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カードリスト



第24弾:2015/10/XX-2015/11/24

SPイシュタル
SPNo ??? 名前 イシュタル
イラストレーター keypot カード情報 イシュタル
必要PP 200
配布枚数 ???
備考  
DATA
プロフ1 プロフ1 フレーバー
プロフ2 プロフ2
プロフ3 プロフ3
プロフ4 プロフ4
プロフ5 プロフ5
プロフ6 プロフ6

SPグレモリー
SPNo ??? 名前 グレモリー
イラストレーター Hitoto* カード情報 グレモリー
必要PP 200
配布枚数 ???
備考  
DATA
プロフ1 プロフ1 フレーバー
プロフ2 プロフ2
プロフ3 プロフ3
プロフ4 プロフ4
プロフ5 プロフ5
プロフ6 プロフ6

SPヴァルナ
SPNo ??? 名前 ヴァルナ
イラストレーター エムド カード情報 ヴァルナ
必要PP 200
配布枚数 ???
備考  
DATA
プロフ1 プロフ1 フレーバー
プロフ2 プロフ2
プロフ3 プロフ3
プロフ4 プロフ4
プロフ5 プロフ5
プロフ6 プロフ6

第25弾:2015/11/XX-2015/12/20

SP蘆屋道満
SPNo ??? 名前 蘆屋道満
イラストレーター KeG カード情報 蘆屋道満
必要PP 200
配布枚数 ???
備考  
DATA
プロフ1 プロフ1 フレーバー
プロフ2 プロフ2
プロフ3 プロフ3
プロフ4 プロフ4
プロフ5 プロフ5
プロフ6 プロフ6

『LoVRe3』メインビジュアルポスターA
SPNo --- 名前 『LoVRe3』メインビジュアルポスターA
イラストレーター タイキ グッズ情報 ポスター
必要PP 200
配布枚数 200
備考

『LoVRe3』メインビジュアルポスターB
SPNo --- 名前 『LoVRe3』メインビジュアルポスターB
イラストレーター タイキ グッズ情報 ポスター
必要PP 200
配布枚数 200
備考

第26弾:2015/12/XX-2016/01/20

SPプリマグラフィ~人獣デッキケースイラスト~
SPNo --- 名前 SPプリマグラフィ~人獣デッキケースイラスト~
イラストレーター 麻谷知世 グッズ情報 プリマグラフィ
必要PP 200
配布枚数 100
備考

SPプリマグラフィ~神族デッキケースイラスト~
SPNo --- 名前 SPプリマグラフィ~神族デッキケースイラスト~
イラストレーター 煎茶 グッズ情報 プリマグラフィ
必要PP 200
配布枚数 100
備考

SPプリマグラフィ~魔種デッキケースイラスト~
SPNo --- 名前 SPプリマグラフィ~魔種デッキケースイラスト~
イラストレーター 夜汽車 グッズ情報 プリマグラフィ
必要PP 200
配布枚数 100
備考

第27弾:2016/1/XX-2016/02/20

SPプリマグラフィ~海種デッキケースイラスト~
SPNo --- 名前 SPプリマグラフィ~海種デッキケースイラスト~
イラストレーター 匡吉 グッズ情報 プリマグラフィ
必要PP 200
配布枚数 100
備考

SPプリマグラフィ~不死デッキケースイラスト~
SPNo --- 名前 SPプリマグラフィ~不死デッキケースイラスト~
イラストレーター オサム グッズ情報 プリマグラフィ
必要PP 200
配布枚数 100
備考

VRオオモノヌシ
SPNo ??? 名前 オオモノヌシ
イラストレーター Tomatika カード情報 オオモノヌシ
必要PP 200
配布枚数 ???
備考  
DATA
身長(人型時) 5.9[尺]
体重(人型時) 16[貫]
以前の生息域 三輪山
現在の生息域 シャクア連国イグニア霊山
愛情 深し
苦手 協調
イラストレーター Tomatika
フレーバーテキスト
special past episode1

◆『蛇神の山』◆

「本当に行くんですか? もう二人も帰ってきてないんですよ?」

野の街道を行く、長布で顔を覆った二人。赤い長布を首に巻いた、鮮やかな栗毛髪の青年が、大きな荷を背負った黒髪の男の言葉に笑顔で答えます。

「なんだよヒイダさん、心配してくれてんのか?」
「ええ、まぁ… しかしあなたも変わった人ですね。自ら生贄になろうだなんて」
「ヘヘ、喰われちまったらな。でもこっちが勝ったら“討伐”だ 王様はそう言ってたぜ」
「いや、そうなんですけどね…」

遠くの山々を見ながら、明るく笑う青年。

「んでさ、そいつ、どんなやつなんだ?」
「はい。なんでもその神様は、百年程前に『御山』に棲みついた異邦の神と伝えられています」
「…いほう?」
「余所から来たってことですよ。住みついた当初は、ここいらで言うところの『神忌み』…つまり祟りを起こして、周囲に疫病を振りまいていたそうです。そこで、里の者が神として祭り、巫女を献上したところ、祟りが減ったとされてますね。さらに今の巫女様がお仕えして以降は それもぱたりと止んでいたそうなのですが――」
「また、祟り始めたってか?」
「はい。それも…『大侵攻』が起こった時期と同時に」

大侵攻――大陸の東方、ニフリキア地方に位置するここシャクア連国は、西方より突如現れた異形の怪物達の侵略に脅かされていました。

「…言い伝えが本当かは知りませんが、実際、今私達もこうして口鼻を覆っていないと、数刻で病に感染してしまう程、ここいらの空気は穢れています」

指を立て、スラスラと流れるように話す黒髪の男。

「それ故に王は、『御山の神』は怪物共の仲間であり、その神こそが彼らを引き寄せているのでは…と考えたわけです」
「あぁ、そういうわけか」

栗毛の青年は、今にも雨がふり出しそうな空を見上げました。

「…余所もんはつれぇなあ」

しかし、黒髪の男は興に乗ってしまったのか、そんな青年の呟きにも気づかない程に、熱を込め話を続けます。

「レムギアではレム教を主体とした形無き自然信仰が主流ですが、その神は異形神なのだそうです。十数年前に、嵐と共に御山から西の空へと飛び立つ『龍』の姿を見たという逸話も伝わっていますね。まぁ正直 自分の目で見たわけではないので――」
「ハハ、もうわかったよ、ヒイダさん。…てかあんた、ずいぶんと詳しいんだな。その黒髪、あんたもこの国のもんじゃないだろうにさ」

急に話の腰を折られ、きょとんとする男。男は恥ずかしそうに黒髪を掻きながら頭を下げました。

「すみません、またやってしまいましたね…。えぇ、私も異邦の者です。私はものを覚えるのが得意でして、それを買われてこのお国にお世話になってます。余所者の私がこうして官吏に取り立ててもらえるのも、多部族連国であるシャクアだからなのでしょうね」

シャクア連国――この国は、首長部族であるシャクアを筆頭に、ガオ、ナバラ、ヤシュなど、様々な部族、民族が集まって形成されていました。

「そういうあなたは ヤシュの出身でしたっけ? 私の記憶が正しければ あなたもヤシュ族では見ない髪の色ですね…それに その片方の瞳…」

訝しげにする黒髪の男。少しだけ間をおいて、青年は答えました。

「おぅ、珍しいだろ? ヤシュだけど、オレもその『いほう』ってやつなんだ。なんだか『いほう』ばっかだな」

ニカッと笑顔を見せる青年。その笑顔につられたように、黒髪の男は考えるのをやめ、軽く微笑みました。

「あなたは、良い人なんですね――お、見えてきましたよ」

男が指さす先、そこには静謐な空気が漂う、古びた山門が建っていました。

「あそこからが『御山』――異邦の神 ナムジ様の神域です」

* * * *

どことなく緊張した空気の中、二人が山門の前まで行くと、門から覗く林の奥に、白い装束をまとった美しい女が佇んでいました

「やあ、ヘキさーん! お迎えご苦労様ですー! 彼がこの間お話しした人ですよー!」

女に向け良く通る大きな声で話しかける黒髪の男。

林の奥の女は、その声に応えるようにゆっくりと頭を下げました。

「あの方がこの山の巫女様です。綺麗な方でしょう? あの長い緑髪に山巫女の正装である朱赤の打掛を合わせれば 美しさもさらに際立つでしょうね。でも伝え聞くところによると、あの方が御山に入ってから、もう三十年以上経っているという話です。これもナムジ様の御利益なんですかね?」

クルクルと良く舌を回す黒毛の男をよそに、林の奥の女を見つめる栗毛の青年。女もまた、青年をじっと見つめていました。

「さて、私はここでお別れです。ここからは御山の巫女か、目に朱を差したる者――つまり、赤い目をもつ者しか入れない」

栗毛の青年の右目――その薄ら光る赤い瞳を見る黒髪の男。

「入るとどうなるんだ?」
「私は試したことありませんから、本当かはわかりませんけど――なんでも、急な病に冒されて死んでしまうらしいですよ? 巫女とその者以外の入山を、山神であるナムジ様が許さないそうで、これは里とナムジ様の決め事なんだそうです」

「ふ~ん」

そう言って栗毛の青年は、ひとり門の中に躊躇なく足をふみいれ、立ち止まりました。

「ウゥッ!!」

胸を押さえて苦しみだす青年。

「だ 大丈夫ですか!?」
「な~んてな。ホントだ。オレは大丈夫みてぇだわ」

おどけて見せる栗毛の青年に、黒髪の男は軽く怒ったようにしつつも、少しだけ悲しそうに語りかけました。

「もう一度聞くんですが…本当に行くんですか? 帰ってこられないかもしれませんよ?」
「わかってるよ」

笑顔を見せる青年に、ため息をつく黒髪の男。

「はぁ…あなた、そうやって明るく笑いますが、どことなく影が見えるんですよね… できれば、無事帰ってきて、何があったか教えてくださいね。それを記録して伝えるのが私の仕事なので」
「ハハ、影か…するでぇなぁヒイダさん。まぁ、がんばってみるよ。世話んなったな!」
栗毛の青年は、そう言って後ろ手を振り、山へと分け入っていきました。

* * * *

「ようこそおいでくださいました。山巫女のヘキと申します」

巫女は、栗毛の青年に頭を下げると、顔を上げ、目を見開きその瞳を覗き込みました。

「その…目を見られんのは慣れてっけどさ、そんなに見つめられると… ああ、そうだ オレはヤシュの…」

恥ずかしそうにして目をそらす青年に、巫女は「お名前は結構です」と頭を下げ、山を登り始めました。

「ついてきてください。ナムジ様の元へご案内いたします」

薄く霧がかった山を登る二人。青年が無言で山を登る巫女の背中を見つめていると、突然巫女の澄んだ声が響きました。

「…あなたは、なぜこのようなところへ?」

突然投げかけられた言葉に、青年は一瞬戸惑った様子を見せましたが、笑顔で答えました。

「いろいろあってよ。里に居づらくなっちまって、おん出てきちまったんだ」
「……ご家族は、心配なさらないのですか?」
「ヘヘ 家族は…もういねぇんだわ」

巫女は、一瞬背中をピクリとさせましたが、止まることなく歩き続けます。

「…そうですか」

再び落ちる沈黙。二人が枝草を踏み歩く音だけが静かに響きます。一度破れて、再び訪れた静寂に耐えかねたのか、今度は栗毛の青年が口を開きました。

「なぁ あんたなんでオレを神様んとこ連れてってくれるんだ? 知ってんだろ? オレがさ、神様退治に来たこと」

黙したまま青年の前を進む巫女。しかし、暫くすると――

「…ナムジ様は 人間ごときが敵うお方ではありません。それより――」

そう言って、巫女が立ち止まりました。

「あなたこそ なぜナムジ様に挑むのですか?」

青年も立ち止まります。

「…うん、その里の色々でさ。何やればいいんだかわかんなくなっちまって…誰かの役に立てればなって思ってさ。そん時、王様が赤い目の奴を探してるって聞いたんだわ」
「…その為に 命も落としても?」

背を見せたまま、青年に半身だけ向け、語りかける巫女。

「――そん時ゃ…そん時だろ」

巫女の視線を避けるように、目を伏せ答える青年。暫しの静寂――。

「――そうですか」

そう言って巫女は再び歩き始め、それからの二人は一言も言葉を交わすことなく山を登りました。

暫くすると、木々の立ち並ぶ中、突然穴が空いたように開けた空間に出ました。その中心には柔らかな光に照らされた社がひとつ。

巫女が立ち止まり、恭しく跪きます。青年は、緊張した面持ちで社の前まで進みました。
《ほう… それがヘキの申していた者か…》

空間に、姿なく響く声。青年が叫びます。

「あんたがナムジ様か? かくれんぼかよ。噂の割にゃあ臆病な神様だな!」

突然、青年を襲う衝撃。

「フン、ヘキよ。残念だが、どうやらこの小僧は人ではなく、礼儀を知らぬ猿らしい」

地面に転がされた青年が声のする方を見上げると、社の屋根の上に、長い銀髪をたなびかせ、顔に朱紋を刺した美しい男が、不満そうな表情で頬杖をついていました。

「ケッ、礼儀を知らねぇのはどっちだ。いきなりかましやがって…つーか普通に人間じゃねぇかよ」
「人間?ワシがか?」
「ああ、二人も人間喰らったバケモンだと聞いてたけどな」
「阿呆が、人間なぞ喰うものか。あの“偽物”共ならば 怯え散らして早々に逃げ去ったわ」
「…どうだかな。そう言っていきなりガブリ…とかな?」

立ち上がり、すらりと短刀をぬく青年。

「…こいよ。相手してやんぜ!」

いきり立つ青年を見下ろしつつ、片方の眉をつつっと釣り上げた山神はふわっと羽毛のように地面に降り立ちました。

「ヘキよ、お主の前だと思い遠慮しておったが、少し仕置きをしてやらねばならんようだ。しかも忌々しい… 猿ごときが、ワシの神色たる赤布など巻きおって…」
「申し訳ございません。なにとぞ、お手柔らに…」
「…後悔すんなよ!!」

獣のような素早さで左右に動き、飛びかかる青年。しかし山神は目を閉じ微動だにせず――。宙より山神に迫る青年の刃――その瞬間、山神が目を見開きました。金色に光る山神の目――突如のしかかる重圧。巨大な何かに押さえつけられた様に、垂直に地面に落ち、身動きできなくなる青年。

「ぐぅぅ! なんだ…これ…!?」
「どうだ、猿殿?」
「ヘヘ…こりゃあ舐めてたかな…里で相手にしてたバケモンとはわけが…ちが…」

そのまま青年は、力が抜けたようにがっくりと頭を落としました。

「手間をとらせおって。しかし、久しぶりに容易く神力を発せたわ――喜べ、ヘキよ。確かに、こやつは“本物”のようだ…さて」

既に意識を失っている青年をつまみあげ、男は語りかけました。

「何を勘違いして参ったか知らぬがな、小僧――お前はここで、ワシと暮らすのだ」

* * * *

目を覚ますと、青年は岩屋の中で寝かされていました。近くには、手当てをする巫女。

「…驚いた。回復が早いのですね」

青年はきしむ体を無理やり動かし、身を起こします。

「ヘキさん…だったよな。あんたが助けてくれたのか?」
「…いいえ、ナムジ様の命です」
「!? …何でだよ」

巫女は、青年の体を拭いた布を絞りながら告げました。

「ナムジ様は――あなたに、この山で共に住まうよう仰せです」
「…な…冗談じゃねぇぞ!」

予想外の言葉に痛みも忘れたか、青年は飛び起きると岩屋から駆け出しました。

そして、そのまま一気に林の空間に駆け込むと、社の前に立ち、大声で山神の名を叫びます。しかし、その声に応えるは山に響く木霊ばかり。

「クソ! あの野郎どこいった…
「神を野郎呼ばわりとは何ごとか猿人間。またワシにやられたいのか?」

突然背後から聞こえる山神の声。

振り向きざまに短刀を振るう青年――その剣風に乗るようにひらりとかわす山神。

「おい クソ神! なんでオレがテメェと暮らさなきゃなんねぇんだよ」
「言う必要はないな」
「チッ!」

山神に迫り、さらに短刀を振るう青年――しかし、その刃は無為に空を斬るばかり。

「懲りぬな 猿のほうがもう少し学ぶ。…なるほど、お前は地面に這いつくばるのが上手い。さては…虫か?」
「この野郎いい度胸だな… ひとつ聞かせろ。テメェ、ホントに人を喰ってねぇんだろうな?」
「そう言っておる」
「じゃあ、外の疫病はテメェのせいじゃねぇってのか?」
「おい、ひとつではないのか?――あれは、ワシの力だ」
「やっぱりかよ!」

先程の突進を上回る速さで切り込む青年。しかし、やはりその刃は届かず…。

「外の人間がどうなろうとワシは知らん。寧ろワシの力のおかげで、あの忌々しい魔物
もこの一帯には近づかんのだ。感謝せよ」

そう言うと、山神の瞳が金色に輝き、青年は見えない力で地面に押さえつけられました。
「…うるっ…せぇよ!!」

しかし青年は体を震わせ、凄まじい重圧に抗い立ち上がろうとします。その右の瞳は、淡い赤光を放っていました。

「ほう、少し“力”が出てきたか。だが まだまだだ」

抵抗空しく、さらなる重圧に押しつぶされる青年。

「ク…ソが……」

そのまま気絶した青年の前に立つ山神。

「フン、ワシはな、そもそもお前が好かぬ。お前になぞ一片の興味もないわ――全ては ヘキがそう望んだからよ」

気づくと、青年は再び岩屋に寝かされていました。青年は動かぬ体を確かめながら、宙を見つめ、傍で塗り薬を練る巫女に尋ねます。

「…ヘキさん。オレと暮らすとか…何なんだよあいつ。わけがわからねぇ…」

少し間をおいて巫女が答えました。

「…ナムジ様は、かつて異界より攫われた同胞を探し、この世界に向かわれたそうです。しかし、悪しき者に阻まれ、同胞が連れ去られたその遥か以前の『時』に飛ばされてしまったのだとか…。そこには当然同胞の方々も、その怨敵すらもおらず、ナムジ様は悲しみに暮れました。さらに、その御神体とこの世界は相性が悪く、ナムジ様は、霊場であるこの御山でしか、御神体を保てなかったのです…」

薬道具を置いて青年の方を向き、居住まいを正す巫女。

「私達山巫女は、代々そんなナムジ様をお慰めする為に御山に仕えてまいりました。私も数え十の頃から勤めております。怖ろしいところもございますが、ナムジ様はお優しいお方…そんな私が寂しかろうと あなたをここへお呼びになったのです」
「わかんねぇな…そんな理由で疫病ばら撒いていい訳ねぇだろが」

宙を睨みつける青年。

「それに…なんで俺なんだ」

「――それは、お前のその目が赤いからだ。赤目虫」

見ると、岩屋の戸口に山神が立っていました。

「てめぇ…」

身を起こそうとする青年。しかし、今度は思うように体を動かすことができませんでした。

「余計なことを言うでない、ヘキ」
「…申し訳ございません」
「フン…赤目虫、今日はもう動けぬか? 傷が治ったらまた来るがいい。次はそのようなつまらぬ疑問が湧かぬ程に痛めつけてくれる」
「…ケッ 言われなくてもってやつだぜ クソ神」

山神は、強く向けられた青年の視線をフンと鼻で弾くと、そのまま夜闇の中へと消えていきました。

* * * *

その日から、青年は幾度となく山神に挑み、その度に敗れては巫女に手当てされる…そんな日々が続きました。

ある日の夜、いつものように傷ついた青年が横たわる傍ら、巫女は、青年の赤い長布をじっと手に取り眺めていました。

「…それな、里のもんに海で拾われた時、赤ん坊のオレがくるまってたんだと」

ハッとする巫女。

「起きていたのですか?」
「あぁ、また負けちまったよ」
「…そのようですね」

巫女はそっと長布を置き、軟膏の準備を始めました。

「毎度世話かけて悪ぃな。…あの野郎、いったいどうすりゃ… ヘキさん、あんたもなんであんな性格の悪い神様なんかに仕えてんだよ」
「ナムジ様は…命の恩人ですから」
「恩人?」
「はい。でも、フフ…確かに、ナムジ様は少し童のように意地悪なところがありますね」
暗い岩屋の中、仄かに揺れる蝋燭の淡い光――その中で、巫女が初めて見せる美しい笑顔――その笑顔に、青年はなんだか体が熱くなる感じがして目を伏せました。ふと訪れた、そんな温かな空気の中、巫女は改めて青年に向き直り、かしこまって告げます。

「あなたに…お願いがあるのです…」
「…願い?」
「はい。ナムジ様を…御山から連れ出してほしいのです」
「!? なんでオレが…」

巫女は淡々と語り始めました。

「口でああは言っても、ナムジ様はあなたを気に入られている御様子。長くお仕えしておりますが あのように楽しそうなナムジ様は初めて見ました…」

「そして、あなたの赤い眼の力…あなたのお傍ならば、あの方は山の外でも神力を発揮し、御神体を保てるはず… ナムジ様はそれを知っていて、かつてより『目に朱を差したる者』を探しておられたに違いありません…」

神妙な面持ちでありながら、次第に熱を帯びる巫女の口調。

「それともうひとつ… 官吏様から聞きました――西方より化け物を引き連れ現れた者もまた、“赤い眼の皇”であると。おそらく、その者こそがナムジさまの同胞を攫った者…この地で百年待ち、やっと姿を現した怨敵なのです。きっとナムジ様は、そのことに気づいておられます… そして、一刻も早く同胞をお救いに行かれたいはず――それなのに、何も気にされていない風を装い、私などを化け物達から守る為と、祟りを流して山に留まっておられるのです。あんなに…遠い目をなさって――」

語り終えると共に――なにとぞ、と地に頭をつく巫女。ひと通り話を聞き、暫く唖然としていた青年は――

「チッ、やりにくいったらねぇなぁ…」

――そう言って、目を伏せ、頭を掻きながら立ち上がりました。


夜――社の上で、銀髪をたなびかせ月を眺める山神。しかし、その目は月ではない、何か他のものを見ているようで――ふと、その口が動きました。

「無粋よな、このような美しい夜に。だが、虫は夜に動く…せんなきことか」

見ると、社の下に青年が立っていました。

「戦いに来たんじゃねぇよ…ヘキさんから聞いた――疫病… ヘキさんを守る為ってどういうことだよ」
「ヘキめ、また余計なことを…」

山神はひらりと屋根から降りると、青年と対峙しました。

「如何にも。お前のことも、疫病も、全てはヘキの為――ワシは、ヘキを愛しておるからの」
「ならよ… なんであの人は いつも笑ってないんだ」

青年の真剣な眼差しをかわすように背を向ける山神。

「やはり…虫よな。世の道理すら推し量れぬ――ヘキに、ワシを山より連れ出せとでも言われたか?」

無言で山神に目を向ける青年。

「…お前もワシを殺すと言っておったが、ワシが死んでも、ワシがここを離れても――ヘキは死ぬ」
「…!?」

二人を照らす蒼い月光――

「アレはな もう死んでおるのだ…それを ワシが生かしておる」

再び月を見上げ、そう告げる山神――しかし、月明かりに照らされたその表情は苦しみに満ちていて――

「確かに、祟りを止めたくば、ワシを屠るかこの山より追い出すしかなかろう。…しかし、そうすればヘキは死ぬ。そして、ヘキはこの山でしか生きていけぬ――山からは出れぬのだ」

再び社の屋根へと飛び上がった山神は、青年を見下ろして告げました。

「お前も、少しはヘキに情が芽生えていることだろう。どうする? ワシはヘキが大事だ。周りの人間など知ったことではない。考えるが良い――ワシはヘキが寂しかろうと思いお前を受け入れた。しかし、お前がヘキの心を惑わすならば――生かしておく理由もないな」

いつになく冷たく響く山神の言葉に、固唾をのむ青年。

「心を決めよ。明日、相手してやろう」

そう言って、山神は夜月の中へと溶け込んでいきました。

「――畜生… ここでもかよ」

拳を握り、首を垂れて立ち尽くす青年。その側に、林の中からそっと近づく巫女の姿。

「ごめんなさい。私のせいで…」
「…見てたのかよ――いいさ。やっぱよ、結局オレはこういうのから逃げられねぇんだ…」
「逃げる…?」
「言ったろ? オレはさ…里から逃げてきたんだよ」

青年は、巫女に背を向け語ります。

「…大事な奴がいてさ、里のみんなを裏切ってそいつを守るか、そいつを裏切って里のみんなを守るか…どっちか選ばなきゃいけなくなった。わけわかんなくなって、結局はどっちも裏切っちまった…」
「――また一緒だ。あんたか、疫病に苦しむ人たちか…」
「…その里でのこと、今ではどう思ってるんですか?」
「今でもわかんねェよ。どうすればよかったかなんて…」
「…そうですか」

巫女は、そんな青年の背中に、真っ直ぐな視線を向けて言いました。

「…事情はわかりません。勝手を言っているとも思います――しかし、あなたが裏切った結果、裏切られたその者達は、果たして幸せだったのでしょうか――あなたが…その答えを見つけた時、あなたも、ナムジ様も、前へと進めるのかもしれません。…そして、私も…」

青年は、巫女の言葉を反芻し、山神が消えた月を見上げました。

「そうだな… オレは…」


* * * *


青年は強い意志を秘めた目で、山神と対峙していました。

「虫にしてはいい面構えだ。心は決まったようだな」
「決まんねぇよ」

山神の問いに、吐き捨てるように答える青年。

「なに?」
「つうかよ、どっちかとか無理だろ… だから――とりあえずテメェを締めて、オレに従わせてから考えることにした」

ニヤリと笑う青年。その目に迷いは無く、瞳はギラギラと輝いていました。

「クク… ハハハ! お前が? このワシを従える? 虫も言葉を話せば冗談も言えるか――そのような浅い考えで…どうにかなると思うなよ小虫!!」

山神の怒気が響きわたると共に、天に風と黒雲が渦巻き、雷鳴が轟きました。逆巻く嵐雨の中、山神の姿が膨れ上がり、巨大な何かへと姿を変えていきます。その姿は――巨大な白い大蛇。青年は、顔を打つ激しい雨に目をつぶることなく、しっかと大蛇を見据え短刀を構えます。

その右目は爛々と赤光を放ち燃え盛っていました。

雷光をまとい、青年に襲いかかる巨体――かわす青年。かわしざまの青年の一振りが、いとも容易く巨木を切り倒します。

《お前…その力――だいぶに目覚めたようだな》

距離をとり、睨み合う青年と大蛇。

「おやめください!!」

嵐の中響く叫び声――見ると、社に巫女が立っていました。その手には、風にたなびく、朱色の打掛が――それを目にした瞬間、大蛇の動きが止まりました。

《ヘキ… 何をするつもりだ》
「ナムジ様、ありがとうございます。私の為にここまでしてくださって… それに、あなたも今度は逃げず、戦うことを選んでくれたのですね――ならば、私も逃げずに応えなければなりません」
「ヘキさん…」

何が起こっているのか――戸惑う青年。巫女は、優しげな目を青年に向け、全て任せるように、とでもいう風にうなずきました。

「ナムジ様。…あの嵐の夜、あなた様に助けて頂いた恩に、このような形でしか報いられぬこと、お許しください」

そう言って、打掛にそっと刃をあてる巫女。

《やめろ ヘキ! “それ”を傷つけては…!!》
「もう、良いのです… ナムジ様は十分良くしてくださいました。私は既に死したる身。これ以上、神たるあなた様が、私などの為に自然の摂理に逆らってはなりませぬ。それに――」

巫女は、熱い眼差しを青年に向けました。

「あなた様は 最後に こんなに素敵な思い出をくださりました」
《ヘキ… ワシは…そのようなつもりで…》
「ナムジ様 ヘキはもう逝きます。想いのたけ、使命を果たされませ」

巫女を止めようと社へ首を伸ばす大蛇。しかし、巫女は、首が届くより早く、手に持った刃で一気に打掛を引き裂きました。

《ヘキ……!》

崩れ落ちる巫女――。

「オイ! 神様よ、何だってんだ!!」
《クッ……あの打掛は、ヘキの憑代だ…。ヘキが本当に生きておった頃身に着けておった、ワシと、この山と、ヘキとを結ぶもの…。そのいずれが欠けても、反魂の法を保つことはできぬ…》
「クソッ!」

社に駆け寄り、巫女を抱き起こす青年。しかしその体は羽のように軽く、青い光を発しポロポロと崩れようとしていました。

「ヘキさん!」

青年の呼びかけに薄く目を開き、その頬に触れる巫女。

「ありがとう… あなたにあえて本当に嬉しかった… 怖くて、ずっと聞けなかったのだけれど… 最後に…名前を教えてくれる?」
「スキピオ… 海の部族、ヤシュのスキピオ・クロロだ」
「そう…見た目通り、元気そうで温かい名前ね。きっとその名を付けてくれた方も、とても温かい方だったのでしょうね」

巫女は、すでに定まらぬ視点で二人に語りかけました。

「スキピオ、思うがまま、真っ直ぐに生きなさい… ナムジ様、あなたと過ごせて、楽しゅうございました…」

そう言って、巫女は光となって消えました。

先程まで抱きとめていた体の感覚が全く無くなり、呆然とする青年――無言で天を仰ぐ大蛇――気づくと、暗雲は晴れ、残された二人を柔らかな光が包んでいました。

暫くして、青年が口を開きました。

「おい、クソ神… 振られてしょんぼりしてるとこ悪いがよ、どういうことか説明しな」
《フン 振られてなどおらぬわ……所詮は横恋慕よ》
「…横恋慕?」
《…ヘキは、幼き頃よりワシに仕え、ワシもアレを気に入っておった。この地で途方に暮れていたワシは、ヘキがおる時にだけ、この荒御霊を抑えることができた…》

ふと、青年の横に立つ気配――気づくと、青年の傍らには人の姿に戻った山神が。

「しかし、いつしかアレも年頃になり、里に訪れた旅の者と恋に落ち、夫婦となり、子を産んだ」

そのまま、跪いて落ちた打掛を拾い上げる山神。

「ヘキは海を渡り、夫の故郷へ行くと言った。人の命は短い。ワシが繋ぎ止めるわけにはいかんと思った――しかし、そうするべきだった…」

山神の打掛を見る目に浮かぶ苦悶――

「旅立ちの夜、ヘキの乗った船が嵐に見舞われた。ワシはここからそれを視ておったが、ワシはこの山から出ることが叶わん。しかしその時、海より赤い光が差し、ワシに神力が流れ込んできたのだ。ワシはすぐさま海へと飛んだ。だが、時すでに遅く、夫は死に、赤子もどこぞへと流されてしまっておった。ワシは瀕死のヘキを救い上げ山へと連れ帰ったが、間に合わず、無理やり反魂の法でヘキの魂をこの世に繋ぎ止めたのだ…」

山神は青年に背を向け、打掛を抱きしめて言いました。

「ヘキの産んだ赤子は、右の眼が赤かった。そしてお前の長布…それは山巫女の打掛の帯紐だ――わかったか? だから、ワシはお前が好かぬ」

「そっか…」

青年は顔が見えないように下を向き――

「もっと 話せばよかったな…」

首に巻いた赤色の長布を握りしめ、顔を埋めました。


* * * *

「よしっと。まぁ、こんなもんだろ!」

社の前にできた、小さな塚の前に立つ青年。それを社の屋根から頬杖をついて不満そうに見下ろす山神。

「…まったくわからん。ヘキとワシの思い出の品だというに、なぜ埋めるのだ」
「うるせぇな、人間はこうすんのがいいんだよ。 …んで、どうすんだよ?」
「…そうさな、ヘキの最後の頼みだ。気に食わぬが…お前と契約し外へと出るとしよう」
「契約?」
「ああ、お前の力は…まぁ良い。契約すれば道すがら教える。して、お前はどうなんだ?」
「…いいぜ。ヘキさんにあんたの面倒みろって頼まれたしな」
「…なっ、面倒… お前はいちいち… クッ、致し方ない。ではワシの真の名を教えよう」
「あ? ナムジじゃねぇのかよ?」
「フン、それはワシの『半身』のふたつ名だ。このような勝手の知らぬ世界で、おいそれと真名など明かせるものか。さあ心に刻め。ワシの名は、三輪の明神――」


* * * *


「やぁやぁ、良かった! ホントに生きて帰ってきた! どうでしたか? ナムジ様には会えました? それと昨日の嵐――」

数日間、山門の前で野宿をし、一日千秋の思いで栗毛の青年の帰りを待っていた黒髪の男は、伸び放題の髭を押し付けて喜びました。

「わかったわかった。焦んなってヒイダさん、今話すからよ!」

興奮した黒髪の男の質問攻めにあいつつも、何とか一昼夜かけてことの次第を語り終える青年。全てを書き留めた男は、満足したように筆を置きました。

「なるほど… よくわかりました」
「あれ? あんまり驚かねぇんだな」
「ええ、私は、いろいろ観て聴いて、記録し続けてきましたからね。このくらいは…さてと」

聴くことを聴けば用は無しとでも言う風に、いそいそと野営具を片付け始める黒髪の男。それを座ってのんびりと眺める栗毛の青年。

「なんだか忙しいんだな、ヒイダさん」
「えぇ、やることがいっぱい…っと。あなたは、これからどうするんです?」
「そうだな。疫病収まったし、まずはシャクアの王様んとこに褒賞もらいにいくかな。あとは決めてねぇや」
「なら、南のドナに行ってみるのはいかがですか? あなたみたいな力を持った人が集まって、何かを始めようとしてるって噂があるんです」
「へ~、考えてみるよ」

あっという間に巨大な荷物をまとめた黒髪の男は、よっこらせと声をかけて荷を背負い、ふらふらと立ち上がりました。

「とにかく、御山の神様がいなくなって疫病が消えた結果、このあたりにも怪物がくる、というのは一大事です。急いで都に知らせないと。それでは…」

背を向ける黒髪の男に、何か思いついたような栗毛の青年が声をかけます。

「そうだ、ヒイダさん。今回のこと本にする時さ、ちょっとかっこよく書いといてくれよ」
「う~ん…どうでしょう? 王命に逆らうことも多かったですし… はい。まぁ、適当に脚色しときます」
「適当って… 頼んどいてなんだけど、いいのかよそんなんで」
「こういうのは、真実半分、作り話半分くらいが面白いんですよ。後世の研究者たちにとってもね。真実の記録ってのは全てを書けば改ざんされる。だからうま~く包んで、埋もれない程度に隠すんです。その薄皮を上手くめくれば、隠された真実が見えてくる…ってな具合です」
「ふ~ん、そんなもんかね」
「しかし、お話を聞くだに、あなたとナムジ様は不思議な関係ですね… いつ物別れしてもおかしくない… けど信頼し合ってる感もある… 私が書くのはあくまで記録であり物語ではないのですが、しかしこりゃあ何と書いたものか… まぁ精々英雄譚らしく――」「…ヒイダさん、行かなくていいのかよ」
「あぁ! すみません、またやってしまいました…どうぞあなたもお元気で!」
「あぁ、ヒイダさんもな」

バタバタと大荷物を背負って走り去る黒髪の男。それを見送る青年。ふと、男が足を止めて振り返り、良く通る大きな声で叫びました。

「あー、そうそう! あなた、なくなりましたねー、影! それと、私はヒイダではなくて、ヒエダですー! ヒ エ ダ の ア…」
「わかったって! 早く行きなよヒイダさん!!」

笑顔で手をふる栗毛の青年に、黒髪の男は遠くでちょこんと頭を下げて走り去りました。
ホント、忙しい人だな――そう言って、笑う青年に、宙から語りかける声。

《海の子スキピオよ あの者… この世界のものではないな》
「あ~、そういやなんか『いほう』の人だって言ってたな… それよかテメぇ、何だよその『海の子』ってのは」
《お前はワシの中で、猿以上にはなったが、ヘキと同じ人間と認識するまでは程遠い。海の部族の子なら、『海の子』ぐらいで丁度よかろう?》
「はぁ? めんどくせぇやつだな」

そう言うと、栗毛髪の青年は山門を振り返り、首に巻いていた赤い長布をしっかりと頭に結びつけました。

「…ったくよ、んじゃあ行くか… オラ! いくぞ、“オ オ モ ノ ヌ シ”!」

《なっ! 契約したとはいえ、『海の子』風情がワシの神名をそう軽々しく呼ぶなど…》

青年は、そんな山神の声を盛大に笑い飛ばし、太陽のような笑顔で歩みだしました。

――fin


special past episode2

◆紅蓮古事記・異聞『緑の山巫女』◆

第28弾:2016/2/XX-2016/2/20

SPニール
SPNo ??? 名前 ニール
イラストレーター 沙汰 カード情報 ニール
必要PP 200
配布枚数 ???
備考  
DATA
身長 1.80[meter]
体重 75[kg]
出身 聖堂都市神聖孤児院
現在の場所 レムギア
現在の相棒 ボルボザ
現在の敵 愛すべき家族
イラストレーター 沙汰
フレーバーテキスト
陰鬱とした曇り空の下、僅かに火を燻らせながら広がる真新しい廃墟。そこに、薄青い髪に細面、眼鏡をかけた青年が、累々と積み重なった瓦礫に腰を掛け、しかめ面で地面に描いた文様を見つめている。

「う〜ん、おかしいな…。あ! そうかそうか、僕としたことがーーこうだね」

青年は一人つぶやくと、一転して晴れやかな顔になり、さも楽しそうに小枝で砂をこすり文様を書き直す。

「…どうかな?」

すると、地面の文様が橙色に光って空中に浮かび上がり、木々が枝葉を高速で伸ばしていくかのように広がりながら、大きな球体を構築していく。

「ハハ、いいぞいいぞ!」

子供のような瞳で笑う青年の前で、球体は周囲の空間を吸い込むようにぐにゃりと歪み、収縮した後、バリンと弾けて何か大きなものを吐き出した。

球体からドシャリと落ちたそれは、二人の人間だった。一人は白銀の鎧をまとった長髪の騎士。もう一人は無骨な戰棍と円盾を手にし、真っ直ぐに髪を整えた僧兵。

「アハハ! ほらね、やっぱりそうだった。成功成功」

手を叩いて喜ぶ青年。騎士は頭を振りつつ顔を上げると、青年を視界に収めたと同時に立ち上がり、舌打ち宜しく大剣を抜き構えた。しかし僧兵が即座にそれを制し、居住まいを正して青年に語りかける。

「…失礼。あなたが、女神の言われた“センドウ”ですかな?」

青年は、僧兵の問いかけに、目をパチクリとさせながら首を捻ると、一人何かに合点がいったように笑顔でうなづいた。

「せんどう…あぁ“船頭”ね。その通り。僕は敵ではないよ。ようこそ異世界へ。どうだった? 僕の“図形”の乗り心地は?」
「…なんのことやらだな。あんたは誰だ?」

微動だにすることなく青年に向けられた切っ先が、油断はしないという強固な意思を示す。

「僕はね、アルキメデス。僕も女神様に頼まれてさ。君の先生…マグスさんといったかな?ーーと“通信”して君たちを呼び寄せたんだ。彼、なかなか大したものだね。空気振動の時空転送法を独自に見つけ出すなんてさ。いや、誰かに聞いたといったかな? とにかくだ、受け手に僕がいるとしても、生体が時と次元を超える方法を他者が実行ーー」
「おいまて。マグスって…あのマグス先生か…?」

騎士に言葉を遮られ、少し不満そうな顔をする青年。

「どのマグス先生か、とか、君達を何故ここに呼ばなけりゃならなかったか、なんてのは知らないよ、僕は。でも、女神様から『赤き石』の真理に近づく方法を聞けたからね。これくらいはお安い御用さ」

そうか、先生がーー騎士はそうつぶやくと、剣をおろし、曇天を見上げた。その顔にぽつりぽつりと冷たい滴が落ちる。

「あぁ、とうとう降ってきた。僕の図形が完成した後で良かったよ。じゃあね」

そう言って降り出した雨を避けるように、その場から去ろうとする青年。その背中に騎士が声をかける。

「おい、あの金の職棒持った“フクロウの女神”が言ったことーー本当に、“あいつ”はこの世界にいるのか?」
「フクロウ? …ふーん、その女神様、僕の会った方とは違うようだね。僕が会った方は、フクロウというよりは、暗黒大陸の巨鳥骨格に似た鋳像に乗っていたよ。あの標本は確か、アレクサンドリアで見たんだっけ…。何にせよ、だ。ソフォクレス先生曰く『人間は、神々によって与えられたる運命を忍ばねばならず』さ。全て致し方無し。つまり、この瓦礫散らばる舞台は、超常なる方々の意思に従い、君の言う“あいつ”により整えられて既に開演している。だからーー」

青年がやけに大仰なそぶりで背後の瓦礫の山を指し示した。

「ーー彼は、すぐそこにいる」

青年の言葉を聞いた騎士は、ゆっくりと息を吐き、目を閉じた。

「そうかよ。世話んなったな。先生に宜しく伝えといてくれ」
「是非にも」

ニコリと笑い、手首を軽く振って騎士と僧兵を見送る青年。二人は瓦礫の前に歩を進めた。

「これをあいつがな…」

騎士はうず高く積み重なった瓦礫を見つめ、かつて自分が犯した“罪”に想いを馳せる。
「似た者どうし、ということですかな?」

騎士の心を見透かしたような僧兵の言葉に、騎士が口の端をゆがませる。

「あいつの方が男前だと思っていたがよ、そうだったのかもな」
「ならば大丈夫ですな。あなたはこうして戻ってこられた。彼もきっと…」
「…よせよおっさん、涙出ちまうだろ」

騎士は瓦礫の目の前で足を止める。

「オレはあいつを殺したくねぇ。けど、あいつにオレを殺させるわけにもいかねぇ…。だからよおっさん、『ビショップ』のあんたの力が必要なんだ…頼んだぜ」
「わかっておりますとも。まかせておきなさい」

そう言うと、僧兵はぐぅっと鼻息荒く戰棍を振りかぶり、爆発でも起きたかのような一撃を瓦礫の山に叩き込んだ。巨大な瓦礫が爆散し、一瞬にして塵と化す。

もうもうと立ち込める砂煙。そこに、降り出した雨が燻り火に当たり、立ち昇らせた水蒸気と合わさって更に視界を曇らせてゆく。

ふと、空気が揺れた。

ガキィィィン!ーー反射的に騎士が立てた刀身が、不意に撃ち込まれた黒い斬撃に打ち震える。剣を構えなおす間もなく、矢継ぎ早に撃ち込まれる斬撃。

「ホーーーリィィィ ライトォォォォーー!」

僧兵の叫びと共に現れた輝く障壁が、無数の斬撃を一気に跳ね返す。これでひとまず態勢をーー

「ぐふぉあっ…!!!」

なぜか、背中から衝撃を受けて吹き飛んだのは僧兵。いつの間に回り込まれたのかーー更なる黒い斬撃が倒れた僧兵に迫る。

「おっさん!」

騎士が僧兵を庇い、その体で斬撃を受ける。雨に混じり廃墟に舞う赤霧。

「キュアアアアア ライトオオオオ!!」

這いつくばる僧兵の戦棍から燐光が瞬き、騎士の傷を瞬時に癒す。

「こりゃあ、きっついな… 悪ぃなおっさん」
「いえいえ、しかし、なかなかにやり手です」
「…だな」

騎士は紅色の大剣を構えなおし、立ちこめる煙に身を隠す敵に呼びかける。

「おい、不意打ちとかよぉ、それでも聖騎士かぁ!?」

次第に雨脚が強まり、地に吸い込まれるように立ちこめていた煙が薄らいでいく。

騎士が顔を向けた先ーーそこには気炎を上げ、荒く息を吐く黒い影が立っていた。影は言葉なく騎士を見つめ、騎士もまた影を見つめ返す。その目には、喜びとも悲しみともつかない僅かな光が滲んでいたかーー騎士はゆっくりと、大きく息を吸い込み、しっかりとした口調で告げた。

「やっと会えたな。 待ってろ、今、兄ちゃんが助けてやる」


SPアルファ・レネゲイド
SPNo ??? 名前 アルファ・レネゲイド
イラストレーター 沙汰 カード情報 link_anchor plugin error : idが指定されていないか、存在しないページを指定しています。
必要PP 200
配布枚数 ???
備考  
DATA
身長 1.80[meter] フレーバー
体重 71[kg]
装備 ダークメタル
武器 ソウルスラッシュ
体組織 魔械細胞
現在の所属 『教会』
イラストレーター 沙汰
フレーバーテキスト
焼け跡が燻る、まだ生まれたばかりの真新しい廃墟に男の声が木霊する。

「あ~壊した壊した! はい、もうお終い! ドードードーだぜ!」

頭巾をかぶり、体中に紋様を掘り込んだ男が両手を突き出して、さらに破壊を続けようとする魔人を制止し、その「胸に刺さった魔剣」を引きぬく。すると魔人は、紫煙と共に黒い甲冑をまとった騎士へと姿を変える。

「はい、戻りましたよっと…ったく、オメェは面倒くせぇったらありゃしねぇ!」

そう言って、男が手にした魔剣を思いきり騎士に投げつけるが、騎士はこともなげにそれを受け取る。

「ふぅ…まぁいいわ。…しっかしよぉ、パラケルススの旦那にも困ったもんだぜ。なーんで教えちまうかなぁ。奴はあっち側の人間だつったろうがよ。ホント、天才なんだか馬鹿なんだか…」

頭巾の男は一人ぼやき続けるが、騎士の方にまったく返事をする素振りはない。

「はぁ… あんなん使徒にすんじゃなかったわ。なぁ、オメェもそう思うだろ? そんなわけでよ、マグスとかいうオメェの先生様が、オメェを助けたくって助けたくってお願いたまら~んってな感じらしくてな、旦那が教えちまった“転送法”で、オメェ宛の大荷物を“ここ”に送ってくんだと。ったく迷惑な話だよな?」
「……」

男の言葉に、騎士は僅か気づかぬ程に体を揺らしたが、やはり返事をすることはなかった。終始無言な騎士を気にすることなく、頭巾の男は彼の肩をポンポンと叩いて話し続ける。

「いや、オメェには同情してんだぜ? せっかくぜーんぶ吹っ切れて自由に楽しくやろうって矢先だったのになぁ。…でもよ、オレは転んでもただじゃあ起きねぇのさ。旦那が呼び込んだ厄介事を利用して、オメェを“完成”させる。…オメェは随分と不安定だ。今みてぇに一度力を放出すっと死ぬまで止まんねぇとかよ…それじゃ“あの皆さん”が来やすいように、こうして破壊の限りを尽くすっつう大事なお勤めすらままならねぇ」

頭巾の男はそう言いながら、騎士の前をふらふらと酔っぱらったようにうろつくと、突然気を悪くしたように振り向いた。

「つうか、聞いてんのか小僧!? くたばるまで力出し続けんなっつってんだよ! お前はこっち側の『最期の鍵』なんだぜ? 自覚ってのが必要だぜ。ホントよ」
「……」
「…とにかくよ、オメェは今からここに来る奴をぶっ殺して『完璧な鍵』になれ。そういうこった」

男はおもむろに手にした分厚い“機械仕掛けの魔導書”をパラパラとめくり、ブツブツと何かをつぶやきながら、やっと見つけた目当てのページを食い入るように見つめる。

「ほらな、俺のかわいいグリモアちゃん『イーラ・フロル・ブレウィス・エスト』も予言してるぜ――そろそろ、来るみてぇだ」

頭巾の男は、そのままズズッと騎士に近づき、相手の胸の内を覗き込まんばかりに目を見開いて、ゆっくりとその顔を覗き込んだ。

「……今、どんな気持ちだ? やれんのかよ?」

「…私はレネゲイドだ――気持ちなど、どうでもいい」

頭巾の男がぎょっとして飛びすさる。

「うぉ! 喋ったよ!! なんっっっっっつう愛想のねぇ! ちょっと怖ぇぞオメェ! オレぁ臆病なんだ。心臓破裂したらどうしてくれんだよ。チッ、ポーのやつ、こいつマジで失敗作なんじゃねぇのか!?」

ふと、欝々とした曇り空が、瓦礫の舞台にそぐわぬ二人の喜劇に抗議するかのように、ぽつりぽつりと滴を落とし始める。

「チッ、降ってきやがった…雨はよ、嫌ぇなんだよ。んじゃ、オレは行くわ。とっとと一人前になってくれよ? 早くしねぇと、“落日”が過ぎて“朝”になっちまうぜ?」

頭巾の男は、自分の洒落た言い回しが気に入ったのか、ククッと一人笑うと、グリモアから呼び出した紋様に体を沈め、振り向きもせずに消え去った。

一人瓦礫の中に残された騎士は、自身が破壊しつくした廃墟を見渡す。

かつての彼と彼の兄は、自分を信じ、師を信じ、神を信じ、ただ信じたものに従い、このような廃墟が広がる戦場に身を置き続けた。

しかしその裏には常に、裏切りと欺瞞、そして彼等の力を利用し、利権を得ようとする者達の悪意が深く根を張り続けた。彼等はそれを知ってもなお、全てを飲み込み、それでも救われる笑顔のために剣を取り続けた。

その笑顔はどんな顔であったか――彼にはもう思い出せなかった。思い出そうとすると、胸の中をじゅくじゅくとした、何か黒いものが覆っていくのだ。

彼等がもたらした笑顔は、より多くの憎しみの上にあった。それに気づいた彼の兄は、自らも憎しみを募らせ剣を捨てた。彼は悲しかった。自分もまた剣を捨てたかった。これ程の憎しみを生むのならば、もう誰も笑顔になどできやしないと思った。

しかし、共に夢を追った兄の笑顔だけは取り戻したい、取り戻せぬなら、せめてその憎しみだけでも取り除きたい――そう思い、やはり戦い続けた。その戦いの中で、新たな希望も見た。しかし、最後に行き着いた方法は――兄の命を奪うことだった。

結局、兄は命を取り留めたらしい。だが、彼は知ってしまったのだ。彼の剣が兄の体を貫いた時に、悲しみと共に、これで終わると安堵する自分がいたことを。

全てのものはいつか消え去る。その後には、必ず悲しみが残り、やがてそれを「諦め」という安堵が覆う。結局そう…なら、初めから全て無い方がいい…そうでなければ、悲しみは生まれ続けるしかない。苦しみに身もだえ続けるしかない。そんな思いが胸中を埋め尽くし、騎士の口からついて出た言葉は――

「ニール…私を助けてくれ――」

その時、騎士は気配を感じた。雨が燻った火に当たり、立ち昇った水蒸気が次第に廃墟を覆っていく。その靄の中、瓦礫の向こうに、はっきりと“彼”の存在を感じた。

騎士は魔剣を握りしめ、瓦礫の山に射抜かんばかりの強い視線を送った。

「――あなたがいると、染まり切れないんだ」


SP九紋龍史進
SPNo ??? 名前 九紋龍史進
イラストレーター ちろり カード情報 九紋龍史進
必要PP 200
配布枚数 ???
備考  
DATA
プロフ1 プロフ1 フレーバー
プロフ2 プロフ2
プロフ3 プロフ3
プロフ4 プロフ4
プロフ5 プロフ5
プロフ6 プロフ6

第29弾:2016/3/XX-2016/4/20

SP潜影の牙蛇 ハザマ
SPNo ??? 名前 潜影の牙蛇 ハザマ
イラストレーター 加藤 勇樹 カード情報 潜影の牙蛇 ハザマ
必要PP 200
配布枚数 ???
備考  
DATA
プロフ1 プロフ1 フレーバー
プロフ2 プロフ2
プロフ3 プロフ3
プロフ4 プロフ4
プロフ5 プロフ5
プロフ6 プロフ6

SP白金錬金術師 プラチナ
SPNo ??? 名前 白金錬金術師 プラチナ
イラストレーター 森 利道 カード情報 白金錬金術師 プラチナ
必要PP 200
配布枚数 ???
備考  
DATA
プロフ1 プロフ1 フレーバー
プロフ2 プロフ2
プロフ3 プロフ3
プロフ4 プロフ4
プロフ5 プロフ5
プロフ6 プロフ6

第30弾:2016/4/XX-2016/5/XX

SPヴィーラ
SPNo 046 名前 ヴィーラ
イラストレーター © Cygames, Inc. カード情報 ヴィーラ
必要PP 200
配布枚数 3000
備考  
DATA
身長 1.6[meter] フレーバー
体重 不躾な方ですね
最高速度 星晶獣と同程度
想い人 カタリナお姉様
臣下 星晶獣シュヴァリエ
最近の悩み ローアインの台頭

SPカリオストロ
SPNo ??? 名前 カリオストロ
イラストレーター © Cygames, Inc. カード情報 カリオストロ
必要PP 200
配布枚数 ???
備考  
DATA
プロフ1 プロフ1 フレーバー
プロフ2 プロフ2
プロフ3 プロフ3
プロフ4 プロフ4
プロフ5 プロフ5
プロフ6 プロフ6

SPシャルロッテ
SPNo ??? 名前 シャルロッテ
イラストレーター © Cygames, Inc. カード情報 シャルロッテ
必要PP 200
配布枚数 ???
備考  
DATA
プロフ1 プロフ1 フレーバー
プロフ2 プロフ2
プロフ3 プロフ3
プロフ4 プロフ4
プロフ5 プロフ5
プロフ6 プロフ6

SPダヌア
SPNo ??? 名前 ダヌア
イラストレーター © Cygames, Inc. カード情報 ダヌア
必要PP 200
配布枚数 ???
備考  
DATA
プロフ1 プロフ1 フレーバー
プロフ2 プロフ2
プロフ3 プロフ3
プロフ4 プロフ4
プロフ5 プロフ5
プロフ6 プロフ6

SPナルメア
SPNo ??? 名前 ナルメア
イラストレーター © Cygames, Inc. カード情報 ナルメア
必要PP 200
配布枚数 ???
備考  
DATA
プロフ1 プロフ1 フレーバー
プロフ2 プロフ2
プロフ3 プロフ3
プロフ4 プロフ4
プロフ5 プロフ5
プロフ6 プロフ6

第X弾:20XX/XX/XX-20XX/XX/XX

SP使い魔名1
SPNo ??? 名前 使い魔名1
イラストレーター ??? カード情報 使い魔名1
必要PP ???
配布枚数 ???
備考  
DATA
プロフ1 プロフ1 フレーバー
プロフ2 プロフ2
プロフ3 プロフ3
プロフ4 プロフ4
プロフ5 プロフ5
プロフ6 プロフ6

SP使い魔名2
SPNo ??? 名前 使い魔名2
イラストレーター ??? カード情報 使い魔名2
必要PP ???
配布枚数 ???
備考  
DATA
プロフ1 プロフ1 フレーバー
プロフ2 プロフ2
プロフ3 プロフ3
プロフ4 プロフ4
プロフ5 プロフ5
プロフ6 プロフ6

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