねくねしながら子供に迫る変態として伝わりかねない。
ユリコさんが八尺様のメンタルケアを行いつつ、たくっちスノーは一つの可能性を思いつく。
「八尺様は殆ど人みたいだけど実際は違う、そこを逆手に取るんだ……一見すると人間にしか見えないが『違う』と理解してしまったら終わり……人に近いからこそ信用出来なくなる恐ろしさ……ありだろ?」
「なるほど、万が一SNSで拡散されたら全域におよぶちか?」
八尺様は人に近いからこそのアプローチを考える、呪いは人の想いや思いつきで自然と作れるので人としてふるまい、人でないと知るものを呪う新八尺様の完成は近付いてきた。
「しかしまあ都市伝説らしきものって簡単に作れたり誤魔化せたりするもんなんだね」
「カルデアの事例よりは楽だったからね、八尺様も俺達に対して素直だしこのやり方に不満はないんだよね?」
八尺様も真面目に相手してくれる、このネタはすぐに終わりそうだ。
「そういえば八尺様以外にもそういう事例とかあるの?」
「めちゃくちゃあるけどここまで気にしてるのは八尺様だけだったから、たくっちスノーくんに頼ろうってなったわけね」
「それで自分ら頼られるのも少し迷惑な話ではあるけどな……」
呪いのベースは一通りまとまった、八尺様に人間とは異なる要素を噂で付け加える、その要素も分かりやすさではなく気付きにくい細かい部位にして変化。
これで呪いの段取りは完成した。
「ところでそれを考えてる俺達も普通に呪われたりしないか?」
「何を今更?俺達既にユリコさんに呪われてるようなものだし、もういろんな都市伝説に喧嘩売ってるよ?」
「……
時空監理局の管轄じゃなくても君らはめちゃくちゃだねぇ、同僚としてちょっと心配しちゃうよ」
「なあに気にするな、伊達に時空最悪の犯罪者で時空監理局副局長してない、それにミリィはそんな自分の影武者だぞ?」
「そうそう」
まるでドッペルゲンガーのように息ぴったりな二人はついでに他のアプローチも考える、白いワンピースに黒髪の初期印象はそのままに令和でも映えるように大胆にアレンジ、人間らしさも強調して人間と怪異の境界線をより曖昧なものに変えていく。
ここまで来ると都市伝説というより一人のアイドルをプロデュースしているような気分になってくるポチだが、その度にユリコが電気ショックで黙らせる。
数時間の試行錯誤の末、新たにリメイクされた新・八尺様の見た目は完成した。
見た目は絶世の長身美女、しかしそれが怪異と知ったら生きて帰れなくなる……新しいタイプの八尺様。
「……あっ、そういえばどういう呪いになるのか考えているの?」
「ああそれなんだけどポチに頼りたいんだよね、そういうのって怪異としてのアイデンティティを失った八尺様だからこそ思いつくものがあって提唱するものだろ?」
「なるほど確かに一番思う所があるのは八尺様だもんね、どれどれ……誰にどういう呪いを残したいのかな」
ポチと八尺様はぽぽぽぽの音だけで会話する、さっき聞いたときは何を言ってるのか分からないと思っていたがなんとユリコは理解したのか文字に変換している、その文字はモールス信号に類似したものであり同じやり方で会話を翻訳したという、動物の翻訳よりも分かりやすい都市伝説の言葉、これに関しては真っ先に気付けたユリコも凄い、都市伝説同士惹かれるものがあるのか筆が乗っていると表現した方のがいいのか出力の精度が高く文字の形成も早い。
「す、すげぇ……」
どんなに綺麗でも怪異は怪異、たくっちスノーはその呪いの内容に戦慄する、それは
地の文にするまでもなく効果に出てポチが即死した、マガイモノなのですぐに生き返るがリスキルの嵐。
起き上がっては倒れるその姿が少々愉快に見えてくるが他人事ではないと数秒で届く新着ニュースを見たら時空各地で突然謎の両腕から発症する怪病が蔓延、ぽぽぽと脈打つように血管が蠢いてザラザラした感触になるという。
リスキルが解放されて起き上がったポチは自分の両腕を切り落としながら
「ど……どうやら八尺様をエロい目で見るやつに呪いを振りまいたそうだ、これから先そういう風潮を広めようとしたら容赦なく呪いを振りまくってさ」
「残当」
「むしろ八尺様からすれば手ぬるいまである」
八尺様は更に口裂け女やメリーさんなど他の女性怪異にも同じ呪いを伝えようという、ポチは切り落として変色した両腕を見ながら八尺様に差し出す。
「これは俺の贖罪、自分のやりたいようにやって
時空新時代でその弊害が来たわけだね……俺は女性の味方でいたいから、許せないなら直接裁かれるべきか」
「……ぽぽぽ」
「俺の場合頭つぶされないとわからなさそう?うん、確かにそうかもしれないね君おっぱいでっかいのは変わらぎゃあああああ有限実行!!!」
「今更ながらポチはともかくよくもまあ赤子をひねるように人を殺せるような連中をエロい目で見れるよな……」
「時空新時代になるまで無関係だったみたいなものだからね……あっユリコさんは大丈夫だからね!?ユリコさんはどんな見た目かもわからないんだし!」
なにはともかく、新八尺様として生まれ変わったことで目的を果たせたとして新しい恐怖の象徴して元の勢いを取り戻すことが多分出来るだろう。
時空を越えて八尺様は去っていき、ポチは
ジーカを出そうとする。
「ところでポチ、どうやって八尺様なんて連れてきたというか見つけてきたの?」
「エロへの探究心と熱意」
「お前また両腕呪われるぞ……じゃあなんでちゃんとした都市伝説にしたいという流れに?」
「それは話すとちょっと複雑なんだけどねぇ……まあ、実を言えば仕事の途中で託された別の分身ってこと」
「ほへー、自分達が言えたことじゃないが分身ハンマーだいぶ酷使されてんな〜」
「大丈夫なのたくっちスノー、バグとかでない?」
「う、うーん……ここまでの数を分身したり短期間で使いまくったのは想定外だからな……」
◇
新しい八尺様の件から3日、まだ3日しか経ってないにも関わらず被害は甚大。
改めて八尺様は恐怖の象徴として語り継がれていくことだろう。
都市伝説の恐怖を取り戻すという仕事も悪くないとして、channelの事業に加えてみるのも悪くないだろうとメモっていた。
「ねえたくっちスノー、これ着々と俺達も怪異になりつつない?ほらドッペルゲンガーとかあるし」
「ドッペルゲンガーは出会ったら死ぬ方だろ?確かに自分は変身を多用してるがそこまで恐ろしいことはしてない」
「そもそもドッペルゲンガーってどういう原理?今の俺たちが言えたことじゃないけど不思議だよね」
「アレの怖さって『出会ったら死ぬ』の要素のせいだと思うんだよな、
リアルワールドとかそっくりさん芸人とかでゲラゲラ笑ってるし、他世界だとワームだの複製や擬態手段は色々あるしな」
時空で解明された都市伝説とは別で残された物も恐怖心が薄れていく問題は数多くあるのだろう。
これから先、八尺様だけではなく他の都市伝説も時代に合わせて変わっていく必要があるのだろうか?
いや、どっちかというと人々が怪異に対してまだ呑気だったのかもしれない。
人も都市伝説も変わらなくてはならない時が来たのだ。
「……ただ一つ問題があるな、ある程度変えたからこれがちゃんと八尺様として伝わるかどうかだよ」
「一応八尺様の原型は保ったままアレンジしておいたし彼女は大丈夫だよな?」
「もしもこのアレンジブーム的なやつでウチに何かしら来たらさ、マッチポンプとか疑われないよな?」
「その時はその時だよ……なあユリコさん?」
今は都市伝説の動向を伺いながら、都市伝説が人々に恐れられる様子を見守っていく。
安全を守るだけでなく驚異を維持していくこともまた時空監理局の仕事だ、世の中にはバランス感覚というものが大事なのである。
バランスといえば、最近の情勢はだいぶおかしい。
定期的に他の分身から情報共有しているが善と悪のバランスがかなり乱れつつある。
都市伝説だけではなく時空其の物もだいぶまずいことになっているのではないか?そう思いつつも自分達は都市伝説の調査を行うことにした。
「そういえばアルタイルシリウスの調査をしている方の俺達は元気かな?」
「それで言ったら他の分身達の動向も伺っとけよ?ただでさえ数十以上もあるんだから把握するのも大変なんだぞ」
「それはそうだね……」
もしかしたら、他の分身達が都市伝説に会ってるのかもしれない。
あるいはたくっちスノーの分身達が新たな都市伝説になっている可能性も……?
「もしかしなくてもたくっちスノー、今こんな話ダラダラしてるってことはだいぶ余ってるよね?」
「まあ何とは言わんが絶妙に余ったな、もう少し余裕があればこっくりさんの儀式とかやってみたかったんだが……どうにか余った分は稼げたし良しとするか」
こうしている間にもゴーストブラックの調査は進む、遂にはゲームボーイなのにホウエン地方まで侵攻した。
最終更新:2025年06月12日 06:50