「ンミミィ……」
「こいついつになったら元の調子に戻るんだ……」
「しちゃったねぇ……"意識"」
サルファの中で何かが目覚めた中、休憩中のパラレルトレスマジアと合流する、ガリュードは元々ゴジュウジャー……というより吠にしか関心を向けないので魔力が尽きそうになったところでゴジュウジャーに逃がしてもらったという。
早速マゼンタが魔力供給を行おうとするがほぼ全員が闇の姿に驚愕してしまう、まあ無理もないのだが更にキスで魔力を分け与えようというのだから騒ぎになる。
「マスク取ってマスク取って!」
「無理無理!これ最終回じゃないと変身前に外すとか出来ない奴!変身解くから待って!」
「あ……あたしはちょっと……並行世界とはいえ自分にキスってどうなの……」
「魔力を増やす手段は限られてるわ、接吻くらい我慢しなさい」
「そんでお前はなんてドライなんや……てかそっちのウチ大丈夫か?」
一段落ありつつも全員分の魔力を補給してなんとか体制を立て直す一同、
マガイジンとなったガリュードはジンオウガの異常活性した電力と破壊力に加えてセンタイリングから戦隊を召喚する力に従来の戦闘力、そこに無限の体力が合わさった強敵だという、パラレルトレスマジアは思った。
それ、倒す方法とかなくね?
「
マガイモノと同じ性質なら成分を凍結させてそのまま処刑していたところだけど……どうにも細かい所で人間と同じのようね」
「そのくせ再生に限界はないっていうんやからチートも大概にせえって話やな……今回はそのチートの仲間に助けられたが」
魔力は戻ったがマガイジン対策を考えなくてはならない、マゼンタは抑制剤でマガイモノの力を10%まで抑えて再生機能だけ残したが完全に効能を消し去ることは不可能であるという、更に自分の身体からならともかくガリュードの場合はジンオウガの設定を抑制するために直接成分を抜き取る必要がありそうだが、マガイモノ同士でも別の成分に拒絶反応が出ることがある。
それに抑制したとはいえ彼女の中の鏖魔ディアブロスの設定は解決したわけではない。
「危険とはいえマゼンタをガリュードに連れていく必要があるってわけね」
「だがガリュードはマゼンタを改造した『ともだち』とも繋がってる、この辺りも想定してると思った方がええな」
「みんなもうひと頑張りだよ!魔力が無くなったらあたしが補給するから!」
「それはいいんだけどさ……その、キス以外に方法は?」
「残念ながら……」
「ちょーっと待ちなぁ!!」
魔力供給の方法で揉めている所にスポットライトで照らす6つのシルエットがビルの上から現れて一斉に飛び降りながらライトが追いかけていく。
「煌めく太陽光の魔術……憎き魔力を闇に還す!スパイダーデビルの魔女ことエノルミータ戦闘部隊長!ここではムーンベーゼ!」
「傷を束ねて数多の屍!貴方に刻むは獣のシンボル……世界国家犯罪組織エノルミータ首領、ここではスカーベーゼ……!」
「昼はさながらブラック企業、夜はさながらダーク企業……悪役系株式会社エノルミータ社長及び仮総帥……ここではスローベーゼです、こちら名刺となっております……」
「アイドルに比べられるくらいなら永遠に新鋭気取ってやる!新米ロックバンドエノルミータボーカル担当!ここでは芸名ボルトベーゼ!」
「怒りを宿して悪をな成す、これは逆鱗と断罪の炎……えっと、過激派組織エノルミータ仮総帥!ここではレッドベーゼです!」
「ジメジメしたワルは卒業!今の時代悪の組織だってパリピっしょ!マジキャワ系新世代悪の組織エノルミータのマジェスティ総帥!ここじゃオルタベーゼ!」
「6人だけど実質1人!我ら同一戦隊!!」
「パラレル六人衆」
シルエットと共に華麗に着地したパラレルベーゼ達は決めポーズと背後に爆発を決めながら派手に現れる。
空気を読まずに暴食アズールが剣を投げようとするが空気を読める戦隊マゼンタがそれを止める。
「息ぴったりだ〜!!さすが全員私!一度で良いからやってみたかったんですよ悪役側の戦隊名乗り!!」
「だっる……これ全員分考えたんですか?」
「えー?話してる時案外ノリノリだったじゃんスローっちとか」
「大人の社交辞令って奴ですよ……」
「おいお前ら、一応聞いとくが何しに来たんや」
「何しにって……そりゃ私ら一応マジアベーゼだし、トレスマジアと戦うのは宿敵みたいなものでしょ?」
「……本音は?」
「そこのマゼンタがキスであの人の魔力を奪ってそんな姿になったというので私たちも魔法少女に魔力インしたくなってたまらないんですよ」
「変態よコイツら!!」
「当たり前やろ何見てきたんや!変態は並行世界行っても変態や!!」
あのレッドベーゼですら闇の魔力を注ぎ込みたい衝動に駆られる魔力注入という魅惑の響き、トレスマジアからすれば知ったことではないのだがついこの間うてなとキウィのマジの絡みを見てからそういったことに興味津々になった一同。
しかしその獣集団を一蹴するかのようにアンプル入りの矢が掠める、そこにはいつもより冷たい顔をしたマゼンタの姿が。
闇堕ち風の服なだけあって見下すような顔をされると普通に怖い。
「ねえ……今それどころじゃないよね?あたし達はこれからこの世界の危機になるかもしれない命懸け戦いをするの、本当に真面目にやらないとダメな流れなの、そういう時にふざけたノリで邪魔するのって違うでしょ?あたしだって頭にくることくらいあるんだよ……?」
「えっもしかしなくても我々ライン超えました?」
「終わったね君等……さっき本来のベーゼと戦ってきたけど、ちゃんと真剣に戦ってたよ……といってもマゼンタちゃんが強引に……あっごめん今その顔怖いからやめて」
マゼンタは次なんてないとばかりに、お前次やったらマジで薬物(コレ)だからなとばかりに一気に同じアンプルを出して口に咥えながら弓矢を構える。
あれだけ酷いことされて空気読めないという理由で暴走しない範囲で怒ってる辺り相当真面目だな……
たくっちスノーはそう思った。
「いやいや薬はまずいっしょ!さっきマジアっちが潰れたカエルみたいになってたし!」
「安心して……一発で終わらせるしこの番号は媚薬の薬じゃないから」
アンプルのラベルには19番とある、他のメンバーがこっそり耳打ちして何の薬か聞こうとして、19番を実際に打ったアズールが小声で答えるのだが……。
「えっ!?あれって体臭がキツくなる薬なの!?」
「ちょっと声が大きいって!」
それを聞いてベーゼ六人衆は一斉に状況を理解する、1人ならまだしもそんなものを6人全員に注ぎ込もうとしている、本気で、あのマゼンタが、天使のような笑顔を向ける彼女が今では堕天使のように囁いて注射器と弓矢を構えている。
「これは等価交換ってやつだよパラレルの諸君、このままマゼンタに魔力をコンヴァートした代償として『コ°ッ!』と悶えるような悪臭漂う体になるか、参考までにアズールはたまねぎっ!!」
「何バラそうとしてるの!!」
アズールがデリカシー欠けてるたくっちスノーにアッパーカットをかけている最中パラレルベーゼは火の粉を散らすように逃げ出していき、アンプルを胸の中にしまい込んだ。
「……えーっと、今のって本気じゃなかったよね?」
「うーん……内緒、じゃあ行こうか!」
この時パラレルマジア達はマゼンタのあの覇気はフォールメディックと鏖魔ディアブロスのせいということにして、とりあえずあの形態の時になった際には暴走関係なく怒らせないようにしようと誓ったのだった。
こうして改めてガリュードを倒しに行こう!というところで……。
「ちょっと待った!エノルミータとして忘れてないかしら、このロゴムジカとルベルブルーメのコン……待ってなんかマゼンタの殺意が凄い!!」
「抑えて抑えて!さっきのとは違うから無言で弓矢構えないで!」
「先に抑制剤!抑制剤打とうかマゼンタちゃん!」
血管が若干ピキッとキレて目のハイライトが消えて弓矢を構えるマゼンタ、鏖魔は短気というわけではないが怒りのボルテージが桁外れでありとこもん溜め込んで一度穴が開くと一気に決壊して暴走までいくので普通に危ない段階である。
「や……やめなさい2人とも!今はそれどころじゃありません!」
そこに足がガックガクながらもキウィを背負うマジアベーゼと怖くて後ろに回っているパラレルベーゼ六人衆の一部。
マゼンタの普段見せない振る舞いを見て冗談抜きにただごとではないと判断したが、一時休戦というわけではない。
「ネロちゃん、例のものを!」
ベーゼが上にいるネロアリスに指示を出すと空から鎧がかっこよく着地してる……かつてシン・ロード団を殲滅するために急ごしらえで作成された、ある意味メディックフォールンと同じく似つかわしくない存在『世反獣』キルロード。
意思疎通はしないが命令に忠実であり、マジアベーゼの思いに殺戮という形で応えるナイトである。
異常に燃費が悪いが次の事態に備え、戦いのあとも少しずつ魔力を送っていたのだ。
キルロードはマゼンタを見て即座に頭部を掴みかかる。
「私とて魔力を一方的に奪われてただでは終わらせんよ、本来こういった過激な手段は好みませんが……奪われたからには力付くで取り返させてもらいます」
「まさかエナジードレインか!強引に突破できないのかマゼンタちゃん!」
「無理……それは無理だけど!なんとかなる!!」
だがキルロードは始末するためにマゼンタに近づいたわけではない、マゼンタは現在マガイモノの力で魔力は∞、それ即ち中に取り込むことでキルロードの弱点を完全に補うことに成功する。
本来ならあっという間に吸い尽くされて変身が解けてしまいそうだがその心配もいらない、キルロードとしても馬が乗るに相応しい主を判断するようなもの。
結果的にキルロードとマゼンタはベストマッチしてしまったのだ。
「のっ……乗っちゃった、でもまあ私も出来てたか」
「大丈夫なのマゼンタ?」
「うん、意外と楽……じゃあ改めて」
「こ、こらキルロード!私は生みの親ですよ止まりなさい!」
キルロードはマジアベーゼには忠実である。
でもそれはそれとして中に人が入りエネルギーが溜まったらキルロードはただの鎧として振る舞う。
マゼンタキルロードのパンチによってマジアベーゼ本日2回目の敗北、さっきよりはマシな形であるがそろそろ鬱陶しくなってきたので無視して進もうとする、戦隊マゼンタですらこの形相です。
本格的に乗り出してきた頃、頃合いを見てマジアベーゼは埋まった角を引っこ抜いてもらい様子を見る。
「これはもう私が介入する余地はないみたいですね、こんな状況でなければエノルミータより優先される悪がいるというのは妬けますが……」
「どうするのマジアちゃん、キルロードって黒影ぶっ飛ばす為の切り札にしてたんでしょ」
「向こうの方が使いこなせるなら我々などその程度ということです、えーどうですかキスマークさん」
『マジアベーゼ様、そ、それが……ガリュードの反応が消えました!』
「……消えた?そういえばマゼンタも僅かな時間のみ反応を消していた、マガイジンについて深く掘り下げる必要がありますね……それに反応が消えたと言えば……」
マジアベーゼは新時代に出てからヴェナリータを見る機会が少なくなっていた。
幹部になったばかりの頃はしょっちゅう話しかけてきたというのに最近は音沙汰なしも珍しくない、シン・ロード団だの急激な発展だので忙しいのは分かるが何の連絡も無いのは不自然だ、ベーゼにとっては都合が良くもあるが。
そしてガリュードが消えた異変はマゼンタ側も即座に気付くことになる。
たくっちスノーとサルファの
マガフォンに同時にかかる、複製すると番号が被るのでこういうことが起きることもザラである、電話相手はポチからだ。
「なんやポチ公今ええところだってのに」
『ガリュードの反応が突然ロストしたんだよ……時空のどこにも見当たらない!』
「ちっ、やっぱあのアホどもに時間かけすぎたか……いやウチらもウチらで投薬実験してたか」
『それに関しては君らの責任は無い……ずっと監視してたんだけどガリュードの奴ら、パラレルのトレスマジアが離れた瞬間に突然消えたんだ!』
つまりはゴジュウジャー達が残った際にガリュードが本気を出してそのまま姿を消したことになる、全く全力を出さずゴジュウジャーだけになってから本質を見せるとはマジアベーゼみたいなやつは案外どこにでもいるものである、だが問題はそこではない。
『……百夜陸王、爆神竜儀、猛原禽次郎、一河角乃もまとめてどこかへ飛んだ、こっちは生体反応があるから時空の何処かにいることは確かなんだけど』
「なるほど吠以外の邪魔者を消したってわけね、あいつ一人に執着してたからな……」
「それってもしかしてガリュードの……」
「ああ、ガリュードはワープ機能こそあるが吹っ飛ばせはしないし、ジンオウガにそこまでの力は無い以上
メイドウィンブラストと考えていい……気を付けたほうが」
「うあああー!!」
話している暇は無さそうだ、真銀の悲鳴が聞こえたので一目散に角を生やして突進していくとガリュードが真銀のマジレンジャーリングを奪い完全に倒したあと、そのまま丸い物体からどこかへ消えようとしている所に突っ込み、角を突き刺しながら中に入って消えていった。
残ったのはボロボロになった久光と吠と真銀のみ。
「真銀!」
「あ……姉御ぉ……ごめんなさい、指輪争奪戦負けちゃいました、ゴジュウジャー達もガリュードが強すぎて散り散りに……」
「ちっ、あいつを追いかけたいところやがマゼンタだけ突っ切ってもうたな……おいポチ公!場所特定できるか?」
『出来るかもしれないけどそれどころじゃない、君の世界に大量の
オブリビオン反応!この世界のオブリビオンは「無法少女」って名前らしいよ!』
アズール達も感じ取る大量の魔力反応、どうやらマゼンタを援護する余裕は本当に無さそうだ、ポチにはゴジュウジャーの面々がどこに行ったのか調査を頼みオブリビオン軍団を相手することに。
間違いなくこのタイミングからして黒影が来ると予知したサルファは邪魔されないように潮時と考えてマガイジンの漏洩を発表するように伝え、たくっちスノーもそれに同調した。
「イミタシオ!すぐに出撃できるか一大事だ!」
『ああ一大事だな、だが問題はない……エノルミータも動き出したのを確認している、奴を除いてな』
「え?その言い回し……ミッチー?なんで変身してな……まさか!!」
◇
角の勢いで吹っ飛ばしてガリュードをそのまま壁へと叩きつける、マゼンタとガリュードは再び実験体同士として巡り合う。
もはやこの戦いは一つの世界で済むような小さなスケールのものではなくなってきている。
「ガリュード……一つ聞かせて、吠さんをあたし達の世界に送るように仕組んだんだよね?それはどうして?大事な兄弟なのに」
「そう、大事な兄弟……僕にとっての大事な弟が吠だ、ブライダンでちょっとだけ
はじまりの書を読ませてもらってね……吠が僕と現れてどうなるかを知った、だから君に会わせたんだ」
「……話が繋がってないように聞こえるけど」
「吠はとても純粋でとても空っぽだ、だから何を目指すことも出来ないしマトモになんて戻れない……だというのに彼はどういうわけか本の通りならナンバーワンに目覚めて生意気に俺に歯向かうんだ、だから誰かの所に送った……逆に満たされる生活を送らせてみたんだ、吠の中に君という甘えを作り出した、ナンバーワンを目指さない理由付けをした今、君はもう吠に必要ないということさ」
「……それはなんとも身勝手な話ね、あたしとしては吠さんに会えて良かったとは思ってる、吠さんもお兄さんのことを大事に思っていただけに……ガリュード、貴方は許せない」
「だからなんだと?マガイジン同士だからって俺とお前如きが対等になったとでも?まあ……黒影から守ってやるのも楽じゃないんだ……お前はもう俺の獲物だ、我が名は『金雷公』のマガイジン、クオン!」
「わ……我が名は『鏖魔』のマガイジン、マジアマゼンタ!鏖す悪魔の力……正義の為に使ってみせる!」
「おやおやおやいけませんいけませんいけません」
未知の世界でガリュードとマゼンタの戦いに水を指すように鞭で二人の腕を拘束する影が、そこに立っていたのはいつだって居るマゼンタの厄介ファンにしてこれまでの騒動を一番複雑にしてしまった全ての元凶、マゼンタのそばには彼女が居なくては始まらない。
どうやってつけてきたのか……マジアベーゼがそこに立っていた。
「ま……マジアベーゼ?」
「すみませんね、彼女の獲物は私です……余所者の悪の組織に奪われるほど私も能天気ではないのですよ」
「いつまでも捕食者気取りで居られるのも今のうちだぞ、マジアベーゼ」
更にそこから黒い怪物が口を開けて迫るかマゼンタは弓矢を放って消失させる。
立っていたのは黒影にとっての想定外、イミタシオではなくシン・ロード団としての総帥ロードエノルメであった。
ベーゼを倒すならこの姿こそ相応しいとして現れたのだ。
「へえ……まさかお前がこうして来るとはね」
「シン・ロード団としては最初は味方だったつもりらしいが、私は貴様などいらん」
「俺だって結構だ、吠やそこのマゼンタを死なせないように黒影から誘導しただけ有り難いと思ってもらいたいくらいだね」
「何の話してるんです」
「ベーゼにも関係ない話ではないか、聞かせてやろう」
最終更新:2025年05月11日 07:19