ジャンプなめるな

 そんなこんなありつつも始まった黒影主導のネオジャンプ再起計画。
 メイドウィンは超乗り気にネオジャンプを確認して何をするべきか考える、多くの人々が忘れかけていそうだが編集長は彼である。
 G-rokシステムも存分に活用して本を作っていくが、メイドウィンはいきなり壁に差し掛かった。

たくっちスノー、ネオジャンプが人気になるために必要なことは何だと思う?」

「うーん編集者が出しゃばりすぎないことかなー」

「そう、宣伝だよ!考えてみれば俺達もうこれだけやってるのに宣伝のこと全然頭に入れてなかっただろ?」

 ネオジャンプの宣伝に関してはたくっちスノーからすれば充分な気はしていた、サイトは定期的に更新しているしSNSも使っている。
 その点に関していえばポチがずっと頑張っているので特別何かをするべきとも思っていなかったのだが……。

「宣伝なんてもう結構やってるでしょウチは」

「それでも売れてないってことは頑張りが足りないということ!なので俺頑張っちゃいます!たくっちスノーの発明品の力も借りてね!」

メイドウィンはガラクタの山から使えそうなものを1つ片手で取り出す、中にはハチャメチャに重たいものもあるはずだが軽々しくと掴んでお面を持ってくる。

「これなんだっけ?」

「ねじこみコラ仮面……お面をはめて念じるとアイコラみたいに色んな物に自分の顔面を貼り付けられる、お遊びで作った発明品だよ……それをどうするの?」

「まずネオジャンプの表紙をキャラクターの上から全部俺の顔にして存在をアピール!」

「自己顕示欲がスゲェ」

「……通常版と別で電子で発売することにしよう」

 たくっちスノーら慣れた手つきでメイドウィンのアイデアを軽くあしらって大事にしないようにする、分身は多くてもメイドウィンは1人だけなのでどんなことをするのかはリアルタイムで把握できる、自分達に出来ることはなるべくめんどくさい方向にメイドウィンが暴走しないように誘導することである。

「そういえばEXE、今のネオジャンプの作風って自分が居た頃と全然違うんだったな?」

「そうだ、現在ネオジャンプの作者は描き始めたばかりのルーキーが多い……出版局作品の物と比べて判断が易しいという風評が出来ていることにある」

EXEはたくっちスノーが来るまでの間不慣れな作者達にも優しい雑誌として売り出して手厚く作者達を応援していった、その結果はなんとか募り成長してネオジャンプを出て出版局で書いても応援や連絡が届くこともあるという。
 たくっちスノーは話を聞いて現在もルーキーに優しくお試しの場として慣れる事を目指す雑誌路線で行こうと計画を立てるがそこにメイドウィンが横槍を入れる。

「いっそのこと下手くそでも一瞬で大物になれるゼミっちゃう雑誌として売り出すんだよ!」

「はあ!?そんな怪しい商法の本みたいなの皆疑って近づかないだろ!?」

「しかし良いアイデアかもしれんぞ、漫画のスキルをすぐ磨いてプロ級になれるなんて教材みたいだしジャンプという後ろ盾もある」

「……で、どうやってプロ級まで大成長させるんスか?そんなの出来るなら俺達だって大物漫画家になれてるんじゃないスかね」

「毎週俺がマンガの作り方講座開くとかどう?」

「ポチの案も良いけどもう少し上手くなった実感があって尚且つ手っ取り早いやり方を求めてるはずだ、ここは俺が!」

 メイドウィンはまたしてもガラクタから発明品を取り出して二刀流のように振る舞う、更に取り出してきたのはボールペンのような発明品、更にどんどん発明品を取り出す。

プロットボールペン自動添削機能付きか、書きたいネタが軽く一捻りするだけで起承転結まで綺麗に書けるやつだ……でも前に言ったろ、発明品は便利だがどれだけ使ってもマンガ一本作れない」

「でも俺がいるじゃない!脚本はなんとかなったからマンガの絵を俺の力でどう成長させるかにかかってるわけだね、やる気出てきたよ!」

「でもお前、まんがタイムつばめはあの始末だったじゃ」

 都合の悪いことを言ったたくっちスノーは黙らしてネオジャンプは作者大成長計画をホワイトボードに書き殴り一番の魅力に変えようとする。
 ネオジャンプに入るだけで大物級になれる、本当にそんなことになれば唯一性もあり人気も上がりそうだが……ずっと見てきたミリィからすれば別の課題がある。

「局長、確かにそれが成功したら凄いことだと思うけど……俺達には見過ごせない大事な問題があります、それは信頼です」

 ネオジャンプ並びに時空監理局はジャンプも巻き込んだ数々の問題を起こし、もう現在になってくるとネオジャンプが今後何をするか面白半分で期待されるというある意味酷い立場にある、どんなにネオジャンプの方から素敵なアプローチを行っても本気にしてもらえないのではないか?ミリィはそう考えている。
 監理は一種のオオカミ少年だ、ただ暇潰しで迷惑をかけているのではなく喜んでもらいたくて地獄みたいなサプライズを嫌でも与えてくる。

「凄いことをしても信じられないってこと?」

「いいえ、凄いことは認めても面倒なことになりそうだから巻き込まれたくないみたいなものです」

「なるほど、確かに俺達をよく表している評価と言えるね……プロになった上でちゃんと安全を保証してほしいと?」

「安全の保証とか企業としては当然のことなんだけどな……」

 ネオジャンプの次の課題は用意した企画をちゃんと信用してくれて人が集まってくれるかどうか、一度失ったものを再度取り戻すのは至難の業と言われているのでちょっとの神の善意や浅知恵では突破することは出来ないだろう。
 たくっちスノー達としては地道な手段というものをメイドウィンは好まないのであっという間に皆大好きハッピーみたいなものを不本意だが考えなくてはならないが、ここを解決しないことには売れるどころではない。

「たくっちスノー、なんかこう色んな人が大好きー!ってメロメロになっちゃうような発明品ってないの?」

「そんなもんあったら自分は監理局抜け出して今ごろ世界征服してるよ」

 たくっちスノーはこうは言ってるが好奇心で山のように作っているタイプなのでなにか使えそうな発明品でもないかと探っていると面白そうな物が出てきた、デッサン人形という如何にもマンガを作るのに相応しそうな物が出てきた。

「ああ、それはマネジメントウルトラ人形……セールス番組聞いた時に商品をなんでも褒めてくれるんだなーと思って似たようなの作ってみたんだよな、正直適当なものセールスさせて遊ぶぐらいしか思いつかなかったよ」

 たくっちスノーは気まぐれで思いついたら一直線なのでこんなオモチャみたいなものも作る、もちろん山のように並んでいる発明品は皆マンガを作る上で何か役に立つだろうという意思のもとに作られてはいる。

 しかし一定の方向からしか詰められておらず色んな可能性に気づくことは出来なかった、バリエーションのなさから色んなプロジェクトを並行して進めることができないので共存させる為の機能もまだ付けてない。

「この人形にマンガを書かせることって出来る?」

「ああ……それか、それは出来ないけどなんかアシスタント用の発明品も作ってたっけなぁ……どこやったっけ」

 ミリィはデッサン人形を1つ手にとってみるが本当にただの人の形をしただけのオモチャでこれといって特徴はない、たくっちスノーは何か言いたそうに一緒になって製作品の山から使えそうなものを探す、マンガ関連で便利な物は作ったが周囲から雑誌や監理局の信頼を得るというのは想定外だったので困っていたが、今探すより作ってきたほうが早いという結論になり副局長室に向かっていく。

 改めて残された4人とメイドウィンはネオジャンプを時空漫画雑誌の頂点にする上で信頼を得た上で人気の作品にするにはどうするか考えていくが、地道な方法しか浮かはず口に出せない。

「人気以前に落ちていく売り上げをなんとかしないと、売れないっていうのはここで描いてくれる作者さんのモチベにも関わるよって感じ」

「そういえばポチってネオジャンプ作者と今でも仲良いんだよね、描いてる人からすれば今の待遇って不満なのかな?」

「まだ今の所は問題ない感じだよ、アンケートはちゃんと出されてるしネットでも評価は貰ってるけど、この下落していく勢いが止まらなかったらどうなることやら……」

 残された面々が悩んでいると1つの可能性に思い至る、こういう時こそG-lokシステムの出番だ。
 何か困った時はアイデアを出してもらえばいいとメイドウィンはたくっちスノーの所に向かおうとするがポチが自分が行くからもっと色々アイデア考えておいてとポチが副局長室へと向かう。
 たくっちスノーが目覚まし時計を抱えて何か変なものを作っているそばで、ポチはG-lokシステムを起動して時空最高峰の人工知能とのチャット機能を立ち上げる。
 聞くことは1つ……もちろん監理局がどうやって信用を得られるか、ただし質問の仕方は少し工夫する。

 「G-lok、シャドー・メイドウィン・黒影が時空監理局並びにネオジャンプの評価を上げるために取りそうな手段を考えて」

『ロックオン』

 ポチが指示をするとシステムは1秒にも満たない速さで質問の答えを考えて大量の文字にして出力する、データが消えないように自動印刷機能も備わっており紙で見たい人にも安心。
 ポチは次々と質問を追加したり別の方向性で質問を行い、とにかく最悪の想定を考えた……信用されることではなく、どんな地雷をメイドウィンが踏み抜けるかという想定を何パターンも考えて対策を考える。

「凄く賢い人工知能だよね、局長さんのやりそうなことまで分かるなんて」

リアルワールドの奴の一万倍は賢くしてやったからな、これ作るの凄い苦労したよ……まぁその分存分に働いてもらうがな!」

 たくっちスノー達としてはメイドウィンが何をするかの方が大事、事前に止められることであれは前もって潰しておきたい。
 ……分身との記憶共有もして分かったことは新事業には2つの工程が存在する、まず最初に事業を初めて5人それぞれの得意分野で発展させながら仲間を増やしていく実行の段階……そしてその後に黒影が介入して余計なことをしてこれまでの頑張りを全て無駄にしてしまう、通称『接待』……それも時空の命運を決めるほどの大規模なご機嫌取り。
 もう口で言って止められるものではないので自分達に出来ることはどこまでストッパーになれるかにかかっている。
 恐らく他の分身たちも既に殆どが接待の段階に入っているだろう、新事業がどうとか頑張ってきたがここで全部無駄になることも覚悟しなくてはならない。

「あっそうだ!俺良いアイデア思いついた!」

 ポチが思考実験を繰り返していく内に1つメイドウィンをある程度自由にさせても問題ない上に信頼を得られそうな慈善事業を思いつく、システムに実験を行いたくっちスノーにも見てもらった上で黒影に提出することにした。


「それで、俺にやってほしいことってこれなの?」

「ああ、黒影局長には漫画の舞台となる世界の治安維持を頼みたいんだ」

 ポチが考えついた秘策は彼を上手くコントロールして時空犯罪者の抑制に使うこと。
 漫画を元にはじまりの書が生まれ、そこから世界が出来ている以上その作品は実在して時空犯罪者もあちこちにいる。
 時空犯罪者が暴れれば漫画にも悪影響を及ぼしてしまうこともありえるのだ、リアルワールドでも確認されるほど深刻なもので例えると『パジャマな彼女』に出てきたアレとか。

「時空犯罪者が俺達の漫画にも邪魔してくるからなんとかして、安全性を確保すれば監理局の凄さを示した上で作者さんも安心して漫画を描けるってことね!」

「さらに名作には聖地巡礼って概念もあってね……ドラゴンボールやワンピースの世界へ旅行に行く人も珍しくないから……」

「おお!市民の安全を守りつつツアー会社からも感謝されるってわけか!最高だね!」

「本当にそれで上手くいくんスかね……時空犯罪者だけじゃなくてオブリビオンだっているのに」

 「オブリビオンならなおさら得意だから大丈夫!昔からよく倒していたしね!」

 口で言うだけなら簡単だが、この作戦は非常に困難で窮屈なスケジュールとなる。
 少年ジャンプだけでも10種類以上……いや、これはあくまで『現在連載している作品』のことである。
 ジャンプはリアルワールドでも50年以上の歴史がある、そこから完結した作品まで含めて更にジャンプラ、ヤングジャンプ、最強ジャンプ、Vジャンプ……そしてネオジャンプでこれまで拾ってきた作品をすべて含めると3桁なんて余裕で超える。
 そこに蔓延るオブリビオンと時空犯罪者をなんとかするなんて誰もやりたがらない、どんなに金を積まれてもメリットが大きくても。
 ……しかしこの男は、そういった誰もやりたがらない仕事を進んで行い人々に感謝されるのが大好きであり、それでいてやり遂げる技量の持ち主である。
 既にオブリビオンのリストを確認していた、どんなに忙しくても殆ど相手をするのはオブリビオンだからだ。

 「ミリィに問題だ……残反、不死武士、ダークセイント……これなんだ?」

 「順番にトリコ、るろうに剣心、聖闘士星矢の世界のオブリビオンですよね?」

 「今挙げたのはほんの一例さ!G戦士に悪魔樹、陽忍に卍解獣……オブリビオンや時空犯罪者とこれから忙しくなるからね!みんなも身を引き締めた方がいいよ!」

 「えっ、俺もやるんです?」

 「当たり前だよね?俺もやるんだからさ」

 「ティーにも伝えておこう」

 この決定により、メイドウィンとたくっちスノーその部下達は大規模なオブリビオンや時空犯罪者の殲滅でも狙うかのように攻撃を仕掛けていく。
 ネオジャンプの知名度改善と信用復活を兼ねた計画だったが、1日も掛からずその規模はジャンプ以上にまで及んだ。
 当然ながら他の分身達やその他事業達の関係者にも知られる形となってしまい各地で想定外の混乱を招くことになる。
 そしてそのカオスな戦いと抑止の繰り返しは後に『時空掃討戦』と呼ばれるようになるが、それは別の話。
 そして現在たくっちスノーはというと。

「え?時空犯罪者狩りするからリストまとめろって?一応漫画雑誌の為の信用なんだけどなぁ」

 文句を言いながらも特盟にハッキングをしかけてリストをまとめるたくっちスノー。
 新時代によって時空犯罪者の数も馬鹿にならなくなってきたので危険人物を指名手配リストにして絞り込むことにしたのだ、監理局の狙いはその逆で目立ちすぎないようにリストに含まれないようなしょぼい時空犯罪者を狩ること、あっという間に印刷して各自に提供していく。

「とりあえずよっぽどの事が無い限りはここに描いてあるやつは避けといて、あと時空監獄で任務やってる分身もいるからそこら辺気をつけて」

 資料をまとめた後にたくっちスノーはG-rokシステムの状態を確認する、案の定メイドウィンの使用履歴が多く様々な『もしも』が並行世界として召喚しようとした痕跡が遺されている。
 どれもこれも面白い可能性ではあるが『本物』と対峙してしまったらと……。
 それはそれとしてマンガのこともしっかり考えなくてはならない。

 ◇

「いやーすみません、こういう事がありましたので出版局に行けるか怪しくなりました」

「……そう、気にしないで」

 ポチはときめきジャンプに居られるか怪しくなったことをルーシアに報告する、最近は飲食店で会うのも大変なのでバカ5人は揃って自炊を始めてルーシアに炒飯を置く。

「がっつりしたものが好きなんだよね、漫画描くならエネルギー付けないとさ」

「……貴方が女性に料理振る舞うと……変な薬とか入れてそうね……」

「心外だなぁ、そりゃニンニクとかは入れるしスッポン料理とかラッコ鍋とか精力が付いたりするものは得意だけど媚薬を料理に仕込んだりしないよ、俺が食べるものでもあるんだし」

 炒飯を食べながら今後、時空出版局や猟兵から見て時空雑誌をどうするか考えていく2人。
 既にフィルトナにはたくっちスノーを通して話してあるので後はルーシアにどう伝えて、どのような結論を出すかである。

「……今更だけど、貴方達のやってることって……もう漫画とか関係なくなってきているわね……」

「それはまぁ今更って感じはするよね……俺も最近は余裕なくなって漫画描くネタ尽きそうになってきてるよ……」

「……原稿落としたこと無いくせに」

「ははは、ギリギリ趣味としてついていけるぐらいだからね」

 ルーシアはめちゃくちゃ警戒した動きで炒飯を食べるがニンニクが多いくらいで本当に怪しい薬とかは入っていない、しかし少しでも発情の気を見せたら襲ってきそうなのでユーベルコードを見せつけて牽制する。
 ポチは仕方ないと思いつつも、俺ってそんなに変態と思われてるのかなと泣きながら炒飯を食べる。
 マガイモノは涙が出ないので比喩表現である。

「あのねルーシアちゃん、俺色んなジャンル手掛けてるけど結構純愛派なの、そんな無理矢理っていうのは社会的にもまずいわけ、監理局そこ誤魔化してくれないからね」

「……じゃあ、貴方の分身もそういうことしないって……保証できる?」

「いやそれで言ったらさ!俺以外のほうがだいぶ乱れてるからね!たくっちスノーは性別ないけど貞操ないから食う時は食うし!ミリィは食われてるし!田所くんはもう存在そのものがポルノだし!下手したら俺EXEくんの次に清純ってバグ状態よ!?」
最終更新:2025年04月22日 21:15