確か見てみろ!

「松山、ホワイトの調子はどうかな」

「どうもこうもしねぇよバーロー、てめぇよくもあんなもの押し付けてきやがったな」

 ミリィは松山に電話して改めてホワイトの事を話す、どうせならゲームチャンピオンを持ってこいと愚痴るが盗作騒ぎのモノ放置してもしょうがないということでもう知らんということで。

「で、お前んところ漫画作るとかイカれんなマジで……ネオジャンプとかいうパクリ作品、ネットで拾ったクソみたいな情報しかないゲーム攻略雑誌、おまけに全編あのバカの落書き帳か……世も末みてえなラインナップだな」

 マンガに詳しくない松山でもマジトーンでツッコミを入れるレベルの地獄、時空監理局が事業を始めてコンテンツを独占してクソみたいな物が羅列する……。
 こんなことの繰り返しで治安は最悪だった。

「だが、アイツの身内というのはとんでもねえ情報だ……俺も実験は見てたが生き残りがいるなんて思わなかった」

「調べてたあの件は?」

「推測通りだ、出版局にもアイツの兄弟が居た……これでひとまずは二人目だ」

「ありがとう、ホワイトの稼ぎは好きにしていいからよろしく頼む」

「よろしくっつーかゴミ押し付けてきただ……あっ切りやがった」

 松山はため息を吐いてホワイトという特大の地雷をどうするか考えていた、どうかしてるのは黒影もどきはもういないのに他の面々は乗り気なことだ、どこの業界も同じらしい。

「てめーらなんでもかんでも監理局のマネしすぎだよ、俺等までパンクしてくんだろうが」

「でも私達の仲間も増えてるし、監理局が杜撰な所に私達がちゃんとしたものを提供してるから問題ないよ」

「今回のはマジで相手したくね〜んだよ!盗作騒ぎ後の少女漫画て!なんてもの持ってきやがる!」

「何をしている松山、ボヤボヤしている暇があるなら手を動かせ、俺は今過去最高に推し活を満喫している」

「なんでテメーが一番乗り気なんだ、前職医者で現職芸能人だ」

「問題ない、題材は星野アイで監修は俺の妹だ絶対に売れる」

「やっぱこいつあの時焼き捨てておきゃよかったかもしんねえ!」

「めんどくさいからAI使っていい?」

「テメーはあのバカの同類になる気か」

 実のところムゲンダイ研究所もあのバカ5人と中身は変わらないのかもしれない。
 漫画のラフを作りながらサヤはミリィの事が気がかりだった。
 何よりも気になるのはネオジャンプ、ゲームチャンピオン、まんがタイムつばめの残りの雑誌。

「ネオジャンプはたくっちスノー達がちゃんと漫画家を選んだからランキングは不動……とはいうものの1位ではない」

 ネオジャンプは現在快調、これまで(大体黒影が理由の)トラブルに苦しめられてきたが順当に名作が作られていきジャンプラ内にも連載を提供、更に『カブトウォーズ』の大和丸先生の新作『雷王!!』は連載してから好調でゲーム作品の開発まで決定している。
 最近は大手ジャンプ作家とも手を組みたいと考えているがリアルワールドのたくっちスノーが絡んでるので逆に難しいという。
 ネオジャンプで漫画家デビューして別の雑誌に移籍した作者も少なくない、週刊ファンタジーで花開いたぽぽりんエックスは今でもたくっちスノーにアプローチを送っている、更に黒影が魔法て作成した連載作品の作者名、山田グレンは完全に消えた。
 魔法で漫画を作る際に時空出版局からの発表で倫理観チェックの工程が挟まれるようになったので黒影はめんどくさくなったのだ。

 次にホワイトと同時期に発売されたゲーム攻略雑誌『ゲームチャンピオン』
 新作ゲームの情報やイチオシ作品の攻略ページを一通り取り揃えてゲーマーを支えてく他、どんどんゲームが好きになりそしていずれはチャンピオンだというコンセプト、連載漫画は人気ゲームのコミカライズとなっている。
 ただしその内容はお粗末、そもそも最近はユーザー側が情報を出し合ってネットで自ら攻略サイトを立ち上げる時代。
 ユーモアや企業側ならではの正確な情報、ネットに流れるガセを避けるために市販の攻略本は需要こそあるが要求されるレベルが高い。
 しかしゲームチャンピオンに載っているのはボスの弱点でも有効なアイテムでもなく、圧倒的なステータスでや無敵化でゴリ押せという匙を投げたようなゲームに向き合っていない内容。
 更に言えばゲームの攻略情報や設定も全然違うという事例があり、読者からはネットで拾った情報の真偽も検証せず記載してたのだろう。
 はっきり言ってゲーちゃん買うくらいなら別世界の『ゲーファン』のほうが面白いしお母さんが間違えて買ってしまったと苦情も出ている。

 そして黒影があの空気のなか公開発表したまんがタイムつばめ。
 論外、以上。


「はいたくっちスノー、まんがタイムつばめ出来た」

「お前めちゃくちゃ筆早いな……」

 黒影は原稿を置くだけ置いてまんがタイムつばめの表紙をハンバーガーみたいに挟んで雑に表紙を作成する。
 相変わらず内容は萌四コマとは思えない程中身がない。

「四コマ漫画って楽だから俺には合ってるんだよ、1回に4つの要素だけで一本これを繰り返し!楽な作業だからスタンプみたいに絵を描ける!」

「起承転結という単語を作った存在に辞書の角で殴られて欲しい態度だな……まあ勝手にすればいいよ」

 たくっちスノーは時空出版局の坂口と話せるようになってからネオジャンプとゲームチャンピオンの権利を共同にしてジャンプ編集部とトライアングルで監理したことで品質が上がっている。
 今でこそ漫画の方しか見てないがゲーちゃんの記事もいずれはちゃんとしたものに審査してもらいゲーム雑誌として安定させたい。
 ただし、黒影に出版局とのコンタクトがバレるとめんどくさいことになるしこの情報はまだ武器にする為にも個人で隠し通している。

「ミリィ、ジャンプラに持って行った新連載の『日陰の尻尾切り』はどうだ?」

コメント数評価数は申し分ないけどどう伸びるかって所」

「先週のアンケ結果出たよ!」

「原稿が来ないぞ!!」

 そして例の5人も相変わらず大忙し、規模か大きくなると仕事も増える、さらに掛け持ちする仕事に雑誌にと広げるほど5人だけ忙しくなる。
 5位という立ち位置ながらネオジャンプはイベントを控えていた。
 雷王5巻発売記念、作者大和丸先生のサイン会。
 作者のサイン会が初めて時空規模で行われるということもあって準備にも追われていた。
 特に持ち込みやカブトウォーズの時から目をかけていたEXEは気合が入っていた。

「まさかオレ達が選んだ作者達がここまで成長するとはな、サイン会は絶対に成功させる」

「おう!SNSを見たらもう一万人以上が参加するって表明してるんだ、デパート借りなきゃ捌ききれんぞ!」

 ポチとEXEが前もってセッティングを行い1日かけてサイン会を安全に行えるように準備を整える。
 初めてとは思えない大規模な会場に胸が高鳴り、ポチは昔リヴァイアサン先生やその他の作者達と撮った写真を見せてくる。

「これね、まだ作ったばかりの頃サイン会やるとしたらどんなサインにする〜?とか話し合ってた頃にオリジナルサインを作ってたんだ、大和丸くんあの時のサインそのまま使ってるよ」

「この時は誰がサイン会出来そうだと思っていた?」

「そうは言われてもね、漫画なんてどうなるか分かんないじゃん?俺もサイン会やってみたいなと思ったことはあるんだけどね」

 当時の作者達の話をしながら後始末を済ませる、編集者でもあるポチからすればまるで我が子の晴れ舞台を見に来たかのようだ。
 知り合いの何人かは月刊ギャラクシーに行ってしまったが今でもプライベートな付き合いはある、今度月刊ギャラクシーのサイン会やイベントにも参加するつもりだ。
 更に黒影が後からジャンプフェスタみたいなものをネオジャンプでもやりたいと言い出したので急ごしらえで大きくセットを整えた、ぶっちゃけ徹夜の何割かはコレ。
 一息ついたEXEにポチはサイン色紙を渡す、時空一万人に提供する大和丸先生のサインだ。

「オレに渡していいのか?」

「むしろ君が一番最初に受け取るべきでしょ、彼の漫画家人生は君から始まったと言っていいんだから」

 ポチはEXEにサインを握らせると、腹ごしらえでもしようとあの沢山の持ち込みを受け取った全ての始まりであるファミレスへと向かった。
 到着するとミリィとたくっちスノーも同じタイミングだった。

「なんだ、考えることはみんな一緒か」

「まあそれもあるけど……ポチ呼ぶ手間が省けたな」

 たくっちスノーは2人をファミレスの指定した席に座らせるとそこには坂口の姿が、頃合いを感じたたくっちスノーはミリィとポチに時空出版局とコンタクトが取れてこっそり連携し始めたことを話す。
 盗作問題からここまで話が繋がると思わなかったミリィ達も驚いた。

「うわすっごいな……出版局って俺達から連絡も出来ないんでしょ?」

「現状は自分のプライベート電話だけからだね、まあ話すことなんて大体仕事のことだけどさ」

「こちらも最近のネオジャンプ等各自時空雑誌の監視を任されましたので……」

 坂口の隣に座ったたくっちスノーは改めてポチとミリィに説明する、これまではたくっちスノーのみが出版局と話を繋げていたがこの度新企画に向けて信頼出来る人に協力を仰ぎたいということになった。
 EXEと田所よりミリィとポチの方が信頼出来るというよりは他の仕事も任せられるとたくっちスノーは判断して2人を呼ぶに至る、ポケットから見せてきたのは部署移籍の報告書だった……もちろん黒影には内密。
 ネオジャンプの編集者に何人か出版局の人間を移籍、ジャンプ編集部には話を済ませており実質出版局の雑誌となるという。
 だがたくっちスノー達からすれば別に時空でトップを目指してるわけではないし売上が奪われるわけではないので気にしてなかった、ジャンプ編集部から伝えられてなかったのもこれまでの数々の行いを振り返れば信用に値しないのも納得である。

「EXEと田所は引き続きネオジャンプに続投、自分はゲームチャンピオンの編集に回る、つばめはもう諦める……それでミリィ達には新しくジャンプが作る派生雑誌についてだ」

「ネオジャンプとは別でジャンプ編集部が我々に作ってほしい雑誌があると……」

 1つのジャンルに特化したジャンプ雑誌、その原案をミリィが開いてみるとその内容に驚愕する、そのプロジェクトとは……『ときめきジャンプ』
 なんと少年ジャンプにもある程度存在している恋愛という要素にピックアップした物、友情・努力・勝利の熱い要素からはかけ離れているが企画としては面白そうではあった。
 これは全て出版局と大手漫画雑誌主導による時空雑誌立て直し計画によるものだ。

「で、相変わらず俺等は省かれたと」

「まあ元凶だし今に始まったことじゃないからね、例のツアーとかお店の数々とか……」

「その為には何かを犠牲にしなくてはならない事もある、ときめきジャンプかネオジャンプどちらかが潰れることになるかもしれない」

「でも実際は?」

「滅べまんがタイムつばめ!」

 たくっちスノーは悪態をつきながらもときめきジャンプの説明を加える、本気でこれが面白くなるか分からないが新しい方向性として時空を盛り上げる素質はあるが監理局では宣伝力に欠ける、ネオジャンプとい違い最初から出版局のブランド力や数々の本を作り出した実績が存在している、最終的にはどちらかが消えるかもしれないが面白い雑誌に変えて生きたいという。

 「ゲームチャンピオンは自分が何とかする、連載作品は大体ゲームコミカライズだからマガイモノ成分でも誤魔化しが利くしゲーム専門でマンガ雑誌じゃないんだ、ネオジャンプより好き放題出来る」

 「なるほど、ときめきジャンプを作って俺達にライバルを演じろってわけね……俺そういうの面白そうかも」

 「俺も正直気になる……でも待って、それって黒影局長には隠すんだよね?」

 「隠すというよりは関わってほしくありません、話して分からないのであれば隠すことになりますが」

 ミリィは表向きはネオジャンプの編集者だが実際はときめきジャンプを作る為に出版局の手伝いをしているなんて誤魔化しが利くのかと不安に思い黒影に隠すのではなく納得させる方法を提案するが、たくっちスノーは出版局に手柄を横取りされたくないだろうと絶対に首を振らないどころかときめきジャンプのネタを一足先に奪って本当に盗作しかねない。
 もちろん黒影と長い付き合いのたくっちスノーはこの辺の事も想定した作戦を用意してある、坂口はポケットから2人にライセンスを見せる、時空出版局の職員が持っているもので自由に出入りするコードキー代わりになるものだ、これを使えば出版局に自由自在にアクセスできる。

「こいつを持ってろ、見られたら出版局のスパイ活動と言えば黒影も見逃してくれる」

「スパイ活動って……これで引っかかる方も引っかかる方だけど、なんて騙し方だ」

「でも残った2人にはどう説明するんです?」

「そこは自分がなんとか」

ポチとミリィはライセンスを受け取り、ネオジャンプとときめきジャンプ、そしてゲームチャンピオンが生まれ変わるべく活動を開始するのだった!
 ミリィはまだ坂口に利用されているだけではないのか?という焦りもあったが、今は雑誌を盛り上げる事を考えることにした。


「ということで姉さん、自分はゲームチャンピオンの方に行くから」

「うん、今までありがとう弟」

 フィルトナとも雑誌的な面でしばらくの別れ、たくっちスノーは彼女にだけは前もって報告していた、フィルトナはときめきジャンプに興味を持ってたが移籍は許されなかった。

「雑誌を新しく作ると言っても私達みたいに1から探し直しなんでしょ?」

「出版局の知名度は自分達以上だ、ネオジャンプの時とは訳も違うし彼奴等以外にも職員はいるエリート集団、問題は仕事とはいえ監理局のあの二人が馴染めるかだ……ぶっちゃけそういうコミュ力でミリィとポチを選んだのもある」

「ああ……あのハリネズミ君達、人と仲良くするって苦手そうよね」

 この時は漫画家と編集者ではなく姉弟として話をしている、たくっちスノーの方はゲームチャンピオンに行くだけに何も変わらないので余裕そうだ。
 あの時坂口と出会い時空出版局と話す機会を得られたのは大きな転換点だと思っている、ここで話を広げて良い印象を得たことでときめきジャンプの編集者に混ざることが出来た。
 もし仲良くなれなかったらときめきジャンプはネオジャンプの敵として根本から叩き潰されて終わっていたかもしれない、自分達は優れていると思っているがどんどん追い抜かされていることに副局長として焦りを感じなくてはならない。
 ただしときめきジャンプも一枚岩で済むとは思っていない、恋愛漫画オンリーだとどうしても避けられない問題がある。

「姉さんさ、前にネオジャンプで連載されてたフラッシュモブって漫画覚えてる?」

「あったわねぇそんなの、目立ちたがり屋の主人公が派手で強制的なことにトラウマのある女の子を好きになって無理矢理自分の雰囲気に混ぜようとしたやつ……」

 あの漫画は全2巻で終わったというか終わらざるを得なかった。
 作者自身にトラブルが起きたわけでも炎上騒ぎでもない、ただたくっちスノーがわかるのは突然続けられなくなった、どう描いても真っ白になって物語にならないという。
 監理局権限でたくっちスノーが調査したのとそれまでの話の流れから秘密裏に結論付けたことは、ヒロインが作中世界から逃亡を図り別世界へ失踪。
 ヒロインを失った恋愛漫画は話を続けられなくなり、漫画として終わらざるを得なくなった。

 漫画である以上にキャラクター達も実際に生きている、味方がいないと分かれば関わらない選択も出来る。
 その主人公には悪いがその世界が『大勢の雰囲気に流されないほうが悪い』みたいなノリだったのがよくなかったのだ。

「あの作者は何が悪いのかその時分かってなかったが、ネットの意見見て主人公がボロクソに言われてるの見て、まるで自分が罵倒されてるように感じたって生きた心地しなかったそうだ」

「キャラクターの常識は作者の常識だものね、その人からすれば自分の中の当たり前が間違ってたと指摘されるのも同じよ」

 編集の常識に合わせて漫画を用意して選んでいる、出版局ならその辺りは自分たちよりプロとはいえ扱いには不安が残る、ミリィは良くも悪くも影響を受けやすいので変なことにならないといいのだが……それに坂口からときめきジャンプの編集者として選ばれた人物は中々曲者揃いだと聞かされている。

「バチクソ不安になってくる、大丈夫かなミリィ」

「貴方って結構過保護が……いえ、なんでもないわ」

 フィルトナはたくっちスノーに言おうとしたことを押し黙る、彼の誰かへの思いは自分の反面……黒影が自分にしてほしいことを善意としているようにたくっちスノーもまた……そう考えると姉として見ていられなかった。
 フィルトナはお姉ちゃんと呼ばせてを描くようになってからお姉ちゃんらしくなるために料理を始めた、たくっちスノーに特製のペパロニピザを振る舞い、もう少しここに居てくれないかと甘える。
 自分が弟に甘えたいだけだと言い聞かせるように。



「もしもし?実はミリィ達が黒影からスパイ作戦を頼まれてさぁ、抜けちゃう」

「出版局へのスパイ活動か……メイならやりそうなことだな、少し抜けが出るがなんとか挽回してみる」

「いやちょっと待てよお前……は?お前も抜けんの?殺ゾ」
最終更新:2025年03月23日 20:14