夢現聖杯儀典:re@ ウィキ

夢現ガランドウ

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
『南条光』



(行っちゃった…)

通学バスに揺られながら、光はライダーの気配が薄れていく感覚を感じていた。
バスに乗車して間もなく、ライダーはサーヴァントの気配をいち早く感じ取り、それとコンタクトを取りたいと願い出てきた。
いろいろあってそのサーヴァントと戦闘にもつれ込む可能性もなくはないものの、光はライダーの強さを信じていたので特に不安もなく送り出すことができた。
今はそのサーヴァントのマスターと協力し合うことができればいいなとでも考えながら、ライダーの帰還を待つ。

ふと後部座席から、通学バスの内部を見渡してみる。
まだ生徒数は少なく、光よりも身長と年齢の大きい者と小さい者が半々の割合で数人いるくらいだ。
学園は小中高一貫という日本でもかなり珍しい制度を持っている。
そのため、学年に比例して生徒数が多いので通学バスも一つではなく、複数のバスが時刻表に従ってB-10から学園への順路を走行するという形をとっている。
現在光の乗るバスはB-10の順路を走り始めてからそれほどの距離を進んでおらず、乗ってくる生徒はまだ少ない。

(ミサカやみんなの家はまだ先かな)

話し相手に恵まれないことを若干呪いつつ、光はバスに揺られながら窓に写る景色を見る。
次のバス停が見えてきた。




 *    *    *
『エレクトロゾルダート』



ミサカ10032号のサーヴァント、「レプリカ」。
彼らの真名は等しく「エレクトロゾルダート」。現在はミサカにより4号5号…と番号をつけられてそれぞれ区別されている。
自我の薄い無我な彼らはマスターこそ絶対と信じ、聖杯を主の手に収めるためにその命令に従い、命を捧げる。
しかし、そんな彼らの中にも自我に目覚めて主の制御から離れた個体も確かに存在した。

ある個体は自身の上に立つ者がドイツ人でないことを不服として組織を乗っ取るため、
ある個体は電光機関により寿命を縮められた同胞達を救う技術を奪取するため。
『彼』は主に反旗を翻した。

その物語の通り、彼らの中にも『彼』が現れるかもしれない。
ミサカの思いに応えて『個』を自覚する者が現れるかもしれない。
が、エレクトロゾルダートの中にまだそれは存在しない。
なぜなら、エレクトロゾルダートは「レプリカ」だから。
明確な自我を持つに至った「個」ではなく、自我に目覚めぬ「群体」の一面が現界しているのだから。
彼らに群体の一面が強く現れたことにより、ゾルダート達が共通して保持していた記憶は残っているものの、自我に目覚めた個体の記憶をはじめ大半の生前の記憶が欠落している。
彼らがミサカに忠実である精神性も、ただ自身を生み出した組織に従うという無我を聖杯に再現された結果なのだ。

いずれは逸話のとおり『彼』は現れるであろう。
だが、それは決してよい結果を生み出すとは限らない。
ミサカは気付いているのであろうか、自身のオリギナールが東洋人であることに。
ミサカはいつになれば夢に見るのであろうか、かつてのゲゼルシャフトで個に目覚めたゾルダートとその結末を。
ゾルダート達の内、何人が気付くのであろうか、自分達の上に立つマスターが東洋人である矛盾を。




 *    *    *
『エレクトロゾルダート14号』



ゾルダート14号は、ミサカのマンションの外から敵襲がないかを見張るために、外へ出ていた。
ミサカは登校の準備、14号以外のゾルダートは家事に従事するために偵察隊が先行して出発した形だ。
14号は、9個の魔力の反応がある方角を見やる。

(行ったか…)

4号から12号…マンションを去っていく8人の仲間を見送った。
ほんの6時間強ほど前にも見たことのある場面だ。
その結果、1号から3号…3人の同胞が、死んだ。
特に3号が消える前の顔は忘れられない。
腹に大きな穴が開き、血まみれになって命からがら逃げおおせてきた3号を最初に発見し、介抱したのは14号であった。

肉体の回復に充てる魔力すら犠牲にしてミサカの元へ戻り、南に本拠地を構えるであろう忌まわしきライダーのサーヴァントの情報を伝え、そのまま3号は力尽きた。
恐らくは3人では太刀打ちできない強大な敵を前にして2人が犠牲となり、その隙に3号は逃げることができたのだろう。

正しい選択だ、と14号は思う。
スリーマンセルで行動する関係上、その場で全員が死んでは無駄死もいいところだ。
偵察とはいえ、戦場では敵とばったり遭遇することもあれば敵の追撃から逃れられないことも当然ある。
人を超えた能力を持つサーヴァントがあちこちにいる聖杯戦争ならば尚更だ。
そんな場合、3人いて全員が敵を殲滅する選択肢を選ぶことなどあってはならない。
必ず全員が、なんとか戦線離脱して偵察の役目を果たすことを視野に入れておかねばならない。
たとえそれが誰かの命を犠牲にする結果になっても、だ。

ましてや自分を含むエレクトロゾルダートは『レプリカ』。いくらでも代えが利く。
最後の1人が死ぬまで、こちら側の敗北は決して有り得ない。
我等が主に勝利を捧げるために、我等は主に心臓を捧げるのだ。

それでも。それでも、だ。
3号が消えていく様を見ていた時、胸に穴が開いたような気持ちになった。
それを代弁するかのようにミサカの表情がいつもよりわずかに曇っていたのを覚えている。

14号の脳裏に浮かんだのは、断片的ながらもかすかに残っている英霊になる前のゾルダートの記憶。欠落した記憶の中で残っている数少ないそれだ。
傷ついてもはや戦えなくなった仲間。分解されていく肉体。金属のボディに組み込まれていく人間の面影を残した残骸。
…それは、負傷したエレクトロゾルダートが電光戦車へと作り替えられた際の記憶だった。

「カメラード(戦友)よ…」

14号は、静かに独り言ちた。




 *    *    *
『御坂妹』



「ミサカ、朝食ができました」
「いつもご苦労様です、とミサカは差し出されたトーストを片手に18号を労います」

白地のエプロンをしたゾルダート18号がミサカに朝食の乗った皿を差し出す。
家事を任されているゾルダートではあるが、料理の担当についてはミサカ自身とゾルダートの内の一人で半々といったところだ。
ゾルダートが料理をする際には、ミサカの知らぬ内にエプロンをしてレシピ本とにらめっこしながら調理するという風習がゾルダート達の中で共通認識となっていた。
朝食の時もエプロンを着用しているが、今日の朝食は食パンをオーブントースターに入れてジャムを塗るだけのトーストだけで、エプロンをつけるほどのものではない。
「いただきます」をしてからミサカはいちごジャムが一面に塗られたトーストを頬張り、間もなくぺろりと平らげてしまった。

「みゃあ」
「だめだ。これ以上与えることはできん」
「みゃあ」
「だめだと言ってるのがまだわからないか!!」
「みゃあ」
「本当に物分かりが悪いな貴様は。これ以上餌を食べては肥満の元になる。ミサカの指示に背くわけにはいかん!」

声のした方へ向くと、15号が空の餌皿を前に鳴く黒猫に向かって話していた。今日の猫の世話の当番は15号だ。
片手にはキャットフードの入った袋があり、餌を食べ終えた黒猫からもっと餌をとねだられているのだろう。

「食べさせてあげてください、とミサカは寛容にペットのおねだりを認めます」
「しかし、ミサカ――」
「確かにミサカは食べすぎないように注意しろとは言いましたが15号は些か気にしすぎです、とミサカは15号の堅さをたしなめます」
「…自分の独断でよろしいのですか?」
「はい、15号の裁量でOKです、とミサカは餌の量はアバウトでいいことを暗に示します」

それを聞いた15号は渋々キャットフードの袋を餌皿に傾け、黒猫の様子を伺いながら餌を追加する。
黒猫は15号の足元で頬擦りしながら「みゃあ♪」と嬉しそうに鳴いている。
餌を入れ終わった15号は困惑しつつ「あまり引っ付くな!」と声を上げていた。

「黒猫か…」
「18号も猫は好きですか?とミサカは好奇心で聞いてみます」
「好き…という言葉の意味はわかりませんが、ミサカの家にいる以上は敵ではないと認識しています」
「…では、ミサカの猫を見ていてどう感じますか?とミサカは敵とかそういう問題ではないだろと内心でツッコミながら言葉を変えます」
「少なくとも、敵意は湧きません。かの戦艦ビスマルクに乗っていた猫も黒猫ですから」
「ほうほう、それは勉強になります、とミサカは18号いきなりの豆知識披露に驚嘆します」

18号と話していると、ベランダから空の籠を持って部屋に戻ってきた19号の姿が見えた。
洗濯物を干し終えて戻ってきたところだろう。



(…あのままミサカのサーヴァントが欠けていけば、ここもいずれは人手不足になるのでしょうか、とミサカは1号から3号の死を見て危惧します)

家事に勤しんでいるサーヴァントのおかげで幾分か賑やかになっているマンションの一室。
彼らはミサカに召喚されたサーヴァント。戦場に立てば主のために電光機関の紫電と共に敵へ向かっていくのだろう。
しかし、明日の朝になれば残り17人のゾルダートの内何人が残っているのであろうか?
ミサカに追加召喚されて同時に現界できるゾルダートは50人…ミサカは勝利を手にするその時まで、何人のゾルダートを召喚するのであろうか?

決して、忘れない。D-6にいるであろうライダーのサーヴァントの犠牲になった3人のゾルダートを。
ほんの小一時間前のことだった。
早朝、14号に就寝中を起こされ、何事かわからぬままパジャマ姿のままマンションの駐車場へと赴いた。
そこには変わり果てた姿の3号が息も絶え絶えに跪いていて。
D-6にいるサーヴァントの情報を全てミサカに伝えた後、3号は糸が切れたかのように倒れ伏し、消滅した。
失意の中、部屋に戻り、他方面から帰ってきたゾルダート達に再度指示を出したのがつい先ほどのことだ。

1人1人を人間として扱い、使い捨てるようなことはしない、と決めていた。
犠牲なき勝利を得ることができるとしたらそれはどれだけ楽なことであろうか。
しかし、ここは戦場。サーヴァントとマスターが一体となって血を血で争う戦争の中に、ミサカはいる。
そしてミサカには、この戦争で負けられない理由がある。
負けないためには己のサーヴァントを使わざるを得ないのだ。
『誰も使い捨てたくない』が『負けないためには使い捨てざるを得ない』ジレンマが、ミサカの肩に重くのしかかっていた。

ふと、時計を見る。もうすぐ出発の時間だった。ゆっくりしている時間はあまりない。
既に制服に着替えているミサカは授業の用意と小型の拳銃の入った学校鞄に肩を通した。




 *    *    *
『超鈴音』



超鈴音は未来からやってきた時空航行者である。
来るべき戦争が勃発する未来を変えるために世界に「魔法」を認識させ、世界の理屈を覆そうとした。
彼女は麻帆良学園中等部1年に入学してから、その願いのために綿密な準備を進めてきた。
伊達に周囲から完璧超人と見られておらず、無数のロボット軍団に地下アジトの所有、超包子の経営、その収益から格闘大会のM&Aをもできるようになるなど、
3年に進級して世界樹の魔力が増幅するまでの僅か2年間でそれらを成し遂げたといえば彼女がいかに優秀か窺い知れよう。

再現された冬木。神楽坂明日菜の家があるB-6区画の地下水道を進むと、広々とした開けた空間に出る。
そこには、モラトリアム期間で鈴音が作成した工房があった。
コンクリート製だった壁と床は合金製のそれに置き換えられ、いかにも遥か未来の進んだ技術を思わせるもはや異空間であった。
たった数日でここまでの工房を作り上げることは、高ランクの陣地作成を持つ鈴音にとってはなんの造作もない。
鈴音がここに陣地を構える決定打となったのは、この地下水道の広場の立地条件である。
この広場は、明日菜の家の真下に存在するのだ。
そのため、マスターと距離を離さず、尚且つ魔力消費を気にせずここに籠ることができるのである。
マスターの明日菜に会いに行くにも真上の家への直通通路は既に開通済みで手間もかからないし、家から発明品を取りに来るにしても十分手の届く範囲だ。

工房の隅には既に完成したロボット・T-ANK-α3改(愛称・田中さん)が数体待機している。
先の麻帆良祭で使用したT-ANK-α3の改良版で、武装に殺傷能力が付加されて正真正銘の兵器となった田中さんだ。
いずれ他のサーヴァントと戦うことになった際は田中さんに働いてもらうことになるであろう。

鈴音はというと、ちょうど改良し終わった強化服を身に纏いながら、その性能テストを行っていた。

「アーイ!」

鈴音の高い声が工房全体に木霊する。
すると、鈴音の拳から電気の光球が発射され、一直線に飛んでいったかと思えば壁にぶつかり微かな振動を起こして大量の火花を散らしながら消えていった。

「――なんて変な掛け声出さないけどネ。電撃で殴るだけでなく飛ばす機能があっても損はない」

鈴音は改良した強化服から飛ばした電撃弾の着弾点を見る。
合金製の壁には円状に黒く焦げた跡が残っていた。これが元のコンクリート製の壁であればその焦げ跡はより広大になり、電気の熱で抉れていただろう。
電撃弾の威力は飛び道具としては合格点と見るべきか。

「温故知新とは言ったものだネ」

次に、鈴音は掌を前に向ける。すると、駆動音と共に鈴音の前に薄い膜のようなシールドが張られた。
これで鈴音の反射能力が追いつく限りは大抵の攻撃を受け止められるだろう。
鈴音が試しているのは、いずれも大きな公園で交戦したレプリカの使っていた技を参考にして強化服に追加した機能だ。
前者はブリッツクーゲルを、後者は攻性防禦を見様見真似で取り入れている。

「おっと…もうこんな時間カ」

鈴音が何やら操作を加えると、強化服の手首の部分からスクリーンが投影され、デジタル時計が表示される。
時刻は既に朝、そろそろ明日菜の登校する時間だ。
数時間前に飛ばした無人偵察機の行方が気になるが、帰ってこないものをいつまでも待っていては時間がもったいない。
己のマスターに付き添うために、鈴音は真上に位置する明日菜の家へ戻ることにした。




 *    *    *
『神楽坂明日菜』



明日菜は、夢を見た。
夢の中に降り立った明日菜が見たのは、ドイツのある街を襲う魔族の大群。そして、自分の目の前にいる、幼い自分自身。
幼い明日菜はこちらに気付いてはいないようだ。昔の自分を見ていると奇妙な感覚に襲われると共に、脳裏にトラウマが蘇る。
明日菜の持つ特別な力。忌まわしき魔を呼び寄せる体質。
遠方から迫りくる魔族達も、幼い自分に引きつけられてこの街を襲っているのだろう。

―――何をしているの。逃げて。早く逃げて!

傍らから見ている明日菜はそう叫びたかったが、何故か声を出せなかった。
すぐそこまで迫った魔族が、幼い明日菜に襲い掛かる。
傍で見ているはずなのに、何もできない。
自分自身が死ぬ光景を見たくない一心で、明日菜は目を覆った。

――…?

目を瞑ってから数瞬経った。
なにも聞こえない。グシャリというグロテスクな音も、何かを刺すような音も。
命が奪われる時に鳴る不快な音が一向に出てくる気配はない。
おそるおそる目を開けてみる。
明日菜は己の目を疑った。

ネギ。木乃香。いいんちょ。刹那さん。それだけではない、2-Aの皆が、幼い明日菜を守るために魔族の前に立ちはだかっていた。




『こんにちは、アスナ』
『これは夢だ』
『もう現実になることはない』




「ん…」

朝。ベッドの上で目を覚まし、明日菜は上体を起こす。
両手を上にあげ、体を伸ばしてみる。二の腕に溜まっていた疲労感がなくなっていく感覚が心地よい。

「なんで、あの時言えなかったんだろ…『助けて』って」

見ていた夢のことはまだ記憶に残っている。
明日菜もこれは胸を張って「いい夢だ」といえる内容だ。
すべてが丸く収まり、ハッピーエンドへ導かれるような…。
だが、何故だろう。とてもいい夢のはずなのに。皆が助けに来てくれてとても嬉しかったのに。
決して正夢――それが現実になるとは考えられなかったのだ。
あれは所詮夢。生きるには聖杯戦争を勝ち抜いて――。

「…っ!」

明日菜は首をぶんぶんと横に振ってそれ以降考えるのをやめた。
傍らにあるベッドサイドテーブルに置いてある目覚まし時計を見ると、登校の時間が迫っている。
そろそろ支度しないと通学バスに遅れてしまう。
ベッドから降りて時計の隣にあるパクティオーカードを手に取り……。

「…あれ?このカード、昨日見た時に比べて随分とデザインが貧相に…」

あのオコジョの力を借りて担任のネギと仮契約した時に渡されたパクティオーカード。
本来、カードにはやたらでかい剣を持つ明日菜の絵とよくわからない文字がたくさん描かれているのだが、
今明日菜が手に取っているパクティオーカードには真ん中に描かれている以外の文字列が全て消えてしまい、イラストが寂しくなっていた。

「おはよう、明日菜サン。よく眠れたカ?」
「…超さん」

明日菜へ声をかけた人物の方へ目をやると、寝室のドアの前に鈴音が立っていた。
笑顔で手を振りながら近づいてくる。気楽な人だ、と明日菜は思った。
鈴音を見ると浮き出てくるステータスが明日菜のサーヴァントであることを示している。

「元気がないヨ?いつもの明日菜サンらしくないネ。例えこの世界の全てが偽物でも『いつもどおり』を演じなければいずれは狙われる」
「……」

そうだ。いつもどおりに朝起きて、いつもどおりに通学バスに乗って登校して、いつもどおり2-Aの皆に会って。
自分がいつもどおりでないと。

「学園は冬木中の学生が集まってくる。それはつまりマスターが紛れ込んでいる可能性もそれだけ高くなるということ」

たとえ明日菜に覚悟ができていなくとも、聖杯戦争に乗り気な敵は平気でその命を狙ってくるのだ。
鈴音の言っていたように、殺したくないという想いも一つのエゴだ。
敵にとって、明日菜がどう思っていようと死にゆく者の想いなどどうでもよいのだから。

「…わかってる。いつもどおり、ね」

何とか快活に振る舞ってみようと、本心とは裏腹に笑顔を作って見せる。
が、どうやら作り笑いであることがバレバレらしく、鈴音はやれやれといった顔で溜め息をついていた。

「ネギ坊主がいないと、寂しいカ?」
「な、なんでネギがそこで出てくるのよ」
「麻帆良での明日菜サンの朝にはいつも木乃香サンとネギ坊主がいただろう?」
「……」

明日菜にそれを否定することはできなかった。
戻りたいと望んでいる麻帆良での日々。朝起きて、バイトに行く前には必ず同室のネギと木乃香と顔を合わせていた。
だが、今はどうだ。明日菜に与えられた役割は、両親のいない1人暮らしの学生。
いつも傍にいたはずのネギは、木乃香は、学園に行かないと会うことができない。

「いざとなたら、私が守るヨ。マスターに死なれては聖杯を獲るどころではないからネ。だが、明日菜サンも死なない努力くらいはして欲しい」

それに明日菜はゆっくりと首を縦に振り肯定の意を表した。
明日菜自身も死にたくないと強く望んでいるのでそれを断る理由はない。

「確か明日菜サンはネギ坊主と仮契約していたネ?カードがあるはずだが」
「それって、これのことよね?」
「そうそう!もし1人の時にアサシンのようなサーヴァントに襲われたらアーティファクトで応戦して時間を――」

――稼いでほしイ。
鈴音がそう言おうとしていたことは分かった。
だが、明日菜の持つパクティオーカードを見て、鈴音は目を見開いた。





「…………」





「……超さん?」

しばらくの静寂。そして先ほどまで笑顔であったはずの鈴音の顔が驚愕の色に変わり、そこから微動だにしない。
明日菜もクラスメートの鈴音を1年以上見てきたが、彼女のここまで驚いた顔を見るのは初めてだ。
あまりのことに明日菜も戸惑ってしまい、鈴音に何があったのか聞くことも憚られた。

「…明日菜サン、すまナイ。ネギ坊主はいつ頃学園に来る?」
「…へ?えっと…この世界のネギのことよね?ここでも2-Aの担任で職員会議もあるから私よりは早く来てる、と思うけど――」
「もし危険なことになたら明日菜さんのスマートフォンで連絡を入れて欲しい。本当に急を要するなら令呪を使てもいいヨ」
「え!?あの――」
「大丈夫。私もスマートフォンは持てるし連絡先も入れてあるネ。すまないが急用を思い出した。学園で落ち合おう」
「ちょっと超さん――」

鈴音は突如マシンガンのように明日菜へ必要なことを伝えてすぐに霊体化してどこかに行ってしまった。
明日菜はただ1人、呆然として寝室に立ち尽くしていた。

「私、まだスマートフォン使い方わからないんだけど…」

明日菜のいた年代は、西暦2003年。
まだスマートフォンがこの世に出回ってすらいなかった世代の明日菜には、スマートフォンも未来人の発明品に見えた。




 *    *    *
『超鈴音』



鈴音は『ステルス迷彩付きコート』に念のための『時空跳躍弾』を数発備え、鈴音はサーヴァントとして出し切れるだけの速度を出して学園へ向かっていた。

(まさか、ネギ坊主は……)

鈴音が見た明日菜のパクティオーカードは、『死んでいた』。
カード内の枠線と文字情報のほとんどが消去されたカードが意味するものは、『契約を結んだ魔法使いの死』。
鈴音の中で一つのあり得た可能性が浮上してくる。
もし、ネギがマスターで明日菜と同じ世界の人間だったならば――。

(早急に事実関係を把握する必要があるネ)

「いざとなったら私が守る」といっておきながら、明日菜の傍につくことを放棄してでも確かめなければならないことが
あった。
ネギが死ぬということは、明日菜の戻るべき世界が死ぬということ。
仮に明日菜が麻帆良に戻ることができても、もうそこにネギが帰ってくることはない。

今の明日菜がそれを知ったら、どうなるだろうか。
聖杯を狙う覚悟をしてくれるならばありがたいが、絶望して何もかもを投げ出してしまうことも十分あり得る。
マスターが後者のようになってしまうのは、サーヴァントの身としては何としてでも避けたい未来だ。
もしネギの死が本当だとすれば、明日菜のメンタルケアを行うことも考えなければならない。

(ネギ坊主…)

だが、それ以上に。
平行世界の人間とはいえ、自らの全てを賭した計画を止めるに至ったあのネギが、戦争が開幕して半日も経たない内にあっさり死ぬなど。
鈴音には到底納得のできるものではなく、この目で確かめないと信じられなかった。


【B-6/神楽坂明日菜の家付近/1日目・午前】

【キャスター(超鈴音)@魔法先生ネギま!】
[状態]霊体、魔力消費(若干)
[装備]改良強化服、ステルス迷彩付きコート
[道具]時空跳躍弾(数発)
[思考・状況]
基本行動方針:願いを叶える
1.ネギ坊主…
2.明日菜が優勝への決意を固めるまで、とりあえず待つ
3.それまでは防衛が中心になるが、出来ることは何でもしておく
4.学園へ行き、ネギの死を確かめる
[備考]
・ある程度の金を元の世界で稼いでいたこともあり、1日目が始まるまでは主に超が稼いでいました
・無人偵察機を飛ばしています。どこへ向かったかは後続の方にお任せします
・レプリカ(エレクトロゾルダート)と交戦、その正体と実力、攻性防禦の仕組みをある程度理解しています
・強化服を改良して電撃を飛び道具として飛ばす機能とシールドを張って敵の攻撃を受け止める機能を追加しました
・B-6/神楽坂明日菜の家の真下の地下水道の広場に工房を構えています
・工房にT-ANK-α3改が数体待機しています




 *    *    *
『南条光』



黄金のコスチュームを身に纏ったヒーローが、巨大なカギ爪を取り付けた屈強な悪漢と単身で対峙している。

――ディフレクトランス。

ヒーローが一度飛び退いた後に壁を蹴り、その反動を利用して強力なキックを悪漢に浴びせた。

――回転攻撃。

悪漢が自分の身体を軸に高速回転し、巨大なカギ爪でヒーローを切り刻む。
しかし、ヒーローは止まらない。

――アル・ブラスター。

光り輝く無数の光球がヒーローから発射され、悪漢を集中して射抜いた。

――クロービット。

悪漢の両腕がカギ爪ごと分離し、その両腕がヒーローに迫り、身体を抉られ血が噴出する。
尚もヒーローは止まらない。

「オレ様の頭には、小此木の脳が埋め込まれてあるんだ!」

「やれるか、アルカイザー!オレ様をやれるか!!」

劣勢に陥った悪漢が小此木博士(ヒーローの実の父)を盾にする。
されど、ヒーローは止まらない。
確かに、彼は当初は復讐のために仇敵と戦っていたかもしれない。
だが、この戦いは復讐のためではなく正義のための戦いなのだ。
ゆえに、ヒーローは止まるわけにはいかない。

――アル・フェニックス。

ヒーローが炎を纏って悪漢へと突き進み、その巨体を貫いた。



今の年代にしてはレトロな部類のグラフィックをしたヒーローが勝利のポーズを取り、
戦闘画面から切り替わると同時に何も言わずに去っていく。ただの歩くモーションの筈なのに、その姿はどこか悲しそうだった。



「やった!勝ったよ、紗南!!」
「光ちゃん、声でかいって!」

通学バスが冬木大橋を超えようかという頃、光は数が多くなってきた生徒に紛れながら隣にいる少女の持つ携帯ゲーム機の画面を見て、
そのゲームの展開に熱くなってしまいつい声を出しすぎてしまった。
光の隣に立つ、携帯ゲームで一昔前のRPGをプレイしていた少女は三好紗南といった。
濃紺色の髪を三つ編みにしている少女で、ゲーム好きで有名な光のクラスメートだ。
彼女はミサカ以外の生徒の中では割とよくしゃべる間柄だ。
長らく話し相手に恵まれなかった光だが、紗南が偶然一緒のバスに乗ってきたことで現在に至る。

「まあでも、声が大きくなるのも仕方ないかな。サガフロのレッド編って光ちゃん好きそうだもんね」
「なんだかヒーローになりきれてる感じがしてよかったなー」
「そりゃRPGだもん。キャラに感情移入してなりきるのが楽しみの一つだしね!」

『サガフロンティア』というRPGゲームの中に登場するヒーロー、小此木烈人こと『アルカイザー』。
光がよく見る特撮やヒーローショーとは違い、全面がイベントパートというわけではなくプレイヤーが操作する場面が多いが、
台詞が少なめな分、操作しているキャラになりきれるのはドラマやアニメとはまた違う楽しみがある。
そして特撮ヒーローを題材にしたシナリオと演出だけあって、光にもそれを十分に理解できた。

(でも…アタシは「なりきる」だけじゃダメなんだ)

南条光は、現実でも正義の味方であろうとしている。
聖杯戦争が開幕して初日。ひとまずは他のマスターの動きを見るつもりだが、学園に通う者は皆、光にとって大切で守らねばならぬ存在。
仮に彼らを傷つける者が現れたならば、正義の味方として動くことを光は心に決めていた。

そうこうしているうちにバスが速度を落とし、紗南も一緒に慣性に引っ張られて体が少し前のめりになる。
生徒の間から見えるバス停を除くと、そこには光の一番守りたい親友が待っていた。



 *    *    *
『御坂妹』



マンションを出て、そこそこ高層な住宅が立ち並ぶ住宅街を抜けると、大通りに出る。
新都への通勤のため車のラッシュが絶えない車線の反対側、歩道に備え付けられたバス停を見据えて向かう。
既にそこそこの数の生徒がたむろしていた。
ミサカはその集団の中に入り、通学バスを待つ。

聖杯戦争開幕の初夜にしてサーヴァントに欠員が出てしまったこと以外は、モラトリアム期間と同じような朝だ。
女の子がつけるにしては物騒なゴーグルを身に着けて南条光と通学バスで挨拶を交わす。
バスの中で光のおしゃべりを聞いているといつの間にか学園に着いており、学生らしい1日が始まる。
それは聖杯戦争が始まっても変わらない。マスターであるミサカも他の学生と同じく、登校の路についていた。
マスターと気付かれぬよう日常を送るためでもあるが、例えば学園のような大多数の人が集まる施設へ赴くことも重要だ。
人が多ければ多いほど、そこにマスターがいる可能性は大きくなる。
無論人殺しに積極的な者に出くわす可能性も否めないが、協力者を求める以上その程度のリスクは承知の上だ。

バスを待つ中で、ミサカは思案する。
学園に着いたらひとまずは誰がマスターかを探っていきたいが、
1人1人に「あなたはマスターですか?」などと聞き回っていては『妹達』が100人いても足りないし、自殺行為であろう。
まだ確実な方法は見つけてはいないが、案はある。体育及び水泳の着替えの時間を利用するのだ。
今日の授業に体育があるかはわからないが、マスターである証拠の一つとして、身体のどこかに刻まれている令呪がある。
着替えの時間中に、霊体のゾルダート達に生徒1人1人の肌身を見てもらい令呪の有無を確認する、というのがミサカの考案した案だ。
実際のところそれはセクハラ以外の何物でもないのだが、羞恥心に欠けるミサカは特に気にしていない。

『バスが来ました。くれぐれも実体化しないよう心がけてください、とミサカは注意を促します』
『『『『『『『『了解しました』』』』』』』』

ミサカは後ろを霊体となってついて回る13号から20号へ念話を送る。
護衛といっても、勝手に実体化されて姿をNPCに視認されては今後の作戦行動に支障が出かねない。
通学バスがミサカの前へ停車すると、バスの中でこちらに向かってゆらゆらと揺れる手の平が見えた。
それは何もオカルトなそれではなく、後部座席の方から小柄な人物がミサカへ向かって手を振っていることがわかる。
十中八九その手の持ち主は南条光だろう。
ミサカはバスに搭乗すると、生徒を押しのけて後部座席の方へ向かった。

「ミサカ、おはよー!」
「おはようございます、とミサカは元気いっぱいに挨拶を交わします」
「元気いっぱいには見えないけど、そのしゃべり方とFPSをガチにやってそうなゴーグルは相変わらずだね」

感情の籠らない声色で「元気いっぱい」と言ってのけたミサカに紗南が苦笑いしながら挨拶する。

「この人混みでよくミサカがわかりましたね、とミサカは光の視力のよさに驚きを示します」
「そのゴーグルを見ればどこにいてもミサカだってわかるよ!」
「実際オプティックブラストとか平気で出し――ん?」

停車したバスが出発し速度が他の乗用車と同等になりかけた時、紗南が言い終わる前に車窓の外である異変に気付いた。

「どうかしたのか?」
「あれ……」

紗南が指さした方向をミサカと光はつられて見る。
激しく揺れ動きながら、車道を走るバスに追いついてくるもの。
いや、ものではなく人だ。
甘橙色のツインテールの髪を持つ少女が生身でバスに追いつく速度で走っていた。
何やら大慌ての様子でバスに向かって何かを叫んでいる。

「アスナさん!?」

光が信じられないというような表情を浮かべて車窓の外を見た。

「『お願いだから待ってー』と言っています、とミサカは唇の動きを読んで冷静に分析します」

その少女はミサカのクラスメートの一人でもある、神楽坂明日菜であった。

「‥‥すごい女だ。」

紗南の絞り出した言葉には畏敬の念が含まれていた。




 *    *    *
『神楽坂明日菜』




走り続けた疲労のせいで、明日菜は肩で息をしている。
バスを無理矢理止めたのが恥ずかしかったからか、後部座席の方へ進んだ。
そして目の前に現れたのは、運悪く生前で面識のないクラスメートだった。

「な、なんとか乗れた…」

危うく通学バスを1本逃すところだった。
スマートフォンの操作に悪戦苦闘していたら時間を多く食ってしまい、バスを追いかけていらぬ体力を消耗する羽目になってしまった。
結局あれから鈴音は戻ってくることなく、彼女が言っていた通り学校で落ち合うことにした。
一応電話のかけ方はマスターできたので学校に着いたら電話するべきだろう。
目の前にいるのは、いずれも生前の2-Aにはいない、けれどもキワモノ揃いの2-Aに在籍していてもおかしくない3人だった。
バス内を見回してみるが、いいんちょや本屋ちゃんは愚か、木乃香や刹那さんもこのバスには乗っていないようだ。

「あなたの脳内には常時アドレナリンが分泌されているのですか、とミサカはその超人的な身体能力にドン引きします」

いつになく毒舌を吐くミサカに明日菜は「うっさい!」と返す。
もちろん「いつもどおり」を意識して、だ。

「でもアスナさんみたいな力出せたら本当にライダーキックみたいな必殺技出せそうだよな!」
「あんたら私を何だと思ってんのよ!」

いつもどおり…だと思いたい。
この2人はネギの持つクラス名簿を見た記憶によれば、確か御坂美琴に南条光という名だったか。
身長も性格も正反対のようで意外と意気投合しており、2人でつるんでいるところをよく見かける。所謂デコボココンビというやつだ。

「最近物騒っていうけどアスナさんなら何とかしちゃいそうな気がするよね」
「いい加減に…!…まぁ、ネギ――じゃない方の子供先生も気をつけてって言ってたわね」

三好紗南。学園に来るときは教科書を忘れても携帯ゲーム機は忘れない筋金入りのゲーマーだ。
ここでいう「ネギじゃない方の子供先生」とは高等部の先生をしている月詠小萌先生のことだ。
容姿・実年齢が共に子供のネギに対して、小萌は実年齢の方は割とすごいことになっているため、一部では子供先生(仮)と言われているとかいないとか。
それはさておき、紗南の言った通り、最近は冬木での殺人や行方不明者の数が急増している。
学園側もそれを見越してか、毎回の朝礼の最後には教師陣を代表して月詠小萌先生が注意喚起をしている。
鈴音の言っていたことを考慮すれば、殺しに積極的な主従が原因であろうことは容易に推測できた。
そいつらを前にしてマスターであることがばれれば、それは死に繋がる。

(今は、今は「いつもどおり」を……!)

たとえこの世界が偽物でも、違和感があっても、居心地が悪くても、決断を先延ばしにして生きるには『演じる』しかない。

明日菜は知らない。
学園の中等部2-Aは担任のネギとここにはいない長谷川千雨を含めると計5人ものマスターが在籍する魔境であることを。
ネギはもう既に死亡しており、明日菜の帰るべき世界は聖杯の奇跡をもってしない限り永遠に元に戻らないことを。




 *    *    *
『南条光』



「最近物騒っていうけどアスナさんなら何とかしちゃいそうな気がするよね」
「いい加減に…!…まぁ、ネギ――じゃない方の子供先生も気をつけてって言ってたわね」

それを聞いて、光の顔がほんの少しだけ神妙さを帯びる。
巷では、殺人や行方不明になる者が続出しているという。
特に行方不明の件に至っては数十人規模となっており、被害者の社会的地位もかなりバラつきがある。
今の光ならばわかる。ここ最近の事件は全てサーヴァントの仕業に違いない。ライダーに意見を聞いても同じ答えが返ってくるであろう。

そして今日、モラトリアム期間は終わり、聖杯戦争が開幕した。
他のマスターも動き始めるはずだが、それはつまりサーヴァント同士の戦闘も起こりやすくなるということ。

これについて、光の心の中にはある不安があった。
サーヴァント同士の戦闘は、例えば地震には震源があるように、そこにサーヴァントがいればいつ起きてもおかしくない。
つまり、サーヴァントを従えているマスターもその戦闘の引き金になりかねないのだ。
仮に今、ライダーが帰ってきて敵サーヴァントが襲ってきたとしたら、ミサカはどうなる?紗南はどうなる?アスナさんはどうなる?バスに乗っている人達はどうなる?
守りたい人達を戦闘に巻き込んで傷つけては、本末転倒もいいところではないか。
無関係な人を、巻き込むわけにはいかない。

「―――」
『…なあミサカ、もしミサカが悪いヤツに襲われたら、アタシが絶対に守るから』

喉から出かかったミサカへの言葉をなんとか飲み込む。
そんなことを言わなくても、守ることになるのは同じだ。
それを言ってミサカに近づきすぎてしまうと、奇襲を受けた時にミサカが傷つくかもしれない。
ともすればミサカは自分を囮にして光を助けるかもしれない。自分を軽んじるような人ではないけれど、ミサカは優しいから。
たとえこの世界にしか存在しない親友であっても、モラトリアム期間だけでの付き合いであっても。
大切な親友を巻き込みたくはなかった。
光はミサカがマスターだとは夢にも思わない。いや、思うことを心のどこかで拒んでいるのかもしれない。




 *    *    *
『御坂妹』



「最近物騒っていうけどアスナさんなら何とかしちゃいそうな気がするよね」
「いい加減に…!…まぁ、ネギ――じゃない方の子供先生も気をつけてって言ってたわね」

それを聞いて、ミサカはここ最近で起こる殺人や行方不明事件について頭を巡らせる。
明らかに件数が増加しており、大方行動を開始したサーヴァントの所業であろうと見て取れる。
開戰が告げられて1日目の午前だ。NPCの見ている所で堂々と戦闘するなんてことを考える主従は少ないだろうが、用心するに越したことはないだろう。

だが、それ以上に気を付けなければならないのが、親友の光を始めとする周囲の人達の安全の確保だ。
ミサカには自分の命やゾルダート達1人1人を大切にしていきたいという想いがあるが、それと同じくらいに周囲の人達に死んでほしくないと願っている。
自分、サーヴァント、NPC。全てに生きていて欲しいと願うとはなんと欲張りなことであろうか。
ここは戦場なのに。英霊達が血みどろの戦いを繰り広げる中でNPCは魔力の糧程度に見られて然るべきなのに。
それでも、ミサカを救ったあの人ならば、迷わずその道を選ぶであろうことはわかっていた。

何よりも消耗品として扱われ、救われた後も病院暮らしを余儀なくされていたミサカに学生としての生活を彩ってくれた彼らが、道具のように扱われて死んでいくのは我慢ならない。
ミサカを取り巻くNPCはミサカの味わったことのない『日常』の象徴なのだ。
特に何にも代えがたい存在が、親友の南条光。
ミサカにおしゃべりの過程で様々なことを、そして喜びを教えてくれた彼女だけは、絶対に死なせたくない。
彼女がたとえ偽物だとしても、だ。

だからこそ、サーヴァントが絡んでいると思われる事件に遭遇した場合は、
光から距離を取ってできるだけ巻き込まないようにする必要がある、とミサカは敢えて冷徹な思考をする。
敵サーヴァントと戦闘に入った場合、ゾルダート達に気を配りながら光を守ることはミサカといえども難しい。
ならば、敢えてNPCである光から自分が囮になることで敵サーヴァントを引きつければいいという結論に達した。
ミサカは光がマスターだとは夢にも思わない。いや、思うことを心のどこかで拒んでいるのかもしれない。

【C-4/通学バスの順路・通学バス車内/1日目・午前】

【神楽坂明日菜@魔法先生ネギま!(アニメ)】
[状態]疲労(小)
[令呪]残り3画
[装備]学園の制服
[道具]学校鞄(授業の用意が入っている)、死んだパクティオーカード、スマートフォン
[金銭状況]それなり
[思考・状況]
基本行動方針:死にたくない
1.皆がいる麻帆良学園に帰りたい
2.でもだからって、そのために人を殺しちゃうと……
3.とりあえず、キャスター(超鈴音)と学園で落ち合う
4.キャスターは何しにいったんだろう?
[備考]
・大きめの住宅が居住地として割り当てられました
・そこで1人暮らしをしています
・鈴音の工房を認識しているかどうかは後続の書き手にお任せします
・スマートフォンの扱いに慣れていません(電話がなんとかできる程度)


【御坂妹@とある魔術の禁書目録】
[状態]健康
[令呪]残り3画
[装備]学園の制服、専用のゴーグル
[道具]学校鞄(授業の用意と小型の拳銃が入っている)
[金銭状況]普通(マンションで一人暮らしができる程度)
[思考・状況]
基本行動方針:元の世界へ生還する
1.協力者を探します、とミサカは今後の方針を示します
2.そのために周辺の主従の情報を得る、とミサカはゾルダートを偵察に出します
3.偵察に行ったゾルダート達が無事に帰ってくるといいのですが、とミサカは心配になります
4.学園で体育の着替えを利用してマスターを探ろうか?とミサカは思案します
5.光を巻き込みたくない、とミサカは親友を想います
[備考]
・自宅にはゴーグルと、クローゼット内にサブマシンガンや鋼鉄破りなどの銃器があります
・衣服は御坂美琴の趣味に合ったものが割り当てられました
・ペンダントの購入に大金(少なくとも数万円)を使いました
・自宅で黒猫を飼っています


【レプリカ(エレクトロゾルダート)@アカツキ電光戦記】
[状態](13号~20号)、健康、無我
[装備]電光被服
[道具]電光機関、数字のペンダント
[思考・状況]
基本行動方針:ミサカに一万年の栄光を!
1.ミサカに従う
2.ミサカの元に残り、護衛する
[備考]


【南条光@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]学校鞄(中身は勉強道具一式)
[金銭状況]それなり(光が所持していた金銭に加え、ライダーが稼いできた日銭が含まれている)
[思考・状況]
基本行動方針:打倒聖杯!
1.聖杯戦争を止めるために動く。
2.学校に向かい、そこで他のマスターの動きを待つ。
3.無関係な人を巻き込みたくない、特にミサカ
[備考]
・C-9にある邸宅に一人暮らし。





|BACK||NEXT|
|025:[[地を舐め、天を仰ぐ]]|投下順|027:[[設問/誰かの記憶]]|
|025:[[地を舐め、天を仰ぐ]]|時系列順|000:|

|BACK|登場キャラ|NEXT|
|012:[[過去と未来の邂逅]]|キャスター(超鈴音)||
|001:[[プラスチックのようなこの世界を]]|神楽坂明日菜||
|019:[[盤面上の選択者達]]|御坂妹||
|023:[[戦闘/力の顕現]]|レプリカ(エレクトロゾルダート)||
|010:[[正義の味方]]|南条光||

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
ウィキ募集バナー