「うーい、次の問題……『鬼滅の刃』に登場する
オブリビオンを答えよ」
「角付……明日はこれを5体も倒さないといけないから黒影よろしく」
「あいさー!」
ここは
時空監理局のネオジャンプ編集部の部屋、しかし漫画を良くしたいとか雑誌を発展させるアイデアを考えてるわけでもなくオブリビオンや
時空犯罪者を自警で討伐して自分達はこんなにも信用できるとアピールしている段階である。
……黒影はノリノリで応じているが実際は好き放題させないための方便であり本当に危ない時以外は積極的に狩りをしているわけでもない。
たくっちスノー達はこの間に真面目にネオジャンプを1位ということにして満足させるにはどうすればいいか考えていた。
「信用を得るって形で黒影は納得させたが、頼まれてもいないのに武力行為ってめっちゃ野蛮人だよな」
「その為にリストには載ってないようなしょぼい奴だけ倒せって指示したんでしょ?まあ黒影局長が素直に守るわけがないって思う気持ちは分かるけどさ」
「それにオブリビオンはともかく犯罪者だってゴロゴロいるわけでもないからなぁ……新聞見た?」
「見た見た、というか出版局が作ってるから俺は一足早く教えてもらえるよ」
ミリィは出版局から貰って来た時空全土に出版する新聞の数々を見せる、一面を飾っているのは大体黒影の姿。
時空犯罪者を捕まえて意気揚々と写真に写る彼の姿、これも勝手な行動をしていないか監視するためのものであり宣伝なようで扱いは動物に等しい。
記事の内容は突然の自警行為に困惑していたり、いい人アピールが露骨すぎて逆に面白いという態度であるが、黒影はこういう所でポジティブなので好意的に受け入れてることだろう。
「一応犯罪者倒してるから良いはずなんだけど、なんか不安になるなぁ……」
◇
「あなた……AUって知ってる?」
「オルタネイト・ユニバースのことでしょ?要はパラレルワールド、あの地下世界のゲームで有名な単語よね」
ルーシアと
フィルトナはすっかり二人で飲んだり食べたりする仲になっていた、ポチやたくっちスノーを通した作者仲も増えたが一番絡みが多いのがこの2人。
「私の知人……今、ユメミファイナンスってところにいて色々話を聞けるけど……最近、そういうパラレルワールドの話を聞くのよ……」
ルーシアはメモを渡してフィルトナに見せる、様々な世界が時には細かく、あるいは全く別物のような変わっていたという目撃情報。
まるでドラえもんの『もしもボックス』のように可能性を試した別次元がリアルに目の前に映るが、何の影響も与えていない……というのも今のうちだけだろう。
「G-rokシステムは今でも彼の手で進化させられている、私達猟兵は元になった世界が古いからシステムの影響は受けないけど……」
「覚悟したほうが良さそうね……まあひとまずはネオジャンプを1位にするための方法なんだけど」
結局の所漫画雑誌の人気は自分達漫画家にかかっている、ルーシアもネオジャンプに移籍して二人で看板漫画を作成して一気に人気を跳ね上げようとするが簡単に名作が作れるなら苦労しない、ネタ稼ぎの為に一狩りしたりポチのプライベートルームに泊まり込んだりしていた。
ゴミ捨て場になっているだけはあり面白いものも色々あるので飽きない。
「エロいものはないのね」
「止まる前に一通り回収されたって……聞いたけど……それで尚このゴチャゴチャ加減なのね……さすが監理局のゴミ捨て場……ミリィ達はよくこんな所で……過ごせるわね……」
ルーシアとフィルトナによる合作は初めて時空を舞台にした世界分類のどれにも当てはまらない大規模な作品になる。
その為に数々の設定や世界検証が必要になってくるので、『もしも』が描かれるパラレルワールドの情報は積極的に集めておきたい……前もってネタをパクられたなんてことにならないためにも。
「ところで……フィルトナ、貴方って……今だから言うけど……どうなの?男とか……」
「ルーシアちゃんってそういうこと興味あるの?モテないのに」
「怒る」
「冗漫だって……ないかな、たくっちスノーは弟だし、それ以外と仲良くなる気もしなくて……」
「……そう、私も正直なところ、ポチっていけそうじやないのかな……と考えたけど……やっぱりダメ……」
「…………その、ルーシアちゃん?その質問の意図を……聞きたいんだけどなー?」
「……時空で一番というインパクトを残すには、これくらいやらないと……ダメ……フィルトナ、私たちは合作で……ToLOVEるんだよ……!!」
「え!?ちょ、ちょっと待ってルーシアちゃん!?承認欲求漏れてない!?それちょっとまずいってルーシアちゃん聞いてっ!!アーーーッ!!」
◇
「ということになり私はルーシアちゃんとToLOVEってトライアングルな漫画を描くことになったの……」
「どういう流れだよ姉さん!?」
数時間後、服を色々ビリビリにひん剥かれて泣きそうになってるフィルトナを慰めながら副局長室で話を聞くたくっちスノー。
しばらく見ていない内にネオジャンプにとんでもないものが連載されそうになっていたので思った以上の冷や汗物、あとポチの差し金だと思ったので結論から言うと彼はめちゃくちゃ殴られ損な目にあったのてお詫びとしてゲームソフトを一本与えた。
「……まさか監理局と無関係な所で爆弾があったとはな、あの人承認欲求を抑え込んでると聞くが」
「どうやらルーシアちゃん……漫画が売れなかったりで焦るとちょっと承認欲求が漏れて安易にお色気要素に走って人気出そうとするみたいなの……これでもまだ全然耐えてる方でこれみたいだけど」
「完全に呑み込まれたらどうなるんだよ恐ろしいな……あの人一応猟兵なんだよな……?」
ドン引きしながらも落ち着いてお茶を啜り、このマンガどうすればいいんだと編集者として考える。
承認欲求に呑まれたルーシアは黒影と違って話して分かるような相手でもないし、これがダメなら代替案を一緒に考えろというのは目に見えているのでネタを絞ってみるが自分も思いつかないのでゴチャゴチャ言えない。
「ちなみにだ姉さん、どんなマンガを書く予定なんだ?時空規模のすげー大作なのはポチから聞いているけど」
「G-ockシステムを参考にして主人公とは別の並行世界の自分自身が沢山集まるコメディものよ」
「なるほど、ジャパニーズの主人公だけどもしも世界観がドラゴンファンタジーだったり性別が違ったり……漫画作品の登場人物全てが同一存在というのは面白い試みかもしれないな……それがお色気路線に一気に走ってどうなるわけ」
「そんなの私が一番聞きたいくらいよ!はあ……私ここまで頑張ったけどエッチな展開なんて描いたことないのにどうしたら……」
「もう諦めてToLOVEる参考にするしか……といっても昨今のアレ厳しいってポチの件でだいぶ理解してるからな……」
まだポチのアダルトな物が一斉検挙されたことが記憶に新しい、
リアルワールドでもToLOVEるなアレは危ないというのにポチはまだ細々とこっそりと作っている、そういえば時空出版局でエロ雑誌を作ろうとしていたとも聞いたが、彼の性欲への忠実さとパワフルさは追いつけない時がある。
もし仮にエロい要素を黒影にも見つからない所に隠していたとしたら、それはそれでとんでもない才能だ。
「そういえばたくっちスノーって……最悪の犯罪者と言われるわりには性犯罪の履歴ってないのね」
「そりゃ僕からすれば何が楽しいのかよく分からないし、
マガイモノに生殖行為は不要だからね」
「ふーん……やれなくはないんだ」
「えっちょっとねえなんで鍵するの姉さん」
「コレは実験……マンガのネタにするためと検証の為の実験、リアリティの為だからお姉ちゃんの犠牲になって」
「いやまずいってこういう要素が露骨に増えるのはアーッ!!」
連鎖反応、ルーシアはフィルトナを食ってフィルトナはたくっちスノーを食った。
たくっちスノーは基本食われる側なのでここで止まる、多分分身たちもたくっちスノーとミリィは食われている所が何かしらあるだろう。
残念ながらポチは誰一人としてない、現実は非情であるが異常の察しの良さで同僚が大人の階段を登ったのを感じ取った……!
「今なんとなくたくっちスノーがエッチなことしてる気がする!……あっ、分身達絶対負けてるな!」
◇
「たくっちスノー、なんで泣きそうな顔してるの?」
「女の子って獣になると怖いんだな、黒影……」
しばらくして何かあったたくっちスノーは若干雰囲気が白くなって震えながら黒影にネオジャンプでフィルトナとルーシアが看板漫画を作ろうとしていることを報告する、G-ockシステムを応用したパラレルワールドのネタを考えているらしく並行世界も各地に広まるのも時間の問題だろう。
元はナタが1人だけ視認できる技だったのが、いよいよまずいことに。
「黒影……システムを作った自分が言えたことでもないがこのネタが各地に広まるのは少々まずいんじゃないのか?」
「そうかな?普段と違う自分が見えるって面白くない?それに今はたくっちスノーがそばにいないとVR映像みたいになるんでしょ?」
たくっちスノーもまさかG-rokシステムがこんなに急速に時空に影響を与えるとは思ってなかったがこの体ではひとまず時空ナンバーワンのマンガ雑誌を作ることを考えることにしよう。
今更色んな意味で止められる気もしないので後はあのマンガをコントロールして人気を広げていくのみだ。
「後は看板予定の作品以外のことなんだけど……こいつらもレベルアップさせたい」
「その為のあっという間に成長できる制作方針だよね!」
ネオジャンプはアマチュアが多いので黒影斗たくっちスノーはいち早くプロ級レベルまで成長出来るゼミ系雑誌として売っていくことを考えているが、言うだけ言ってみたものの上手くいく感じがしない。
これが成功すると宣伝させるには実際にアマチュアを大成長させておきたいが昔と今では事情や立場も異なり監理局に来てまでこの商法を信じようとする人は中々いない、確実に成功させておきたいのに実験が上手くいかない。
こればかりはG-rokシステムの推測にも頼れないので実物データが欲しいのだが……。
「んでも実際どうする?あっという間に漫画が上手くなる方法なんてあったら革命的だけどだからこそ難しいぞ」
「そういうので結果出してこそ時空監理局!」
「簡単に言ってくれるな……まぁ気合入れていかないとって気持ちはあるから二人でなんとかしていくぞ」
局長と副局長が2人がかりで仕事なんて珍しいことなのでたくっちスノーも気合が入るがスキル向上を瞬時に解決する方法なんて……特に絵柄。
プロの絵描きによる絵が上達しやすくなる方法やコツを掴む教材などは既に存在しているが黒影はより上のクオリティを期待している。
どうすれば一気に成長するのか……。
「自分、素の絵はあんまり上手くないんだよな……一気に上達してぇものだよ自分だって」
「あっ、それなら俺いいアイデアがあるよ!」
「黒影のいいアイデアって大体信用できないけどまあ聞くだけ聞いてみるか」
◇
「……ルーシアちゃん、だいぶケダモノだったわ」
「……実に弟に対して……ケダモノだったやつに……言われたくないわ……」
「なんというかある意味リミッター外れた感あって楽しくなってきた、まあ俺のせいもちょっとあると思うけど」
「ええ?」
二人の話を聞きながら酒のつまみにして炒飯を食べていたポチに物凄い形相で詰め寄る、いくらなんでも女同士や姉弟なんておかしいと本人達も分かっていたようだがユーベルコードで軽く痛めつけて問い詰めた結果ポチはゲロった。
「じ……実は……たくっちスノーがG-rokシステムを作った少し前くらいに俺も『なんか時空間で定期的にエッチな流れになるシステム(仮称)』が出来ちゃって起動したら無くしちゃったんだ……」
つまりは唐突に時空や物語の中であはんうふんで合体したりセクシーな展開に強制的になったりたくっちスノーやミリィの貞操が一大事だったのはポチのせいらしい。
だがポチは今のところ被害ゼロなので時空からすればとんだとばっちりである、恐らく他の分身達や全ての世界で
「いや違うんだって、俺は見たいだけで直接とかそういう趣味はなくてね本当に」
「……なんで……黙ってたの……?」
「まさか本当に出来ると思わなかったし怒られて借金が増えると思ったんだよ〜!!」
「貴方のせいで時空各地で絆創合体よ!!」
「たくっちスノーにはすまねえと言っていてくれ……」
「悟空みたいにカッコつけてもダメ!どうするのよ!もうこれ人気ナンバーワンの雑誌どころじゃないでしょ!?」
「でもほら!これによって少しずつアハンウフンも自然な物になっていってお色気作品でも受け入れられる作品になるから!」
「そういう問題じゃないでしょ!この間からのオブリビオン狩りとかG-rokシステムとか貴方の件とか……冷静に考えなくても監理局が首を突っ込んだせい時空がどんどん酷くなってるような気がするんだけど!」
「記者会見じゃ……無視できない領域よ……」
実際フィルトナの言う通り、新事業を始めてから時空は発展していくどころかどんどん厄介なことばかり浮き彫りになっていき監理局はついていくどころかどんどん溝が出来ている気がする。
時空監理局がいつか潰れるかもしれないとたくっちスノーも焦るが、今の時代そもそも監理局に需要がないのかもしれないと考えることもあるという。
もしこの流れが続くようであればいよいよ監理局はおしまい!になりかねないし、ネオジャンプの目的であるナンバーワンなんてとても目指すことは出来ない。
「うーーんまずいぞ……こんな調子では目的を果たせなくなっちゃう……1位どころか最悪発禁になってしまう……」
「私……なんでお色気作品にしようと考えたんだろ……今さら修正出来ないくらい描いちゃった……」
賢者タイムに入ったルーシアは我に返ってみるとジャンプに出していいものかコレ?となっているが作り直す時間もないのでこのまま通すしかない、面白さを度外視している深夜テンションなので正気で描くのは苦しい。
「売れない……なんで私はこんな……軽はずみにこんなの受け入れてしまって……」
「ルーシアちゃんがまた承認欲求に支配されそうになってる……!」
「うーん……前も後ろも問題だらけだ、たくっちスノーにどう伝えたらいいんだ、まああっという間にマンガが上手くなるに比べたらまだハードルとしては楽な方かもしれないけど」
「……それどういう意味?」
「あれ、もしかして知らない?」
ポチはルーシア達にネオジャンプの新しい方針としてあっという間にアマチュアでもプロ級の腕前になれるような雑誌に変えたいと決めたことを話すとフィルトナはなんとも言えないような顔をする、プロの漫画家から見ても無茶振りでめちゃくちゃとしか思えない作戦のようだ。
「それ……あまりにも胡散臭いわ……どんなに信頼のある組織でも素直に受け入れていいものか怪しくない……?」
「読んで参考にするだけで急にマンガ上手くなったら喜びより先に恐怖が勝つわ……私自身めちゃくちゃな所からここまで来ただけにそう思う」
「酷い言われようだなあ……」
ポチはルーシア以外にも知り合いにはこっそり漏らしているが、そのどれもがあまり良い意見を貰っていない。
黒影に話したら僻みとか言われそうなので報告しないが怪しいとか信じられないを通り越して人間業ではない、それが出来たとしたら神業を通り越して洗脳や改造を疑ってしまうという。
たくっちスノー達も明確な案が思いついてない辺り出来る出来ないじゃなくてありえないを理解してない考えなしではないのか?と思われてもしょうがないと思う。
「じゃあ百歩譲ってさ、実際にたくっちスノー達が思いついて成功して新人さんがワンピースみたいなの描き始めたらどう思う?」
「脳みそ引っこ抜かれて入れ替えたんじゃないかと思う」
「正直……貴方達の組織って一見善良そうに見えて裏で支配しているタイプの創作の悪役みたいに思われてるわよ」
「典型的な信用のカケラもない悪役じゃん!そのまんま外道なヤツより悪質で嫌われ度が尋常じゃない……お、俺らそのレベル!?分身帰ってきたら身の振り方考えよう……」
「ポチ〜!!」
「ぎえーっ!!?」
さっきの陰口が聞かれていたのではないかと思ってボール状になりながらビビり散らかすポチ、このままシステムのことまでバレたらいよいよちいかわになってしまうのでわァ……あ……と泣きながらルーシアにドリブルされて応対する。
「アッ……いやっ……」
「何でこいつ焦ってるの?エロ本隠してたりしない?」
(エロ本よりとんでもないもの隠してはいるけどね……)
「く、黒影局長〜、心臓に悪いですよ、どうかしたんですか?」
「思いついたよ、あっという間に新人さんでも大物漫画家になれる方法」
「えっマジで!?たくっちスノーもよく思いついたね……」
「いや俺のアイデアだけど」
「えっ」
話すだけ話して黒影は去っていった、ポチは冷や汗をかきながら元の体に戻りルーシアのほうを見る。
言いたいことは一致していたが、目を合わせるだけで通じ合う。
これ、間違いなくとんでもないことになるぞ……また時空が乱れるような気がするぞと。
最終更新:2025年04月22日 21:16