「マジアサルファ……俺にそういうことするって、専属魔法少女としての振る舞いじゃないことはわかってる?」
「ごめんね黒影、自分の方からクビにしておくから……その後釜として自分はイミタシオを推薦……」
「ダメだ、彼女はダメだ……都合が悪い」
黒影と
たくっちスノーの話についていけないアズールとゴジュウジャーだが逃げられないようにしっかりエアプベーゼ達を氷で抑え込む。
「都合が悪い?さすが黒影、こういう時に自分の都合出せるから神様っていうのは随分偉いものだ、こんな茶番もするくらいだし」
「何が言いたいの?」
「ウチから言ったる、お前のやり方が気に入れへんからマジアベーゼ同様突っかかってくるなってのが答えや……鬱陶しいんやお前は」
サルファは言うだけ言い切った、黒影相手にここまで言えるなんてよほどの命知らずかバカかと思うかもしれないが、たくっちスノーはわりと見たことがある、あの目は黒影と戦う意思が貫き通す物がする奴だ。
「君さ……ちょっと生意気だね、魔法少女っていうのは上下関係も知らないくらい世間知らずなのかな?大人しく神様の施しを受けて喜ぶべきだと思うけどな」
「自意識過剰ナンバーワンがあるとするならお前はお似合いや、自分の承認欲求満たす為にあの変態を自分のサンドバッグに仕立て上げたい奴の分際で何が施しや、お前はウチらを弱者扱いしてチート性能で見せつけて良い気になりたいだけ、んなもんうちらの世界でもマジアベーゼの前からしばきあげてきたわ」
アズールでも気付く、サルファは無謀にも
時空監理局局長にタイマンを仕掛ける気なのだ。
煽り耐性がないのか言うだけ言われた黒影はひたすら余裕ぶっているが震えており、サルファからすれば余計にそれが無様な姿に見える。
たくっちスノーにサインを送り別世界転移の準備をさせながらトドメの一言を話す。
正解か間違いかはともかく悪口というのは効いたほうが負けなのだ。
「アンタが散々自慢しているその神の力、ウチらの魔法少女みたいに借り物だったりして、その上で自分の力と勘違いしていい気になってたりしてな」
その一言で一線を越えた黒影はサルファを掴みたくっちスノーもタイミング良く別世界へアクセスして吹っ飛ばした、炭に連絡してロスト寸前の仕事した直後の廃墟に送っておいたがたくっちスノーが触れた途端
時空の渦に電撃のような感覚で跳ね返されてしまう、黒影だけが使える時空間をロックする特権だがこれを使う際には代償として血液の半分を捧げる。
これは戦いを邪魔されないようにするのと、お前にはこれくらいのハンデで充分という意思表示だ。
「サルファ!!」
「くっしまった、黒影の奴ガチで殺る気だな!?そんでもってポチに押し付ける気だ!」
「……どうする気だたくっちスノー、もうこれは私達だけの責任問題じゃないぞ♡」
イミタシオは一瞬だけだが子供らしさを感じさせない真面目な顔になり、剣を構える。
シン・ロード団をなんとかしなくてはならないがアズールとしてはサルファが気がかりだし、ゴジュウジャーも吠1人でガリュードに勝てるとは思えない。
たくっちスノーも必死に時空の渦を修復しようとしている中、イミタシオはゆっくりと近づく。
「これ全部私が相手してやるから、お前ら揃ってアイツの所に行け♡」
「え!?でも貴方は……」
「私に構ってる暇があるならとっとと行け、雑魚」
「……あいつなら大丈夫だ、大丈夫だよな?イミタシオ」
「副局長並びにA級
時空犯罪者にどこまでしごかれたと思って?」
「はは、それもそうか!!じゃあ僕もとっておきだ!!」
たくっちスノーは自分自身が変身して乗り物になり、アズールとマゼンタを乗せて直行しゴジュウジャーは中の穴から吠の所にワープした。
1人残ったイミタシオは剣を下ろし、ハート型の変身アイテムを外してわざと変身を解く。
たくっちスノーが事前に細工をしておいたので自分の周囲には配信などで映らないように認識阻害を用意してある。
「とは言うが全てが奴の自前じゃない、私がヴェナリータから逃げる時に何個か変身アイテムをくすねて、それに使用された認識阻害魔法を奴が解析しただけだ……逃げて魔法少女になるまでは想定の内だったが、ここまで奴に歪められたとは……」
「き……貴様やはり……」
「どうした?マジアベーゼも2人存在した……ならばロードエノルメも2人いて何か問題でも?それとも反応からして私がイミタシオであることがよほど都合が悪いのか?」
イミタシオの正体は……正真正銘、ロード団を結成して世界征服を目論みマジアベーゼに完膚なきまでに叩き潰されて魔力も消えてそれでもなお生きていた本物のロードエノルメだった。
「エノルメも偽物、ベーゼも偽物か……何がシン・ロード団だ、これでは時空征服も本当かどうか疑わしいな」
「そ、そっちのロード様こそ何故魔法少女の姿に!?それもあんな子供の姿なんてもう別物じゃないですか!?」
「そうだ別物だ、これはこれで都合が良いが……せっかく面白いものが見れた、アイツには悪いがシン・ロード団をこのまま私のモノにさせてもらおう」
「……はっははははは!乗っ取るだと?貴様が?本当に本物のロードエノルメだとしたら貴様の魔物召喚はヴェナリータから借りた虚構の力!ロードとしては自分の力も持たないお前に何が出来る」
「頭が高いぞ、まがい物の分際で」
本物のエノルメは偽物の心臓部分に手を突っ込むと黒い物を引っ張り出す、黒い成分が魔力で作り替えられていき大きなドラゴンに変化する。
ドラゴンはそのまま偽物に噛み付いて押し潰していく。
「な……なんだこれは!!よせ!不死身の身体のはずが、ガアアアア!!」
ドラゴンはそのまま偽物のロードエノルメを呑み込み、その姿を見たエアプベーゼは
マガイモノが死ぬ姿を初めて目撃して恐れ慄き膝から崩れ落ちる。
「別世界の言葉らしいが作り方を知る事は壊し方も知っている事になるそうだな、同じ成分を元にすれば確実にそのマガイモノを殺せる上位互換を作れる……奴にはまだ隠しておくとっておきだ」
「ろ、ロード様……お許しください、あっそうだ!どのみち私からすればどのロード様でも同じですし!私がエノルミータ総帥になったら操り人形として貴方の言う通りにして……」
「近寄るな」
必死に命乞いをして靴を舐めるエアプベーゼを蹴り飛ばす。
マジアベーゼが魔法少女を愛して虐げて悦んで、実際にマジアアズールが墜ちそうになったときのあの解釈違いと同じような感情が彼女の中に渦巻いていた。
「マジアベーゼの偽物、クオリティもカリスマも強さもないプロパガンダ用のなりそこない……そんなものを見て誰が一番不快になると思う?この私だ、お前がベーゼなら散々私のプライドと人の尊厳を尻を叩いて破壊したその掌を返すのか?違う、断じて違う、その程度で落とさない、なんとしても落とさない」
「ろ、ロード様……殺さないで……」
「喜べ、お前の死は無意味にはしない、せいぜい本物のマジアベーゼを倒す際の予行演習くらいには思ってやろう」
エノルメは容赦なくエアプベーゼの身体を貫き、内部からブラックホールのような物に変えて分解させていく。
2人の偽物がいなくなった後改めてイミタシオに変身してたくっちスノーに連絡を入れる。
「シン・ロード団は私が乗っ取ったぞ♡」
『ああうん、結局君もベーゼも個人の世界でやる範疇だからとやかく言わないけど本気なの?』
「……お前と私がどれだけの付き合いだと思ってる?」
『まだ一ヶ月ちょいだっての』
こうしてシン・ロード団の侵略は終わったことになるが、イミタシオにとっては始まりだ。
まだまだ悪の組織としても使えるものはあると実感して改めて元の世界へと帰った。
ただし気になるのはガリュード……そして旧ロード団のメンバーであり調べた所エノルミータでも消息が掴めていないシスタギガントのことだ。
どうやらまだまだ自分の目的を果たすには解決しなければならない課題が多いことにイミタシオの姿でため息を吐くのだった。
そしてその姿をエノルミータは偶然目撃していたが、やることは終わったしうてなの安否が心配なので撤退することに。
「どうするよあいつ」
「たくっちスノーが絡んでいるなら、また改めて考える必要がありそうだ」
◇
「えーと報告、イミタシオがシン・ロード団のロードエノルメとマジアベーゼもどきを撃退したとのこと」
「どういうこと……?確かマガイモノって不老不死って」
「そのはずだね、一体どんな毒を使ったのか……あるいは 裏技でも見つけたのか」
列車に乗って報告を受けるアズール、シン・ロード団が監理局抜きで解決してしまい当の黒影は専属魔法少女と大喧嘩という大失態なので既に面目丸つぶれだがマッチポンプは明白なので無様を晒すよりはいい。
「どうして言い切れるの?監理局のマッチポンプなんて」
「だって自分だけだもん、マガイモノ作ること出来るのって……それでロードエノルメもマジアベーゼもマガイモノってことはつまり世間的にはそういうこと、自分も加担してたことになっちゃう」
「……ポチさんには色々お世話になったことも多いだけにあまりこんな事言うべきじゃないんだけど、貴方の組織は最低よ」
「その通りさ、何せこんな悪党が副局長やってる組織なんだから」
二人きりで話しながらギリギリ騒ぎを抑えられる方法を思いついたのでマゼンタに連絡して代わりに報告してもらうようにアズールから伝えていると、ようやく目的地が見えてくる。
走って5分なので飛ばしてる方だが黒影の戦闘を考えるとこれでも危ない。
急いでアズールが降りて駆け寄るとサルファは全身が血まみれで傷だらけになりながらも笑みは崩れず立っていた。
「おう、グッドタイミングやな……アズール、そっちは済んだって聞いたで」
「サルファ、そんな傷だらけで……向こうは!?」
「困るよね喧嘩売ってさ、マジカル☆ロリポップ世界で出来ることには限界がある、君のバリア能力は大したものだけど世の中には絶対的勝者っていうのがいるんだよ」
「そ、そんな……あいつピンピンしてるわ」
歩いてくる黒影はというとかすり傷もなく近寄ってくる、アズールは絶望しているがサルファは全く余裕が崩れてないしたくっちスノーもなにかに気付く。
「僕らが見てなかったからって余裕ぶるのはやめろ黒影、何回僕がお前と喧嘩したと思ってる……ざっと20回くらいはやられてるね?」
「27回や、バカみたいな火力と再生能力でゴリ押してるだけ……単純な戦闘力で言えばレオパルトの方が上や」
「あまりさ、調子乗った事言わないでほしいんだけどなっ!!テオルカ!!」
黒影は炎を纏って突進してくる、サルファはバリアを張るが魔力は限界で消えかけの電池のように薄れてしまい直撃は避けたがぶっ飛ばされ、前方にアズールが真化して受け止める、額から血が出て骨が折れて吐血するが確かにこれまでの戦闘に比べれば大したことはない気がしてくる。
「愛の……アヴァランチ!!!」
エアプベーゼよりも遥かに強く吹っ飛ぶ黒影、カウンター技の出力の違いもあるが確かに実力で言えばエノルミータの方がよほど燃える。
何をここまでさせるのかアズールにも分からないが気に入らないものがあった……皆に愛される魔法少女として『ブッ殺す』という単語は使ってはいけないが、その時の眼差しはいつものように悪を倒すのではなく憎悪が入っていた。
この瞬間だけはマジアアズールではなくただの薫子の友達として止めたい、薫子も同じ事を思っていたが……。
この気持ちをはるかには抱えさせない。
だが我に返り後ろを見るとサルファは変身が解けて血まみれで倒れていた。
◇
「目覚めろ……目覚めるんだ」
「ん?……なんやここ」
薫子は気が付くと真っ暗な空間に横になっており、声がした方に向くと黄金の巨人が立っていた、竜義から散々聞かされたテガソードで間違いないだろう。
「お前確かテガソード言うたな、なんでウチに会いに来てんねん別世界やぞ、よっぽど会いたがってる馬鹿力のやつがおるで」
「お前は指輪の力を一時的に使用し、契約に値すると判断した……願いを言え」
「おい待てや、まさかウチにまでその指輪がどうこうさせる気ちゃうか、ポチ公から10個も借りて利用したことには謝るがそんな暇はないわ……けどまぁ、言うだけ言うならかまへんか?」
自分が直前までどんな立場だったのかは理解しているので走馬灯感覚で言うだけ好きに言おうとした薫子、願いとしては極めてシンプルに強くなりたいことだが……。
「守りたい願いがあるんや、毎日が穏やかで平和で居てほしいというありふれてるがウチにとっては誇らしくも思う立派な願い、けどウチがここで死んだらそいつを悲しませることになるし頑張ろうにも敵が多すぎるわ」
「お前に従えんのはウチの願いはウチ1人でナンバーワンになることやない、ウチにはトレスマジアで3人揃ってナンバーワンがちょうどええんや、それにな……嫌や、あんなクソ野郎に負けて無様晒すのはほんまは嫌や、正義のヒロインは最後に悪党に勝ってこそや!!」
薫子は願いを伝えた……伝えたところで自分は死んだのだから意味はない、だからこそ他世界のメイドウィンと話すことが出来ているのだろう?
悔しいし反吐が出るが自分は根気負けした、そこはもう避けられないものだとシビアに考えているがテガソードの答えは違った、手を差し伸べると薫子の両腕にあの手袋が装着される。
「おい、ウチはやらん言うとるやろ、それにもう……」
「一つ伝えておこう、お前達の元に送られたセンタイリングは……全てあの男が作り出した紛い物だ」
「は?偽物?……つまりは、うちの好きにしてええわけやな」
「お前の言う通り、別世界出身のお前に出来ることはここまでだが……また別の道からナンバーワンを志すその願い、確かに受け取った……後はその神を討ち取れ!!」
テガソードは言葉の後に変形して時空の渦に乗って消えていった、頬をつねって痛みを感じるのでこれが夢ではなくまだ生きていると実感した薫子はサルファに変身して光る方向に目を向ける。
「なんや言うだけ言って消えおってからに……神様って奴はどいつもこいつも勝手やが、捨てる神あれば拾う神あり……感謝するでテガソード、使えるものなんでも使ったろか!!」
「薫子ちゃん!!死なないで!!」
はるかの声が光の先から聞こえてくる、爪のような手袋で這い上がって真上の光へと上り詰めてどんな壁でも上り詰める。
生きる実感と諦めない思いがある限りキャラクターは死ぬことはない。
「心配かけてすまんなはるか……せやけどな、ウチは!!お前の願いを叶えてナンバーワンになるまで死んでたまるか!!」
そして遂にその手を伸ばして……。
「オォンドルァァァ!!!!」
目が覚めた先で黒影の胸ぐらを掴みそのまま巴投げをしかけていた、完全に生命反応が途絶えたはずの薫子が突然生き返ったような物なので驚くがアズールもまた全身が傷だらけになりながら起き上がることを信じており、マゼンタがある程度2人の傷を治してくれていた。
「随分待たせたな、小夜」
「遅すぎよ……」
「さて黒影、第2ラウンドいけるやろな」
「やめて!!まだ2人は完全に治りきってないから!!」
「大丈夫だよマゼンタちゃん……サルファは勝つよ、あいつの元ライバルが保証してやる」
止めようとするマゼンタをたくっちスノーが止めるがサルファは本当に勝つ気でいる、両手にはあのポチが改造した手袋が。
サルファは魔力を滾らせて手袋を鈎爪のような武器に変えて変身に使用するハートを右手に装着させる。
途中で黒影が包丁を投げてきたが横からアズールが投げた氷の剣に跳ね返される。
「変身中は攻撃しないのがマジカル☆ロリポップの暗黙のルールと貴方の部下から聞いたわよ!」
「ポチの発明品は自分の技術以上だ!やっちまえトレスマジア!!」
「スーパーエンゲージもとい真化!!」
『グラッブユアハート!マセンソウル!雷・絆・壊・竜・族・命・動・海・忍・進!!』
「掴め!!ナンバーワン!!」
「大番狂わせなんのその、神も悪魔もねじ伏せて
正義の味方の大団円!これがウチの真化や!!名前は……えーと思いつかへんな、後で考えるとして今はナンバーワンサルファや!」
「一十百千飛んで無量大数……全ての世界は俺が助ける、慈愛と加護のメイドウィンナンバーワン、敢えて名乗るなら
シャドー・メイドウィン・黒影!!」
「さ……サルファ……真化したわね……形はちょっと変だけど……」
◇
「おっと……これは……」
ガリュードも遠くで感じられるマガイモノリングの反応に気付いて眺める。
「僕としてはシン・ロード団だかのついでで全てのセンタイリングを奪う予定だったが、全部偽物なんて手抜きをしていたとは……まあ、断ったのは僕なんだけどね」
「分かるかい吠?この時空で本当に強い者は誰なのか」
吠の方はとっくに決着がついていた、ガリュードは吠を眺めて役目は終わったとばかりに時空の渦に乗って消えていった。
吠は立ち上がろうとするが、足だけ出てきて吠を踏みつける。
「最後に面白いことを聞かせてあげるよ吠、黒影はね……君のことが大嫌いなんだ、まあこの戦いで言えばあのマゼンタって子の事もだけど、だからゴジュウジャーになれなくしたりリングの力も防いだり徹底的に君を封印して死なせようとした……まあ、それは別に僕に負けた理由にはならないけど、じゃあ僕はこれで、黒影にはバカって伝えておいてね」
最終更新:2025年04月30日 20:42