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塩水と真水の間

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lupinduke

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塩水と真水の間
The Oops Factor
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フリーポートのセイジより購入できる本です。
もちろん、購入後クエストをクリアしないと読める形にはなりません。

 塩水と真水の間

これは、若きエルダイトにしてサモンの技の学徒、Aduin Leyesteiriが悪寒に悩まされつつ残した記録である。

 うちは15人家族で、両親と12人の兄弟姉妹がいる。それがみな神秘の術を学んでいて、なおかつその習得程度がそれぞれ違うのだから、時には呪文が重なり合って不幸な結果を生むこともある。それを避けるため、私は最も人の行きたがらないであろう場所を選んだ。そう、エッジウォーター・ドレインである。 マークウォーターを除けば、このあたりまで来る者は皆無に等しい。それゆえに、コンジュレーション呪文の練習にはうってつけの場所だ。悩みの種は海が近いせいで湿度が高いことだ。また、満潮時に流れ込んできた海水は、干潮になっても完全には引かない。
 たき火ができるような乾いた場所は少なく、たとえあってもすでにマークウォーターに占領されている。だが、エッジウォーター・ドレインから市内まで戻るためには、長い道のりを苦労して登らなくてはならないので、波にさらわれないですむ野営地はどうしても必要だ。 私は下水道最下部に続く階段の途中にある広い踊り場を選び、壁に小さなくぼみを掘ってそこに本を置いた。それから火をおこし、寝具を広げて眠った。だが、階段の石から伝わってくる冷気が骨にしみ、私は震えながら目覚めることになった。その後は悪寒がして、どうやっても暖まることができなかった。
 家に帰りたい。私は切実に思った。だが、始終眠っているのに疲れがひどく、動くことができない。何日か落ち着かない日が過ぎた後、私はどうせなら研究を進めようと決心した。火にたきぎをくべ、本を取り出してみると、ページには汚い黒い糸のようなものがからみついていた。それをできるだけ払いのけて最初のページを開くと、とたんにくしゃみが出た。 私は母からくしゃみをするときは必ず手を口でおおうようにと教え込まれていたので、反射的に手を鼻と口にあてた。ところがその手には、本から払ったときに黒い糸がついていたのだ。黒い糸は顔にくっつき、あまつさえ私はその一部を吸い込んでしまった。胸の悪くなるような出来事だ。
 マントで手を拭き、まるで熱にでも浮かされたように調査を続けた。その時くしゃみがやって来た。あまりにも突然だったので、鼻や口をふさぐ間もなかったが、結果的にそれがよかったらしい。くしゃみはすさまじい咳に変わり、最後に口からおかしな塊が飛び出てきた。塊はありえない大きさで、ありえない物質でできていた。 このあまりにも不気味なできごとに呆然としながら、私はその球体から目を離すことができなかった。それは私の眼前でぶるぶると震えながら大きくなっていき、まったく同じ大きさの2つの球体に分裂した。私は目をこすったが、そのせいで黒い糸が今度は目に入ってしまった。何度もまばたきをしたが、そのたびに球体は同じ大きさで分裂し増えていくようだった。目は黒い糸のせいでずきずきと痛み、涙がぼろぼろと落ちた。
その黒い涙は石畳に落ちるとシューという音を発し、煙を出しながら恐ろしい大きさに膨れ上がった。そしてさっきの踊る球体と同じく、この涙も同じ大きさに分裂しては増え、それを繰り返してついには階段を埋め尽くした。この恐ろしい現象が現実なのか?それとも熱に浮かされた私の頭が見ている幻なのか? 震えながら分裂する得体の知れない物体に魅了されたようになり、私はその場にへたり込んだ。突然、兄が私の腕をつかんでゆすぶった。街が下水道から出現したおぞましい形の化け物に襲われており、父と母は私の身を案じていると兄は言った。結局、私はあの黒い糸のことを一言も口にしなかった。あんなものが現実のはずがない。あれは幻覚だったに違いないのだ。

 
原題のThe Oops Factorとは、Oops(しまった!)となるような要因・要素を指します。
治安も悪く、何が起こるか分からない下水道を修業の場に選んだことが、Aduinにとっての"Oops Factor"だったのでしょう。
と、説明しづらいところをあえて捨ててつけた邦題も結構好きだったりします。

ちなみに、この本のクエストを進めてると、リアルに体調不良が追体験できます。3D酔いですけど。

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