私の一番の友達 ◆OmtW54r7Tc


「う…うーん……?」

深い森の中、ポケモンマスターを目指す少年、サトシは目を覚ました。
目を覚ましたサトシは、辺りを見回す。

「ここ…どこだ?俺、確かジム戦の為に特訓してて…」

そうだ。
ハクダンジム戦に敗れた俺は、ピカチュウ達と特訓をしてた。
途中、シトロンのメカが爆発したりしたこともあったけど、再挑戦の為にピカチュウもヤヤコマもしっかりと対策を練って、明日のジム戦に備えてぐっすりと眠っていたはずだった。
だがしかし、目を覚ますとそこはポケモンセンターのベッドではなく…


「あれは…夢だったのか?」


人が次々と殺され。
突然殺し合いをしろと言われて。
あまりに現実離れした事態に、先ほどまでの光景は夢だったのではないかと考える。

だが、その考えは首に巻かれた物体に気づくことによってすぐに否定されることとなった。
つまり、先ほどの光景は夢ではなく…現実なのだ。

「!そうだ、みんなは!?」

慌てて辺りを見回すが、そこには旅の仲間のシトロンやユリーカ、ジム戦後の特訓中に現れた女の子・セレナの姿はなく、あったのは一つのランドセルだった。

「こいつがポーキーとかいうやつが言ってたランドセルってやつか」

サトシはランドセルを開け、中身を確かめた。

「モンスターボール…!」

真っ先に目に飛び込んできたのは、見慣れた紅白のボール。
サトシはそのボールを上空へと投げた。

「ヤコ~!」
「ケロ!」
「ピッピカチュウ!」

「良かった…お前たち、無事だったんだな!」

仲間たちの姿にサトシは喜びの声をあげ、3匹のポケモンたちを抱きしめる。
そしてひとしきり喜び合うと、ヤヤコマとケロマツをいったんボールに戻す。

「これがスマートフォンってやつか…?」

とりあえず適当に弄ってみると、ページが切り替わった。

「『参加者名簿』…?」

そこには、自分も含めて全部で55人の名前が羅列してあった。
どうやら、これがこの『殺し合い』とやらの参加者らしい。

「良かった…シトロンやユリーカ達は連れてこられてないみたいだ」

仲間の名前がないことにホッと胸を撫で下ろすサトシ。
彼らの名前がないということは、シトロンたちは今頃いなくなった自分を探しているのだろうか。

「こうしちゃいられない…早くみんなのところに戻らないと!」

スマートフォンの中に『地図』という項目があったので、サトシはそこを押してみる。
そこには、この会場の地図と、現在位置が表示されていて…

「トキワの森!?」

自分の現在位置に、サトシは驚く。
一瞬ここはカントーなのかと考えたが、しかし地図を見てみると明らかに違う。
どういう事だと考えていると…

「ピカピカ!」
「ん?どうしたピカチュウ」
「ピ~カ~」

ピカチュウが方を向く。
そこは何もない茂みに見えたが…

「泣き声?」

耳をすませてみれば、かすかに声が聞こえる。
しかもどうやら泣いているようだ。

「近くに誰かいるのか…?行ってみようぜピカチュウ!」
「ピッピカチュウ!」

俺とピカチュウは泣き声のする方へと走った

「ふえ~ん…結衣~!どこ~!ヒックヒック…」

そこにいたのは、自分より少し年下、実際の年齢は分からないが見た感じではユリーカと同年代と思われる少女が泣いていた。

「君…大丈夫?」
「ふぇぇ!?」

サトシが声をかけると、少女はおびえたように身体を縮こませる。

「ピカチュウ!」
「あ、かわいい…」

しかし、サトシの肩に乗るピカチュウを見ると、わずかに顔をほころばせる。
どうやら少しだけ警戒を解いてくれたようだ。
今がコミュニケーションをとるチャンスだと、サトシは少女に声をかける。

「俺はマサラタウンのサトシ!敵じゃない、安心してくれ」
「え、あ…」
「君の名前も教えてくれないかな?」
「あ、その…京子、歳納京子です」



「お~い京子!あかり!こっちだこっち!」
「えへへ!結衣ちゃん待ってー!」

前方を元気よく走るのは、船見結衣と赤座あかり。
私の大切な友達。

「結衣―!あかりちゃん!待ってよ~」
「遅いぞ京子―!」

そしてそんな二人に遅れて走るのが…私、歳納京子。

「待ってってば~!…うわっ!」

なんとか二人に追いつこうと走っていたら、転んでしまった。
うう、痛い。

「こら京子!メソメソしない!」
「で、でも…ウエ~ン!結衣~!」

泣いていると、あかりちゃんが私の前に立って

「変身!はっぱ仮面!痛いの痛いの飛んで行け~!宇宙の果てまで飛んで行け~!」
「…クス」
「あ!京子ちゃん笑った!」

赤座あかりちゃん。
年下だけど、面白くてとってもいい子な友達。

「ほら、つかまって」

船見結衣。
かっこよくて、泣き虫な私をいつも助けてくれる私たちのリーダーで、一番の親友。

「うん、ありが…」

私は、結衣のその手を取ろうとして…



「え?」

気がついたらそこは、森の中だった。



「それじゃあ京子は、ここが殺し合いの会場だってことも、知らないのか?」
「うん…あかりちゃんや結衣と遊んでたら、急にここにいて……」
「そっか…」
「ねえ、殺し合いって何のこと?ここはどこなの?」
「ああ、実はな…」

サトシは京子に事のあらましを伝える。
話を聞いた京子はやはりショックだったようで、俯いてしまった。

「ここに連れてこられてる人の名前が書いてあるんだ。京子の知り合いは誰かいるか?」
「えっと…あ!あかりちゃん!」
「知り合いか?」
「うん!私のお友達」

京子はさらに下に書かれた参加者の名前を一つずつ見ていく。

「あ…」
「どうした?」
「結衣の名前が…ない」
「結衣っていうと…さっき名前を呼んでたやつか?よかったじゃん、この場所に連れてこられなくて」
「……………」
「他に誰か知り合いはいるか?」
「ううん、いない…」
「そっか…それじゃあとりあえず、そのあかりって子を探そうぜ!」

そういってサトシは肩にピカチュウを乗せて立ち上がる。
しかし、京子はその場に座り込んだままであった。

「どうした?京子」
「……ない」
「へ?」
「私…立てない」

結衣の名前がないことを知った時、京子の胸中には結衣が呼ばれなかったことへの安堵と共に、結衣がいないことへの不安に苛まれた
結衣は、いつも自分を守ってくれた私たちの優しいリーダーで、京子にとってはヒーローのような存在だった
そんなヒーローが、この場にはいない
自分を助けてはくれない
そう思ったとき、自然と足がすくんでしまい、動くことが出来なかった

「友達がいるんだろ?探さなくていいのかよ!」
「無理だよ!だって私、弱虫だし、泣き虫だし…。結衣がいないと私…」

「最後まであきらめちゃだめだ!」

そう叫ぶと、サトシは京子の腕を掴む。
そして、そのまま京子の身体を持ち上げて、自分の身体に引き寄せた。

「な?立てたじゃん」
「あ…」

呆気に取られる京子に対し、サトシはニッと笑った。
そんなサトシの笑顔に、つられるように京子の表情も明るさを取り戻していき、

「あ…ありがとう」

はにかんだ笑顔で、礼を言った。


「とりあえず、そのあかりって子を探してみようぜ!」
「どこにいるのか、心当たりがあるの?」
「もちろんないぜ!」
「あうう…そうだよね」

はっきりと言われ、ガッカリとする京子。

「大丈夫だって!走れば道は見えてくる!進めば必ずたどり着く!探して回れば、きっと見つかるさ」
「そうだよね…きっと会えるよね」
「とりあえずまずは、この森を抜けようぜ!」
「ピッピカチュウ!」


(結衣…私、泣き虫だから、泣いちゃうかもしれないけど…。でも、頑張るから。あかりちゃんと一緒に、結衣のところに戻ってくるから)

(だから、私の事待っててね。結衣…私の一番の友達)

【G-2 トキワの森/深夜】
【サトシ@ポケットモンスター】
[状態]:健康
[装備]:モンスターボール【ピカチュウ(召喚中)、ケロマツ、ヤヤコマ】
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2
[思考・行動]
基本方針:元の世界に帰る
1:京子と共に赤座あかりを探す
※参戦時期はXY6話、ハクダンジム再挑戦前です
※京子の名前が名簿にないことに気づいていません

【歳納京子@ゆるゆり】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・行動]
基本方針:結衣のところへ帰る
1:サトシと共にあかりちゃんを探す
※参戦時期は原作第30話「こどもの時間にあいこでしょ!!」orアニメ1期11話の過去回想時代です
※少なくとも京子の視点では元の世界から何の説明もなしにいきなり殺し合いの会場に飛ばされたことになっています
※参加者名簿を見ましたが、知り合いを探すのに夢中で自分の名前がないことに気づいていません

≪000:豚王遊戯 時系列順に読む 002:砲と盾、天使と不死鳥
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最終更新:2014年03月11日 15:14