崩壊したブリトア王国
アカシアから聞いた真実は、あまりにカリバーンの心に大きな後悔を残した。自分がドラグハートに封印されてしまったことで、故郷が侵略されてしまったのだから。
しかし同時にアークノアは別のことを考えていた。度々耳にしていた碧雷の帝王の正体...。それが自分の自然の魂なのではないか?という考えだ。
奴の構えている本拠地は自然文明であり、それ以外の文明を侵略しようとしているのなら納得はいく。
だとすればもはや帝国軍の進撃は他人事では済まされない。確証は得ていないが、アークノアはアカシアのその頼みを了承しようとした。
しかしここで割って入ったのはジークであった。
彼の言うには、この火文明にはまだ侵略の可能性が残されているということ。ここはファイアー・バードの森であり、決して火文明の中枢機関などではない。
つまりは奴らは侵略以外の目的で火文明に来たことは確かであり、そうなると今度は侵略のために再びここへ来るかもしれないという疑念はなんらおかしな話ではなかった。
それを聞いたアークノアは、ここでジークと別れて行動することを決めた。
ジークは火文明の最大中枢都市『メラバスチーム』へと向かい、それ以外のアークノア達はアカシアやカリバーンの故郷を救うためにブリトア王国へと向かうことにした。
そしてそれぞれの目的が終わったら、今度は光文明の都市である聖都市エレジェンドに集合することを約束した。
変わり果てた王国の姿
アークノア達はジークと一旦別れ、ブリトア王国へと向かう。かつてはここは綺麗な海の景色が見える国だったのだが、アカシアが言った通りなのか、もはやその面影はない。暗く澱んだ汚水が広がっていた。
王国の国璧付近に来るとと、アークノア達は隠れて移動し、こっそりと国内に侵入した。
そこで見た光景は彼らを驚愕させた。聞いていた話によればこの国はクリスタルで出来た美しい街並みが特徴だったはずだが、その面影はもはやない。不気味な歯車や、得体の知れない煙が充満する全く別の国となっていた。
街中を歩くクリーチャーにかつての仲間の姿はない。謎の不気味な人形のようなクリーチャーしかいなかった。
しかしそんな唖然としていた彼らを何者かが襲撃した。すぐさま応戦するも、それがこの街を侵略した元凶である、ギアドール軍団によるものだと分かった。
《ギアアルティメットハンティングドール》率いる兵士達はその感知能力により、アークノア達の居場所を突き止め、すぐさま迎撃態勢をとったのだ。
完璧な捜索、完璧な守り、完璧な迎撃...ギアドール軍団の連携した動きはこれまでの敵の比ではなかった。しかし奴らにも見落としていたところがあった。それが、肝心の対象の強さである。
すでに四天王を2人倒したアークノアやマスティア、オルタはもちろん、剣魔の太刀を覚醒させたアカシアや、この国の最強の騎士と呼ばれたカリバーンはその不意打ち程度には屈しない程の強さを持っていた。
たちまち返り討ちにあったギアドール軍はすぐさま撤退していった。
しかし今のこの騒動で、国中が厳戒態勢へと移行した。すぐさまこれ以上の脅威が来ることを考えると、ホッとはしてられないだろう。
盤上の戦略
しかしその報告を聞きながらも3人には余裕の姿が見えた。どこかこの様子を楽しんでいるかのようにも見える。
「面白い、ならば再び始めようか。策略と謀略がひしめく、結晶盤上の戦いを」
そして王室に1人残ったキングは虚空に向けてある言葉を放った。
「...そろそろ、君の出番かもしれないな。もう1人の君がついに現れたようだ」
玉座の後ろの暗闇....そこにはアークノアと似た見た目の黒い龍がいたのだ。
盤上のチェックメイト・ショーダウン
「しょうがない、このままアカシアの言っていたキングのいるところまで向かいます!」
マスティアとオルタも合体して強化するも、敵の攻撃が絶え間なくアークノア達に降り注ぎ、まるで限りがなかった。そのことから今目の前の敵を倒すよりもボスであるギアキングドールを倒した方が早いと判断したカリバーンは、全員を奴のいるであろう城まで誘導しようとした。
しかしその瞬間、今までになかった地響きが王国中に広がった。
警戒を強めて立ち止まったアークノア達だが、それが仇となってしまう。突然4人を別つ壁が精製されたのだ。まるで狙ったかのような壁の形成に、意図的なものを感じたであろう。
《ギアルークドール》によって生み出されたこの壁は奴の身体の一部であり、自由に生やしたり消したりできるようだ。
今までにない未知の敵を前にして、得体の知れない不気味さを覚えるアークノア達。しかしそんな状況に何者かの声が届いた。
「ようこそ侵入者諸君、私の名前はギアキングドール。このブリトア王国の新たな王だ」
「よくもそんなことをぬけぬけと...」
怒りの様子のカリバーンをよそに、キングは話を続ける。
「これよりこの王国の全域はギアドール・アナザー・フィールドが支配する。私はお前達とゲームがしたい。
ルールは簡単だ。お前達はこのギアルークドールが作り出す迷宮を突破し、私を倒すこと。
私達は兵士を使い、私の元に辿り着く前にお前達を殺すこと。
しかしそれにはお前達が団結してもらったら面白くないのでね。ちょこっとだけ手を加えさせてもらった」
どこか愉快そうな様子で話すキングを前に、故郷を奪われたカリバーンやアカシアは、言いようもない不快感を感じていた。
「なんでそんな遊びみたいな感覚で...ッ!!」
「簡単さ。戦いとは戦略、つまりは様々な策を練って勝利を目指し戦うことを言うのだよ。私はそれが好きだ。だからこういった形になるのは必然とも言える」
すると今度は空を青黒い不気味な色が支配した。しかもそこからは無数のギアドール軍団が出現したのだ。
「さあこれより始めようか。結晶盤上の私とお前達との戦いを!」
タクティクス・ギアドール・パペット
分断させられたアークノア達は攻めてきたギアドール軍団をそれぞれ相手していた。
ギアルークドールが形成する壁により行く手を阻まれるも、目的はただ一つ、ギアキングドールを倒すことに一貫していた。
しかしそう簡単にはいかなかった。
「こいつは...!!」
マスティア達が道を突き進む中、突然先ほどまでとは違う広い空間に出てきた。
そこには一際違うオーラを放つ、存在がいた。
《ギアクイン・パラサイト・ドール》が、大勢のギアドールを携えてマスティア達の前に立ち塞がった。
「気をつけてくだサイ。今回の敵...今までとは違い力による突破が困難に思えマス」
これまで様々な敵と相対してきた。手強い敵を相手になんとか勇気を持って立ち向かったが、今回ばかりはそんな手は通用しない。勇気を持って立ち向かう...それ自体が敵の罠に嵌められるのではないかという猜疑心を生み出していた。
そしてアークノアの場所には....
「........」
「なんだ....こいつは....」
アークノアは目の前の存在にこれまで以上の警戒心を抱いていた。
その警戒のしようはアナザーバイオレンスの時以上であった。
今からの前にいるのはほぼ自分と同格の存在。それは強さの話ではない。
自分の持つ能力、オーラ、その底の深さ、そひてその姿...。それらがまるで自分と同じ、あるいは別方向で自分よりも特質なものを感じていた。
「貴様は何者だ!!」
「........」
黒い龍がグチャァと口を開く。
終わりの見えないまるで蟻地獄のような戦いが始まろうとしていた。
光と闇の戦い
ダークノア、その言葉を聞いてもアークノア自身はまるでその存在について知らなかった。
自分と全く同じ存在、そして全く同じ見た目....違うのはその色と中身だけなのであろう。
奴がギアドール軍側にいることは確か。アークノアは警戒を強めていると、向こう側から攻撃を仕掛けてきたのだ。黒い剣を飛ばしながら、アークノアを追い詰めるために隙のない攻撃を連続で続ける。
戦い方もまるで似ており、血のつながりを感じるどころかアークノア本人であると誤認しかねないものであった。
五文明の力全てを駆使して互いに激しい戦いを繰り広げるも、アークノアは自分の身体に妙な違和感を覚えた。
圧迫されるような強い重圧、あまりに異様なオーラ。確かに目の前にいる存在は自分とほぼ同じ存在であることは確かだった。しかし決して100%一緒なわけではなく、どこかしらの差異があるのは当然であろう。
ただその差異と思われるものが異様に不気味であった。
このままジリ貧に戦い続けることに不吉な予感を感じたアークノアは勝負に出た。自分の持つ光の力を覚醒させ 《革命の法皇 セイヴァー・アークノア》になった。
革命ドロン・ゴーの力を使い、一気にダークノアを仕留めようとしたのだ。
しかしこの時彼は気が付かなかった。奴が自分と同じ性能であるということは、同じことを考えていてもおかしくなかったと。
瞬間、アークノアが光の力に目覚めた瞬間、ダークノアはその力を吸収しだしたのだ。
正確にはエグザイル・クリーチャーの魂である セイヴァージャンヌの力を吸い出した。
「ばかな!?あれは自らの同意がなければ合体できないはず!!」
アークノアの誤算。それは奴が自身の反転であったこと。つまりはアークノアがこのような制約があるのに対し、ダークノアの制約はまた別なのであった。これよりセイヴァージャンヌの力を奪ったダークノアは彼女のもう一つの文明、水の力を覚醒させ 《革命の法皇 ダークノア・セイヴァー》となった。
得体の知れない相手に遅れをとってしまったアークノア。だがそれ以上に奴は手段を選ばない冷酷さを兼ね備えていた。
突然、城壁から鎖が飛び出てきた。その鎖はアークノアの身体を縛り上げ、徐々に力を吸い取っていった。
「まさかこれは!!」
この技はダークノアのものではなく、ギアドール軍。かねてギアキングドールの技であった。この鎖はクリーチャーをドラグハートへと封印する技。
シャイニングカリバーンもこの技によって無力化させられ、ドラグハートになってしまったのだ。
必死に抵抗するももう遅く。彼はセイヴァージャンヌの力を奪われた上にドラグハートに封印されてしまった。
もうひとつの可能性
アークノアがドラグハートに封印されてしまった頃、他のマスティア達も決して状況はいいとは言えなかった。
なぜならばギアキングドールの仕業により、それぞれが不利となる相手をさせられていたからだ。奴は情報戦に置いては四天王の誰よりも抜きん出ており、今までの無沌世壊軍や古代兵装軍との戦いなデータを密かに収集し、彼ら全員の弱点を知っていた。
ギアクインドールは相手の呪文詠唱に多大な負荷を与えることができ、それがAlterヴァルキリーを大きく不利にさせた。
ギアドールカオスナイトはシンプルな対面能力の強さゆえに、彼らの中で一番対面での性能を発揮しなければ本気を出せないアカシアを相手にさせた。
そしてアークノアを除きこの中で一番強いシャイニングカリバーンには最も卑劣な方法を用いた。それが
「...ッ!まさか貴方達!!」
ギアビショップドールの操るギアドール軍団の中には、かつての仲間だった騎華武龍達もいたのだ。
意識を奪われ、自由を無くした誇り高き騎士達を奴は盾として用い、カリバーンの動きを大きく鈍らせた。
「...貴様ッ!!」
「どうした?攻撃すればいいではないか。...まあ君達の誇りがなんとかがある限りは、絶対無理かも知れないがね」
怒りに燃えるカリバーンを前にニヤリと邪悪な笑みを見せた。
このようにギアキングドールの策略により、カリバーン達は追い詰められてしまった。さらにギアルークドールという遠隔で操作できる攻撃要塞もあることから、この戦いは彼らが完全に不利なものとなっている。
もはや状況は絶望的....しかしこの状況を最初に打開したのは、アカシアであった。厳密に言えば...アカシア“達”であったのだ。
「危ない!!」
「え!?」
ギアドールカオスナイトの攻撃を喰らいかけた彼を守ったのは、まさかのアーク軍であった。
アークノアは自身が封印される寸前に全てのアーク軍に他の4人を助けるよう命令を出した。
その命令は彼が剣として封印されてもなお届き続け、彼らを動かしたのだ。
彼もただでは封印されなかったということだ。同時刻、カリバーン、Alterヴァルキリーの元にもアーク軍が到着した。
その様子をギアルークドールを介してギアキングドールは興味深そうな顔で見ていた。
「なるほど、そう来たか。...面白い、ならばどちらが上か勝負しようではないか」
同時刻、ギアキングドールは全てのギアドール軍にある命令をした。それが封印されたアークノアのドラグハートを破壊する命令である。
つまりここからの戦いはどちらが先に“キング”を倒すかという戦いとなった。
まさに盤上の上で行われるゲームのように、戦いは進行していく。
アークの力に覚醒するアカシア
アーク軍が到着し、アカシアはやっとギアドールカオスナイトと互角に渡り合えるようになった。しかしそれと同時に奴の動きも変わった。突然彼から離れるように動き、他のギアドール軍の兵士を盾にどこかへ移動し始めたのだ。
アーク軍はこれが、アークノアのドラグハートを破壊するための行動だと気がつく。
すぐさま追いかけようとするも、次々と行手を阻むギアドール軍によりどんどん距離を離された。
このままでは不味いと感じたアークノアの右腕である 《アークロード・バスター》はアカシアにある提案を持ちかけた。
それは彼がアーク軍としての力を目覚めさせるという提案であった。
その提案の背景には、アーク軍の秘剣と呼ばれるものが大きく関わってくる。
その剣はアーク軍のみが上手く使うことができるとされ、長らく封印されてきた。しかしアーク軍にはドラグナーが存在せず、その剣を扱うことができなかったのだ。
そのためシャイニングカリバーンを龍解させたらアカシアに、この提案を持ちかけ、その剣を使ってもらおうという意図であった。
アカシアはこの提案を最初は驚いたものの、すぐに受け入れた。彼もまた力が必要であったのだ。このブリトア王国を救うための力を。
こうしてアークロードと力を重ねたアカシアは、様々な未知の力を身体に享受し、ついにその力が新たな境地へと飛び立った。
アカシアは蒼龍の力と機構の力を両方持つ戦士 《機構双剣龍覇 アカシア・アーク》へと変化した。
アカシアはアークの力に目覚めた瞬間、その耳から感じるさまざまな響きを感じ取った。そしてとある存在を認知した。
(ついに俺を解放できる可能性のあるやつが現れたか!!面白い、俺の力を受け取ってみろ!!)
その瞬間、彼の手には 《覇道機構剣 ウィザード・ブレイド》が握られていた。龍の力と未来の力...その全てがそこにあるような気がした。
アカシアはその剣を握りしめ、目の前に立ちはだかる敵を前に一気に突き進む。
ギアドール軍は彼を破壊しようといっせいに襲いかかるも、もはや彼を止めることはできなかった。
次々と返り討ちにあい、なぎ倒すかのように敵は倒されていく。
「よくやった!奴までの距離が縮んだぞ!」
新たに目覚めたその力は、彼をまさしくさらに上の段階へと進化させたのだ。
Wクロスギア・カリバーン
ギアビショップドールはカリバーンのかつての仲間を盾にしたことで、本来自分より実力が上の彼女相手に大きく有利に立ち回っていた。
奴の力はまさにそういった特殊方面の強さであり、搦手を使わせたら右に出る者はいなかった。
それはアーク軍が到着した今もなお健在であり、彼女達は下手に手を出すことはできなかった。
そんな中、あるアーク軍がカリバーンに提案をした。
それは、アークノア自身の使っていたWクロスギアの装着であった。
これは赤き翼と黄金の剣はあらゆる闇を打ち払う情熱と奇跡のクロスギアである。しかしこれはあくまでアークノアが使って意味があったため、彼女も使えるかは不明であった。何かしら大きなデメリットがあってもおかしくはなかったのだ。
しかし彼女の返答はただ一つである。
「...それでいきましょう。私が彼の分身だというのなら、その鎧と剣は使いこなせてもいいはず....いや、使いこなしてみせる!!」
彼女の覚悟を感じ取ったのか、アーク軍はすぐさま2体のクロスギアクリーチャー、 《機構騎艇アーク・ブレイザー》と 《黄金機構剣獣アルティメット・アーク・ブレイズ》を呼び出し、彼らをクロスギアとしてカリバーンは合体した。
瞬間、黒い稲妻が彼女から放たれ、大きな振動が彼女自身に襲った。やはり本来あり得ない合体であり、これは無茶苦茶なものであることは確かだったのだ。
しかしそれでも彼女は耐え続けた。この故郷を守るために、仲間達を救うために。
耐え続けた先に、ついにその衝撃は収まった。そしてそこに立っていたのは赤き翼に蒼と碧の鎧、そして黄金の剣を纏ったシャイニングカリバーンであった。
変化に気がついたギアビショップドールはすぐさま騎傀儡龍達を彼女にめがけて襲わせた。しかしもはやこの状況は彼女にとって窮地などではない。
炎と光の力が傀儡の糸を断ち切り、その洗脳を全て打ち破ったのだ。
それを見たギアビショップドールは一度立ち去ろうとするも、周りにいたアーク軍はその行手を阻む。逃げ道を失った彼はもうどうすることもできなかった。
目にも止まらぬ速さで振られた黄金の剣が彼の首を斬り飛ばし、ついにギアビショップドールを討ち取った。
さらなる進化のAlternative
それだけなら他と同じだが、マスティア達のところは様子が違ったのだ。なぜか彼女のもとにいるアーク軍は特別ギアルークドールによる妨害を激しく受けていた。何か別の目的があることは確かであったが、それを探るのは難しかった。
こんな状況で拮抗を続ける中、突如として空から ダークノアが現れた。
一瞬マスティアはアークノアかと考えたが、その闇のオーラがすぐさまそれを否定した。だがそれと同時に、先ほどまで戦っていたギアクインドールが突如として撤退しだしたのだ。
全くもって意味不明な行動に意識を奪われた瞬間、アークノアをドラグハートに封印した鎖と同じ鎖が、今度は合体したマスティア達の身体を拘束したのだ。
このとき、奴らの目的がアークノアと自分をドラグハートによって封じ込めることにあることを察する。何とか鎖を断ち切ろうとするも、やはりその拘束を解くのは不可能であった。万事休す...そう思われた瞬間、突如としてマスティアとオルタの合体が解かれたのだ。
これにはダークノアも予想外である様子を見せていた。どうやら魂が2つあると封印は不可能のようだ。とはいえ最悪の事態からは逃れられたものの、依然ピンチであることには変わらなかった。
「オルタ...どうすれば.....」
クイン相手にはヴァルキリーもミネルヴァもアテナも通用しなかった。そのため、奴以上に強いであろう目の前の敵にはもはやどうしようもないと彼女は考えてしまっていた。
しかしオルタはまた別のことを考えていた。それは...
「....一つだけありマス。それはAlterヴァルキリーでの私とアナタで融合率を上げるのデス。そうすれば、私の力をさらに引き出すことができマス」
「そ、そうだったの!?」
「ハイ...ですが、アナタは限りなく人間に近いクリーチャー...その融合率を上げすぎれば間違いなく体に害を及ぼしマス」
「人間...?害....?」
「...私はアナタに危険すぎる目にはあってほしくないのデス。ここから先は私の手が届かない可能性がありマス」
それは警告であった。融合率という聞き慣れない言葉に頭を傾げるマスティアだが、その危険性については十分伝わっていた。しかし
「...私は私の夢のために....絶対に幸せになるって理想のために....ここで死ぬわけにはいかない。....あんなクリーチャーにやられて死ぬなんて...いやだ!!」
その言葉は確かな彼女の“戦う”意思であった。オルタは少し黙った。だがこれ以上かけても無駄だと分かったのか、彼自身も覚悟を決めた。
「...覚悟を決めて下サイ、マスティア。アナタの力はほんの少し先の世界に向かいマス」
いざ王城へ
ギアドールカオスナイトを追いかけるアカシアとアーク軍。その最中にギアドール軍が邪魔をしてきたが、ウィザード・ブレイドのおかげでその軍勢を退けることができていた。
そしてついに奴に追いついた。すぐさま攻撃を仕掛けるも、ギアドールカオスナイトは反撃をせずに避けるだけである。あくまで命令執行を優先するようだ。
全員でカオスナイトを倒すため攻撃を仕掛けるも、なかなか決め手となる一撃を加えられずにいた。
そんなこんなしているうちに、ついにドラグハート化したアークノアが刺さっているところまで来てしまった。
奴が明らかに動きを変えて破壊しようと、突き進む。
しかしそれを止めたのは、同じく壁を破壊してやってきたカリバーンであった。
目の前から敵が現れることが予想外だったのか、カオスナイトはカリバーンの黄金の剣を直で喰らってしまった。
その一瞬をアカシアは逃しやしない。持っていた剣の出力を最大限まで高めてそれを振り、ギアドールカオスナイトを一撃で葬ったのだ。
何とかアークノアを守ることに成功したアカシア達。しかし次の問題はこのアークノアのドラグハートをどうやって龍解するかにあった。
アカシアは持つことはできても、全くもって龍解できそうな気配はなかった。
行き詰まる彼ら。そんな中、カリバーンが驚きの提案をした。
「私が一度ドラグハートに戻って、彼と融合してみれば....もしかしたらうまくいくかもしれません」
「え!?」
彼女はドラグハートにされたことで新たな特殊な能力「龍転生」を手に入れていた。その力で彼女は自由に剣に戻ることができるのだ。
つまりは一度剣に戻り、そのあとアークノアと合体するという作戦のようだ。
しかし彼女の龍解は彼女自身の意思では不可能であり、再びアカシアに頑張ってもらわなくてはならない。
戦力が減ってしまうという意味でも決してリスクは軽くなかったのだ。
しかしそれでも、カリバーンはこの故郷を救い出すためには、彼の力が必要だと考えた。そしてアカシアもそのことには何となくだが気がついていた。
「...それじゃあお願いします。カリバーン様」
アカシアはそう彼女に伝えた。それを聞いたカリバーンは龍転生の力を使い、一度 《蒼華神剣 カリバーン》へと戻る。そしてドラグハートのアークノアと接続し、その魂を一度アークノアに返したのだ。
するとその2つの魂は交わり、新たな剣となり、 《騎士王剣 シャイニングノア》へと変化した。
これでカリバーンの水の力が入ったことで、アカシアにも扱えるようになった。あとは自分がこれを龍解できるかどうかである。
「アーク軍のみんな....力を貸してくれ!」
そう言うとアカシアはついに王城への突撃の開始を宣言した。戦いはついに奴らの首領であるギアキングドールへと移行する。
終盤のチェックメイト
ヴァルキリー:Longinusに進化したことで、さらなる出力をあげたマスティアは、ダークノアと何とか渡り合うことができていた。
しかしできていただけであり、それ以上に勝つという一歩を踏み出すのは苦戦していたのだ。
しかも融合率を上げた影響で、よりオルタとの意識が重なった結果マスティア自身の脳の働きに異常を起こしていた。やはりこのままではマスティアが暴走してしまう可能性があると踏んだオルタは、この合体を強制解除しようとした。
しかしそのとき、王城から大きな爆発音が轟いた。これは同時刻にアカシア達が城に乗り込んだ合図であった。
ダークノアはそれを聞き、何かを感知したのかマスティア達を放置して王城へと向かった。
マスティアはそれを追いかけようとしたが、その前にオルタが合体を強制解除した。融合率の高い合体、強制変身解除...その影響からマスティアの意識は途切れ、倒れ伏してしまった。
「...どうやらワタシ達はここまでのようデス。....これ以上はアナタが危険デス...」
そう言うと彼は爆音が鳴り続ける城での戦いの様子を、その無機質な光の目で見届けていた。
既に王城に侵入したアカシア達は迫り来るギアドール軍相手に戦い続けていた。しかしウィザード・ブレイドとシャイニングノアの二刀流を繰り出すアカシアを奴らは止めることはできなかった。
そうこうして最上階近くに来た瞬間、立ち塞がったのは 《碧氷剣 ヨウエンノムラマサ》を手にしたギアクインドールであった。奴はギアキングドールにより、攻め込んできたアカシア達を排除命令されていた。
手に持つドラグハートが仲間の封印された姿であることを察すると怒りと使命感に燃えたアカシアは1対1で対峙する。
互角に勝負が繰り広げられていき、一進一退といった様子であった。だがそれを邪魔したのはキング自身であり、ギアルークドールで残ったアーク軍を始末しようとした。
一瞬それに意識が取られかけるアカシア。その隙を見逃さず彼の首元に剣を振るうクイン。
だがそんな状況を覆したのは、ギアマインドドールによって洗脳が解かれたブリトア王国の騎士と住民だった。
彼らはカリバーンの復活とアカシアの奮闘を聞きつけ、今度こそ奴らを倒すと誓ったのだ。
ルークを騎華武龍やアーク軍が相手する中、アカシアとクインは最後の決着をつける。奮った剣が、互いを切り裂く。しかし剣魔の太刀を極めたアカシアに奴の剣は致命傷にはならなかった。
2つの剣が交わりて、ついにギアクインドールを打ち倒した。
だが奴はただでは死ななかった。死ぬ間際にそのドラグハートを龍解させ 《堕剣騎華武龍 ヒガンノ・ムラマサ》を解き放ったのだ。
「あとはまかせろ!お前はキングを倒せ!!」
彼らの声によって発破をかけられたアカシアはついに最上階へと向かう。
これより最後の戦いが始まろうとしていた。
ショーダウン
キングはアカシアを目の前にした瞬間、大量の 《ギアポーンドール》を召喚し、アカシアを襲わせた。
だが二刀流の力を使いこなした彼にはそんな雑兵では相手にならなかった。しかしなぜか奴はそのことを分かっていたような様子でいた。すると次の瞬間、先ほどまで戦っていたギアポーンドールが次々と進化を遂げて倒したはずのギアクインドールやギアビショップドールにへと変化したのだ。
思わず立ち止まるアカシア。だが同時に彼は気がつく。このギアドール軍団はこのギアキングドール以外の全てが、彼の作り出した偽物であること。
あの空の向こうには 《ギアドール・インダストリアル》が置かれており、それが稼働して半永久的にギアドール軍を生み出していたということをだ。
大量に召喚されたギアポーンドールは全てがプロモーションにより、強力なギアドール軍に化ける可能性を秘めていた。そのため奴らを放っておくことは即ち敗北を意味すると言っても何ら変わらなかった。
アカシアは次々とポーンを倒し続けるも、それ以上のスピードでポーンを生み出すキング相手に遅れをとっていた。そして次々とプロモーションによりポーン達が進化していく。
ジリジリと追い詰められていくアカシアの心に焦りが見えてきたこの瞬間、彼の持つ2つの剣が同時に輝きだしたのだ。
鎖が解かれ、封印を脱する時が来たのである。
「まさかこれは!!」
騎士王の戦い
W龍解をし、ついに復活したアークノア。カリバーンの魂と合体したことで水の力も復活した。
「礼を言う、アカシア。お前のおかげでやっと私も復活できた」
相対するアークノアと大勢のギアドール軍。まさに波のように押し寄せる敵に、普通なら怖気付くところだろう。
しかし彼は決してそうはならなかった。彼自身の強き心と、カリバーンの騎士としての誇りが、この状況でむしろ心を燃え上がらせていた。
「いくぞ!アカシア!アーク軍!敵の大将はもう目の前だ!!」
そしてついに最終決戦の火蓋が切られた。
互いが互いに押し合い、一進一退の攻防を見せる。アークノアが復活したことにより一部のアーク軍はドラグナーの力に目覚めたり、 Aアンインストールや Aアクセスという能力にも目覚めた。
互いに譲らない戦いの中、先に動いたのはギアキングドールであった。この沢山のクリーチャーが密集する中、ギアルークドールを放ち、城の瓦礫ごと全員を押し潰そうとしたのだ。
しかしそれをアークノアが許さなかった。 《禁じられし騎士王の紋章》が光ることで、彼の力を最大限まで高めその真の能力を発揮した。
剣魔の太刀...剣術と魔術、その両方を使いこなす技術であるコレを彼も使いこなしたのだ。それにより完全に動きを封じられたギアルークドールはアークウィザード・サーガと 《機構龍覇 カリバーン・アークロード》によって撃破されてしまった。
そしてついにキングの前まで辿り着いたアークノア。
「さあ、やるか貴様!!」
「...チェスとは本来キング同士では戦わないのだが....仕方あるまい」
ついに互いに剣を取って戦いを始める。
ギアキングドールとアークノアの戦い。技術としてはアークノアの方が上であったが、ギアキングドールには味方を犠牲に身体を修復する特殊能力が存在した。それにより何度でも蘇って、アークノアに不死身の猛攻を仕掛けていた。
このまま進めばいづれ体力切れでアークノアの敗北になってしまうだろう。だがアークノアがそうなるはずがなかった。
彼は剣にマナを溜め込み、 《戦慄の剣》と 《アーク・キル・スラッシュ》を使う。
これにより奴はもうギアドール軍団の召喚は不可能となり、さらにはアークノアの無敵の猛攻を耐え凌げる手は無くなったのだ。
「き、貴様ァ!!」
流石に分が悪いと判断したギアキングドールは逃亡を図ろうとする。しかしもう遅い。
アークノアの蒼碧の剣が奴の逃げ道を破壊し、その蒼き渦と碧き竜巻が奴を捉え、その無限の斬撃を喰らわせることで、ついにギアキングドールを撃破したのだ。
最後の戦い
ついにギアキングドールを倒したアークノア。しかし奴はまだ微妙に生きていた。ギアドール軍のウルトラ・セイバーの力で、僅かながら耐えていたのだ。
それでも風前の灯、アークノアがトドメを刺そうとしたその時、天井を突き破り、黒い槍が奴を貫いた。
「き、貴様ッ!!うらぎィ!?」
雨のように黒い槍が奴へ降りかかり、そのままトドメをさした。そしてそこから現れたのは、ダークノアであった。
その姿を見た瞬間、全員が身構える。奴はアークノアが一度は敗れた相手。決して油断などしてられない敵であった。
静寂の時間が過ぎる。すると唐突に奴はアークノアに目掛けて飛びかかった。咄嗟の判断でアークノアはそれに対応し、奴の攻撃を避けた。
そしてこの時彼は確信した。ダークノアの目的は自身と同じく5文明の魂を集めること。そして今の攻撃はアークノアの中に眠るカリバーンの魂を狙ったものであった。
とはいえ前のようにはいかない。アークノアは前の反省を踏まえて、奴から距離を取った。そうすることで奴の魂強奪を阻止しようと考えたのだ。しかしここで思わぬ行動を取る。
からぶったその右手は突然虚空を掴み、まるで引きちぎるかのようにして次元の狭間を開いたのだ。
そこから 《集合体悪意龍 アーク・ランサムウェア》を始めたとした、集合体悪意龍と呼ばれるドラゴン達を召喚した。
この時アークノアは驚いたような表情でその龍達を見た。奴ら集合体悪意龍はかつて自身が追放したアーク軍の罪獣達であったのだ。そいつらがダークノアによって龍の力に目覚め、アークノアに復讐しようとしだした。
「...ッ!全員武器を取れ!奴らを次元の狭間に送り返すのだ!!」
アークノアの言葉により最後の戦いが始まった。崩れ去った盤上での乱戦は混沌を極めていた。
憎悪と分離
アークノア軍対ダークノア軍の戦いは想像以上の激しさがあった。城は崩壊し雪崩れ落ち、このままではブリトア王国が破壊されそうになるほどであった。
そのためかアークノア自身も本気を出すわけにはいかず、小回りな立ち回りを要求された。しかし対してダークノアはそのような配慮は必要ない。故に全力で、全てを破壊する勢いで動くものだから、もはや止めようがなかった。
そのため自然とアークノアとダークノアの戦いはアークノアが不利な方に傾く。守るべき物がある者はそれを盾にされると弱くなってしまう。
こんな絶望的な状況の中、混戦極まる戦場に足音が響く。そこにやってきたのは目を覚ましたマスティアとオルタであった。戦いに復帰しようとした彼女は、なんとかここまでやってきたのだが体力も限界に近いことから、役に立つのは難しそうであった。
しかしこの瞬間、ダークノアの様子に異変が起きる。突如攻撃をやめ、苦しみだしたのだ。しかもこれはダークノアだけでなくアークノアも同様だった。
何やら異常な事態が引き起こり、ここにいた全員が困惑の表情を浮かべる。
その次の瞬間、何故かアークノアとカリバーン、ダークノアとセイヴァーの魂が分離したのだ。今までにあり得なかったことに、再び唖然とした空気が続く。しかしダークノアがセイヴァーの魂を、またはカリバーンの身体すらも奪おうした。
だがセイヴァーの魂に先に触れたのはアークノアであり、カリバーンは目を覚まし、その手を切り伏せた。
「...ッ!オォォルゥゥタァァァナァァアアアアア!!!」
突如激昂した様子を見せたダークノアは、アークノアやカリバーンではなく、何故かマスティアとオルタの方を狙い襲いかかってきたのだ。
しかしそれを食い止めたのは光の力を取り戻し 《革命の法皇 セイヴァー・アークノア》となったアークノア。
彼はそのまま苦しみ憎悪を放ち続けるダークノアにトドメの一撃を与える。
黒い粒子が飛び散るダークノアはまだ死んではいなかった。しかし奴自身も混乱した様子を見せており、この場を不利とよんだのか、そのまま次元の狭間へ逃亡していった。
するとダークノアが消えた影響か、さっきまでいた集合体悪意龍達も消滅していったのだ。
残ったのはアークノア達のみ。間違いなく脅威は全て去って、ハッピーエンドと言えるはずだったにも関わらず、どこか異様な空気がこの場を支配していた。
終着
全てが終わり勝利を勝ち取ったと彼らが気がついたのは、戦いから1時間近く経った時だった。
ギアドール軍の残党もいなくなり、ダークノアの痕跡と思われるものももう存在しない。
ブリトア王国の住民達は支配から解放され、ようやく大きな喜びの声をあげていた。
そして無事に故郷を救ったアカシアはアークノア達に頭を下げてお礼をした。
「ありがとうございます!これで...僕達の国は救われました!」
「私からも礼を言わせてもらいます、アークノア。本当にありがとうございました」
カリバーンもそう礼を言ったが、アークノアはやはり釈然としていなかった。やはり最後の自分とダークノアの身に起きたことが気になっているのだ。
「...あいつのことは私も気になってはいます。ですが、それ以上にやらなくてはいけないことがあったはずです」
「....それもそうだな」
アークノア達はまだやらなくてはいけないことがある。それは聖都市エレジェンドにて、ジークと合流し、最後の帝下暗黒四天王を倒さなくてはならないことだ。
今あの都市は再び侵略者によって攻め込まれ、大きな戦いを繰り広げている。
「...しかし、お前達もいいのか?ここに残らなくて」
「はい、きっと今度こそは大丈夫です。私がいなくてもこの国を護っていけるよう彼女達も強くなると言っていましたから」
この国はカリバーンの強さに頼っていた節があった。しかしアカシアの活躍やギアドール軍との戦いを経て、彼女がいなくても大丈夫なようやっていくつもりのようだ。
「それじゃあ...いくぞ」
こうしてアークノア達はこの国を去る。未だ解明されない謎はあるが、戦い続けなければこの大戦は終わらせられない。
舞台は再び、光文明の聖都市エレジェンドに戻っていく。
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