闇の眷属たる私は、トボトボと、夕闇の中を歩いていた。
高校からの帰り道。今日は一人だ。
私の恋人―――ここではいつものように、京介と呼ばせてもらうわ。
京介が大学に入学してしばらく経った。
なんだか最近、京介は忙しいらしく、なかなか会える機会がない。
今日も、何か用事があるからと、デートを断られたばかりだ。
4月20日。
今日は私の誕生日だというのに。
でも、そうね。
別に今までと何が変わるわけでもない。
去年の誕生日だって特に何もなかったし、ね。
母は仕事で、妹達がささやかなお祝いをしてくれた。
だから、何も寂しいことなどないのだ。
家の前に着いた。
目にゴミが入ったのかもしれない。
私は目元をそっと拭うと、玄関を開けた。
「瑠璃姉、おかえり!」
「おねえさま、おかえりなさい!」
出迎えてくれた妹達は―――
え?
えぇぇっ?
なぜ、なぜ妹達が、
『 夜 魔 の 女 王 』 の コ ス プ レ を し て い る の ?
「あ、日向ちゃん珠希ちゃん、まだ出てっちゃ―――あっ!」
なっ!?
そ、そういうことね……ふっ。
私の前には同じく『夜魔の女王』のコスプレをした桐乃が立っていた。
「はぁ、見られちゃったもんは仕方ないか」
「どういうつもりよ」
「ふふん。あんたも早くコスプレして居間に来なさいよ」
「ど、どうして……」
「どうしてって、主役のあんたが来なきゃ始めらんないでしょ?」
始める?何を?しゅ、主役って……
「あんたのコスプレ誕生パーティだっての!」
わ、私何も聞いていないわよ……
間違いない、これはあのグルグル眼鏡の仕業ね。
私は自分の部屋に戻ると、いつものコスプレ衣装に袖を通す。
「ふふっ」
自然と笑みがこぼれてしまう。
私の大切な友人。沙織と桐乃。
二人には本当に感謝している。感謝してもしきれないくらい。
二人と京介が、私を孤独の闇から救い上げてくれた。
彼は―――今日はいないけれど。
私は着替えを終え、居間へと向かった。
襖をすっと開けると、そこには―――
「黒猫氏、待っておりましたぞ!」
妹二人と桐乃の姿から想像はしていたけれど。
『夜魔の女王』のコスプレをした、沙織。
「黒猫さん、誕生日おめでとう!」
え?ベルフェゴール!?
じゃなかった、田村先輩まで同じコスプレ……
「五更先輩、おめでとうございます」
「ちーす」
桐乃の表の友達の、あやせちゃんと加奈子ちゃん。
―――な、なんであなたたちまでここに?
っていうか、なんで『夜魔の女王』なのよ!
「五更さん、遅かったじゃないですか!」
「おう五更、やっと帰ってきたか」
「おめでとうございます、五更さん」
「「うーす」」
ゲー研のみんなも、男女関係なく『夜魔の女王』なのね。
デブ二人の女王―――な ん っ て 破 壊 力 ! ?
「こんにちは」
この人は、確か御鏡さん。またレアな人もいるものだわ。
この人は男なのにこんなに似合ってしまっていいのかしら?
「京介君、今日のためにすごく頑張ってたんですよ」
京介が―――え?何を!?
「―――ゴ、ゴホンっ」
咳払いが聞こえ、私は振り返る。
そこには―――
「瑠璃、誕生日おめでとう」
……
『夜魔の女王』のコスプレに身を包んだ京介が立っていた。
「……ぷっ」
くくくっ。
本っ当にくだらないわ。
「くくくくくく……」
ダメ、ダメ、笑いが抑えきれない。
私のクールな女王のイメージが崩壊してしまう!
のに―――
もう一度目の前の京介を見ると、
呆けた顔の女王がそこにいた。
「ぶっーーーくくく、あっはっはっは」
だめー、おかしすぎる。
私が今まで見せたことのないような笑い声を上げていると、
京介が真っ赤な顔をしながら、すっと箱を手渡してきた。
「あ、あのさ。初めて作ってみたんで、あんまり上手くないんだが」
ん?作った?
私は箱を開いてみた。
そこには。
「猫……の、アクセサリー?」
あ、そうか。
御鏡さんが言ってたのはそういうことだったのね。
てことは、最近京介が忙しそうだったのも―――
やれやれね。
「あ、ありが―――ぶふぅっ」
「わ、笑うなー!!!!」
私は可笑しいのと嬉しいので、とても幸せな気持ちになっていた。
こんな誕生日、初めて。
「ではでは皆さん、パーティを始めましょうぞ」
クイーンコスの沙織が全体を取り仕切る。
「誕生日、おめでとーーーーーー!」
おわり
高校からの帰り道。今日は一人だ。
私の恋人―――ここではいつものように、京介と呼ばせてもらうわ。
京介が大学に入学してしばらく経った。
なんだか最近、京介は忙しいらしく、なかなか会える機会がない。
今日も、何か用事があるからと、デートを断られたばかりだ。
4月20日。
今日は私の誕生日だというのに。
でも、そうね。
別に今までと何が変わるわけでもない。
去年の誕生日だって特に何もなかったし、ね。
母は仕事で、妹達がささやかなお祝いをしてくれた。
だから、何も寂しいことなどないのだ。
家の前に着いた。
目にゴミが入ったのかもしれない。
私は目元をそっと拭うと、玄関を開けた。
「瑠璃姉、おかえり!」
「おねえさま、おかえりなさい!」
出迎えてくれた妹達は―――
え?
えぇぇっ?
なぜ、なぜ妹達が、
『 夜 魔 の 女 王 』 の コ ス プ レ を し て い る の ?
「あ、日向ちゃん珠希ちゃん、まだ出てっちゃ―――あっ!」
なっ!?
そ、そういうことね……ふっ。
私の前には同じく『夜魔の女王』のコスプレをした桐乃が立っていた。
「はぁ、見られちゃったもんは仕方ないか」
「どういうつもりよ」
「ふふん。あんたも早くコスプレして居間に来なさいよ」
「ど、どうして……」
「どうしてって、主役のあんたが来なきゃ始めらんないでしょ?」
始める?何を?しゅ、主役って……
「あんたのコスプレ誕生パーティだっての!」
わ、私何も聞いていないわよ……
間違いない、これはあのグルグル眼鏡の仕業ね。
私は自分の部屋に戻ると、いつものコスプレ衣装に袖を通す。
「ふふっ」
自然と笑みがこぼれてしまう。
私の大切な友人。沙織と桐乃。
二人には本当に感謝している。感謝してもしきれないくらい。
二人と京介が、私を孤独の闇から救い上げてくれた。
彼は―――今日はいないけれど。
私は着替えを終え、居間へと向かった。
襖をすっと開けると、そこには―――
「黒猫氏、待っておりましたぞ!」
妹二人と桐乃の姿から想像はしていたけれど。
『夜魔の女王』のコスプレをした、沙織。
「黒猫さん、誕生日おめでとう!」
え?ベルフェゴール!?
じゃなかった、田村先輩まで同じコスプレ……
「五更先輩、おめでとうございます」
「ちーす」
桐乃の表の友達の、あやせちゃんと加奈子ちゃん。
―――な、なんであなたたちまでここに?
っていうか、なんで『夜魔の女王』なのよ!
「五更さん、遅かったじゃないですか!」
「おう五更、やっと帰ってきたか」
「おめでとうございます、五更さん」
「「うーす」」
ゲー研のみんなも、男女関係なく『夜魔の女王』なのね。
デブ二人の女王―――な ん っ て 破 壊 力 ! ?
「こんにちは」
この人は、確か御鏡さん。またレアな人もいるものだわ。
この人は男なのにこんなに似合ってしまっていいのかしら?
「京介君、今日のためにすごく頑張ってたんですよ」
京介が―――え?何を!?
「―――ゴ、ゴホンっ」
咳払いが聞こえ、私は振り返る。
そこには―――
「瑠璃、誕生日おめでとう」
……
『夜魔の女王』のコスプレに身を包んだ京介が立っていた。
「……ぷっ」
くくくっ。
本っ当にくだらないわ。
「くくくくくく……」
ダメ、ダメ、笑いが抑えきれない。
私のクールな女王のイメージが崩壊してしまう!
のに―――
もう一度目の前の京介を見ると、
呆けた顔の女王がそこにいた。
「ぶっーーーくくく、あっはっはっは」
だめー、おかしすぎる。
私が今まで見せたことのないような笑い声を上げていると、
京介が真っ赤な顔をしながら、すっと箱を手渡してきた。
「あ、あのさ。初めて作ってみたんで、あんまり上手くないんだが」
ん?作った?
私は箱を開いてみた。
そこには。
「猫……の、アクセサリー?」
あ、そうか。
御鏡さんが言ってたのはそういうことだったのね。
てことは、最近京介が忙しそうだったのも―――
やれやれね。
「あ、ありが―――ぶふぅっ」
「わ、笑うなー!!!!」
私は可笑しいのと嬉しいので、とても幸せな気持ちになっていた。
こんな誕生日、初めて。
「ではでは皆さん、パーティを始めましょうぞ」
クイーンコスの沙織が全体を取り仕切る。
「誕生日、おめでとーーーーーー!」
おわり