655 姫事遊戯 1 sage 2008/07/08(火) 01:33:50 ID:62ViLCfd
この流れなら投下できる…!
アルト×ランカで、目指せ「攻め攻めアルト姫」。
この流れなら投下できる…!
アルト×ランカで、目指せ「攻め攻めアルト姫」。
「ね。アルト君の髪、触らせてもらっちゃダメかな?」
発端は、共通教科の授業中。たまたまアルトのななめ後ろの席に座ったランカが、そんなことを言い出したことから。
髪をしばる赤い結い紐を、手持ち無沙汰にもてあそびながら、アルトは大きなため息をつく。
「――ったく、お前も変なヤツだな。他人の髪なんか触って何が楽しいんだ」
放課後、誰もいない教室に二人きり。
椅子に腰を下ろしたアルトの髪を、背後に立ったランカの指が丁寧に梳いてゆく。
仏頂面のアルトとは対称的に、鼻歌などを歌いながら手を動かすランカはひどく楽しそうだった。
不慣れなのか緊張しているのか、ひんやりと冷たいランカの指先は、ときおりアルトの髪をツン、と引く。皮膚に軽い痛みが走るがそこはご愛嬌、文句を言うほどのことでもないと、アルトは大人しくされるがままになっていた。
正直言って、ランカに「おねだり」されると弱いという自覚は、ある。多少は。
「――ったく、お前も変なヤツだな。他人の髪なんか触って何が楽しいんだ」
放課後、誰もいない教室に二人きり。
椅子に腰を下ろしたアルトの髪を、背後に立ったランカの指が丁寧に梳いてゆく。
仏頂面のアルトとは対称的に、鼻歌などを歌いながら手を動かすランカはひどく楽しそうだった。
不慣れなのか緊張しているのか、ひんやりと冷たいランカの指先は、ときおりアルトの髪をツン、と引く。皮膚に軽い痛みが走るがそこはご愛嬌、文句を言うほどのことでもないと、アルトは大人しくされるがままになっていた。
正直言って、ランカに「おねだり」されると弱いという自覚は、ある。多少は。
「だって、癖のない長い髪って女の子の憧れなんだよ?」
ランカはうきうきと弾んだ声で答える。
「それに、アルト君の髪ってすっごいサラサラでキレイだし。いいなあ。あたしの、変なクセがあるから伸ばせないもん」
ランカはうきうきと弾んだ声で答える。
「それに、アルト君の髪ってすっごいサラサラでキレイだし。いいなあ。あたしの、変なクセがあるから伸ばせないもん」
たしかに。どういう作用なのかアルトにもよくわからないが、ランカの髪は感情の起伏によって子犬の耳よろしく飛んだり跳ねたりするというなかなか奇妙な性質がある。
なんだかんだと言いながらアルトが最後に折れてしまうのは、たやすく気持ちの読みとれる、ロップイヤー、あるいはダックスフントの耳のごときそれにも一因があった。
なんだかんだと言いながらアルトが最後に折れてしまうのは、たやすく気持ちの読みとれる、ロップイヤー、あるいはダックスフントの耳のごときそれにも一因があった。
「まあ、いいけどな…。とりあえず、『キレイ』ってのはやめてくれよ。男が言われてもあんまり嬉しい台詞じゃねーぞ」
「え、でも、ホントにキレイだよ、アルト君の髪!」
「あのなあ……」
「違うの! キレイって、『女の子みたい』って意味じゃなくて!」
呆れるアルトの嘆息をさえぎり、慌てた様子でランカは言葉をすばやく差し挟んだ。
「アルト君は髪も顔もきれいだけど、でも、えっと、その――」
「その、何?」
「え、でも、ホントにキレイだよ、アルト君の髪!」
「あのなあ……」
「違うの! キレイって、『女の子みたい』って意味じゃなくて!」
呆れるアルトの嘆息をさえぎり、慌てた様子でランカは言葉をすばやく差し挟んだ。
「アルト君は髪も顔もきれいだけど、でも、えっと、その――」
「その、何?」
不自然に声を途切れさせたランカにアルトは水を向ける。逡巡したような沈黙ののち、背後から囁くような答えが返ってきた。
「……キレイだけど、でも、それ以上にいつも『カッコいい』もん」
ためらいがちに付加されたのは、告白じみた言葉で。
面食らったアルトは思わず後ろをふり向こうとした。とたん、背後から両頬を手ではさまれ、ぐぎっとその場に固定される。
面食らったアルトは思わず後ろをふり向こうとした。とたん、背後から両頬を手ではさまれ、ぐぎっとその場に固定される。
「こ、こっち向かないでっ!」
まだ途中だから、と必死の態でランカが叫ぶ。おそらくそれは言い訳で、本当は赤く染まった頬を見られたくないのだろう。
恥らってうつむくランカの姿が容易に想像できてしまい、その想像にアルト自身も照れてしまって、結局不自然な沈黙が二人の間に落ちてしまった。
恥らってうつむくランカの姿が容易に想像できてしまい、その想像にアルト自身も照れてしまって、結局不自然な沈黙が二人の間に落ちてしまった。
(…っとに、こいつは)
ランカはたまに、ゼロ距離からごく自然にアルトの懐に飛びこんで来る。
こうして二人きりで過ごしている間も、いつ理性の針が振り切れるかと気が気ではないのに。ランカは無自覚だから一層たちが悪いのだ。
小さな指がたどたどしい動きでアルトのうなじや襟足に触れるのも、考えようによっては立派な挑発で。
勘弁してくれよ、と天を仰ぎたいアルトである。
こうして二人きりで過ごしている間も、いつ理性の針が振り切れるかと気が気ではないのに。ランカは無自覚だから一層たちが悪いのだ。
小さな指がたどたどしい動きでアルトのうなじや襟足に触れるのも、考えようによっては立派な挑発で。
勘弁してくれよ、と天を仰ぎたいアルトである。
「あの、アルト君。このまま結んでもいい?」
「好きにしろよ」
手櫛をやめ、ランカが髪をまとめて持ち上げたので、アルトは手にした赤い結い紐を渡してやった。
「なんか、今日はアルト君優しいね。あんまり怒んないし」
「別にそんな事もねーけどな。……怒ってほしいのか?」
「そ、そうじゃないけど」ランカは慌てて首を振り、「ん、できたよアルト君。おかしなところない?」
アルトは後頭部に手をやって、感触を確かめた。少し結びがゆるいようだが、別段違和感もない。
「サンキュ。よくできてる」
「ほんと? 良かった」
ふり向いて褒めると、ランカは嬉しそうにはにかんだ。飼い主に褒められてシッポを振る仔犬そのもののような風情に、アルトは深々と嘆息した。
「好きにしろよ」
手櫛をやめ、ランカが髪をまとめて持ち上げたので、アルトは手にした赤い結い紐を渡してやった。
「なんか、今日はアルト君優しいね。あんまり怒んないし」
「別にそんな事もねーけどな。……怒ってほしいのか?」
「そ、そうじゃないけど」ランカは慌てて首を振り、「ん、できたよアルト君。おかしなところない?」
アルトは後頭部に手をやって、感触を確かめた。少し結びがゆるいようだが、別段違和感もない。
「サンキュ。よくできてる」
「ほんと? 良かった」
ふり向いて褒めると、ランカは嬉しそうにはにかんだ。飼い主に褒められてシッポを振る仔犬そのもののような風情に、アルトは深々と嘆息した。
(もう知らねー)
アルトは己の髪を梳いたランカの手をとると、その指先を唇に押し当てた。
「ひゃ、あ、アルト君!?」
驚いたランカが悲鳴に近い声を上げるが、アルトは取り合わない。
子供子供した外見に反し、ひんやりと冷たい指先に熱を与えるように、ゆっくりと舌を這わせる。
「ひゃ、あ、アルト君!?」
驚いたランカが悲鳴に近い声を上げるが、アルトは取り合わない。
子供子供した外見に反し、ひんやりと冷たい指先に熱を与えるように、ゆっくりと舌を這わせる。
「やっ、あ、あの、アルトく……」
「知ってるか? 男女の間じゃ、よほど気を許してる相手じゃないと髪って触らせないって話なんだと」
「え、そ、そうな……、んっ」
「知ってるか? 男女の間じゃ、よほど気を許してる相手じゃないと髪って触らせないって話なんだと」
「え、そ、そうな……、んっ」
身体のどこよりも過敏な場所の一つに刺激を与えられ、ランカがゾクリと身を強ばらせる。翡翠色の髪の先までその震えが伝わり、白い首筋をさらしてぴくぴくと蠢いている。
眼に見える、官能。感度は充分、とアルトは心ひそかにほくそ笑む。
眼に見える、官能。感度は充分、とアルトは心ひそかにほくそ笑む。
「ところでさ、ランカ。オレも頼みがあるんだけど」
「た、頼み……ごと? アルト君、の?」
「そう。聞いてくれるか?」
「た、頼み……ごと? アルト君、の?」
「そう。聞いてくれるか?」
手のひらの柔らかい部分に歯を立てて、アルトは訊ねた。ん、とかみ殺すような悲鳴を上げ、反射的にランカがこくんと頭をふる。
――罠に掛かった兎を前にした猟犬はこんな気分なのだろうか。
言質を取った悦びを表に出さぬよう苦心しつつ、アルトは腰をかがめてランカの髪を手にとり、言葉よりも雄弁なその一房に口付けた。
――罠に掛かった兎を前にした猟犬はこんな気分なのだろうか。
言質を取った悦びを表に出さぬよう苦心しつつ、アルトは腰をかがめてランカの髪を手にとり、言葉よりも雄弁なその一房に口付けた。
「今度は、オレが好きにしていい番だよな?」
(終)
…攻め姫撃沈。
12話の髪を結ぶシーンがエロかわいかったので、それに免じてご勘弁。
12話の髪を結ぶシーンがエロかわいかったので、それに免じてご勘弁。