シン・ロード団現る!

『私の名はロードエノルメ、マジアベーゼのエノルミータ総帥という肩書きは仮初の物に過ぎない、奴はただの操り人形で私こそが真の総帥だ』

『時は来た、マジアベーゼが時空を動かす力を手に入れ強力な仲間や技術も揃った……これより我々は行動に移す、我々の動機はただ一つ……この時空全てを征服することだ!』

 ロードエノルメ率いるシン・ロード団のメッセージが時空各地に広まっていく。
 エノルメの隣にはエアプベーゼがおり影響力を誇示するには充分な物を持っている。
 更に背後にはバツ印の顔を持つ銃士のような人物が隣に立っている、あれもシン・ロード団のメンバーらしい。

『この男はガリュード、私に忠実で優秀なハンターだ……命令1つで世界ごと皆殺しにすることも出来る、それだけではない……エノルミータ並びにシン・ロード団には私の同胞たる時空犯罪者マガイモノが数多く存在する……賢明な諸君、特にメイドウィンには私がどれだけ本気か理解している頃合いだろう』

『メイドウィンは私に忠誠を誓い世界丸ごと奴隷になることを宣言しろ、さすれば世界を滅ぼすことだけは見逃してやろう』

『お言葉ですがロード様、メイドウィンにとって世界が滅ぶことはゼロに戻るだけに過ぎません……奴らにとってはまた作ればいいだけのこと』

『ふむそれもそうか、メイドウィン達には民はそれほど価値の無い存在だったか……いや、いい方法を思いついた、メイドウィンを直接奴隷にしてしまうのだ』

『ロード様、私がもうこの方法は思いついてあります、メイドウィンを支配すればその世界はもう貴方のものです、こんな風に!』

 エアプベーゼはスポットライトを当てると2つのシルエットを映し出す。
 片方は女性だがもう片方はあまりにもデカすぎる上に特徴的すぎるので分かる人には分かる。
 彼女にメイドウィンの権限を奪われたりするわけではないが時空犯罪者に世界の命運を握られるのも同じだった。
 本当に奴隷として屈するか、直接捕まりシン・ロード団の侵攻によって支配されるかで選択肢は実質一択。

『しかしロード様、ここまで一方的では世界の皆様が可哀想ではありませんか』

『……いつからお前は私にそこまで口を挟める立場になった?だがそれもそうか……1つ、この八百万の世界の中で真っ先にある条件を呑んだ世界だけ特別に待遇を良くしてやろう、センタイリングを全て私に献上しろ、さすればその世界の住民だけは見逃してやる、私からは以上……時空に生きる他世界人が賢明であることを期待している』

 メッセージが終わった後に黒影が深刻そうな顔をして話を続ける。
 黒影もメイドウィンなので無関係ではないので無理はないが余裕がありそうにも見える。
 タブレットをしまい立ち上がって宣言する。

「これまでの時空犯罪者マジアベーゼの行いにはシン・ロード団並びにロードエノルメという黒幕がいたわけであります!時空監理局は徹底抗戦して立ち向かい時空の平和を守ることを宣言します、だから俺にどうか支持を!以上!」


 事態は急展開に突入した、遂にたくっちスノー並の時空最大規模の騒動にまで突入した。
 エノルミータ真の総帥ロードエノルメ……時空の知る人ぞ知るニュースではマジアベーゼが引きずり下ろして新総帥に成り上がっていたと聞くがまさかコレも世界征服から時空征服に乗り出す為の布石だったとは予想だにしなかった、なにせトレスマジアもその存在はあまり知っていなかった。
 ……強いてあげるなら自分達とは別で数多くの魔法少女を倒してきた『魔法少女狩り』が存在していたことは認知していたぐらいだ。
 そんなことよりも問題なのはゴジュウジャーも無関係ではなくなったことだ、シルエットか分かるのメイドウィンとはどう見えてもテガソードだ。
 深く信仰している爆神龍儀が錯乱して店をめちゃくちゃにするんじゃないかと見てみると意外なくらい落ち着いていた。

「どうした?まさか私があんな映像を見てテガソード様に何かあり一網打尽にするとでも?」

「正直に言うと私もすると思ってたけど大丈夫なの?」

「現在も我々の手にはゴジュウジャーの力が残っている、ロードエノルメが時空征服を掲げテガソード様を捕らえているならこの力は残さないはず……あの映像はフェイクだろう」

「で、でも……このままじゃ本当に世界が大変なことに……相変わらずあたし達はぽっちゃりなままだし……」

 当然ゴジュウジャーもトレスマジアもシン・ロード団を止めようと行動に移そうとしたがポチの存在も怪しむ。
 ……踏み込めば踏み込むほど時空監理局という組織が2陣営の中で信用出来なくなってきたが昔の好でサルファは一応加え入れる。

「俺のこと怪しんでる?無理もないよね立場的には……でも俺も今回の件は怪しいと思ってる」

 まずゴジュウジャーとして気になったのはロードエノルメがセンタイリングを全て欲しがったことだ。
 何故エノルメは存在を知っている?その能力や効果についても1つの世界にしか知られてないはずだがそれには答えがある。
 >この男はガリュード、私にで優秀なハンターだ。
 >俺の知り合いにリングハンターっていう凄い人がいる。
 ハンターという単語はつい最近聞いている……黒影がセンタイリングを持ってきた時にも似たようなことを言っていた、つまりシン・ロード団のガリュードはロードエノルメとは別で黒影とも繋がっているということだ。
 ガリュードに集めさせた全てのセンタイリングで吠達を釣ったのは黒影、そのリング全てはポチが密かに管理しているのですぐに持っていけるが悪の組織が素直に言う通りにしてくれるわけでもない。
 何より黒影のやることが用意周到すぎる……世界を守るために立ち向かうべきだが仕組まれてるようにしか見えない。
 問題はこのセンタイリングをどうするか、更にシン・ロード団がどこに向かうかだ、時空全土では募金を利用しても追いつけないし他世界で活動するための代金という向かい風もある。

「そうか……貴方の局長がヒーローの活動を規制したのは自分達の行動を邪魔されないためでもあったわけね」

「でもどうする?今回の件は僕らでも対処しきれない」

「ここまでの非常事態だ、テガソードも存分に協力してくれるだろう……何よりA級時空犯罪者からのこの始末、あいつが黙ってるわけがな……」

「オムライスくれよ」

「あのすみませんどう見ても今店を開ける状況じゃな……って!!」

 テガソードの里に現れたのはレオパルト、丁寧に銃を投げ渡してポチに渡すくらいに無抵抗をアピールして席に座る、さっさとオムライスくれよという態度だったので仕事として爆神はテガソード様オムライスを提供する。

「お前には聞きたいことが山ほどある」

「アタシらの立場考えろ、答えられるのは1回だけ、現在こんな事になっても敵と味方がイチャイチャしたり手を取り合うのが論外……それがベーゼちゃんの答えだ」

 こんな時でも流儀を貫き通すなんてどんな神経だと思うが、理念に大きく反する偽物が現れているからこそ自分は自分らしく振る舞おうと意思を貫こうとしている。
 レオパルトもまたそんなマジアベーゼが好きなので自分の手でエアプベーゼを根絶することを決めた。
 一方、ゴジュウジャーとトレスマジアも大事な1回で何を聞くか考えていた、シン・ロード団に繋がるものを探らなければ始まることは何もない。

「……ロードエノルメの事とロード団は2回になるか?」

「そういうことだ、聞きてえならそっちで決めろ」

「お前立場わかっとるんか?時空だとそいつらのお仲間扱いやぞ」

「アタシは元よりベーゼちゃんの味方で……お前らもアレがベーゼちゃんじゃないのは自ずと察してんだろ、ああこれは1回に含まないから」

 ゴジュウジャーとトレスマジアはじゃんけんで決めた末にロード団について聞いてみることにした。
 ここは女との会話に慣れてそうという陸王が応対することになった。

「シンってことは以前にもロード団があったんだね?」

「あったというよりはアイツが勝手に抜けて独立したのがロード団だ、つまり実際はアタシらとは無関係……といってもロコムジカとルベルブルーメは元々ロード団入ってたけどな……ロードエノルメは消息不明扱いだ」

「じゃあ前総帥を倒してマジアベーゼが成り上がったっていうのはそういう方向性の違いってことか」

「あー向こうじゃそんな風に伝わってんのか……いい年して世界征服とかしょうもないとか言ってたよベーゼちゃんは、んじゃごっそさん」

 オムライスを食べ終わったレオパルトはこれ以上話すことはないとばかりにさっさと金を出して去っていった。
 これで分かったのはロード団はエノルミータと無関係どころかロードエノルメからすればマジアベーゼは敵対していた存在、手を組もうともしないだろう。
 それどころかエノルミータは自分にとって邪魔者揃いで真の総帥なんて利用しているような言い方もせず前もって潰しておく……ポチならそうする。
 A級時空犯罪者のブランドを利用して突然台頭したなら、やはり時空監理局とのマッチポンプを疑ってしまう。
 わざわざエノルミータが無関係だということをトレスマジアに報告しに来たのも自分の内部の問題を巻き込んだことによるケジメだろうか?
 この戦い、単なる時空監理局VSシン・ロード団では済みそうにはない。
 自分達も行動に移さなくては……とも思ったが何をすればいいのか、何が出来るのか。

 しかし八方塞がりな時に手を差し伸べてこそ時空監理局、エリートバカ五人衆が分身して何人もいるのだから悪は栄えない。
 こういう時に自分が信用出来るのが副局長のたくっちスノー、監理局直属魔法少女のトレスマジアにも協力を惜しまないだろうとポチが連絡を入れようとすると荷物が届く。
 送り主は常夏熱海からであった。

「あいつが……しかも宛先はトレスマジアだ」

「嘘、あの人なんで把握してるの?」

 中に入っていたのは香水のような瓶、吠が取り出して吹きかけてみると煙に包まれてぽっちゃりしていた三人の体型はすっかり元通りになっており変身を解除しても恥ずかしくない姿に。

 「お前のライバルに借りが出来たな」

 「ああ、これから手探りでも探していくんだろ?」

 「待ちなさいよ、ここから黒影やエノルミータの動きを手探りで探すの!?世界がどれだけあってどれだけ広いと思っているのよ!?あたし達指輪の戦士だって時空規模で言えば見つけるのも困難なのに無茶言わないで……」

 「待て、一緒に地図が入ってるぞ」

 同梱された手描きの地図、住所は書かれてないが特徴などが書き記されておりまるで宝の地図だがそれほど隠したいものがあると見える。
 常夏が残した望みに賭けて一同はこの地図の場所へと向かう事にした……。


 その頃、シン・ロード団はまず最初に戦力を持たない別世界では幼児向けとされているのどかな世界にロードエノルメが自身の魔法で大量の怪物を送り込み破壊活動を行う。
 民は逃げ惑いエアプベーゼが先導して物資を奪い、ガリュードが引き金を弾いて恐怖を呼ぶ。

「いいですねぇこの感覚!この勢いなら私達が時空征服するのも遠くない未来です!」

「ロード様、この光景をネット配信させたことで既に十個の世界が降伏を発表しました」

「はっははははは!この世界のメイドウィンよ出てこい!さもなくば少しずつ国を滅ぼしていくぞ」

「やめなさいって」

 ロードエノルメの歓声を遮るように斬撃が飛び、頬を掠める。
 本物のマジアベーゼがゴジュウジャーVSトレスマジアが始まりそうな時とは若干低めな勢いで落ちてきて即座に戦闘に入る。
 改めてエアプベーゼを見るが見た目だけなら本当によく似ている、ドッペルゲンガーを見たような気分だが本質が違うと答えたレオパルトの気持ちもなんとなく理解できた。

「ま、マジアベーゼ!?ロード様なんで本物がぁ!」

「ヴェナさんが魔力からレーダー作ることくらい余裕でしたよ、元々貴方の魔力は借り物だったらしいですし」

「お……おいガリュード何を撮ってるんですか!私が2人居るってバレたら今回の作戦台無しになるじゃないですか!」

「まあいいだろう、マジアベーゼが2人居るならまとめて雇えば戦力2倍で好都合だ」

「……私から見れば久しぶりですね、てっきり私に復讐するものかと思っていましたが、頭が単純どころか面の皮が厚いとは総帥様々ですね」

「ああマジアベーゼよ、私は心が広い総帥なんだ……ちょっとのことで癇癪は起こさない、どうだ?こっちのベーゼよりもいい立場をくれてやろう、私の元で好きなように生きる気はないか?」

「ちょっとロード様!?」

「私時空征服とか興味ないので遠慮しておきます」

「もちろん相応の褒美は用意してある……聞いた所によれば魔法少女を凌辱するのが好きだったな、そんなお前に和解の印として素晴らしいプレゼントを用意している」

 エノルメが指を鳴らすとプレゼント箱が開きリボンが自然に解かれて箱が開き女の子が出てくる、かなり見覚えのある姿……トレスマジアの3人の魔法少女だ。
 ただしその顔は完全に快楽に溺れており、正義の心は完全に崩れ去ってエアプベーゼの靴を舐めていた。
 この時点でマジアベーゼの中で何かがギロチンの勢いでぷつりとキレた。

「ベーゼ……さまぁ……」

「アレはお前の偽物と同じ原理で作り出したクローンだ、本物と同じく抵抗する術は見せていたが何千倍の濃度の媚薬で薬漬けにして催眠アプリを使えば簡単にこの調子だ、アレをお前のペットにしていい、もちろんすぐにでも本物のトレスマジアを倒したらお前のものにしても構わないぞ」

「ちょっと!この子たちは私の物なんですけどロード様!」

「だまれ」

 だがその貢ぎ物が逆にマジアベーゼの逆鱗に触れた。
 完全にライン越えて怒りが限界を越えたベーゼは鞭で一瞬のうちに偽トレスマジア達を潰したが再生する。
 真っ黒な生物……前にポチで見た不老不死の生物マガイモノ、エアプベーゼも同じ技術を使っていると言っていたので同類だろう。
 気持ち悪い、こんな形で解釈違いを見せられて吐き気がする、手段も気に入らない。


「なるほど……言い得て妙ですね、名前通りのくだらないまがい物……小物の私はこんな物で悦ぶとはレオちゃんも心底がっかりしたでしょうね」

「小物!?今私を小物と言いましたか」

「顔面だけ私と同じだけの奴はちょっと黙っててください……ロードエノルメ、なるほどなるほどなるほど、改めてわかりましたよ、貴方は本当に私のことが大嫌いで……死んでほしいってことが」

「交渉決裂か……私は本当にシン・ロード団に入れば好きなように生きられるとお前を思って助言したのだが」

「もういいです……」

 これまでの作戦、これまでの戦い。
 そして否定したい偽物の為に振る舞った自我すら放り投げたくなるほどに心の底から出た初めての憎悪。
 何も楽しくないが魔力がみなぎるこの感覚は……殺意そのものだ、ある意味では悪の組織によく似合うがマゼンタ達には見せたくない。

「図に乗るのも大概にしろよ、この雌豚」

「A級時空犯罪者ともなると負け犬の遠吠えも達者だな!マジアベーゼェ!!」

 ロードエノルメは瞬く間に怪物を呼び出してマジアベーゼを包囲するがその全てが引っ張られて静止する。
 まるで蜘蛛の巣に捕まった餌のように全部取り込んで包みこまれる。

「私が星壁獣と名付けてもらったのは、遠からず貴方の後追いと思いたくない所がありました……しかし今回のこれは性癖にも反しますね、貴方の魔力を利用し反転することも合わせ、時空……並びに世界に反逆することから……」



 世反獣。

「とでも名付けましょうか」

 怒りのままに支配の鞭を覚醒させて自身を包み込むように作り出した異形の化け物、世反獣キルロード。
 それは自他共に認めるマジアベーゼらしからぬ最終兵器、禁忌にしておきたい存在だった。
 願いはただ一つ、このふざけた茶番を終わらせて黒影まで辿り着くこと。

「ガリュード、あいつを……!」

「ロード様、ここから魔法少女の反応がしたので迎撃してきます」

「くっそんな時に……仕方ない、私も行くぞ!勝ったベーゼを私の部下にしてやる」

「かしこまりました」

「えっちょっとロード様!?」

 ガリュードは銃を放って時空の渦に入りエノルメを連れて消えていくが本当に同じタイミングでトレスマジアの魔力の反応がする。

「多分世反獣もトレスマジアなら倒してくれるでしょう、私はそれでいいし時空監獄に入れられるのも悪くない……でもお前は殺す、お前のような軽はずみに簡潔に魔法少女を闇落ちさせて半端なカタルシスで壊すような奴が私として振る舞われるくらいなら、私が責任を持って殺す、喋ることも同じ顔をしているのも気に入らないから再生しない術が見つかるまで殺す、分かりますか?貴方は所詮上っ面を真似ただけのまがい物……いえ、もしかしたら私もそうなのかもしれない、けど……」

「う、う、うわあああああ!!」

「逃げるな、私達悪の組織が正義の味方相手に尻尾を巻いて逃げるな」

「せ、正義の味方……?」

「ほら、魔法少女が……本来の私達の敵が現れましたよ、マジアベーゼを潰すために」

「ひいっ」

 トレスマジアとマジアベーゼが戦ういつもの流れが始まる、世界が違ってもやることは同じ。
 ただ違うことは、今回マジアベーゼが2人居ること。
 片方は今回本気で魔法少女を倒す気でいること。

「さて、勝負しましょうか……いつもみたいにね」

「な、何を言ってるんですか貴方は……トレスマジアなんてどこにもいないじゃないですか。」

 世反獣キルロード。
 その効果は目的を果たすまでマジアベーゼに都合のいい幻覚を見せること。
最終更新:2025年04月30日 20:42