たくっちスノーの鶴の一声で舞台は結婚式に変わり、秒でシエルとレッドの合体ハイキックがさくらとたくっちスノーを吹っ飛ばす。
「なにするんですか!!今タキシード着てる最中ですのに!!」
「本当に着てんじゃないぞ貴様ァァァ!!!」
シエルはまるで保護者Bのようにバシバシとさくらの頬を叩く。
他の面々はというと普通に式を満喫しようと席に座って待機している、コバルトに至ってはデカいケーキ持ってきている。
「ほらさくらちゃん!ウェディングケーキと烈火大斬刀持ってきたべ!!」
「ありがとうございます拍手の嵐真打登場でお願いしますね!!」
「お前らとりあえず侍戦隊シンケンジャーに謝ってこい!!お前あそこまでやっておいてまだ分からないのか!?あいつの語る感情も思い出も振る舞いも全てが偽物だ!黒影と同じで単なる電気信号や台本に過ぎない!AIに恋する人間が居るのか!?あいつはお前の事を好きでもなんでも……」
「シエルさん、歯ァくいしばれ!!!」
「すもうきぃっ!!」
さくらは詰め寄るシエルにマジの桜花一拳、すぐそばで見ていたコバルトは目の前に折れた前歯が飛んできてビビるが鼻血を出しながらもシエルはマジのイノセントイストワールで鼻を折ろうととしてコバルトが間に入りワンダー通せんぼ。
「やめるべやめるべ!!せっかくの晴れ舞台にこれはまずいだよ!そういうのは薔薇と椿くらいの規模で!!」
「離せ!腐ったこいつに目を覚まさせて」
「シエルさんの言う通り、たくっちスノー先生はプログラムのように従った感情で私を好きになりました、なら私はヒーローとして教え子として
マガイモノを理解したい」
「私は本当のたくっちスノー先生を知るために、彼を好きになるために結婚します」
「お……お前……」
さくらの目は本気だった、恋は盲目どころか純真。
元々ベビーの純粋なブルーへの恋心に憧れがあった彼女は心に従うがままたくっちスノーの本当を理解する為に近づく道を選んだ。
奇しくも花岡サクラの……本来に近いルートのようにさくらは『怪人と共存する未来』を選び取った。
コバルトにハンカチを借りて若干怪我した顔を治す。
ベビーが着てタキシードのシワを確認する。
「本当にお化粧しなくていいの?あたしに任せたらさくらちゃん可愛くなれるよ?」
「タキシード着てる人が可愛くなってどうするんですか!それに先生にはありのままを見せたいんです」
「ふーん……そこまで言っちゃうくらいメロメロになるなんてちょっと信じられないけど、ここはルームメイトとしてセルフでクラッカーしようか」
「あっ百光は勘弁してください」
メロメロ……というのは少し違うのかもしれない。
さくらの中にあるたくっちスノーへの感情は好奇心と感心、マガイモノへの興味、そして変わりたいという自分自身の思い。
思えば昔の生活を考えると結婚なんて夢にも思わなかっただろう、ゴクピンクになれば一生ヒーローとして生きたまま生涯を終えるだろうと考えていたが……。
「ベビーさん、どうして私の育ての親は女の子らしさを強要したんでしょうかね、それともそれが普通で女なのにゴクレンジャーを好きになった私が異常だったんですか?」
「普通とかさぁ考えるほど分かんなくなるよ?だってほら。あたしなんて実際には人型の怪人だよ、あはははは……わ~~~ん!!あたしもブルー様と結婚したいよ~~!!」
さくらもどうでもいいのでたまに忘れるが自分は怪人から生まれた子供、対してベビーは『プロジェクトキャロル』で人工的に造られた最高峰の人型怪人。
同じ人間の遺伝子で産まれたもの同士ではあるが、絶妙に恋する上で違う。
ブルーと共同生活こそしているがアレからベビーは悟ったのだ、自分はブルーと結婚できず幸せに出来ないと……そう、子供を作れるか怪しいと。
「まるで先生は子供作れるみたいな…いや、いけるか?」
「待ってさくらちゃん、そっちが産む側なの??」
思わず涙も引っ込むベビーだったが、さくらのこういう真面目でマイペースで危なっかしくて……一生懸命な所に惹かれたのかもしれない。
さくら、シエル、ベビーの三人は動機も思想もバラバラだったが桃の園で会えたのが一番の幸せだった。
だってこれは、メイドウィンも
時空監理局も関係ないのだから。
「おっううおおおん……さくらはレッドを超えるピンクになるなんて大々的に言って、最初は変な奴かと思ったがまさかこんな、こんな」
「泣きすぎやろ、そんなんでスピーチ出来るんか?」
海上ではスピーチしようとするマゼンタと、その様子に付きっきりで相手する巡が。
思えば巡も本来ならこの世界に訪れる事もなかったのだろう 、来道羽丸のイベントを急ごしらえで変更させたツケが回ったが、さくらの時空と共存する選択とやり通した姿を見てゴジュウジャーも含めて色んな可能性を信じたくなったという。
どういうことかというと、コバルトについていくつもりらしい。
「別世界にいる天川薫子って奴から連絡入ってな、俺の前の教え子も世話になったらしく会いたいときた、相田の最初の仕事は『魔力戦隊サンマジカル』として俺の世界のゴッドイベントも進めておきたいしな」
「そういえばそっちの世界も黒影に巻き込まれてるんだったか?どんな様子か分かるのか?」
「さくらちゃんが粗方特盟にチクってくれたおかげで大体は把握できるように手が回ったわ」
『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』世界の方はというと、ようやく『金雷公』クオンと『逢魔』マジアベーゼの戦闘が終わり吠質が帰還した頃、ゴッドイベントが開幕して真のメイドウィンである『熊手真白』が時を越えて復活、恐らくゴッドオーダーの影響であり数々の世界で起こした監理局の行動も無駄ではなかったようだ。
ただし、巡も帰ったらただでは済まないだろうが……指輪を集め願いの為に戦うユニバース戦士としては当然だ。
これから先、彼にも大きな試練が振りかかる事だろう。
「そういえば気になってたんだが、巡先生の親友もその……ユニバース何とかって奴だったんだよな?いったいどんな願いを叶えたかったんだ?」
「今となっちゃ俺にも分らんよ、俺はなんとしても願いを叶えたくなったが」
「じゃあ巡先生の願いは?」
「シュンヨウジャーには絶対教えたらん!聞いたら絶対に何が何でも叶えようとマジになるやろ!……おっ来たで怪物が」
「怪物?って!!」
スポットライトをぶっ壊して顔面がえげつないことになっているたくっちスノーの花嫁姿が現れるが、彼は顔面をパックのように剥がして作り直し剥がした薄皮を
野獣先輩に押し付けながらパイルドライバーをド派手に仕掛けた。
「お前こんな晴れ舞台でよくふざけやがったな殺すぞ!!」
「色んな女引っかけてるのに真面目な結婚とか期待するもんじゃないっスよ」
「やかましい!さくら君にどんな顔して会えと!?」
前が見えねェ状態になった野獣先輩を埋めたまま桃の園の生徒達も気にせず満喫する、やはりたくっちスノーの元で育ったこともあり神経がラフレシア、多分全員なんだかんだで他所言っても生きていけそう。
何はともかく花嫁が間に合ったことで結婚式が始まって欲しいのだがどうにもさくらの姿が無い。
♢
「一応言っておくが……色々あったが結婚おめでとう、過去の僕」
「おめでとうございます、未来の私は結婚しないんですか?」
「僕はまだシエルと検討の段階だね……あっ、万が一僕の時代のシエルに会ったら内緒にしてね、二人そろって殺されるから」
待ち望んだ花婿さんは何をしているのかと言うと、サクラと会話を交わしている。
さくらはたくっちスノーでサクラはミリィ、それぞれ二人が既に二人いるたくっちスノーに近付く結果となる。
考えてみれば愛で暴走したようで結婚という形で身内になれば監理局の情報もたくっちスノーや黒影の真意も深堀出来る、いわゆる時空規模の政略結婚。
まあ戦隊でも結婚はよくあるし問題ないだろう。
「しかし、階級こそいいがよく本気で結婚まで一気にこぎつけたね」
「……私にだけは話してもいいですね、偶然ですけど気付いたことがあるのでそばに居たいんですよ」
「なるほどその厄介さに今は賭けよう、所で……別の事業でたくっちスノーが他に女を作っていたら?」
「先生には責任を取って全員と結婚してもらいます」
「うっ悪寒ッ!!せっかくの晴れ舞台なのにキモが冷えたぞ!?」
「今の季節的にはめちゃくちゃ暑いのに!?今日記録更新らしいぜばあちゃん!!」
「なんだろう!!たくっちスノー君祝いたいのに既に嫌な予感してきた!!」
さくらの発言がとばっちりのようにexe、ミリィ、ポチを襲う。
世は正に大結婚時代が訪れて絶望先生もビックリの重婚騒ぎになるのはまた別の話。
なんだかんだありつつも、花婿が到着してようやくウェディングロードを闊歩。
段取りなんてお互い全然知らないのでかなり大雑把かつその場のノリでブーケトスを行う。
「ベビーさんパスしますよ!!」
「よっしゃあどんとこい!!」
「待て待て甲子園のストレートでも投げるんかお前!!」
その次にウェディングケーキ入刀。
「マジで烈火大斬刀でぶった切るつもりだアイツ!!ケーキ焦げるぞ!!」
「殿に返してこい!!それかディケイド!!」
結婚式でもバタバタ大騒ぎになるがこうした方が却ってたくっちスノーらしいのかもしれないが、結局の所これもまたプログラムみたいなものだと思うと興醒めするのか?そんなことはない。
プロレスはただのショーだから迫力がないのか、お芝居はリアリティがないのか?そうでもない。
今この世界は、この空間は主役の独走場!
というかたくっちスノーが花嫁でもなければさくらの蛮行も許されない、ある意味ではお似合いかもしれない。
そういえばゴジュウジャーの方も結婚しようよ吠ゥとか本来の
はじまりの書のルートに記されているのでそのしわ寄せがこっちに来てるのかもしれない、シエルからすればいい迷惑だ。
「未来のさくら、もしかしたら結婚相手に相応しいのアレみたいなやつかもしれないぞ」
「その言い方めちゃくちゃ癪に障るからやめてね、てか喧嘩売ってる?」
「キース!!キース!!」
「テンション高えなさくら君!この間やったばかりでしょ!」
「もうっ!!もう夫婦になるんだからさくら君はやめてくださいって!」
「ツッコミのキレが強すぎる……」
「舞い上がったヒーローって怖いな……」
「さすがにたくっちスノー相手だからああしてるんだろ」
たくっちスノーとさくらがキスしようとした時、その結婚待ったと言わんばかりに扉が豪快に開く。
豪快すぎて扉がぶっ壊れてそこに現れたのはゴクレンジャー全員!
グリーンは仕方ないので分身したミリィで代役したが昔なら大騒ぎになってもおかしくない戦隊ヒーロー全員集合。
なんならこれかすみの独断なので当然騒ぎになる。
「
時空犯罪者たくっちスノー!幼気な戦隊候補生の心を弄び手中にしようとするその悪逆非道許すまじ!ゴクレンジャーが相手になろう!」
「はっはっはおもしれえゴクレンジャー!この可憐な花婿を取り戻したくば自分を止めてみるがいい!!」
「うおおおすっげえええゴクレンジャーと先生の生戦闘だああああ!!」
完全に結婚式のことも忘れてゴクレンジャーとたくっちスノーのガチバトルに大興奮、たくっちスノーもノリがいいタイプなので結婚式を荒らさないように勝負に応じていき本当にプロレスみたいになっていく。
「いくぞゴクレッドォ!桜花!!」
「紅蓮!!」
「一拳!!」
それぞれの必殺技がぶつかり合うがオーラが磁石が反発するように重なり合って拳が互いに届かない。
大技同士のぶつかり合いというサクラにも覚えのあるシチュエーションにふと過去の自分の様子を見てみると……自分の格好よりも白くなっている。
完全に限界が来て天を仰いでいる。
「しっかりしろ!!おい花婿!!お前を巡って花嫁と推しが争ってるんだぞ!!」
「未来のさくらちゃん!普通に考えて贅沢な事実を陳列しないで!本格的に天国から帰ってこれなくなる!!」
「百歩譲って煉獄だろこんなやつ」
シエル、ベビーもいつもみたいになるがようやくさくらの魂が戻ってきて我に返る。
そして凄いドヤ顔を見せてくる、これが晴れ舞台じゃなかったら殴りたいくらいには若干サクラとベビーもイラッときたがシエルに止められる。
「しかしまあ、良かったじゃないか……お前もようやく戦隊を好きになっても何も言われないんだぞ、それだけでも」
「え?……ああ、そういえば、昔はそうだったからなぁ私、頑張れレッドー!」
「ズルいぞレッド!!その姿で来たらさくらはそっちを応援するの当たり前じゃないか!」
「君にさくらと呼ばせる筋合いはない!」
「何様だレッドぉ!おばあちゃんの妹のくせに!」
「そこそこ親族としては遠くてウケるんだぜ!」
「じゃあ行けゴクピンク!!」
「おばあちゃんは認めませんからねキック!!」
「ぐわああああピンクが物理攻撃してきた!!」
一番はっちゃけてるゴクピンクがたくっちスノーを蹴っ飛ばして問題解決。
ゴクレンジャーが参加してくる結婚式とか贅沢極まりないが時空に新たな可能性を見出だしたさくらならこれくらいいいらしい、イエローが言ってるのでとんでもないくらい適当だが。
なお、席に座る途中ブルーがベビーに耳打ちしたあとベビーが突然発作で搬送されたことは割愛する。
◇
「皆さん今回は私とたくっちスノー先生の結婚式に付き合ってくださりありがとうございました!数々のイベントも私尊死するかと思いました……約1名無関係なところでなりましたけど」
「ゴクブルーも他所でやってくれないかなそういうこと!ベビーちゃん今夜は寝かさないとか言ってたけど何する気なのかは敢えて聞かないからね!」
遂に結婚式もクライマックス、後はさくらが独自に作成したビデオを流しながら桃の園やたくっちスノーでの思い出を振り返ろうとする。
なんか卒業しそうな雰囲気だが、たくっちスノーが向こうに行ってしまうだけでさくらはまだまだ普通に在籍することは皆把握している。
その上でこんなことするのだから面の皮が厚すぎる!と言い出しそうなる衝動を抑えつつもシエルは首をかしげる。
「ビデオ……?あいついつの間にそんなもの作っていた?」
「僕も初めて聞いたんだよね、何か狙ってるのは確かなんだけど」
「全編140分の超大作です!」
「長えんだぜ!!」
「もしかして私達今からアベンジャーズでも見せられる?」
「大丈夫?アレ前提知識多いよ?」
「君もしかして誕生から描くつもり?
万丈龍我かよ!」
「……」
「あっそれもいいかもみたいな顔してる!」
「今すぐベビー連れてこい!!このバカ殴って止めさせろ!!」
最初から最後までカオスが抜けきれないおもしろ空間の中、遂にビデオが始まろうとしている。
♡マークが辺り一面に浮き出て小学生のパワポで作ったようなタイトル画面だったので既に嫌な予感がしたシエルは興醒め。
結局シュンヨウフォントに頼りきりで素のハッキング力は全く学習していないのでしょうがない、ここまでくると機械音痴を疑うレベルだ。
ちなみに全チャプター40くらいある、アベンジャーズかと思ったら善逸伝だった。
たくっちスノーとの協力の元に作ったという。
「たくっちスノー先生と色んな思い出語り合って作ったのでじっくり楽しめましたよ!」
「カルピスでも水の味しかしないくらい薄めただろコレは!まだ卒業もしてないのにどこにそれだけのエピソード詰め込めたんだお前は!」
「僕もう既に嫌な予感してきたよ」
「エピソード1はゴクレンジャーVSゴーカイジャーからです!」
「そんな本編解決後のVシネみたいなのさくらちゃんいつ見てたの!?」
「え!?ディケイドが乗り込んできて海東が『見事だね士、でも見事すぎて気に入らないね』とか言ってなかった?」
「もしかしてこいつさくらの話聞きながら伝説の映画見てない?」
「多分ゴーカイジャーのコンプリートしてる時の記憶ごっちゃになってるべ」
ツッコミどころだらけの中かろうじて見える本編でツッコミ回になりはじめる桃の園、『AIにビデオ考えてもらった?』『結婚式で見せていい承認欲求と自己肯定感じゃない』『おいなんか私一回死んだことになってないか?』『たくっちスノーがイキイキしすぎて殴りたくなってきた、何笑ってんだよ(SUG)』などなど罵詈雑言の嵐、これ本当に結婚式か?
「おいさくら、よくもまあこんなもの作ってくれたな」
「違うんです違うんです」
「こらシエル!さくら君は真剣にやってるんだ!チャンチャンバララ」
「お前この結婚式で何回シンケンジャー擦る気だおでん突っ込むぞ!!」
「いやだってほら!今シンケンジャー!シンケンジャーとの思い出話してるじゃん!『外道衆・極み編』!殿が来てくれて寿司も食べたりしてさ、あっ志葉丈瑠のサインだって残してあるよね?」
しかし、たくっちスノーの態度を見て全員が押し黙る。
『それ本気で言ってるのか脳みそ真っ黒野郎』みたいなツッコミが監理局から飛んでこないレベルなので相当である、たくっちスノーはよく分からないアウトローみたいな顔をしながら各エピソードの説明をするがシエルの鳥肌が止まらない。
なんならついさっき時空犯罪者やってた時より怖い。
「……籍を入れる前に説明があるよね?過去の僕、まさかこれを分かっていた上で?」
「はい、愛を通してこの性質を研究する為でもあります、たくっちスノー先生は……」
最終更新:2025年08月06日 23:04