■REPORT #6
以下、元フェアシュタントの科学者、クロムによる手紙
クロム(人物名)はフェアシュタントという組織を創設した科学者・思想家。
<クロム自身による手紙、以下転載する>
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こうしてペンを走らせるのはこれが最後となる。
これまでの想いをここに記す。
君に初めて出会ってから、すでに月日は10年以上経つ。
名前すら無い事を不憫に思った事に偽りはないが、その鋭い眼光に魅入られてしまったというのが本音だろう。
全てのものを憎み、恨んでいたかの表情から受け取れたのは、世界に対する絶望ではなく何かに対する強い意志。
私が君にあげた名前「カタリナ」とはギリシア語の「カタロス(純粋)」に由来する。
外的要因によりくすむことなく、強さと美しさを兼ね備えた君への贈り物だ。
共に生きたあの頃は、私の中でかけがえのない時間だった。
あのまま時が止まっていればと、今では思う。
私はただそのままの君でいてほしかったのだ。
しかし君は変わった。変わることを望んだ。
私はそれを拒むことさえできずにいた。
それほどまでに君の全てを好いていた。
生まれ変わった君の瞳はすでに作り物だが、その想いに変わりはなかった。
私にとっても驚きだが、同時に確信でもあった。
人としての結びつきは叶わないが、愛おしく思う気持ちに本質的な違いはなかった。
先の戦闘で、君の戦闘能力の欠陥が顕著となった。
前回同様のアップデートでは、彼女には勝てないだろう。
それほどまでにYF-01は強い。
そこで急遽、大幅なアップデートを行う。
私の持つすべての適応強化脳細胞の完全移植。
君が今を望んだあの時から、いつか決断をするだろうと、予測していたことだ。
私は私の全てを君に捧げよう。
憐みなどではない。
これは私から君への最後で最大の贈り物だ。
しかしながら現段階の技術では、私の自我を維持することはできない。
その事象は他者の判断では死とされるものだろう。
だが私はそうは思わない。
私の細胞は確実に君へと移植される。
それはこれからも君と共に生きる事となる。
私は君と共に生きる。
一連の処置が完了し、再起動された君の前に私の姿はもう無い。
君の耳に届く私の声はもう無い。
君の髪を撫でる私の手はもう無い。
君の瞳に映る私のかたちはもう無い。
しかし寂しがらないでほうしい。
私の為にこれ以上その身を犠牲にしないでほしい。
最終処置された君の体は、今より強力ではあるが、現状態が相手より上回っているとは限らない。
私の同志リストはすでに君のメモリー内、セキュリティ・レベル6の区画に遺してある。
彼らに宛てた遺言もそこにある。
それを伝えておいてほしい。
既に袂を分かった彼らとは目的を共に出来ないかもしれない。
私の意志はそれほどまでに特異であることは自分が良くわかっている。
しかし意図は伝わるだろう。
そして君の生きる道は、そこにあると信じている。
決して無謀な争いにその身を投じるような事はしないでほしい。
私の記憶が君に完全に定着されれば、君が無くしたあの頃の記憶は甦ることだろう。
そしてもう一度あの頃の事を、今度は二人で思い出そう。
私の愛したカタリナへ。
クロム
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最終更新:2017年05月26日 22:04