DMXU-07 「伝説の大戦編 第3弾 聖地黄昏の終末神話伝説」

DMXU-07 「伝説の大戦編(レジェンド・ウォーズ) 第3弾 聖地黄昏の終末神話伝説(エタニティレジェンド・トワイライトミソロジー)




終わりを告げる神蟲絶望を蘇らせる邪悪竜に立ち向かうは永遠にして伝説の戦士達



概要


 伝説の大戦編第三弾のパック。
 このパックではなんと10種類の戦略が採用されており、過去最大クラスの収録数となる予定である。
 ベリーレアは12種に増加。レアは20種。アンコモンとコモンはそれぞれ30種へと増加。

 G・リンクを持つクリーチャーが新たに登場する他、DMXU-01〜DMXU-06に登場してきたクリーチャーや能力も数々登場。

 物語はついに折り返しとなり、帝下暗黒四天王最後の1体との戦いになる。
 光文明に侵略する謎の巨大神蟲や、突如都市内に現れた帝下兵竜軍。そして神蟲によって再び蘇ったスカーレットゼロや虚構魔獣達を相手に、アークノア達や聖都市エレジェンドの住民は立ち上がる。
 最大級の戦いが今ここに再び巻き起こる。



収録カード


ビクトリーレア 3種



スーパーレア 10種


ベリーレア 12種



レア 20種


アンコモン 30種


コモン 30種




ストーリー登場キャラ


+ ...

アークノア

 かつてクリーチャー界外部からの侵略者を撃退した伝説のドラゴン
 この全ての戦争を巻き起こした碧雷の帝王が自身の自然の魂であることに気がついたため、この戦争を終わらせるために本格的に参戦することに。
 しかしダークノアとの戦いを通して自身の成り立ちに違和感を覚えるようになる。


マスティア

 クリーチャー界での紛争により故郷や家族を失った少女。
 一応彼女もクリーチャーではあるのだが、人間に近い性質を持つ。
 自身の不幸な人生を変えるために、オルタと全宇宙の理想郷へと行く目標を見つけるが、旅の中でその心境がほんの少しだが変わってくる。


オルタ

 マスティアが道中で出会った謎のロボット。本名はAlternative(オルタナティブ)
 なぜか自分の故郷に関する一部の記憶を失っている。ただ自分は故郷に帰らねばならないということだけが記憶に残っており、出会ったマスティアと共に全宇宙の理想郷目指して旅をすることになる。
 最初こそロボットとしての感情しか持ち合わせない様子であったが、旅の中でマスティアに対して徐々に感情を移入するようになってくる。


ストライクジーク

 アークノアの分裂した火の魂のクリーチャー。
 その正義感はかなり強く、しかも決して諦めない不屈の魂の持ち主。
 ファイアー・バードの森にて、アークノア達と別れ一度火文明に残った後、思いもよらない戦いを通して新たな力に目覚める。(参照
 そして再び聖都市エレジェンドにてアークノア達と合流する。


シャイニングカリバーン

 アークノアの分裂した水の魂のクリーチャー。
 ブリトア王国にて最強の騎士龍として存在していたが、ギアキングドールとダークノアによってドラグハートに封印されてしまっていた。
 今はアカシアに龍解させてもらうことで復活し、自分の故郷を救ってもらったことからアークノア達と協力して碧雷の帝王討伐に向かうことに。


セイヴァージャンヌ

 アークノアの分裂した光の魂のクリーチャー。
 かつてアークノア達と共に聖都市エレジェンドの危機を救うも、虚構魔獣によって殺されてしまい、アークノアに自身の魂を返還することで息絶える。
 しかし再びアークノア達がこの聖都市エレジェンドに戻ってきたことで、その意志が戻りつつあった。


アスタフ=グラフ

 聖都市エレジェンドを統治する星剣士達のボス。
 スカルジャックに操られていたもののアークノア達によって解放される。
 その後、虚構魔獣達との戦いを通して聖都市エレジェンドの平和を再び守っていたのだが、今度はヴォルカ帝国の侵略者から都市を守るために再び死闘を繰り広げることに。


アカシア

 ブリトア王国の騎士。剣魔の太刀という剣術と魔術を両立させる技を覚えた他、アークとしての力も覚醒させることで二刀流を扱うことができるように。
 アークノア達と共に故郷であるブリトア王国を救った。そしてカリバーンと同じく碧雷の帝王討伐に向かう。


神蟲

 帝下暗黒四天王最後の1体《世紀末終神蟲 ゼクスノヴァ・オメガロスト》が率いるクリーチャー軍。
 G・リンクの力を操り、強大な力を持って敵を滅ぼす。
 何もかも不気味なのに、何処か神秘性を感じるような独特なオーラを放っている。


スカーレットゼロ

 かつて存在していたとされた原始の竜王。
 アークノア達とは二度死闘を繰り広げるも、敗北し死んでしまっていた。
 しかしオメガロストが及ぼした神の力により、仲間の虚構魔獣と共に聖都市エレジェンドにて蘇った。
 だがその目的はどこか奴らとは別にあるようであった。


帝下兵竜軍

 碧来の帝王の直属軍隊。
 各文明にスパイとして送られており、アークノア達やストライクジークが聖都市エレジェンドに向かってきていることを知ると、その力を解放し、本格的に神蟲と共に聖都市エレジェンド侵略に向けて動き出す。





ストーリー



+ ...


死闘を繰り広げる星剣士達




 聖都市エレジェンドの外側にて、今激しい戦いが繰り広げられていた。
 《星剣王 アスタフ=グラフ》は配下の星剣士達を従え、迫り来る侵略者から都市を守るためその剣を存分に活用していた。

 だが奴らは未知の生命体。禍々しさと神々しさの両方を備え持つ神蟲はそんな星剣士達の攻撃をいとも簡単に跳ね除けていた。

 波のように押し寄せる神蟲達の中心には一際目立つクリーチャーがいた。
 それこそがこの神蟲を率いて光文明に侵略を仕掛けた元凶《世紀末終神蟲 ゼクスノヴァ・オメガロスト》であった。

 アスタフ=グラフはオメガロストに何度も攻撃を仕掛けたが、奴はまるでビクともしなかった。
 それこそ岩を殴っているような感じで、まるで生命を感じない様子であったのだ。

 奴こそがこの神蟲を率いるボスであることは明確なのに未だにこの軍勢を押し返す方法がない。
 もはや絶望的な状況に立たされていたアスタフ=グラフだが、かつて共に戦った戦友と交わした誓いのため、この前線を退くわけにはいかなかった。


「星剣士共!!気合いを入れろ!!奴が倒せないのならば奴以外を全て倒すのだ!」


 彼のその言葉で、星剣士達は再び立ち上がる。おおよそ2週間とも言える時間を戦い続けたはずの戦士達の目は、驚くべきことに未だに諦めの様子が見えなかった。



到着そして開幕




 アークノア達はおおよそ1週間に及ぶ移動の果てに、ついに聖都市エレジェンドへと戻ってきた。
 どこか懐かしさを感じるアークノアやマスティア、オルタであったが、その空気がどこか異様なことを察する。

 聖都市エレジェンドの住民達が不安気な様子で、家の中に閉じこもっている姿が見えたからだ。しかし彼らはアークノア達の姿を見た瞬間、目を丸くして驚いたような表情で家の中から飛び出てきた。


「あのかたは!!かつてこの都市を救ってくれたアークノア様達ではないか!」


 アークノア達の顔を見るなり大喜びで駆け寄ってきて、ことの事情を全て話してきた。

 アークノア達が聖都市エレジェンドから去って数ヶ月くらい経った時、突然巨大な生命体が光文明の聖都市エレジェンドに向けて侵略してきているとの報告を受けた。
 ただでさえ復興で勤しんでいるところに最悪の事態が訪れようとしていた。星剣士達は今、聖都市エレジェンドから10km近く離れた地点で奴ら侵略者を食い止めているものの、その戦いは2週間近く拮抗しており、いつその拮抗状態が崩れてもおかしくなかった。
 もし星剣士達が負ければこの聖都市エレジェンドにも大打撃が加わり、再び地獄のような状態に戻ってしまいかねなかった。
 そんな状況の中でやってきたのがアークノア達であったため、住民達は大きく喜んでいたのだ。


 全ての事情を知ったアークノアはすぐにでもアスタフ=グラフに加勢するため、マスティア達を連れて戦いの前線へと向かった。
 住民達は救いの手が差し伸べられたことで安堵していただろう。しかしそれは間違いだった。
 アークノア達が聖都市エレジェンドを出て、アスタフ=グラフの元へ向かった瞬間、数体のクリーチャー達が突如として暴れ出したのだ。

 驚いたのも束の間、その暴れたクリーチャー達は正体を現す。

 奴らはなんと《帝下兵竜 インヴェルダグロノグリフ》率いる帝国からのスパイであった。
 奴らはアークノア達がこちらに向かっているのを知って、戦力を外の侵略者達に集中させるのが目的だったのだ。



ついに動き出す終末の神蟲




 神蟲と拮抗した戦いを続けるアスタフ=グラフ達。そこにアークノア達が到着する。
 久しい顔に驚くアスタフ=グラフだが、頼もしい仲間の登場に勝機が見えてくる。
 一気に軍勢の士気が上がり、星剣士とアークノアは神蟲達に逆転のチャンスを見出した。

 しかし、ここで動きが変わった。突如として現れた《破滅録神蟲 オメガ・クライシス》の手によって、2体のクリーチャー《右滅神蟲 デストロイ・マキナ》《左創神蟲 クリエイト・マキナ》が降臨する。

 その瞬間であった。2体はオメガロストとG・リンクを果たし、その力を一気に解放したのだ。すると先ほどまでは全く動くこともなかったオメガロストが突然その身体を動かしたのだ。

 動き出したオメガロストにアークノアはすぐさま攻撃を仕掛ける。すると先ほどまでとは違い、確かな手応えがあったのだ。
 奴はG・リンクを果たせば動けるようになる代わりに、生命として起動するということを彼は見抜いた。

 しかし、ここで異変が起こる。オメガロストが突然謎の煙を放出したのだ。それはここら一帯を覆い、あたりを不気味な匂いで充満する。
 そのとき、先ほどまでとは倒したはずの神蟲達が蘇ったのだ。かと思えば今度は星剣士達やアークノアの動きを封じる鎖を放った。

 オルタは奴の異様な能力の変貌を解析し、恐ろしい事実を見つけ出したのだ。
 奴は自身が今まで捕食してきたクリーチャーの能力を全て使うことができるという凄まじい力を持っていた。
 それはG・リンクを果たすことで解放され、無制限にその恐ろしい力を発揮する。

 つまりは奴自身に無限とも言える能力があるとも言えるのだ。オルタはすぐさまその情報を仲間に広める。
 全員が一瞬絶望した顔をしたものの、アークノアとカリバーンは先に動き、奴の右翼と左翼を破壊しG・リンクを解除しようとする。

 しかしここでオメガロストは新たな能力を使い、その姿を消した。警戒する一同。不意の攻撃が来ると読んだ彼らは全員がどこから攻撃が来てもいいように細心の注意を払った。
 だがいつまで経っても攻撃がこない。数秒...十数秒と時間が過ぎていく。
 そのとき、しかしここで彼らは気がついた。奴らの目的地は聖都市エレジェンド。つまりは姿を消してアークノア達からの追跡を逃れることを目的としていたのだ。


「.....姿を消せる以上、他にどんな能力を使えるか分かったものじゃない。だが奴らの目的がエレジェンドだと分かっている以上、そこに向かうのは確かだ」

「....できれば避けたかったが、やはりそこで決着をつけるしかないのか」


 アークノア達は先回りして聖都市エレジェンドへ向かった。


 それからしばらくして、神蟲達は確かに目的地へと迫っていた。透明のまま聖都市エレジェンドに侵攻する神蟲達。刻一刻と破滅への道が進んでいく。
 しかし奴らが壁から1kmの地点に来たときであった。突如として聖都市エレジェンドから大きな光が放たれたのだ。これはかつて虚構魔獣達を倒した聖都市エレジェンドの希望の光《奇跡の輝き エレジェンド・スパーク》であった。アークノア達は先回りし、星剣士達と共にこの必殺技の準備をはじめていたのだ。
 前のような威力はないが、それでも強大な一撃には変わりない。聖都市エレジェンドの壁の外側をターゲットとし、トラップを仕掛ける形で作動させ、多くの神蟲達を一掃したのだ。

 しかしそれでもG・リンクを果たしたオメガロストとオメガ・クライシスは無事であった。激しい光の攻撃ゆえに動きは鈍くなっていたものの、ピンピンとしている様子である。

 アークノア達は追い討ちをかけるため、オメガロスト方に向かおうとした。しかし同時に聖都市内で大きな爆発音が響く。
 このとき初めて、彼らは中でまた別の戦いが起きていると気がついたのだ。



意思を受け継ぎし者




 時刻は数十分前、グロノグリフが早速聖都市エレジェンドの侵略を開始しようとしたその時だった。奴らの前に2体のドラゴンが立ち塞がる。
 それは《ライジング・デスザクエイク》《光導龍 シャイニング・アマテラス》であった。
 彼らは亡きライジングセイヴァーの意思を受け継ぎ、この聖都市を守るために再び革命軍を結成したのだ。いつか訪れる未曾有の危機に備えるため。

 予想が外れたグロノグリフだが、それを意に介することなく奴らは侵攻を開始した。
 光と闇の革命軍とヴォルカ帝国侵略軍が激突する。

 両者共に譲らない戦いが繰り広げられる中、先に動いたのはグロノグリフであった。この戦いは時間との勝負。もしアークノア達が戻ってくれば確実に不利になることは確かであったため、奴は早くも勝負に出た。
 奴は自身に超魂Xと呼ばれる魂の魔具を装備したのだ。

 その結果、グロノグリフの能力は大幅に変化し、2体はその対応に追われることとなる。だが同時に帝下魔術と呼ばれる呪文も使われたことで革命軍は一気に追い詰められる形に。

 このままでは終わってしまう。そう思ったその時、突如空から炎の竜巻が降り注いできた。
 全員が上空を見上げると、その炎はグロノグリフ目掛けて飛んできたのだ。


「やっぱりここにもいたか...帝国軍!!」


 そう、やってきたのは火文明での混乱を解決し、アークノアとの約束のために戻ってきた《超天の英雄龍 ストライクジーク》であった。



復活する恐怖の竜




 ジークを加えて、3体は帝下兵竜軍と戦う。一見するとたった1体増えただけであったが、ジークは火文明での戦いを通して、帝下兵竜軍の戦術を分かっていたため、はるかに有利に戦えていた。
 さらにハイパー化を惜しみもなく使うことで、容赦なく敵を倒していく。

 出鼻を挫かれた帝下兵竜軍にさらに追い討ちをかけるかのように、門の外からカリバーンとアカシアが現れる。
 彼女達は神蟲達をアークノアやマスティア達に委ねてここに来たのだ。


「...!あそこにいるのって!!」

「カリバーン!アカシア!」

「ジーク!無事でしたか!!」


 久しい再開を喜ぶ3体。そして目の前の敵を見定め、剣を構える。
 この危機的な状況下で火文明の英雄と水文明の最強騎士とその仲間が駆けつけたことで希望が大きく見え始めていた。
 このメンバーならば負けはない!そう誰もが思っていた。しかしそれは同時に帝下兵竜軍側も考えていたようだ。このメンバー相手では自分達に勝ち目はないと。

 瞬間、グロノグリフはその手を天に掲げ、大きな黒い光の柱を空に放ったのだ。



 ...同時刻、アークノア、マスティア、オルタ、アスタフ=グラフは残った神蟲達を一掃しようと戦いを繰り広げていた。
 しかし聖都市から放たれた禍々しい光の柱を見た瞬間、突然オメガロストは行動を変えた。地中に根を張り、何やら怪しげなオーラを地面に送っていた。

 そのとき、空は紅き雲に包まれ大地は突如として枯れ始める。赤黒い霧が視界を支配し、まるで聖都市は地獄のような光景へと変貌した。
 その光景にアークノア達は見覚えがあった。しかしその答えが出るよりも早く、けたたましく耳障りな声が響いた。

 なんと、かつて倒したはずの虚構魔獣達が次々と蘇ったのだ。これはこの地に凶悪な魂が宿っていることに気がついたグロノグリフが、オメガロストに命令を伝え、その魂をも復活させ再び混沌を巻き起こそうとしたものであった。


 最悪な事態が巻き起こる聖都市エレジェンド。その中で1体、悍ましいクリーチャー達の中に一際目立つ赤き竜がいた。
 アークノアはその正体を一瞬で見破る。
 奴は間違いなかった。2度の復活を遂げ、自身を倒した伝説の龍に復讐を誓った原始の竜王。


 スカーレットゼロが再び進化した姿《逆襲の真紅竜 スカーレットゼロ・エグザレイド》であった。



復活する奇跡の龍




 復活したスカーレットゼロはより禍々しい見た目へと変貌していた。前までが全てを統治する恐怖の大王というのなら、今の奴は復讐心にかられ、全てを暴力で無茶苦茶にする最凶の暴君と言った具合であった。

 奴は復活した瞬間《スカーレットゼロ・クラッシュ》を大量に放ち、聖都市の至る所に隕石のようにして降り注いだ。
 ジークやカリバーン、そしてアマテラスやデスザクエイクはそれを見た瞬間、急いでそれを破壊したがいくつかは防ぐことができず、聖都市内の建物に直撃した。

 苛烈さを増していくスカーレットゼロに煮えたぎり、カリバーンが奴に切り掛かった。そのときスカーレットゼロは彼女に向けて新たな必殺技《真紅虚構秘伝 スカーレットインフィニティ》を放つ。恐ろしいスピードで飛んできたものの、カリバーンは剣魔の太刀によってそれを撃ち落とす。そしてスカーレットゼロに大きな斬撃を与えた。
 しかしおかしなことに、奴にいっさいダメージはなかった。それに驚いたのもつかの間、仲間の虚構魔獣の攻撃や帝下兵竜の攻撃を同時にくらい逆に落とされてしまった。

 カリバーンを撃ち落とした後、スカーレットゼロは続けて聖都市殲滅のために行動を開始する。もはや鎖で繋がれていない暴獣のように暴れる奴の姿にかつての王としての面影はどこにもなかった。
 オメガロストによる復活の影響か、スカーレットゼロには理性がなかったのだ。

 しかし奴には全くダメージが通らない。そのため無理矢理止めるなんて真似もできなかった。
 しかも敵は虚構魔獣だけでなく、神蟲...そして帝下兵竜軍までもいる。希望から一変、絶望的な状況に彼らは追い込まれた。

 だがこの時、アークノアの身体から僅かな光が溢れ出した。その光をアスタフ=グラフは見覚えがあった。


(アークノア様...どうかお願いします。私に....その身体を一度貸してください)


 それは彼の心の中からの声であった。
 そしてそれは間違いなくかつてアークノアと合体し消たはずの《革命の神聖龍 セイヴァージャンヌ》の声であった。
 今まで全く聞こえなかったはずの声が、ここに来て再び聞こえるようになる。奇跡の賜物か彼女の力かは分からないが、アークノア自身、今この状況を変えるには、全てを捧げるつもりでいた。


「了解した、セイヴァー。お前にこの身体を託す!」


 彼がそう言った途端、彼の身体が光り輝き、黄金のオーラに包まれた。そしてその光が晴れた瞬間、彼女はそこに降臨していた。

 この危機的な状況に一時的に蘇り、奇跡の力を持って復活した神聖なる龍...セイヴァージャンヌもとい《セイヴァーダルク・エグザイル・ドラゴン》がいた。



新たな革命を巻き起こせ!




 セイヴァーの放った輝きはすぐさま聖都市中の闇を晴らした。
 降り注ぐ奇跡の光は絶望した民達に新たな力を与えたのだ。それは革命の力。その光により聖都市の住民達は革命の力に目覚めたのだ。

 アマテラスとデスザクエイクはそれぞれ《終極聖龍 アマテラス・ダルクロゼ》《終極黒龍 デスザクエイク・リベルライズ》の姿に変化して、終極宣言という力を得たのだ。
 その革命の力は絶望し祈るしかなかった民達に、己の力で未来を変える、戦う希望の力を与えたのだ。


「今こそここで立ち上がるのです!侵略者からこの都市を守るために!!」


 セイヴァーの声により、打ちひしがれていたクリーチャー達が顔をあげ、全員が覚悟を決めたような表情となる。

 そしてそれぞれ帝下兵竜軍や虚構魔獣達に立ち向かっていったのだ。


 そしてセイヴァーはAlterヴァルキリーと共に、オメガロストの前に立ち塞がった。


「マスティア様、Alternative様...あのときはありがとうございました」

「え?」

「都市を守ってくれたこと、そしてあの勾玉を一緒に重ねてくれたことです」


 彼女の首には《光闇の勾玉》がかけられてあった。それはマスティアが2人が離れなくてもいいように願いを込めて、彼女達の墓に置かれたものであった。


「おかげで....彼とはいつまでも共に戦えるようになりました。そしてこの力も使えるようになったのです!」


 するとセイヴァーは新たな輝きを放つ。それは革命ドロン・ゴーの力ではない。
 ライジングが持っていたファイナル革命の力であった。

 この眩しいまでの一撃が空を裂き、オメガロストに直撃する。
 するとどうだろうか、今までほとんどダメージのなかったオメガロストに初めて目に見えたダメージが入ったのだ。

 これが彼女らの絆の力であった。



乱戦の聖都市エレジェンド




 ここにきて初めてオメガロストに確かなダメージを与えた。しかしその一撃が奴らの危機感を呼び覚まし、オメガ・クライシスはある呪文を唱える。するとあろうことか、神蟲だけでなく一部の星剣士達にまでG・リンクの力が発現された。
 そしてなんと、G・リンクの力に目覚めた星剣士達はオメガ・クライシスによって操られてしまったのだ。

 これが神蟲の持つ真の力...信仰と酔狂の寄生であった。操られた星剣士達はまるで寄生虫に乗っ取られたかのように自我を失いセイヴァー達を攻撃し始めた。

 セイヴァーとアスタフ=グラフ、そしてAlterヴァルキリーはそれに対抗しようとするも、突然空から赤黒い炎が降り注ぐ。
 上空を見上げるとスカーレットゼロが彼女達を見下ろしていた。怒りとも憎悪とも思える顔で、セイヴァー達を見ていたのだ。
 すると突然飛来し、真っ先にセイヴァーに向けてその鋭い爪が降りかかる。それを合図に周りの虚構魔獣達もセイヴァーに向かって攻撃を始めたのだ。

 これを機にセイヴァーは虚構魔獣を相手に戦うことになり、Alterヴァルキリーとアスタフ=グラフ達星剣士だけで神蟲を相手することになった。


 戦いは完全に3つへと分かれる。ジーク&カリバーンvs帝下兵竜軍。Alterヴァルキリー&アスタフ=グラフvs神蟲。そしてセイヴァーvs虚構魔獣...。
 各地で激しい死闘が行われた。



さらなる力を巻き起こす衝動




 帝下兵竜軍の猛攻が激しく飛び交う。ジークとカリバーンはその攻撃をなるべく都市に当てないようにして防いでいた。
 アマテラスとデスザクエイクはその隙に帝下兵竜軍と戦い少しでも戦力を減らそうと試みていた。

 しかし危険なのは奴らだけではない。空にはセイヴァーと虚構魔獣の戦いが繰り広げられており、その流れ弾が街に降り注ぐ可能性もあった。
 しかも彼女は多対一であり、かなり不利な状況下で戦っていることに違いなかった。そこでジークはカリバーンに都市の守護を任せ、自身は《ボルシャックジーク・ガチャレンジ・ドラゴン》となりセイヴァーに加勢した。
 ジークはその他の虚構魔獣を相手にし、セイヴァーをスカーレットゼロとの一騎打ちに持ち込ませたのだ。

 だがそこでスカーレットゼロが大きく動く。なんと奴は復活した影響なのか革命ドロン・ゴーの力を持っており、その力で仲間や都市ごと敵を吹き飛ばそうとしたのだ。セイヴァーは《再生の聖壁》を使いその激しい攻撃を防ごうとするも、かなり状況は厳しかった。
 しかし、そこで彼女の内のアークノアが声を出した。その指示を聞いたセイヴァーは一度ジークと合流し、ある構えをした。するとジークの炎とセイヴァーの光が重なり《アークブラスト・聖炎の輝き》を放った。
 その光は邪悪な力を持つ者により大きなダメージを与えるものである。

 これにより虚構魔獣だけでなく帝下兵竜軍にもダメージが行き猛攻を一瞬だが止めることができた。
 しかし光と闇の両方の性質を持つオメガロスト達神蟲にはこれが効かなかったのだ。マスティアとアスタフ=グラフは依然変わらず神蟲達の激しい攻撃を受けていたのだ。

 そんな危機的な状況下でアスタフ=グラフがある覚悟を決めた。彼は《超次元アストログラフ・ホール》を使い、かつて封印したもう一体の脅威《覚星剣龍王アスタレッド=グラフノヴァ》を呼び出し、奴と融合を試みたのだ。

 激しい衝撃を放ちながらその渦はねじまき、あらゆる星剣クロスギアの力を吸収しながらついにその姿を《星剣竜王 アスタフ=グラフノヴァ》へと変化させたのだ。
 アスタレッドの激しい拒否反応に耐えながらも、その力は超次元の域にまで達し、神蟲を次元の底まで追いやっていく。

 そんな混戦極める状況の中、ついにオメガロストが最大最悪の能力を発動させようとした。



終わりの覚醒




 オメガロストが放った発動させた最悪の力《終焉の降臨》は世界に強制的に終焉をもたらす絶望のカウントダウンであった。
 この刻が来ると、空から無数の神が降臨し、下々を蹂躙して全てを更地にするのである。

 神蟲とはまさに神の遣いであり、神を降臨させる土台に過ぎなかった。その中でオメガロストは最も神に近い存在であるがゆえに、G・リンクを使うことができた。
 終焉の降臨によりカウントダウンが始まった瞬間にオメガ・クライシスは本気を出してきた。操る星剣士達を強制的にG・リンクさせ、一気にアスタフ=グラフとAlterヴァルキリーを追い詰める。

 G・リンクにより強い耐久性を手に入れた星剣士達を前に2人はなす術もなくやられた。そしてAlterヴァルキリーは変身を解除され、マスティアとオルタに分裂してしまった。


 このままでは聖都市は滅ぼされ、奴らによって終焉がもたらされてしまう。そんな中でマスティアはギリギリの意識を保ったまま、オルタにある願いを言った。
 それはブリトア王国でやった融合...それの100%融合をしたいと言ったのだ。

 それを聞いたオルタは彼女の意見に猛反対した。100%の融合は強大な力を及ぼすと同時に、人間に近いマスティアでは負荷に耐えられず死んでしまう可能性があったからだ。
 オルタは彼女には死んでほしくなかった。それは共に同じ目標を持つ仲間という話だけではなかったからだ。

 だがそれでも、マスティアも譲らなかった。このままでは聖都市は滅ぼされる。せっかく平和な生活を取り戻したと思われた矢先にこんな形で皆が殺されてしまうのは酷いと思ったからだ。
 彼女は自身の故郷を滅ぼされた経験を思い出していた。もう二度とあんな光景は見たくなかった。


 2人はこんな状況の中でも口論を繰り広げる。互いが自分以外の誰かを思っての言い争いだった。しかしオルタ以上にマスティアの意思は固く、オルタの知能を持ってしても彼女を口説き伏せることは不可能であった。それが彼女の覚悟であることを彼はすでに分かっていた。


「....分かりマシタ。アナタの意思が変わらないのなら、仕方がありマセン。....デスガ、どうか無理はしないデ。私はアナタと共に全宇宙の理想郷に辿りつきタイ...」

「...分かったよオルタ。その約束...絶対に守るから」


 瞬間、オルタの体が反転しその姿を変化させる。彼自身も制限を解除した本気の姿《無制限装甲 Eternity-Alternative》となり、目の前の敵に相対した。

 巨大な敵は目の前に迫り、死にかけのアスタフ=グラフや聖都市を狙って巨大な一撃を放とうとしている。


「...いくよ、オルタ」

「.....制限解除(リミットギア・アクセス)無限起動開始(エタニティ・オルタナティブ)...ッ!」


 2人は再び融合を果たす。それはより強い力の掛け合わせであった。2人の意思が一つになり、新たな戦士を誕生させる。

 彼らは100%の完全融合を果たし、《無制限最終機構戦姫 Alterヴァルキリー:Eternity》という最終形態へと変身したのだ。



3つの力を掛け合わせし聖なる力




 Alterヴァルキリー:Eternityが爆誕した衝撃は、聖都市エレジェンド内にも響いた。明らかに異常なまでの激しいオーラは虚構魔獣の本能、そして帝下魔獣の危機察知能力によって汲み取られる。そこで奴らはバラバラに行動していたのを突如組むことで、目の前の敵を早めに倒し、すぐに元凶のAlterヴァルキリーの元に行けるように行動しだした。

 スカーレットゼロとグロノグリフの他を顧みない連撃が彼らを襲い、どんどん追い詰めていく。
 そんな危機的な状況の中、アマテラス、デスザクエイク、そしてセイヴァーは3人揃って奴らの前に立ちはだかった。
 すると2つの終極宣言とファイナル革命の力を炸裂させ、なんとスカーレットゼロの動きを封じることに成功した。

 しかしグロノグリフは咄嗟の判断でその攻撃を避けられてしまい、スカーレットゼロの代わりに虚構魔獣を引き連れて、続けてセイヴァー達を襲う。
 セイヴァーは今度はカリバーンと共に《アークブラスト・聖水の氾濫》を発動させるも、奴らの猛攻を前には無力であった。

 このままではせっかく動きを封じたスカーレットゼロも再び動き出し、3体の必殺技が無意味になってしまう。そう思いかけたその時、アカシアがジーク、カリバーン、セイヴァーにあることを話しかけた。
 それは自分がアークノアの代わりとなって三位一体の必殺技を放つことであった。彼はアークの力も持つことから、それが自分にもできるかもしれないと考えた。

 一か八かそれに賭ける3体。ジークが剣を構え、カリバーンが彼を後押しし、セイヴァーがその2人を支え、アカシアが3体の力をコントロールする。
 火、光、水の力が混ざり唸りゆく中、グロノグリフは帝下魔術を放ち奴らの構えを破壊しようとした。しかし革命軍や聖都市エレジェンドの住民達がそれを身を挺して防いで行き、決して邪魔をさせなかった。

 アカシアは3体のドラゴンの超強大な力をコントロールすることで、逆に自身の身体が破壊されそうにもなっていた。しかし剣魔の太刀やアークの力と言った、これまでの自分が手に入れた技術を駆使することで、そのコントロールを徐々に制することができていた。
 そしてついにその時が来る!

 3体のドラゴンの力が一つになった最大級のオーラが出来上がった。


「...これで、終わりだああああああああ!!」



 アカシアは自身の力の全てを使い、最高最大の合体必殺技、《アークトライバースト・水炎の聖なる槍》を放った。
 全てを薙ぎ倒し、水の破壊力、火の瞬発力、そして光の浄化力が作用し、瞬く間に虚構魔獣や帝下兵竜軍を倒していく。

 グロノグリフはそれを超魂Xや帝下魔術などで防ごうと足掻くも、自身とは正反対の力に圧倒され、ついにその光に巻き込まれ撃破されてしまった。



最期の戦い




 完全覚醒したAlterヴァルキリーはオメガロストを翻弄し続けた。ほとばしる光のオーラはそれだけで神蟲達を駆逐し、星剣士達を目覚めさせた。
 オメガ・クライシスはそれを見かねて、彼女に寄生のG・リンクを与えようとする。しかしその隙をついて、目覚めたアスタフ=グラフが《星剣槍ロンゴ=ミニアド》を手に、オメガ・クライシスを貫いた。一瞬驚いたものの、死にはしなかったクライシスは、逆にアスタフ=グラフを殺そうとする。
 だがそのとき、ロンゴ=ミニアドから黒いオーラが放たれ、オメガ・クライシスを焼き尽くす。守りすら全て焼却する炎により、ついにオメガ・クライシスは消滅した。

 残ったのはオメガロストのみ、しかし奴は今まで自身が食べてきたクリーチャー全ての能力を使うことができ、圧倒的な破壊力を誇るAlterヴァルキリー相手にも1体で互角に戦っていた。
 しかしそのときAlterヴァルキリーの力が炸裂する。
 G・ブレイカーにより、自分すらも巻き込んだ最大の一撃をオメガロストに放ったのだ。

 その攻撃はオメガロストにも決して軽くはないダメージを与えた。G・リンクを解除され、無防備にさらされたのである。しかも彼女はそのG・ブレイカーの影響で、あらゆる閃光の力を駆使して最後のトドメを刺そうとするのだ。

 しかしこの瞬間、ついに終わりの時がきた。
 終焉の降臨が刻を迎えたことにより、終わりを告げる神々が降臨したのだ。これにより再びG・リンクを果たしたオメガロストは、Alterヴァルキリーに反撃するかのように全てのゴッドの力を集めた一撃を放った。

 その一撃は本来であればどんなクリーチャーですらも耐えられないような絶対即死のものであった。
 しかし無制限を超えたAlterヴァルキリーにその技は無意味であった。
 Alterヴァルキリーは《最終閃光 エタニティ・オルタナブレイズ》を放つ。

 その攻撃はあらゆる障害、能力、概念を無視して相手を殺す力を持っていた。

 それによりオメガロストの持つ神聖なる神々の力は全て無効化され、奴の放った一撃も、奴の持つ不死性も、全て全てが消失した。
 そして最後に残ったパワー0000の魔物が今まで上げたことのなかった産声を叫び、その最終閃光に飲み込まれ同じく消失したのだ。



誇りと誇りを賭けた戦い




 オメガロストが撃破された瞬間、洗脳されていた星剣士達は解放され、オメガロストによって復活していた虚構魔術達は全て消滅した。
 同時にカリバーンやジークが残りの帝下兵竜を始末したことで、やっと聖都市エレジェンドに平和が戻る....はずだった。


「ばかな!?なぜあいつだけ生きている!!」


 誰もが戦いが終わったと思っていたが空には奴が残ったままであった。
 スカーレットゼロ....。他の仲間が消滅しようと、この復讐の王だけはこの空に残っていたのだ。
 すかさず皆がトドメを刺そうと攻撃をするも、全くもって消える様子がない。それどころか奴には死という概念がないようにも思えた。

 まさに怨霊のようにしてこの場に留まり続けているスカーレットゼロに、彼らは何一つ太刀打ちできなかった。
 しかしそのとき、セイヴァーの中のアークノアがあることに気がついた。それは奴がここに留まり続ける理由である。


「セイヴァー...変わってくれ」

「アークノア様?....分かりました。何か考えがあるようですね」


 そう言うとセイヴァーはアークノアと入れ替わる。そして彼はスカーレットゼロの前に立ちはだかった。
 空には機構龍と真紅竜ただ2体。向かい合ったまま彼らは互いを見つめる。

 するとスカーレットゼロはアークノアに向けて、戦いの構えを取ったのだ。
 この瞬間、アークノアはあることを確信する。


 奴がこの聖都市に蘇った理由...それが、自身との決着を望むことにあった。
 今までの2度の戦いは、互いに邪魔が入るなどして総力戦という形で終わっていた。だからこそ2人だけでの戦いというのを今までやったことがなかった。

 奴自身の原始の王としてのプライド。アークノアと決着をつけたいという願いが、奴自身を現世にとどまらせていたのだ。
 その答えが奴の構えである。先ほどまで復讐に狂っていたスカーレットゼロとは思えないほど冷静に、そして強い意志でアークノアの前に立っていた。オメガロストの支配から解放されたことで、やっと自分の意思で奴は戦えるのだ。、


「....いいだろう。お前との決着...ここでつけてやる」


 こうして聖都市での最後の戦いが始まった。



機構龍vs真紅竜




 2体のドラゴンが互角の戦いを繰り広げる。スカーレットゼロはもちろんアークノアもセイヴァーに体を貸していた影響で決して無傷ではなかった。
 しかしそれでも必ず1対1で決着をつけるという約束のもと、誰にも介入を許さなかった。
 スカーレットゼロを完全に消滅させるにはアークノアが1人で戦うしかなかったのだ。

 一進一退の戦いを繰り広げる中、アークノアはスカーレットゼロの気持ちを理解しつつあったのだ。
 奴は遥か昔に存在していた王であり、絶対強者の存在であった。きっと誰1人として彼の横に立てる者はいなかったのだろう。強者故の孤独であり、強者故の退屈を感じていたのかもしれない。

 そのまま最期までどこか満足できずにいたまま奴は生涯を終えた。そして数百年後に再びこの世界に蘇る。そのとき初めて目にした。自分と同格かそれ以上の力を持つ存在、そして同じく王としての力を持つ存在を。
 生まれてこの方感じたこともない高揚感を覚えたスカーレットゼロ。きっと自分の飢えを満たしてくれる存在だとワクワクしていたに違いない。
 しかし奴との1対1が叶うことはなかった。それは再びドラグハートとして蘇った時も同じくであった。


 それが彼の未練が残り続けていた根底だった。もうすぐ手の届きそうなところで、それを掴めずにいた日々が彼の心に復讐の力を溜め続けていたのだろう。


 空にはアークノアとスカーレットゼロしかいない。それ以外のクリーチャーは黙って地上からその戦いの果てを見ていた。
 長き戦いの果てに2体は限界を迎えつつあった。


「...決着を....つけるか」


 アークノアは構える。その構えから繰り出されるのは彼自身の代名詞とも言える《ヴレイン・アークストライク》である。それをスカーレットゼロも分かっていたのか同じく自身の代名詞とも言える《スカーレットゼロ・クラッシュ》を放つため必殺の構えを取った。

 そして数秒、ついに放たれる。互いの残された全力を使って放たれた攻撃は聖都市中に大きな怒号を響かせた。
 全くもって互角...しかしほんのちょっとでも力が傾けば一気に決着がつきかねない拮抗でもあった。数秒...数十秒と時間が進む中、ついにその拮抗が崩される。

 アークノアがちょっとだけだが優勢になったのだ。本当にほんのちょっとだがそれがきっかけにどんどんスカーレットゼロが押され始める。
 想いの強さが決着をつけるなら、アークノアには負けられない理由があった。それは王としてのプライドだけではない。たった1体のクリーチャーとして守らなければならないものが沢山あった。

 満たされかけたスカーレットゼロにはそれに負けない思いの強さは失われつつあった。それを彼も分かっていたのか、最後まで抵抗しつつも自身が行くであろう運命を受け止めていた。
 そしてついに、ヴレイン・アークストライクが最大威力を叩き出し、スカーレットゼロのスカーレットゼロ・クラッシュを打ち消した。

 青白き光線に呑み込まれるスカーレットゼロ。身体が少しずつ消滅していくも、彼の顔からは復讐と怒りの表情は消えていた。
 自身の敗北...それがもたらした物は彼自身が永劫に求め続けていた満たされし喜びであった。

 虚構魔獣という邪悪な存在を従えていたボスであり、残酷無慈悲な悪魔とも言える彼が辿った結末は誰にも予想できず、その最期は穏やかなものであった。



終わりし2つの物語




 ついに迫り来る3つの脅威を打ち破り、聖都市中に歓喜の声が響いた。
 誰もが喜びの声を上げる中、聖都市外ではその真逆のことが起きていた。


「マスティア!!起きるのデス!!マスティア!!」

「くっ...なんてことだ。やはり....耐えきれなかったのか」


 アスタフ=グラフが抱えたボロボロの少女に、オルタは必死に声をかけていた。オメガロストを撃破したあのあと、ついに限界が来たのかオルタとマスティアは強制分離したのだ。
 どうやら最後のエタニティ・オルタナブレイズを放ったのが決め手になったのか、マスティアは完全に動かなくなっていた。
 星剣士達はアスタフ=グラフの命令で急いで聖都市に戻り救助を呼びに行くも、もう彼女の脈拍は止まる寸前であった。


「オル....タ........」

「マスティア!喋ってはだめデス!!」


 途切れ途切れの声でマスティアは声を出す。消えかかっている意識をなんとか振り絞って最後の言葉を言おうとしていた。


「ごめ......ん......やく.....そく......まもれ.....なく.......」

「.......」


 オルタは後悔していた。マスティアにあの秘術を教えてしまったことを。まさか彼女が自分の夢や理想を捨ててまでこの都市を救いたい思っていたこと彼は気が付かなかった。
 だがそんな悲しみに暮れるオルタに対し、マスティアはそっと手をそえた。


 悲しまないで....後悔しないで......


 まるで彼女はそう言っているかのようだった。


「私は....楽しかった.......オルタと.......色んな世界を......見れて........」

「.......ワタシもデス。ワタシも....この世界のことをたくさん知りマシタ。アナタと一緒にいたおかげで、ワタシも大きく変わった.....」


 これまで色んな場所を2人と、そしてアークノア達と共に歩んできた。聖都市エレジェンドやファイアー・バードの森....色んなクリーチャー達とも出会ってきた。そして色んな気持ちを味わってきた。きっと1人だけじゃこんなに沢山のことを知ることはできなかったはずだ。
 みんなで夢を追い求めてきたからこそ手に入ったものであった。


「オルタ......いままで.......ありがとう..........。アーク.....ノアさん達に......ごめん.....って伝えて.......」


 そう言うと彼女の手が落ちた。もういくら揺すっても声を上げることはなかった。


 マスティアは死んだ。


 儚くも強かだった少女の命が尽きた瞬間である。
 オルタとアスタフ=グラフの中で声を出さずとも、そのことを分かっていた。
 アスタフ=グラフはその状況に何も言えずにいた。
 しかし


「マスティア....悪いデスガ.....その願いは聞き入れることはできマセン。アナタもワタシとの約束を破ったのデス....。ワタシはまだ....アナタと共にイタイ」


 その瞬間だった。オルタが突然《装甲 Alternative-戦闘モード》となり、辺りに衝撃波を放ったのだ。
 オルタの突然の行動に驚くアスタフ=グラフだが、彼がマスティアを連れてどこかに変えようとしていることを察した。


「待て!どこに行くつもりだ!!アークノア達と合流しないのか!!」


 彼はそう言ったがオルタは聞き入れることをしなかった。
 しかし代わりに、こう言ったのだ。


「ワタシは当初の目的に戻るまでデス。もうじき、その時が来る。アークノアと5つの魂が1つに戻るとき、ワタシの真の目標が達成されマス」


 瞬間、大きな爆発が起こる。アスタフ=グラフはギリギリで耐えたものの、そのときにオルタとマスティアを見失ってしまった。


 忽然として2人は消えてしまったのだ。願いも想いも置き去りにして。



最後の戦いへ




 その後、盛り上がる聖都市にてマスティアのことが報告される。アークノア達は急いでその場所に向かうも、なぜか残っていたのはアスタフ=グラフただ1人であった。
 彼に話を聞くも突然死んだマスティアを抱えてオルタが消えたことしか分からなかったのだ。

 悲しみにふける一部のクリーチャーをよそにアークノア、ジーク、カリバーンは彼らを探してみたが痕跡ひとつ残っていなかった。
 そんな彼らに残ったのはマスティアを死なしてしまったという罪悪感のみであった。
 特にアークノアはそのことに深く重い感情を抱えようとしていたのだ。


 それから数日はオルタとマスティアの捜索を行ったが結局見つかることはなく、ついにアークノアがその捜索の打ち切りを言い渡した。

 彼らにはやらねばならないことがまだ残っている。それは碧雷の帝王の討伐である。
 四天王全員が倒されたことで、奴もきっと重い腰を動かすに違いない。
 そのためにも彼らはこんなところで止まるわけにはいかなかった。苦渋の決断で、アークノア達はオルタ達のことを諦めたのだ。


「...ジーク、カリバーン、アカシア。忘れろとは言わない....ただ、彼らの分も必ずこの旅を成し遂げると誓うんだ」

「....当たり前だ」

「死んでしまった彼女に報いるためにも私達は負けるわけにはいかない」

「.......」


 こうして彼らは旅を再開する。ついに最後の戦いが始まろうとしていた。
 四天王を倒し、全ての元凶である碧雷の帝王を討ち倒すために、その歩みを止めることは許されなかった。



 同時刻、闇文明の瘴気の怨霊殿にてある戦いが終わっていた。帝下兵竜軍がそこで捕食禍龍のクリーチャーと戦っていたのだ。
 その目的は《超次元ファイナル・ホール》と眠りについた《不完全龍素 アナザー》を回収することにあった。


「陛下、ついに目標は達成しました。すぐに帰還します」

「ご苦労...もうじき奴らとの最後の戦いが始まる。すぐに戻ってくるんだ」


 そう言ってあるクリーチャーは通信を断った。
 そして広い部屋の奥に佇む玉座に座ったのだ。


「これでこの場には全てが揃う....ということか。....フフフ、面白い。もうじき我々の願いはついに果たされるということか」


 そう言って高笑いをするのは自然文明、ヴォルカ帝国の統治者、碧雷の帝王と呼ばれるクリーチャー《進化の雷帝龍 イヴァングローム》である。

 ついにこの大戦の最後の戦いが始まろうとしていた。











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最終更新:2025年05月15日 06:01
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