ラノロワ・オルタレイション @ ウィキ
only my railgun (前編)
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only my railgun (前編) ◆UcWYhusQhw
――――Two men look out through the same bars one sees the mud, and one the stars.
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「どう見る?」
「まぁ……ブラフの可能性が高いだろ。ありゃ露骨過ぎる」
相棒、クルツ・ウェーバーはつまらなそうに、言葉を返す。
彼はある一点にずっと意識を傾けながらも、宗介と話していた。
話していた内容は、先程流れた放送。
『人類最悪』から語れた死者とヒント。
その中にあった一つのヒント、『俺はお前たちの上にはいない。あらゆる意味において俺はお前たちより下の存在だよ』
その言葉について、彼らは話していた。
彼はある一点にずっと意識を傾けながらも、宗介と話していた。
話していた内容は、先程流れた放送。
『人類最悪』から語れた死者とヒント。
その中にあった一つのヒント、『俺はお前たちの上にはいない。あらゆる意味において俺はお前たちより下の存在だよ』
その言葉について、彼らは話していた。
「肯定だ。もし俺達の考えを否定するだけならば……あまりに稚拙すぎる。仮にもこの企画をたてた人間が言う言葉ではないな」
宗介達が立てた仮説は人類最悪は、自分達のもっと上。
そう、例えば空にいるのではないかという仮説を立てていた。
その為に、空に飛ぼうかと考えた、その矢先の事である。
タイミング的には余りにもピッタリで、逆に露骨過ぎて怪しい。
それ故に、ブラフである可能性が高いと踏んだのだ。
そう、例えば空にいるのではないかという仮説を立てていた。
その為に、空に飛ぼうかと考えた、その矢先の事である。
タイミング的には余りにもピッタリで、逆に露骨過ぎて怪しい。
それ故に、ブラフである可能性が高いと踏んだのだ。
「とはいえ、散々意味ありそうげな事を吐いてた狐ヤローがブラフだけで、あんな事言う訳ねーだろ」
「じゃあ、何だ?」
「さあ……本当に、『下』なのかもしれないな? 例えば立場とか……まあ色々あるだろ」
「ふむ?」
「別に、あいつは『所在地』が下とは言ってない。だから立場とか立ち位置が下……って事もあるかもしれないって話だ」
「つまりは『人類最悪』は下っ端だから捕まえても意味がない事も言える……という事か」
「そーいうこと」
「じゃあ、何だ?」
「さあ……本当に、『下』なのかもしれないな? 例えば立場とか……まあ色々あるだろ」
「ふむ?」
「別に、あいつは『所在地』が下とは言ってない。だから立場とか立ち位置が下……って事もあるかもしれないって話だ」
「つまりは『人類最悪』は下っ端だから捕まえても意味がない事も言える……という事か」
「そーいうこと」
しかしながら、ただブラフだけのヒントとは言い切れない。
他にも何か明確なヒントがあるはずだとクルツは考察する。
人類最悪は上には居ない、下の存在とはいったが、それが所在地である事を言った訳ではない。
だからこそ、例えば、『序列』と言った『立ち位置』などが下という可能性だって充分にありえるという事だ。
つまり、人類最悪のヒントを辿れば、人類最悪は所詮下っ端の存在でしかないという事になる。
人類最悪の言葉は、大切な所だけを誤魔化している、そういう奴だとクルツは思う。
他にも何か明確なヒントがあるはずだとクルツは考察する。
人類最悪は上には居ない、下の存在とはいったが、それが所在地である事を言った訳ではない。
だからこそ、例えば、『序列』と言った『立ち位置』などが下という可能性だって充分にありえるという事だ。
つまり、人類最悪のヒントを辿れば、人類最悪は所詮下っ端の存在でしかないという事になる。
人類最悪の言葉は、大切な所だけを誤魔化している、そういう奴だとクルツは思う。
「けどまぁ……そう、考え巡らしたした所で、現状何かを判断を下す事はできねー」
「……まあ、肯定だ。迂闊に行動すれば、首を絞められるのは自分自身だ」
「だから、結局そーいうのは……俺達の『上官』テッサちゃんの意見を聞いて彼女に決断してもらう……というのがいいんじゃねえの?」
「だろうな……結局の所、合流を急ぐ他無い……という事か」
「……まあ、肯定だ。迂闊に行動すれば、首を絞められるのは自分自身だ」
「だから、結局そーいうのは……俺達の『上官』テッサちゃんの意見を聞いて彼女に決断してもらう……というのがいいんじゃねえの?」
「だろうな……結局の所、合流を急ぐ他無い……という事か」
宗介がそのクルツの言葉に重々しく頷く。
やはり、現状では情報が不足している。
今の段階で早急な判断を下すのは好ましくない。
ならば、二人は情報を集め上官であるテレサ・テスタロッサに判断を仰ぐのが一番好ましい答えであろう。
それが『兵隊』である宗介達の役目なのだから。
やはり、現状では情報が不足している。
今の段階で早急な判断を下すのは好ましくない。
ならば、二人は情報を集め上官であるテレサ・テスタロッサに判断を仰ぐのが一番好ましい答えであろう。
それが『兵隊』である宗介達の役目なのだから。
「それと死者だが……随分減ったな」
「三人か……まあ、考えられる原因は幾つか思いつくな」
「まず、挙げられるのは二回目の放送で殺す側の人間が多く死んでいたかもしれないという事。これなら俺達にとって随分嬉しい事になるけどな」
「次いで挙げられるのは正しく俺達と一緒で殺し合いに乗った連中が休憩に当てた……という事か」
「だな。これも有り得るけど……しかし俺達みたいのは、これ位余裕だろ」
「肯定だ。二三日程度なら過酷を伴うが、継続して戦う事は出来る」
「三人か……まあ、考えられる原因は幾つか思いつくな」
「まず、挙げられるのは二回目の放送で殺す側の人間が多く死んでいたかもしれないという事。これなら俺達にとって随分嬉しい事になるけどな」
「次いで挙げられるのは正しく俺達と一緒で殺し合いに乗った連中が休憩に当てた……という事か」
「だな。これも有り得るけど……しかし俺達みたいのは、これ位余裕だろ」
「肯定だ。二三日程度なら過酷を伴うが、継続して戦う事は出来る」
今回読み上げられた死者の数はたった三人。
それは殺し合いに乗らない、宗介達にとっては好ましい事柄だった。
考えられる原因は、一~二回放送の間に殺し合いに好意的な人間が相次いで脱落した可能性がある事。
そして宗介達と同じく休憩にこの時間帯を回したという事。
とはいえ、戦闘の熟練者であるならば、何時間も継戦出来る事も確かだ。
例えば、クルツのような狙撃手ならば、好機を待つ為に何時間もその場で待機する事だってありえる。
それは殺し合いに乗らない、宗介達にとっては好ましい事柄だった。
考えられる原因は、一~二回放送の間に殺し合いに好意的な人間が相次いで脱落した可能性がある事。
そして宗介達と同じく休憩にこの時間帯を回したという事。
とはいえ、戦闘の熟練者であるならば、何時間も継戦出来る事も確かだ。
例えば、クルツのような狙撃手ならば、好機を待つ為に何時間もその場で待機する事だってありえる。
「まぁ今は人数より……呼ばれた『人』だな」
幾つか減った要因は考えられるが、今はそれは重要ではない。
宗介達のグループにとって大切なのは呼ばれた『人物』だ。
呼ばれた三人の中で関わりがあるのは二人。
その内の一人の問題は完全とはいえないが、大方解決している。
そして、残り一人。
宗介達のグループにとって大切なのは呼ばれた『人物』だ。
呼ばれた三人の中で関わりがあるのは二人。
その内の一人の問題は完全とはいえないが、大方解決している。
そして、残り一人。
「御坂美琴……か。聞くところによればこの島でも有力な実力者だったらしいな」
そして、
「ああ……そして、黒子ちゃんの大切な『お姉様』らしい」
白井黒子が敬愛し、大切に思っている、お姉様。
そのお姉様を、白井黒子は失った。
クルツと宗介の目線の先には――――
大切な人を喪失した思いに押しつぶされそうな、小さな少女が、震えている身体を必死に押さえていた。
なんだ、この様か。
わたしが震える身体を抑えている白井黒子を見た思った事が、それだった。
薄情かもしれないけど、そう思わずにはいられない。
わたしに大見得切った彼女が、こんなにもうちひしがれているなんて。
仕方ない……とはいえ、無様にも思える。
わたしが震える身体を抑えている白井黒子を見た思った事が、それだった。
薄情かもしれないけど、そう思わずにはいられない。
わたしに大見得切った彼女が、こんなにもうちひしがれているなんて。
仕方ない……とはいえ、無様にも思える。
無事にというか何の苦も無く、ティーさんを連れて帰還した白井黒子がこんな無様な状況になったのはほんの少し前。
人類最悪からの放送で、あっけなく呼ばれた名前。
御坂美琴という白井黒子の大切な人間の死が、現状を作り出す。
あれだけ余計な事を喋る彼女が一言も話さず肩を抑えていだけで。
そのまま彼女は黙って外に出て、独りぼっちで震えていた。
何故だか解らないけど、わたしは彼女を追っていた。
そして、今に至る。
わたしは震える彼女の背を見ながら口を開く。
人類最悪からの放送で、あっけなく呼ばれた名前。
御坂美琴という白井黒子の大切な人間の死が、現状を作り出す。
あれだけ余計な事を喋る彼女が一言も話さず肩を抑えていだけで。
そのまま彼女は黙って外に出て、独りぼっちで震えていた。
何故だか解らないけど、わたしは彼女を追っていた。
そして、今に至る。
わたしは震える彼女の背を見ながら口を開く。
「さて、貴方はどうするんです?」
「ねぇ、貴方……わたしが以前言った言葉憶えてるかしら?」
「貴方はただ単純に『覚悟』がなってないだけと……ねぇ?」
わたし自身に、その『覚悟』があったかどうかなんて今は定かではないけど。
そんな事は今は置いておく。
だから、わたしは今、彼女に聞いておきたい。
そんな事は今は置いておく。
だから、わたしは今、彼女に聞いておきたい。
「まさか…………『御坂美琴が死なない』なんて本当に思っていた?」
金髪二人に言われた事でもあるけど。
御坂美琴が死んでしまうという可能性を白井黒子は考えていたのだろうかと思う。
幹也とは違い、御坂美琴は白井黒子が尊敬するほどの実力者だったらしいし。
本当に、死なないと思っていたんじゃない?
わたしはそう思わずにいられない。
だってねぇ……あの自信とかみるとそう思ってしまうもの。
御坂美琴が死んでしまうという可能性を白井黒子は考えていたのだろうかと思う。
幹也とは違い、御坂美琴は白井黒子が尊敬するほどの実力者だったらしいし。
本当に、死なないと思っていたんじゃない?
わたしはそう思わずにいられない。
だってねぇ……あの自信とかみるとそう思ってしまうもの。
「ねえ……――っ!?」
「……黙りなさい」
底冷えするような冷たい声が彼女から発せられる。
怒りだろうか、憎しみだろうか。
わたしにはそれをわかる事ができないけど。
でも、何故かわたしは笑えていた。
怒りだろうか、憎しみだろうか。
わたしにはそれをわかる事ができないけど。
でも、何故かわたしは笑えていた。
「仇討ちを、復讐を浅はかと言ったわよね? ねえ、今の貴方にその気持ちは無いの?」
別に、共感してもらいたくて言ってる訳じゃない。
わたしの復讐はわたしだけの復讐だ。
けれど、復讐を浅はかと言った彼女に今、その気持ちが無いのか。
ただ、それだけが気になって。
わたしの復讐はわたしだけの復讐だ。
けれど、復讐を浅はかと言った彼女に今、その気持ちが無いのか。
ただ、それだけが気になって。
「そんな訳……」
「本当に? 憎いという気持ちが無いの? それを晴らしたいと思わないの?」
「本当に? 憎いという気持ちが無いの? それを晴らしたいと思わないの?」
それは、大切な人を失った人が持つだろう当たり前の感情。
その気持ちをひとかけらも無いとは思えない。
わたしと彼女は対極ではあるけども。
同じ人なんだから、持つに決まっている。
だから、彼女が出す、答えを待っている。
その気持ちをひとかけらも無いとは思えない。
わたしと彼女は対極ではあるけども。
同じ人なんだから、持つに決まっている。
だから、彼女が出す、答えを待っている。
「ねえ……改めて聞くけど、大切な人を失った貴方が『復讐』そのものを肯定するの? それとも否定する?」
貴方がどちらかを選ぶかは興味が薄い。
ただ、復讐と言うものに。
大切な人を失ったモノがどう判断するか、とても気になった。
ただ、復讐と言うものに。
大切な人を失ったモノがどう判断するか、とても気になった。
だから、聞きたい。
貴方の答えを。
さあ、どう答える? 白井黒子。
「どうな…………あぐっ!?」
「バッカじゃないの? デリカシー無いわよ」
「バッカじゃないの? デリカシー無いわよ」
言葉を紡ごうとした矢先、頭に衝撃が。
振り返ると、栗色した髪色をしたあのクソ長い名前の人が、ハリセンを持ちながら、憤然としていた。
振り返ると、栗色した髪色をしたあのクソ長い名前の人が、ハリセンを持ちながら、憤然としていた。
【scene 2 白井黒子とリリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツの場合】
どうしよう?
どうしよう? どうしたい?
わたしは震えて出ていったクロコと追っていったアザカをただ見るだけだ。
でも、何が起きたか付き合いの浅いわたしにだって解るぐらい。
それは、クロコにとって大切な人が死んだという事。
また、誰かの大切な人が死んで、哀しみが起きたという事。
どうしよう? どうしたい?
わたしは震えて出ていったクロコと追っていったアザカをただ見るだけだ。
でも、何が起きたか付き合いの浅いわたしにだって解るぐらい。
それは、クロコにとって大切な人が死んだという事。
また、誰かの大切な人が死んで、哀しみが起きたという事。
それなのに、わたしは動いていない。
頭の中でどうしようという言葉が延々と巡っている。
だって、わたしの中で確固たる考えが纏まっていない。
それに、クロコとは出会ったばっかだ。
そんなわたしがかける言葉なんてあるの?
解らない、答えが見つからない。
なんだか、心が締め付けられていく。
まるで、あの時、ママを失った時のように。
わたしは胸を押さえながら、どうしようと思う。
頭の中でどうしようという言葉が延々と巡っている。
だって、わたしの中で確固たる考えが纏まっていない。
それに、クロコとは出会ったばっかだ。
そんなわたしがかける言葉なんてあるの?
解らない、答えが見つからない。
なんだか、心が締め付けられていく。
まるで、あの時、ママを失った時のように。
わたしは胸を押さえながら、どうしようと思う。
大切な人を失った彼女。
そんな人に……わたしが出来る事なんて…………
「いや、だから、そんなのじゃダメだってっ!」
バチンと頬を思いっきり叩く。
滅茶苦茶痛い。赤くなってそう。
けど、そんな事お構いなしだ。
ここで、へこたれるなんて、もうそんなんじゃ変われない。
わたしはリリアーヌ・アイカシア、以下略として、ちゃんと前を向かなきゃダメなんだ。
だから、わたしはここでぐずぐずしちゃダメだ。
前を向こう。
そう思って、大股で歩き出す。
滅茶苦茶痛い。赤くなってそう。
けど、そんな事お構いなしだ。
ここで、へこたれるなんて、もうそんなんじゃ変われない。
わたしはリリアーヌ・アイカシア、以下略として、ちゃんと前を向かなきゃダメなんだ。
だから、わたしはここでぐずぐずしちゃダメだ。
前を向こう。
そう思って、大股で歩き出す。
わたしが出来る事、そんなの決まってる。
わたしが感じた事、伝えればいい。
わたしが思っている事、伝えればいい。
それだけの事だけ……だよね、ママ。
わたしが感じた事、伝えればいい。
わたしが思っている事、伝えればいい。
それだけの事だけ……だよね、ママ。
前を向いて、歩いた先にはクロコとアザカがいる。
そっと聞き耳を立てると、なにやらアザカが話していた。
えーと、なになに?
そっと聞き耳を立てると、なにやらアザカが話していた。
えーと、なになに?
覚悟……ねえ。ふむふむ。
……わたしはあった?
ある訳がない。ある訳が無いじゃん……
だって……だってさ……
……わたしはあった?
ある訳がない。ある訳が無いじゃん……
だって……だってさ……
「本当に? 憎いという気持ちが無いの? それを晴らしたいと思わないの?」
「ねえ……改めて聞くけど、大切な人を失った貴方が『復讐』そのものを肯定するの? それとも否定する?」
「ねえ……改めて聞くけど、大切な人を失った貴方が『復讐』そのものを肯定するの? それとも否定する?」
続く言葉。
復讐を問う、言葉。
容赦の無い、言葉。
言葉の刃達が、クロコに向かって言われている。
復讐を問う、言葉。
容赦の無い、言葉。
言葉の刃達が、クロコに向かって言われている。
復讐。
哀しみと憎いという気持ちが殺すという行為に昇華してしまう。
それは、それは……なんだろう。
肯定もできない、否定でもできない。
哀しみと憎いという気持ちが殺すという行為に昇華してしまう。
それは、それは……なんだろう。
肯定もできない、否定でもできない。
でも、わたしは。
わたしはね……とても、それは……
覚悟と復讐。
二つの言葉が巡って。
私は歩いて、手には妙に馴染む紙製の武器を。
「どうな…………あぐっ!?」
「バッカじゃないの? デリカシー無いわよ」
「バッカじゃないの? デリカシー無いわよ」
わたしはアザカの言葉をバッカじゃないのと思いっきり切り捨てた。
ついでにぶったたいた。すぱーんといい音がした。
ぶっちゃけちょっと気持ちよかった。
アザカは振り向いて、驚きながらも私を睨んでいる。
たじろく事なんかない、わたしはわたしの言葉と想いを伝えればいい。
ついでにぶったたいた。すぱーんといい音がした。
ぶっちゃけちょっと気持ちよかった。
アザカは振り向いて、驚きながらも私を睨んでいる。
たじろく事なんかない、わたしはわたしの言葉と想いを伝えればいい。
「リリアさん、何の用でしょう?」
「何の用も何もないわよ。貴方何を言ってるの? 傷ついている女の子苛めて何が楽しいのよ」
「別に……苛めてる訳じゃないけど」
「何の用も何もないわよ。貴方何を言ってるの? 傷ついている女の子苛めて何が楽しいのよ」
「別に……苛めてる訳じゃないけど」
うーん、随分と剣呑とした雰囲気。
飲まれないように、強く心を持とう、わたしっ。
飲まれないように、強く心を持とう、わたしっ。
「そういうリリアさんはどうなんですか? 大切なお母様を失った時、覚悟はありましたか?」
そして、アザカの言葉の刃は、わたしに向かう。
わたしは、強く、言葉を紡ぐ。
その先に、立ちすくんでいるクロコに、言葉を届ける為に。
わたしは、強く、言葉を紡ぐ。
その先に、立ちすくんでいるクロコに、言葉を届ける為に。
「当たり前でしょ――――無いに決まってるっ」
そして、わたしは堂々と無いと宣言する。
アザカは呆れるように驚いて、わたしを見つめる。
クロコは唖然と私を見つめている。
アザカは呆れるように驚いて、わたしを見つめる。
クロコは唖然と私を見つめている。
「だって、どんなに覚悟してるつもりでも、哀しいものは哀しいっ。当たり前でしょっ、大切な人なんだからっ!」
だって、大切なんだから、哀しい。
大切なんだから、心が張り裂けそうに哀しいもの。
だから、きっとそういうものなんだ。
大切の人の死ってものは。
大切なんだから、心が張り裂けそうに哀しいもの。
だから、きっとそういうものなんだ。
大切の人の死ってものは。
「それに、願いたいじゃないっ、大切な人が大丈夫だって。死なないってっ、思いたいじゃないっ 大切な人なんだからっ!」
そうだ、願いたいんだ。
大切な人が大丈夫だって。
それは、理屈じゃない、心の底からの感情なんだ。
大切な人が大丈夫だって。
それは、理屈じゃない、心の底からの感情なんだ。
「ねえ、クロコっ。わたしは貴方の事はよく解らないけど……それでも聞いてっ」
「…………何ですの……?」
「…………何ですの……?」
憔悴した目を私に向ける。
その目は、あの時のわたしと一緒なのかな?
わかんない、わかんないけど。
その目は、あの時のわたしと一緒なのかな?
わかんない、わかんないけど。
「貴方の大切な人は、きっと貴方が『幸せ』に、前を向いて生きていく事を願っているよ」
「…………っ」
「哀しくても、苦しくてもいい。でも、きっと生きる事を望んでいる……だって」
「…………っ」
「哀しくても、苦しくてもいい。でも、きっと生きる事を望んでいる……だって」
ママは言ってくれた。
いや、遺してくれた。
その言葉はきっと、わたしだけじゃない。
大切な人を持つ人、皆に通じ合う。
いや、遺してくれた。
その言葉はきっと、わたしだけじゃない。
大切な人を持つ人、皆に通じ合う。
そう、思う。
「『貴方の気持ちが永遠である限り、大切な人の気持ちも永遠だから』……ね?」
わたしは人差し指をたてて、笑って答える。
クロコが息を呑んで、わたしを見つめた。
ぱちくち瞬いて、
クロコが息を呑んで、わたしを見つめた。
ぱちくち瞬いて、
「私の気持ちが……」
そう呟いて、クロコは立ち上がる。
表情は変わらずだったけど、きっと前を歩いていける、そう思う。
表情は変わらずだったけど、きっと前を歩いていける、そう思う。
「御免なさい、少し一人にしてくださいまし。ちょっと考えたいですの」
そう言って、クロコは歩き出した。
私は、その姿を見送った。
私は、その姿を見送った。
伝えられたかな? わたしの思い。
ねえ、わたしはママのようにできたかな?
ねえ、わたしはママのようにできたかな?
――うん、きっと大丈夫。
そして、
「やってくれましたね……と言えばいいですか? リリアさん」
まだ、終わっていない。
振り返ると、烏のように黒い髪の少女が、わたしを睨んでいた。
【intermission リリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツと黒桐鮮花の場合】
「随分と甘い事言うんですね、リリアさん」
黒桐鮮花はリリアを睨みながら、溜息をつく。
結局、白井黒子への問いは目の前の少女によって邪魔されてしまった。
しかも、思いっきり彼女の考えを聞かされてしまった。
出会った直後から、思っていたが黒子以上にウマが合わないかもしれない。
結局、白井黒子への問いは目の前の少女によって邪魔されてしまった。
しかも、思いっきり彼女の考えを聞かされてしまった。
出会った直後から、思っていたが黒子以上にウマが合わないかもしれない。
「そうかな? 甘い言葉だって、誰かの助けになるならそれでいいじゃない」
涼しい顔をして、リリアは返事を返す。
しっかりと、鮮花を見据えて、負けないように。
逃げないように前を向いてよう。
そう思ったから、思えたから。
しっかりと、鮮花を見据えて、負けないように。
逃げないように前を向いてよう。
そう思ったから、思えたから。
「ふん……甘い言葉が他人を傷つける言葉の刃になるかもしれない」
「それでも、他人を追い詰める言葉より、よっぽどまし」
「そう……まあ、いいです。ならリリアさん、貴方に聞きたい事があります」
「なに?」
「それでも、他人を追い詰める言葉より、よっぽどまし」
「そう……まあ、いいです。ならリリアさん、貴方に聞きたい事があります」
「なに?」
目の前の少女に、鮮花は苛々しながら言葉を紡ぐ。
何か根本的な所で、違うのかもしれない。
それは、リリアが紡いだ言葉に原因があるのかもしれない。
何か根本的な所で、違うのかもしれない。
それは、リリアが紡いだ言葉に原因があるのかもしれない。
「貴方、『貴方の大切な人は、きっと貴方が『幸せ』に、前を向いて生きていく事を願っている』と言いましたよね」
「うん」
「本当に、そうやって生きていく事が幸せになると思ってるんですか? 生きているだけでいいなんて、都合のいい言葉ですよ。
ただのエゴの塊です。 大切な人が居なくても、生きていく事を強要させるだけ。それがどんなに苦痛かを知っていますか?」
「うん」
「本当に、そうやって生きていく事が幸せになると思ってるんですか? 生きているだけでいいなんて、都合のいい言葉ですよ。
ただのエゴの塊です。 大切な人が居なくても、生きていく事を強要させるだけ。それがどんなに苦痛かを知っていますか?」
鮮花はリリアのこの言葉を信じられないと思う。
人は、人間はそんなに強くない。
大切な人を失う苦しみは何ものにも変えられないぐらい痛い。
それなのに、生きている事を望んでいるから。
そうすれば、幸せになるから。
なんて、そんなの都合が良すぎる。
ただでさえ、今、失った事実がとても苦しいというのに。
人は、人間はそんなに強くない。
大切な人を失う苦しみは何ものにも変えられないぐらい痛い。
それなのに、生きている事を望んでいるから。
そうすれば、幸せになるから。
なんて、そんなの都合が良すぎる。
ただでさえ、今、失った事実がとても苦しいというのに。
だから、リリアの言葉はただの偽善に満ちたエゴの塊にしか見えない。
「そりゃあ、苦しいよ。胸が張り裂けそうなくらい哀しいよ……けど、其処で歩みを止めたら、それはただの『停止』よ」
それでも、リリアは言葉を紡ぐ。
リリアだって、母親を失った事は、哀しみは深くて、苦しい。
でも、其処で歩みを止める事はただの停止で。
きっと、それは母親が望む事ではないから。
リリアだって、母親を失った事は、哀しみは深くて、苦しい。
でも、其処で歩みを止める事はただの停止で。
きっと、それは母親が望む事ではないから。
「苦しいから、哀しいから、生きれない。そこで耳を塞いで生きる事から目を逸らすのは、ただの逃げだっ!」
「……そんなに、ヒトは強くないですよ」
「だって、でも、思いたいじゃない。大切な人はわたしが幸せになる事を願っている。ならっ、わたしは幸せになる事から、逃げたくない」
「生きる事が幸せになるというのですか?」
「なると……思うよ」
「……そんなに、ヒトは強くないですよ」
「だって、でも、思いたいじゃない。大切な人はわたしが幸せになる事を願っている。ならっ、わたしは幸せになる事から、逃げたくない」
「生きる事が幸せになるというのですか?」
「なると……思うよ」
言葉の応酬が続く。
けれど、二人の考えは何時までも平行線で、歩むあう事など決して無く。
そして、リリアは意を決して決定的な言葉を紡いだ。
けれど、二人の考えは何時までも平行線で、歩むあう事など決して無く。
そして、リリアは意を決して決定的な言葉を紡いだ。
「ねえ、アザカ。貴方は復讐を肯定するか否定するか、言ったよね」
「ええ」
「改めて言うよ。わたしは……復讐が正しいかどうかなんて、解らない。けど」
「ええ」
「改めて言うよ。わたしは……復讐が正しいかどうかなんて、解らない。けど」
すぅーと息を吐いて。
「――――哀しい事、憎しみを引き起こす復讐なんて、やっぱり、ダメ」
「はっ、やっぱり。ちゃんちゃら甘い人間ですね。言ったでしょう? 別に理解や同情を求めていないって」
理解などされてたまるものか。
鮮花の復讐は鮮花だけのものだ。
鮮花の気持ちは鮮花だけしか知らない。
だから、リリアの甘さなど、疎ましいだけだ。
鮮花の復讐は鮮花だけのものだ。
鮮花の気持ちは鮮花だけしか知らない。
だから、リリアの甘さなど、疎ましいだけだ。
「でもっ……まだ、他にも道はあるはず。だから」
「だから? だからなんです? 道なんて求めてない。これが私の生き方なんです」
「だから? だからなんです? 道なんて求めてない。これが私の生き方なんです」
そう、これが鮮花の生き方だ。
誰にも邪魔されてもたまるか。
幹也の仇を討つ。
それが鮮花の最高の幸せだ。
誰にも邪魔されてもたまるか。
幹也の仇を討つ。
それが鮮花の最高の幸せだ。
「ねえ、リリアさん。もし、どうしても止めるなら、邪魔するなら」
鮮花は少し微笑んで。
その笑顔とてもとても、純粋で。
その笑顔とてもとても、純粋で。
「――――殺すわよ?」
そして、とてもとても、邪悪だった。
彼女は笑って、踵を返してリリアの元を去っていく。
リリアは黙って鮮花を見送るだけ。
彼女は笑って、踵を返してリリアの元を去っていく。
リリアは黙って鮮花を見送るだけ。
鮮花が去っていた後、リリアは拳を握って。
「違う……どうして、そんな極端なのよっ!」
ふと、思う。
あの子は本当に、心の底から大切な人の死に哀しんだのだろうかと。
ただ『認めたくない』だけじゃないかと。
だから、逃避するように、復讐の道を選んだのかと。
そう思ったら、もう納得できない。出来る訳が無い。
ただ『認めたくない』だけじゃないかと。
だから、逃避するように、復讐の道を選んだのかと。
そう思ったら、もう納得できない。出来る訳が無い。
「納得できる訳……無いじゃないっ」
だから、リリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツは黒桐鮮花の生き方を認められなかった。
けれども、リリアは知らない。
黒桐鮮花にとって、黒桐幹也は『兄』以上の存在である事を。
自分の起源を『禁忌』と考え、純粋に、幹也を愛して。
本当に、それしかない事に。
もし、その事が無くなってしまったら、何もなくなってしまうかもしれないことに。
黒桐鮮花にとって、黒桐幹也は『兄』以上の存在である事を。
自分の起源を『禁忌』と考え、純粋に、幹也を愛して。
本当に、それしかない事に。
もし、その事が無くなってしまったら、何もなくなってしまうかもしれないことに。
リリアが、知る訳もなかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「甘い、甘すぎる」
哀しいからダメ、憎しみだけじゃダメ。
他人の気持ちもしらないで平気で否定するのは納得がいかない。
あんなただの平和ボケしてそう少女が、言う綺麗事なんかに説得されてなるものか。
他人の気持ちもしらないで平気で否定するのは納得がいかない。
あんなただの平和ボケしてそう少女が、言う綺麗事なんかに説得されてなるものか。
「ただの少女が……偽善を振り回して、私の生き方を否定するなっ」
だから、黒桐鮮花はリリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツの生き方を認められなかった。
けれども、鮮花は知らない。
リリアが沢山の人が死んだ事件に巻き込まれて、生きていた事も。
戦争を知り、戦いの虚しさや哀しさを、命の尊さを母親からしっかり教えられていた事も。
そして、復讐に命を尽した女の結末が、とてもとても残酷で空虚に終わってしまったのを見ていた事も。
リリアが、平和ボケとは程遠い体験をし、色々な事を教えられて、その考えを持った事に。
リリアが沢山の人が死んだ事件に巻き込まれて、生きていた事も。
戦争を知り、戦いの虚しさや哀しさを、命の尊さを母親からしっかり教えられていた事も。
そして、復讐に命を尽した女の結末が、とてもとても残酷で空虚に終わってしまったのを見ていた事も。
リリアが、平和ボケとは程遠い体験をし、色々な事を教えられて、その考えを持った事に。
黒桐鮮花は知る訳もなかった。
二人は相容れない。
互いの譲れないものと、互いを知らないが故に。
互いの譲れないものと、互いを知らないが故に。
決して、相容れる事はない。