ドキドキ!たくっちスノーの恋人作戦

「シエルちゃんはマイクロビキニかほぼ紐のビキニかどっちがいい?」

「死ね」

「いや冗談だよ、君にはこのビジネスマン風のスーツが一番似合うと思ってる」

「まあいい」

 シエルはポチの選んでくる服をファッションショー感覚で着こなしながらどこまでこいつから貢げるか?と考えていた。
 ポチもまた適当に言ってるわけではなく服装の相性から次のデートプランを空論で考えている、空論を馬鹿にしてはいけない多分シエルも満足させられるという。

「お前はともかく先生は大丈夫なのか?」

「あーうん心配するまでもなくたくっちスノー君って女たらしだからね、一度その気にさせたらそっちのものだから罪な男だよ」

「失礼だな僕は本気の時は純愛、気の迷いならゆっくり引き離してるよ、今回はがっつり前者」

「……う、嘘だろ!?あのクソチビが……」

「あのさくらちゃんが……」

「雌の顔をしているッッッ!?」

 さりげなくファッションショーを楽しんだり満喫していた花岡姉妹とシエルはさくらの今までにない感覚に戸惑っている、オーダーメイドされた服も抜群に似合ってたくっちスノーの方がテンション高めになっている。
 女らしくいろとは言わない、自分を誤魔化す必要もない。
 たくっちスノーが形を変えて自分から受け入れてくれる……単純だがここまでのことが出来るのは彼くらいであり、さくらにとってはコロンブスの卵的発想だった。
 男のような自分を肯定して尚且つ女であり続ける……傍から見たらめんどくさいかもしれないが時空を統治するライバルなら当然これくらいの器はある、だが……。

「ちょ……ちょっと待ってくださいよ先生!私たち教師と生徒ですよ!?」

「それに関しては君が情報流したら講師出来なくなるだろうしちょうどいいやって思って、もちろんマジにお付き合いを考えるなら卒業してからだよね」

「えったくっちスノー君もしかして本気?」

「ああ!僕が育てた最高峰のヒーローを僕が肯定してやらないでどうする!悪いところも良いところも全部見てきた!後は伸ばす!黒影にもやんないもんねー!」

 一度決心した上機嫌なたくっちスノーはさくらを引っ張っていく。
 ポチは彼の愛しのかなづち大明神に会ったことがそんなにないので気付いてなかったが、たくっちスノーには致命的な弱点がある、恋心……色を知らない存在ではないものの、一度自分からその人の事を好きになってしまうとノンストップで止まらない。
 とことん好きになって愛して愛して止まらなくなってしまう、相手がノーをしてこなかったりちょっとした気の迷いではないと分かってしまえばかなり溺愛してくる都合のいいヴィランである。
 ラブラブ全肯定モンスターを前には流石のさくらもたじたじである。

「待てええいさくら!!お前冷静に考えろ本当に人外相手でいいのか!?」

「いやでも……いろいろと私の事を見てくれましたし、私のワガママを受け入れてくれる人なんて先生しか……」

「ワガママを改善しろ!!ボーイッシュスタイルから何故そこまで飛躍した!」

「……あっやっべ!!」

 ポチも気付く、いくらなんでも流れが唐突すぎる。
 なんて都合の良い展開……そうなると自分の発明品しかない、物語を盛り上げるためにポチは便乗してg-lokシステムを元に『なんか時空間で定期的にエッチな流れになるシステム(仮称)』を作ったのだがスイッチを入れたままたくっちスノー(分身)にダスト・シュートされてしまったので時空全域に発動してなんか時空間で定期的にエッチな流れになることに!
 更にポチは開発者のためその場にいるだけで発動率が何倍にもなるパッシブスキル持ち!それによって『まさかこんな子でないでしょ』というのが引き当ててしまったのである!
 その結果さくらは性欲=ときめきを思い出してほんの少し女の子っぽくなっている!ポチの気分次第でエッチ度は下げられる!今回はさすがに状況が状況なので自重しないとまずいとこれで済んでいるぞ!

 なお、この説明はシュンヨウフォンを通してシエルに思考盗聴されているのである!

「恥を知れ変態が!!」

「すいませんでしたあーっ!!」

 シエルは見事な踵落としを決めてもはやデートどころじゃない、彼女を正気に戻すことの方が優先事項だった。

「おい変態犬っころ!あいつ分身してるんだったな!?」

「う、うん全員だけどたくっちスノーは一番多いね」

「ほら聞いたかチビ!?多分こいつこんな感じで歯に浮くような発言して現地妻をあちこちで山程作っている!全部終わって体を1つに共有するとしたらどう責任取る気だ貴様ァ!」

「この子いつになくキレてる!……でもそれは本当にその通りだよどうするのたくっちスノー!時空犯罪者といえど誠実さは必要だよ」

 ……とポチは言っているがスケベ男の勘としてどっちかというと分身ミリィのほうがあっちこっちで女の子と沢山フラグ作ってるような気がしないでもない。

「イミタシオ魔法事務所のみち子さんとはどんな関係ですかー!?」

「え!?いやミッチーは誓うし!?あの人はマジでビジネスパートナーだし……お前の愚痴につきあってくたれぞ!」

「どっちにしても浮気性は祖母としては止めたいとこらね……」

「姉さん圧が凄いぞ……間違いない、これはゴッドイベントだ、教え子と先生の禁断の愛どころか時空を超えた繋がり、今後の後腐れ……このイベントの消化によってさくら君の精神的成長と未来がかかっているわけか」

 いざ眺めてみると長年男だった経験から逆に冷静になってくるかすみとバチバチに燃えているあやめ。
 好きになっておいてここまで甘いこと言っておいてやっぱり無理でしたなんて通用するわけないと両者理解しているが実際『分身があちこちで恋人作ってた問題』はあり得るからこそポチも真剣になって止めるどころか……。


「exeくん緊急事態!すぐに全員を呼んで!出来ればマゼンタちゃん、ベビーちゃん、かすみちゃんも!」

「オレだったらここにいるが……」

「うおっ!?見てたんだ!?」



 『ゴッドイベント』が発動したとゴクレッドが発言してからのシュンヨウジャー並びにエリートバカ五人衆の動きは早かった。
 たくっちスノーとさくらの恋模様がその内容と知るやいなや野獣先輩はアッパーカットでぶっ飛ばし、ベビーはさくらをハグしながら『浮気すんなよ』みたいな黒いオーラを放つ、昔から一番キレると恐ろしいのは彼女だ。
 とにかく全員揃ったことで10人によるゴッドイベント攻略会議並びに2人の恋の決着の相談が始まろうとしていた!
 なお、冷静な判断が出来るように後ろにはイエローと巡も待機していた。

「お前なんで荷造りしてたんだぜ?」

「俺はもう終わっちまったみたいなもんや……まあちゃんと卒業するまでは面倒見とくから安心しとき」

「しかしまっさかゴッドイベントこんなことになるとはなぁ……」

「何言ってるのマゼンタちゃん!女の子にとってこれほどの一大イベント無いでしょ!戦隊も恋してなんぼでしょ!」

「さすが有識者は言う事が違うね!僕はさくら君に愛を知ってもらいたいと思う!心から!」 

「でも戦隊の恋模様って大体失恋で終わってたような」


 と、なんとか会議を始めようとするがいざさくら達の結論を出す前にクイズ感覚でかすみが質問のためにボタンを押す。
 ポチが気合い入れて作ると何故か会議がバラエティ番組の設備みたいになってしまうのが難点だ。

「……今一度確認したいのだが、君達も分身しているんだよな?」

「まあそうだね、それだけ忙しいってことでもあるけど」

「その場合では分身の多重恋人問題は君達も無関係ではないのでは?」

「そうだぞ、はっきり言ってお前達が咎める側に回っていいはずがない、なんなら揃って当事者だ!!」

「ファッ!?」

 そう、この出来事は何もたくっちスノーに限ったことじゃない。
 若い男が5人、時空各地で事業のために現地人と仲良くなろうとする……何も起きないはずがなく……。
 はっきり言ってシエルからすれば全員危なっかしく見えるので何を一緒になって抗議しようとしてんだという面である。

「じ、実を言えばミリィお前大丈夫なのか!?」

「大丈夫って言われても自信ないよ!?」

「つーかそんなのいつもみたいに記憶共有で判断すればよくね?」

「あっこいつ自分だけ安牌だからって煽るライン入ってるよご主人止めろ!」

「いやでも実際この中で一番あり得ないのは田所だからな……ネットミームだし、同性愛者キャラつってもこいつは恋模様に若干のトラウマがあるし」

「じゃ、じゃあ俺も無いよね!?オタクだしリアルの恋に関しては無沈着で女の子と良い感じになれたことも……」

「おい……貴様私とは遊びだったのか?」

「シエルさんこんな時にノらないでください」

「なんだかんだ楽しかったんだな君……」

「で、実際どうなんだ?オレは精度が悪いのか中々分身の情報が出てこない」

「いやexeもわりと怪しいと思うゾ俺は」

「exeは大丈夫だろexeは!?この見た目だし恋愛観とか一番よく分かってないしそんな女の子捕まえてくるようなの一番イメージできんぞ!?」

「自分の時より必死やん……てかアンタだいぶ失礼なこと言ってない?」

 たくっちスノー以外も以外で中々ヤバいことになっていることが確定して事業終わった後の修羅場を想定して震える。
 特にミリィは身に覚えがありすぎらしくてもう頭を全然上げない、なんならたくっちスノーもわりと色んなことしてるらしくさくらと目を合わせられなくなってしまった。
 というところでわりと圧力を込めてベビーがボタンを押す、多分手加減しなかったらテーブルが真っ二つになっていたかもしれない。

「もしかして黒影が本格的に動かしたらあたし達でハーレムみたいになってたんじゃ?」

「いやそれはないって黒影は既婚者だぞ?君達と同い年くらいの娘もいるんだし……」

「ああいう奴は清純一途ツラしてるけど女をキープしてるもんすよ、愛してなくてもコレクションはしてそうな気はする」

「本人がいないからって言いたい放題だね田所くん……でも実際ベビーちゃんが危惧してることってあり得るのかなミリィ」

「アンケートの結果あり得るが8割を突破したぞ……しかもエビデンスまである」

「どこにアンケ入れたの!?」

「要するにこのままじゃ史上最強の主人公の世界ぶらりおじゃましますで横から解決してヒロインをかっさらうハーレムが始まってたんだぜ」

「言い方ァ!」

「いや黒影はそんな見え見えの欲求見せたりしないからないって絶対!命かけてもいいぞ!」

「賭ける命ねえだろ俺等、死なないんだから生きてもいない」

「ってか本題はそこじゃねえ!!たくっちスノーとさくらさんの問題でしょ!?残りの恋問題は各自の俺たちで解決させるから今はここ!!」

 ミリィが強引に軌道修正してさくらとの話へ、バカ5人が自己責任について騒いでいる間黙っていたがさすがに呆れて何も言えなくなってしまったのか……?と顔を眺めていると突然顔を上げるのでメガネをデコにぶつけて悶える。

「くどい!誰を愛そうがどんなに汚れようがかまいません 最後にヒーローの横にいれば良いんです!!」

「世紀末覇王みたいなこと言い出したコイツ!」

「姉さんどうしようさくらちゃんこの人と添い遂げる気満々だ」

「当然ですよ!!私はもうこの世界の人間には恋愛面で期待してませんので!!」

「はいストップ!」

 ここに来てポチがボタンを押す、やっぱりバラエティ番組になってるじゃないか(憤怒)
 とは言うものの途中からゴッドイベント攻略というより何人かが恋の様子を茶化しているのでしょうがない。
 ちなみにこう見えて恋にもゴッドイベントにも一番真剣なのはベビーである。

「たくっちスノーくん、君本当にさくらちゃんを幸せに出来る?君の愛の強さは目に見えて実感したけど口で言うだけなら皆誰でも出来るから俺もそうだし」

「そうだよ!さくらちゃんを幸せにするなら誠意見せてくれないと!泣かせるようなことがあったらゴクレンジャー引き連れてくるから!!」

「ベビーはこいつのなんなんだよ」

「ルームメイトだけど!?」

「そりゃもちろん当然!世界一……なんて無責任なことは言わんが幸せにしてやる、満足させてやる!!口だけじゃないと証明するにはどうすればいいかなさくら君!」

「証明ですか、そんなの簡単です!結婚式の際には私がタキシードを着るので貴方がウェディングドレス着てください!」

「ばっちこいだそういうのも悪くない!幸いにも女顔だ!」

「その結婚式に付き合わされる俺はどんな顔すればいいんスか?」

「ぶっ通しで花嫁修業にも付き合ってもらいますから!」

「いつもの授業とさして変わらないでしょいける!」

「本当に私を思ってなんでもしてくれるなら!今この場で!!ねっとりと!!私にチューしてみてください!!!」

「お前いい加減洒落にならんぞ馬鹿!!」

「そろそろ若気の至りでは済まされないだよさくらちゃん!自分を大事にして!!」

「……よし」

「よしじゃねえ!!!!」

 たくっちスノーが何かの決心をしたところで壁を突き破ってぶん殴り靴から火花が飛び散るほどの急ブレーキをかけて更にさくらに追い打ち。
 二人まとめてぶん殴る理由がありここまで全力を振り絞れそうな該当者、心当たりは誰にでもあった。

「ふざけるな!!なんでこの会議に僕を呼ばない!!僕の問題でもあるんだぞ!!」

 彼(女)の名前は花岡サクラ!
 5年後の未来(パラレルワールド)からやってきた双性の性別を持つある意味さくらの鏡合わせである!
 いずれ未来の自分との確執はルート次第ではやるだろうと思っていたがまさかこんなカオスな形で表現されるとは思ってもいなかった。
 更に言えば全員がサクラ側の行動に納得しかない。

「私の分際で邪魔する気ですか!!」

「同じ僕だから率先して止めに来たんだろうが!!危うく初めてのキスが人外だぞ!……君もッ!少しは躊躇え!!」

「大丈夫だってまさかさくら君の為にミラくん説得するとは」

 「というか、未来の私の方こそ種残すなら結婚考えた方がいいのでは?私はそれ付けるのなんか嫌ですが」

 「あ~言ったね~!!?僕完全に頭に来ましたー!!今から女性ホルモン異常注入してこいつGカップにします~!!」

 「未来のサクラちゃん怒りすぎてさくらちゃんとそんなに変わらなくなってるよ」

 やめよう、自分同士の争いは醜いものだ。
 かつてドラえもんがそんな事を言ったがまさにその通りだと思った。
 まあ気が気でないのは当然かもしれないがベビーがサクラをじっくりと窘める。

「サクラちゃん、確かに昔の自分かもしれないけど一旦落ち着いてあたし達と同じ立場になって考えたほうがいいよ」

「そうは言っても僕の……」

「ううん、もうさくらちゃんは貴方と同じ未来にはならない、だから違うの、もうサクラちゃんとさくらちゃんは名前と顔と歩んだ歴史だけが同じパラレルワールドの存在、分類上は赤の他人だよ」

「……キツい言い方してくれるね、君は」

「それに……あまり言い過ぎないほうがいいよ、ブルー様と同じでただの嫉妬になる前に」

「嫉妬……嫉妬か、ルートによってはこうなるんだものな、まあいいだろうシエル席借りるよ」

「借りるじゃないだろ私の膝にケツを乗せるな」

「いいじゃないかたまには、向こうじゃ君が僕に跨って……」

「あーーやめろやめろやめろ!!そんなの聞きたくない!!向こうの私がどうなってるのか考えると鳥肌が立つ!!」

 騒ぐだけ騒いで会議が成り立たない中、突如として空気が変わる。
 ああ大丈夫そうかなと判断したたくっちスノーが……本当にさくらにキスをした。
 口の中でマガイモノ成分が伸びて舌を全部包み込まれて単に舌を入れられるよりも濃厚でぬるぬるして脳を刺激してくる。
 さくらは鍛えてきた胸筋で自分の体を支えて離さないようにたくっちスノーの背を掴み、接吻というより水分補給のごとくたくっちスノーを堪能した。

「や……やったっ!」

「やりやがった!!マジかよたくっちスノー君!!やりやがった!!」

「う……嘘やろ こんなことが こんなことが許されて良いのか」


 ここに来てかすみがまたボタンを押した。
 家族である以上、彼女にはまだ話す権利もある。

「なるほど、たくっちスノーくんだったね、君のさくらちゃんへの誠意は心から伝わったよ、一応オレも家族であるから言うだけ言わせてもらう、さくらちゃんが心配だからね」

「確かにレッドには言う権利があるね、何か悩み事?」

「……君は間違いなく気付いてないだろうが、君と黒影は表裏一体、立場が違うだけで同じに見えることに気付いたんだ」

「……ティーとメイが同じ?どういう意味だ?」

「あっ、ふーん……俺はなんとなく気付いてたっすよ、考えるのが苦手なexeにも分かりやすく言うと、今みたいなアホみたいなことしてる黒影の行動は時空犯罪者のたくっちスノーも普通にやるし?受け入れ方によってはたくっちスノーの振る舞いも黒影はこの程度やることあるっすよ」

「つまりは善行悪行……特に違いはないということか、受け入れているかそうでないかというだけで」

「安易に彼を好きになるのは危険過ぎる……さくらちゃんが最後に責任取って決めることではあるが……このまま愛し合うのは良くないんじゃないかと思う」

「……戦隊ヒーローのレッドの勘?」

「いや、家族の情だ」

「なるほど、なるほど、なるほど…………ああ、黒影のやってることが僕と、僕の結果が……ああー、そうじゃん、確かにそうじゃん」
最終更新:2025年08月06日 23:03