「って、その姿は……」
たくっちスノーが変化した姿とは……ゴーカイレッド、キャプテン・マーベラスの姿だった。
しかしマーベラスとは全然異なる剣の構え方で一気に詰め寄り、今一番油断してそうな奴を狙う。
ベビーは刀が飛んできても普通に肩で受け止められるが、通用しないと分かると両足をロボットじみたものに変更して踏み潰そうとする。
「フリーフォールグラッチェ!!」
その程度の攻撃技など避けられることなど承知の上、コバルトが空間を蹴って空から攻めようとすると、突如背中からカメレオンの怪物が生えてきて長い舌でコバルトを拘束する。
「勘違いされがちだが僕のマガイモノチェンジは見た目をそっくりにして能力を印象付けてるだけで実態はどこにもない、右足から左腕を出したり背中から新しい口を作ることだって出来るんだよっ!!」
そのまま巻き付けた舌を振り落としてシエルは間一髪かわし、イノセントイストワールの体勢に入るがたくっちスノーは逆さまになって4本腕を追加させて重心を支え、仮面ライダーカブトの左足を追加する。
『123!RiderKICK☆!』
「ライダー……キック!!」
「イノセントイストワール!!」
カブトのカウンター式の回し蹴りとシエルの攻撃的な回転蹴りが同時にぶつかり、攻撃に使った部位を一旦切除して元の姿に戻る。
「へっ、なーにが黒影はなんでもありだよ、オメェも大概めちゃくちゃじゃねえかよ!」
「いや……そうでもない、先生もそこまで万能じゃないのだろう」
「どういうこと?シエルちゃん」
「戦闘の前に焼肉屋でこう言っていた、自分は全創作のキャラクターに変身できると……しかし言うならば何億、いや何兆以上の生物に備わる特殊能力のうち瞬時に必要とされているものを把握するのは至難の業だ、たとえそれが犯罪王だったとしても」
「つまり?」
「実際の発動や処理には相当な負荷とタイムラグを必要とする、ただ作り替えるのではなくどの存在や世界が最適か瞬時に把握する必要がある……つまり長期戦には向いてないということだ」
「おい、あのさぁシエルさ、ズルいよ……君等を鍛えなきゃいけないのに自分のことそんなに把握されちゃさ……ちょっとプライドに関わるんだよね!!」
たくっちスノーは更にZガンダムに変形してウェイブライダーで突撃するもマゼンタに受け止められ、一部分を2連主砲やドラゴンキャノンに変化させて至近距離から偏射を行うが諸共しない。
やはりexeに鍛えられただけはあり生半可な攻撃は通用しない。
シエルが言っていた通り相手は複数人、どういった技や設定の組み合わせがいいのかどういう攻撃をすればいいのか瞬時に考える必要があるのは面倒で僅かでも悩まないといけない。
そしてヒーローというものは悩んでる間にも容赦ない攻撃を叩き込んでくる。
「猫趙千光偏照姫!」
ベビーの連続パンチを巨大な盾の怪物で全部受け止めたかと思えば青色の髪の魔法少女になり、指一本でベビーに迫りくる。
「愛のアヴァランチィ!!!」
まさかの全部耐えきってカウンター技という選択、何が相手でも全然諦める気配がないが元々5分というセルフの制限時間を設けている変身をわずか3分で何種類も重ねてる時点で無理している。
もうわかってると思うが、たくっちスノーが変身する際の『5分』という制限時間はたくっちスノーが勝手に言ってるだけで実際はいくらでも変身出来るし、爪や踵など細かい部分を作り変えることで一つの身体で数十人の能力を両立できる。
頻繁にやらないのは『たくっちスノー』という
マガイモノのつぎはぎの見た目に対するアイデンティティを維持するためだ。
しかしシエルの言う通りこれを連続で細かく使用すると相当負荷がかかり、自分がどんな姿か分からなくなっていく欠点もある……だが、今回の彼は悔しさをそのまま訓練としてぶつけている八つ当たりだ、それを全く無関係なさくらに向けて連続でぶっ放そうとする。
「青峰大輝の野郎ォォォッ!!!何が!!僕のコピーは完成度が低いだと!?劣化版とはいえ見なくても真似出来るんだよ!!なんか思い出したらムカついてきたわ!!」
「……他世界の人に対する逆ギレに巻き込まれることになるとは」
「言ってる場合かさくら!一気に来るぞ!」
ガチギレ状態の連続技が飛んでくる、マーベラスのゴーカイクラッシュと同じで死の間際かもしれないのにさくらは不思議とワクワクしていた。
しかしあの時から反省していないわけでもない、自分の命を守りながら戦う態勢に入る、たとえその姿が滑稽でもこの夢をもっと維持するために生きる選択を取れ……自分はアレと違って不死身ではない!
「まずはお前の!!青峰の右足!!からのシンボリルドルフの左腕!!マホロアの左手!ティガレックスの尻尾!そして鑢七花の膝!!」
避けられなくても急所は避ける、変身部位に合わせてしっかり目で見て攻撃を回避する、連続で変身したら次はどう当てるか考えていくはず……変身しながらの仮想は限界があるとまた隙を発見する。
「ビッグバンパンチ!!」
「真・桜花一拳!!」
互いのパンチがぶつかり合いながらもさくらはもう片方の握り拳をがっしりと握り、横向きに寄ってたくっちスノーの顔面をしっかり狙う!自身のアイデンティティでありレッドへの憧れも兼ねたこの技『桜花一拳』をどう強化するかずっと考えたかこれといったヒントも得られず、選んた答えは短い期間に桜花一拳を2度打ち込むことであった、名付けて……。
「桜花二拳・返り咲き!!」
もう片方の拳を顔面にぶっ放すとたくっちスノーの頭部は粉々に吹っ飛び、形が崩れる。
シンプルだが新技が見事にクリーンヒットして決まり、さくらの中に達成感が生まれるが……シエルは様子がおかしいことに気づく。
「バカ!!まだ安心するな!!頭部を破壊されて再生されたということは……」
「正解!!脳処理は
リセットされた!!万全な状態でカウンター出来るんだよさくら君!!」
「しまっ……」
「右目チェンジ、スペシャルウィーク、左目チェンジ、ダイワスカーレット、髪の毛チェンジ、ゴールドシップ、髪の色チェンジ、サイレンススズカ!」
鼻チェンジ、マルゼンスキー、口チェンジ、ミホノブルボン、声色チェンジ、タイキシャトル、左耳チェンジ、オグリキャップ、左耳チェンジ、タマモクロス、右肩チェンジ、エアグルーヴ、左肩チェンジ ビワハヤヒデ、右の手の指は左からウイニングチケット、サクラチヨノオー、メジロマックイーン、シンボリクリスエス、アグネスタキオン、左手はアグネスデジタル、コパノリッキー、ツインターボ、マチカネフクキタル、テイエムオペラオー、肘はメイショウドトウ、ボディ全体はマヤノトップガン、尻はグラスワンダー、左の膝はウオッカ、足の指はタニノギムレット、サクラバクシンオー、マチカネタンホイザ、シンコウウインディ、ヒシミラクル……きめ細かく肉体を変動させていき、カウンターへのカウンターが目の前に容赦なく降り注ぐ。
「超・100倍ウマ娘パンチ!!!」
さくらは勢い良く吹っ飛び壁に叩きつけられるが、突然たくっちスノーが宙に浮く。
殴られて全力を出したこの僅かな間、思考はさくらに一点集中して……1人足りないことに気付けなかった。
さくらがかすみを誘導していたことに気付いた頃にはもう既にバックドロップの体勢に入っていた!!
「これで終わりだ!!」
「ぐふっ!!」
(な、なるほど……どんな姿や状態になってもよほどの事が無い限り投げ技が通用する、しかし凄いのはレッドだった頃と筋肉量は全然違うのに易易と持ち上げるあのパワー……!)
「……ふう、こんなところかな!今日は遅いし終わり」
◇
訓練を終えて浴室で汗を流すさくらと何メートルか離れて表面をヤスリがけするたくっちスノー。
風呂に入らなくてもいいが臭うのは嫌なので表面の成分を剥がして瓶詰めにして臭みを取るようにしているとか。
あんなに前もって沢山食べたのにさくら達はたくっちスノーの言う通り全てエネルギーとして消化してしまった。
「あたしちょっと痩せた気がするなぁ」
「んでもよぉ……こんな調子で黒影に勝てんのか?たくっちスノー先生メチャ強くないか?」
「最初なんてそんなものだ、我々シュンヨウジャーはもはや桃の園の期待の星でもある、時空で通用するためにも……」
「はい、たくっちスノー先生……私たち以外にも鍛えてる人って」
「ああいるっぽい、君らも含めて戦闘力は上がってるからヒーロー達には期待できそうだね」
「よーし!目指すは時空でナンバーワンのピンク!張り切っていきますよ!」
「随分気合が入ってるようだな、オレとしても喜ばしい限りだ」
「はい!行く行くはexeさんにも……って、えっ、ちょっとあなた何をして」
「何って……花岡かすみ、レッドはここでいいんだな?頼まれてた物を……」
「きゃあああああああああああああ!!!!」
「バカ!!あいつらシャワー浴びてんだぞさっさと出ろ!!」
当たり前のように壁を越えてexeが壁を乗り越えて資料を渡してきた、当然今さくら達は汗を流してすっぽんぽんなので大パニック。
exeはこういうことに無自覚なので本当に悪気なくやってしまうし、聞かれたかすみも男だった期間が長すぎて裸を見られてもそんなに気にしてなさそうなのが余計にカオスな光景を繰り広げる。
さすがにこれはたくっちスノーでも止める、自分でもやってないのに性犯罪でexeがしょっぴかれるのは洒落にならない。
というところで騒ぎを聞きつけて天上が開いてコバルトが現れて爽快にexeを捕まえるのだが……。
「おっと何の騒ぎか知らんがブルーのオラが来たかんには!!」
「相田さん、貴方いつからそこに?」
「あっやっべ」
♢
「ギャアアアアアア!!オラの!!オラのカラクリボールがジャッジメントされるべ!!」
「あ、アブねぇ……騒ぎすぎたらデカレンジャーのお縄になるところだったぜ、いいかexe!女の人が着替えたり風呂入ってるときは除かない!というか特別講師やってるときにコレ結構洒落にならねえぞ」
改めて汗を流して体を作り替えて一斉にドライヤーをかけるたくっちスノーと、罰として石抱責を受け入れたexe。
そして勢い良くコバルトの大事なものがベビーに踏み潰されて向かうところ敵()無し。
女はこういう時に怖いのよ。
「なるほど、ティーがそこまでするとはな……あの変身は相当無理するはずだが?」
「甘いな、不老不死だからこそ存分に無理できるんだよ」
「私には自分を大事にしろって言ったくせに」
「僕は例外なんだよ、クズだし、不老不死だし、存分に命捧げて社会に貢献しろって立場なんだから……そうだexe、本気を出せとは言わないがもう少しトレーニングメニューをシュンヨウジャー仕様に見直すのはどうだ?」
「それもそうだな」
「そういえばexe先生はどれだけ強いんですか?ボディーガードっていうくらいですしあの音速並みのスピード……」
「exeは強い、強いけど強すぎることがコンプレックスになっている……今でも結構気にして自分と相談してるんだぞ?死なないように力加減」
「オレは……むしろ軽はずみに人を惨殺させるくらいなら弱ければよかったと思うくらいだ」
「でもね、実のところ戦闘力で測っても自分より他4人の方が強いよ?」
「何言ってるティー、誰に聞いても自分が最弱と言うじゃないか」
たくっちスノー達エリートバカも5人、全員揃って仕事することは極稀だが時々暇潰しに考えるのが「誰が一番強いのか」という話。
結論づけようとすると自分が一番弱いんじゃないのか?というらしい。
たくっちスノーの理論としては鍛錬には使えるが慣れたらさくらの時のようにあっさり突破できるから……とはいえ、劣化版にしかなれないとはいえコピー能力を貶されたときは頭に来たらしいが。
対して
Sonic.exeはたくっちスノーが選んだ中で最強クラス、身体能力はぶっちぎりでソニック・ザ・ヘッジホッグのマガイモノながらスピードは劣化しておらず、更にいえば本家以上の破壊力を兼ね備えたパワーだけで全て解決する存在。
差別点としてたくっちスノーの力を借りなければソニックが過去の冒険で得た能力を使えず、カオスエメラルドの力を宿せないらしいが物事を解決させるには充分すぎる。
しかしexe本人もたくっちスノーと同様に自分が最弱であると判断しているわけだ。
exeの理由としては確かに身体能力は突飛した才能……というか技術?があるものの自分にはそれしかない。
幅広く活動出来て応用性も高い4人に比べると力任せにすぎない自分の対策は容易だった、現に
時空犯罪者時代には真っ先に黒かでに対処されていたとか、要するに自分はたくっちスノーの対極の戦闘能力「初見殺し特化」の為、変身よりすぐ攻略されてしまうと考えている。
ただし他四人からすれば「exe攻略出来る時点で充分バケモンじゃねーか」「簡単に言うな」という認識だが……。
「じゃあexe先生から見て強い人って誰ですか?」
「ティーにそっくりなマガイモノとして『ミリィ』というやつがいる、オレはティーより彼が強いのでは?って思っている」
「ミリィか……確かにアイツは強いけど……」
たくっちスノーに類似したマガイモノのミリィ、さくらは会ったことはまだ無いが初めて会ってもすぐ違うと分かるという。
ミリィの戦闘力はたくっちスノーのようになんでもありと言われることもあるが性質が多少異なる。
違う点は変身能力を使えない事だが、その代わり成分を直接変化させてより高度な技を思いつく、たくっちスノーは戦術に数々のキャラクターの設定を思い出さなくてはいけない分頭に負荷をかけるがミリィは「成分をこうするだけでいい」で解決するので幅広く大人数を相手できる、実際彼が使える技の中でも『ブラックシールド』はかなり便利でミリィに変身することで技を真似するようにしている。
たくっちスノーが短期決戦型ならミリィは長期乱戦型とexeは判断、それでいて真面目なので不殺を心掛けていることにあこがれを覚えているとか。
「しかしミリィも自分が弱いと思っているわけか?何故?」
「そこまでは知らん、ミリィに直接聞くしかないだろ」
ここまで来ると残りの2人はどんな調子か気になってくる一同だが、その残った2人というのが女の子の教育に悪い
野獣先輩とポチの為に言うのが渋ってしまうたくっちスノー。
しかし先ほどの件を見ての通りexeはそういったことがよくわからないので聞けばあっさりヤバいところまで気付かずぶちまけてしまいそうなのでなるべくオブラートに包んで伝える。
野獣先輩は性格的に滅多に戦闘に加わらないし率先して戦おうとしない、自分が一番ザコと言っても違和感ない存在だがアドバンテージを維持することに関してはトップクラス。
何せ唯一何のリスクもなしに
はじまりの書を読むことが出来る人物であり、全作品の正確なネタバレ並びに起きる予定の事象を把握した上で漏洩したり作戦の先読みを利用した戦術を出せる上に弱いわけでもない。
戦闘力順では下の方として考えるが一番野放しにされたら冷や汗をかくのが野獣。
そして、そんな野獣と同じく……いや下手したら本気で敵に回してはいけないのがポチである。
元々黒影に匹敵するポテンシャルとして作られたポチはそのパラメータを全部エロに割り振った、それだけでも超危険人物なのだが戦闘時彼がワースト級にならないのは激昂時に作成したポチの最初で最後の戦闘用の発明品。
その詳細は語られていないが下手すれば自分達の中で一番凶悪。
残った2人は戦闘に滅多に出ることはないが……出してはいけない、そんな扱いになっている。
強いとか弱いとかそんな次元じゃない。
「だから結局、特訓の相手するなら自分が一番ちょうどいいんだよ」
「ミリィは特訓には一番向いてないタイプだからな……」
「じゃあ私たちみたいに5人で戦ったら?」
「ははは、そんな状況になったら冗談抜きで時空の危機だよ、自分仮にも副局長だぞ?」
笑いながら今後について考えると、そういえばかすみがexeから資料を貰ってじっくりと確認していたことを思い出して、たくっちスノーは頭だけ向こうに持ってってもらい一緒に中身を見ることにした。
他の人間に情報が漏れないように特殊な言語を使用しているが、かすみはそれが読み取れるようだ。
「かすみさん、この文字なんですか?」
「オレと姉さんが秘密の筆談をする為に作った架空の造形文字だ、便宜上『エレボス語』としておくか」
「なるほど、これを使ってゴクレンジャーの面々にも悟られずに情報を共有していたと……あやめさんはなんと?」
「イエローと共に羽丸の情報を集めるために翠の庭園に潜入したが人の気配すらしなかった、グリーン候補生が一人もいなかったということになる」
「ひとりも?ロボットしかいなかった金の久遠とも違って……本当に人っ子ひとりいないってこと?」
「ああ、あまりにも怪しすぎるがイエローでも破れないセキュリティが張り巡らされて奥まで入ることが出来なかった、だから」
「私達に調べて欲しいということですね!」
「シュンヨウジャー初任務として申し分ないものだな」
「黒影のことも絶対何かわかる、明日起きたら数を絞って出発に……」
「……いや、まだ続きがあるな、往歳巡が独断で翠の庭園に潜入したそうだ」
「巡先生死んじゃいますよ!?シュンヨウジャー一斉出動!!」
最終更新:2025年08月06日 22:57