この男、
たくっちスノー。
ある事情あり、あらゆる世界を一人旅しているのだが、常に金欠問題に悩まされている。
その為、一日バイトで生計を立てているのだ。
たくっちスノー「うーん、今日は何やろうか……つっても」
たくっちスノー「この
バックワークに載ってる奴なんて、大抵ろくでもない奴なんだがな」
たくっちスノー愛読の『バックワーク』。
求人誌としては実はワースト級の人気であり、こんな物に載っているのは相当なブラック企業、あるいは2〜3ヶ月で潰れてもおかしくない大問題な店、あるいはいつ死んでもおかしくない過酷労働。
その為、この雑誌に載ってる会社は信用するなという一種の予防として見られている事も多い。
そもそもの話、たった一日だけしか受けないアルバイトなど世間的には責任無しと思われてもおかしくない。
だからこそ、たくっちスノーはバックワークだけを今まで買っていた。
たくっちスノーは一日受ければそれで充分だったから。
だが……
たくっちスノー「バックワーク……ただでさえ悪かった質が更に落ちたな」
たくっちスノーはそのバックワークに異変を感じていた。
元々低レベルな一日バイトを投稿していたのが、最近では仕事と呼べるものか怪しい物にまでなってしまった。
ろくでもない仕事は減らない、むしろ増える一方だ、それなのにネタが無い。
たくっちスノー「…………」
たくっちスノー「よし、なんとかしてみっか」
たくっちスノーはバックワークに落書きしながら歩き出す。
『バックワーク』
仕事内容:雑誌を直す
報酬:後で考える
…………
たくっちスノー「あった」
たくっちスノーは歩き続けて、バックワークを発行している編集部を特定した。
たくっちスノーが想像しているよりは大きい、というかビルだった。
たくっちスノー「意外だな……あんな雑誌でも結構儲かってたりすんのかな。」
たくっちスノー「失礼しまーす」ウィーン
「どちら様でしょうか」
たくっちスノー「………」
たくっちスノー「この雑誌の熱愛ファン♡」
たくっちスノーがバックワークを突き付けると、一気にビルの屋上まで連れてってくれた。
〜バックワーク事務所〜
社長室。
たくっちスノー「………………やっ」
「なんだ、またバカが金借りにでも来たのか」
たくっちスノー「いいや、今回は立て直しの一日バイトをしに来たわけだよ」
「雇用主と報酬は?」
たくっちスノー「雇用主は俺、報酬はバックワークのレベルアップだ」
「フッ………」
【その貧乏じみた思考をするのはオレの弟か】
たくっちスノー「そりゃどうも、『バカ兄貴』!」
たくっちスノーがバックワークを愛する理由はもうひとつある。
バックワーク編集長並びに……株式会社ワークナン社長。
キンギラ・ジーカ・ワークナン。
77777番目のたくっちスノーの兄であり、時空間に時空共通紙幣『
ジーカ』を作り上げた男である。
キンギラ「それで………?」
キンギラ「ウチの雑誌に何か言いたいことでもあるのか、犯罪王」
たくっちスノー「俺はとっくに犯罪者じゃない、アンタは比較するなら富豪王か」
たくっちスノー「クロノス社としては資金援助してもらった事もあるが………」
たくっちスノー「兄貴、色々聞いていいか」
キンギラ「どうした」
たくっちスノー「なんで雑誌なんて刷ってんの?」
キンギラ「ん?」
たくっちスノー「アンタはこの時空にジーカを作り、1つの文化を作った。」
たくっちスノー「日本円、ドル、ユーロ、マルク、ジンバブエドル、ペソにクローネ、ポンド」
たくっちスノー「俺の世界ですら国が変わるだけで金が変わる、それをアンタは全世界全て共通の金を作り出した」
たくっちスノー「名実共にアンタは時空で1番の大富豪だ、もう何をしたところで金を失うことは無いくらいにな」
たくっちスノー「だとしたらなんで、こんな求人誌作るんだ?何を稼いでるんだ?」
キンギラ「____バックワークを売っているのは金が欲しいからでは無い」
キンギラ「楽しいから、オレの作った金が大きく動く姿が」
キンギラ「その気になればバックワークに入れる企業などレベルの高いものはいくらでも入れられる、だがこの世の終わりみたいなカス企業でなければダメだ」
キンギラ「大きい金を用意するような常識が欠如した会社の方が、見ていて面白い」
キンギラ「一日バイトのシステムもオレが考案した、一日大金稼ぎ、それをカスみたいな理由で溶かし、また危ない橋を渡る……」
キンギラ「面白いぞ、その姿も、バイトをしている姿も」
キンギラの背後のPCには、数多くの監視カメラと………一日バイトをしている人たちの姿が。
たくっちスノー「………」トントントントン
たくっちスノー「燃える大工屋、アホみたいなノルマがあるゲーセン、デスゲーム製薬、バイト騙しのラーメン屋、手抜きの回転カレー屋………」
たくっちスノー「全部見てたのか?」
キンギラ「一日バイトを複数も受けていた男などお前くらいだな」
たくっちスノー「一応、アパートの特殊清掃受けていた無知な奴らもいたけどな」
キンギラ「そういう奴は3度目の一日バイトで死ぬ」
たくっちスノー「確かに俺も命がいくつあっても足りない場面もあったが…………」
キンギラ「そういう面で見ればお前の『
逃走中』も面白かった」
たくっちスノー「俺たちの世界発展を掲げるゲームをあのクソ企業と一緒にするな、熱意が違うんだよ熱意が!」
キンギラ「………で、前置きが長くなったが、バックワークに何かあったか」
たくっちスノー「最近バックワークに載ってる企業が流石に俺でも許容できないくらいクソになった、見る?」
キンギラ「どれ、見せてみろ」
たくっちスノー「別に俺も命が惜しい訳では無い、悔しいがアンタの作ったジーカ無しでは生きていけない。」
キンギラはたくっちスノーからバックワークを貰い、その内容を確認する。
キンギラ「ブラック企業のトイレ掃除6時間、道路整備70000ジーカ、殺し屋40000ジーカ、裏モノ写真作成500000ジーカ、替え玉450000ジーカ…………」
キンギラ「なるほど、確かにこんな仕事ではやる気も出なくなるな」
たくっちスノー「だろ?俺はつまんないワケあり企業やりたいんじゃないんだよ、『え?こんな事で稼げるんですか?』ってのをやりたいんだ」
キンギラ「オレが言えたことでは無いが、お前も中々の『奇人』だ」
たくっちスノー「そりゃどうも、アンタの弟ですので」
キンギラ「だが、こんなくだらない理由でこうしてここまで来たのは、オレの兄弟達くらいだろう」
キンギラ「前に人狼狩り費用損害として400億ものの借金を踏み倒しに来たグリムという姉以来だ」
たくっちスノー(あの人何してんだよ………)
キンギラ「いいだろう、オレからバックワークをアップデートするように圧をかける」
キンギラ「その代わり、代金を払え」
たくっちスノー「………何ジーカ欲しい?なんて言うわけないか」
キンギラ「ジーカなどいらん、お前はさっきお前の世界の金を挙げたな 」
キンギラ「『円』というものでいい、円で全財産を出せ」
たくっちスノー「………………案外、ジーカ以外も使い道あるもんだね!」
たくっちスノーが指を鳴らすと、数多くの札束と1枚の硬貨が置かれる。
たくっちスノー「俺たち兄弟が存在するナンバーの数ちょうど」
キンギラ「…………一京円か」
キンギラ「待て、この塊はなんだ」
たくっちスノー「1円だよ」
たくっちスノー「実は最近、妹が出来た」
たくっちスノー「俺よりの下になって、1京と1になった。」
キンギラ「…………フッ、時空は面白くなったようだな」
キンギラ「たくっちスノー、時間あるか」
たくっちスノー「今日だけなら」
キンギラ「奇遇だな、オレも今日だけは開いている。」
たくっちスノーとキンギラは同時にエレベーターに入り……
「食いに行くぞ」
………
10階にあるレストランへと足を運ぶ。
それは………いかにも高級で、たくっちスノーの一日バイトで入る金では入る事も躊躇うような……
たくっちスノー「このビル、飲食店完備かよ……」
キンギラ「オレのビルに入れられるものは大体入れた、外に出てやりたいことも無いのでな」
キンギラ「ドレスコードはあるか?」
たくっちスノー「変身能力でなんとかなる、金は無いがな」
キンギラ「払う」
キンギラ「久しぶりに兄弟に会えた、兄っぽいことをしたい」
たくっちスノー「どうも、後はテーブルマナーだけだが」
キンギラ「オレが教える、なんなら美味いものも教えてやる」
たくっちスノー「アンタ冷酷面してるくせに結構ブラコンじゃねーか」
………
『今日のメニュー』
すっごい分厚いステーキ 25000ジーカ
フォアグラスープ 13000ジーカ
以下、キンギラ払い。
キンギラ「ジーカはいくらでもある、オレの中に……ジーカがオレの名前から取ったように……」
キンギラ「『ジーカ』はオレから出来ている……!!」
キンギラがナイフで全身を傷つけ、出てきた成分は瞬く間にジーカ紙幣に変化する………!
たくっちスノー(ジーカって、
マガイモノ奥義で作られていたのか………)
…………
結局たくっちスノーはバックワークの手直しどころか、色々貰った。
たくっちスノー「………キンギラ兄貴のことは雪にだけ話しとこ♡」
本日の手当
特別報酬 1000000ジーカ
食費 0ジーカ
最終更新:2022年12月29日 21:51