5/1 姉妹の紡ぐ子守唄 ID:y0MZIs0h
役人風の初老の男性が声を張り上げ叫んでいる。男は国からの依頼を受ける冒険者達を募っていた。
数年は遊んで暮らせるであろう15万Gという報酬、人前では明かせない依頼内容。
そして、忠誠心の証として冒険者達に配布されるネックレス・・・・・・。
きな臭さを感じつつも、冒険者達は馬車へと乗り込んだ。
男が語る依頼内容は、西方に位置する研究所にいる対象の捕獲であった。
男は興奮しながら冒険者達へ重ね重ね口止めをする。
男の横柄で人を見下した態度に反発心を覚えながらも、冒険者達は目的地へと向かう。
もし今、男に危害を加えれば、呪われたネックレスが全ての魔力を吸い取るだろう。
苦い思いを噛み締めつつ、冒険者達は研究所の門を開く。
そこは漏洩した濃い魔力で覆われ、紫や黒色の魔力塵が漂っていた。
そして、奥からは細く、子守唄が聞こえてくる。
胸に下がるネックレスに唆されるように、冒険者達は人影に向かって攻撃を開始した。
唄の主が即座に応じ、冒険者達から放たれた攻撃を難なく迎撃する。
一声で研究所内の防衛システムを動かし、強烈な光魔法を駆使する“捕獲対象”。
先制の利は瞬く間に覆され、冒険者達は一転窮地に立たされた。
しかし、想定された追撃はなく、“捕獲対象”は淡々と冒険者達に対話を申し込んでくる。
改めて見た“捕獲対象”は艶やかで美しい黒髪を持つ少女であった。
少女は、国が行ってきた悪魔の所業を話し始める。
国は、魔王に匹敵する魔力を持つ兵器を開発するため、“ミシェル”と呼ばれる少女の魔力を増強させた。
同様に彼女の妹にも魔力増強の措置が施されたが、その過程で増大した魔力が暴走し、
ミシェルの妹からあふれ出す魔力によって研究所は地獄と化した。
そして、ミシェルには次の研究フェイズとして膨大な魔力を制御するために命令に従うだけの
プログラムが組み込まれ、ミシェルは完全に兵器と化したはずだった。
しかし、植え付けられた人格の内部で、“ミシェル”の意識は行生き続け、
ついには命令に従うだけのプログラムであった別人格に反抗心を抱かせることとなる。
それが、今回の「少女」の脱走劇に繋がったという。
冒険者達は迷った。
依頼を完遂するかどうかではなく、目の前にいる「少女」をどうしたら救えるのか、と。
冒険者達は一計を案じ、少女を拘束したフリをして依頼人の元へと帰還する。
依頼人は下卑た笑いを浮かべながら、ネックレスの呪いを発動させた。
全ては最初から仕組まれていたのだ。魔力を奪われ、冒険者達は膝を付く。
しかし、次の瞬間、勝ち誇る依頼人の顔が凍りついた。
仮初の束縛から解き放たれた「少女」は弄ばれた家族の怒りを代弁するように依頼人を問い詰める。
しかし、依頼人の口から語られる真実は、少女にとって絶望的な物だった。
父も妹も、すでにこの世にはいないと知り、少女の手から力が抜ける。
その刹那、依頼人は隠し持っていたナイフで少女の胸を突いた。
迸る鮮血の中、少女は依頼人へとレーザーを放つ。怒りと悲しみを込めた一撃に依頼人は沈黙した。
冒険者達はただその光景を見ていることしかできなかった。
力を奪われた彼らは、己の無力を噛み締めながら少女へと近づいていく。
作られたプログラムは天国には行けないだろう、と少女は言う。
冒険者達がかけた言葉に、彼女は微笑み、もうすぐ天国にいる妹や父親に会える、と呟いた。
そして、そのまま静かに瞳を閉じた。
後日派遣された国の特殊部隊は、荒野に打ち捨てられた役人の死体の他は何も見つけることはできなかった。
冒険者達も、少女の亡骸も、存在していたはずの研究所さえも。
後にその場を通った者達は口々に語る。
「確かに聴こえるんだ。三人の女が仲良く子守唄を歌っているのが」
5/2 偽りの掃討戦 ID:NdBQPumn
とある街の片隅で、役人風の青年が国からの依頼を受ける冒険者達を募っていた。
集まった冒険者達に受注の証となるネックレスを渡し、青年は目的地へと向かう馬車の扉を開ける。
馬車内で青年が語る依頼内容は、要塞「フォレストベアー」を占拠した盗賊団「森の狩人」の掃討であった。
今回の掃討戦には、国軍の掃討作戦と同時進行となるらしい。
国軍の兵力は充実しており、加えて新兵器も導入されるとの話であった。
きな臭さを感じつつも冒険者達は中継地点へと到着し、冒険者達は意気揚々と要塞へ向かう。
そんな中、青年はID:xLmFrINu(戦士)を引き止め、指示を出していた。
一方、要塞ではすでに戦闘が開始されており、激戦区である東門へと急行する冒険者達。
激しい剣戟の音が響き、戦塵が立ち込める中、戦いなれた盗賊の連携攻撃を前に国軍は翻弄されていた。
兵力は次々と削られ、冒険者達が到達した時には国軍は壊滅寸前であった。
しかし、国軍を圧倒していたさしもの盗賊達も、冒険者達の巧みな魔法を前に戦場の露と消えていく。
そして、東門を制し要塞内部へ突入しようとした時、冒険者達の耳に聞きなれない音が響いてきた。
音の出所に目をやった冒険者達が見た物は、魔道戦車と呼ぶに相応しい異形の兵器であった。
その一撃は堅牢な要塞の門を容易く打ち砕っていく。
強大な破壊力に驚きを隠せない冒険者達は、次の瞬間、さらに驚くべき物を目にすることとなる。
司令官と思しき男の号令が響くや否や、なんと戦車は人型の兵器へと変貌を始めたのだ。
鉄の身体に巨大な砲身を持つ新兵器“マジックソルジャー”は砲撃を要塞へ浴びせていく。
その光景を見た冒険者達は気付く。これは掃討戦という名の実験である、と。
冒険者達は憤った。盗賊達は、否、自分達でさえモルモットに過ぎなかったのだ。
怒りを力へと変え、冒険者達は兵器へ挑みかかる。
圧倒的な火力を前に、それでも怖じることなく冒険者達は巧みに兵器の脚部を狙い転倒させる。
自重を支える足を失った兵器は大地へ投げ出され、兵器はかなりの損傷を負うこととなった。
追い詰められた司令官は空へ向け、赤色の光を放つ弾を打ち上げる。
弾が爆ぜ空が一面の紅に染まる。その光景を見たは出発間際、青年から言われた仕事を完遂する。
彼は青年に言われたとおり叫んだのだ。声高らかに、ネックレスの呪いを発動させる呪詛を。
次の瞬間、冒険者達の首に掛かるネックレスは魔力を吸い取る重き枷と化した。
膝を折り大地に伏す冒険者達の中、呪いの影響を受けなかったID:xLmFrINu(戦士)は兵器へと近づいていく。
集合命令を無視し、要塞の中で戦闘を行ってきた彼は、興味本位で兵器のハッチを開け、司令官と対峙する。
一方、ID:7mMnySWX(地)は、兵器の攻撃で吹き飛ばされた森の中である出会いを果たしていた。
その男は「森の狩人」の一員であった。生き残った盗賊は、要塞は国に提供されたのだと話す。
事の発端も、経緯も、全ては国のシナリオであった。
一矢報いようと兵器の元へと戻った彼らは、ID:xLmFrINu(戦士)が司令官を打ち負かす光景を見る。
生き残った盗賊が怒りを込めて放った矢が司令官の胸に深々と突き刺さった。
剣戟が止み、戦塵が収まる頃、鉄くずと化した兵器と物言わぬ司令官の亡骸を目の前にして、
冒険者達は空しさを噛み締めていた。
多くの仲間が傷つき、死んでいったこの攻防で、彼らが得た物は何も無いのだ。
肩を落とす冒険者達を、魔法装備で身を固めた国の特殊部隊が取り囲む。
ネックレスの魔力と戦闘によって傷ついた冒険者達は捕縛され、その後の行方は杳として知れない。
大破し、これ以上の運用は不可能と断定された新型兵器は廃棄処分となった。
事の真相を語り継ぐ者はいない。全ては歴史の闇から闇へと葬り去られたのであった。
5/9 背信の教会 ID:AZ8gBVh1
「誰か!お願いします!妹を助けてください!」
とある街の片隅で、青年が叫んでいた。
街行く人のほとんどが彼を無視した。眉をひそめ、明らかな嫌悪感を示す者もいる。
それも当然であろう。彼が語る内容は国教である「太陽の使途」を貶めるものでもあったのだ。
しかし、興味をそそられたのか、何人かの冒険者達が彼に近づき、話を聴き始めた。
「太陽の使途」の信者達の手によって妹が連れ去られたと彼は語る。
“シリル”と呼ばれる妹は、彼にとって最後の家族であり、彼はシリルを取り戻そうと必死だった。
妹を助けるために莫大な借金を背負うことすら辞さない彼の態度に、冒険者達は妹の救出を引き受ける。
冒険者達は「太陽の使途」の本拠地である国立教会へと向かった。
国立教会の門番に青年から貰った信者の証を見せて通る者、門番を打ち倒す血気盛んな者、裏に回ろうとする者、
十人十色の方法で国立教会の内部へ進入した冒険者達は、閑散とした教会内で人影を見つける。
短い金髪に赤い髪飾りをつけた少女。青年の妹であるシリルであった。
倒れ伏し、微動だにしない少女に冒険者達が近寄ろうとした瞬間、教会内に低い男の声が響き渡る。
奥の物陰から現れた教祖が両手を天に掲げると、シリルはゆっくりと立ち上がった。
その頃、教会の裏手から侵入したID:xB4A/oov(木光闇×2)は、教会内に大量の武器を発見する。
そのまま裏手から礼拝堂へ移動したID:xB4A/oov(木光闇×2)が見た物は、
高笑いをする教祖と平板な表情を浮かべながら魔力を吸い取るシリル、そして苦しむ他の冒険者達であった。
ID:xB4A/oov(木光闇×2)は教祖の背後へと忍び寄り、高笑いする教祖を締め上げる。
しかし、シリルは止まらず、依然として冒険者達に苛烈な攻撃を加えていく。
冒険者達は残された魔力で必死に応戦し、シリルを追い詰めていった。
腕を飛ばされ、足を削られてもなお動き続けていたシリルもついに沈黙する。
静寂が礼拝堂に戻り、誰もが戦いは終わったと思った。
しかし、戦後処理として、ID:xB4A/oov(木光闇×2)がシリルの霊魂を実体化させた次の瞬間、
教会の扉が大きく開け放たれ、国の特殊部隊“アンチマジック”がなだれ込んできた。
魔力強化を施した重武装に身を包み、訓練された動きを見せるアンチマジックであったが、
数々の実戦を生き抜いた冒険者達の前に、あっという間に壊滅へと追い込まれていく。
やがて、追い詰められた特殊部隊員の一人が教会諸共自爆を図った。
轟音と爆炎によって国立教会が崩れていく中、退避した冒険者達の前に依頼人の青年が現れる。
歪んだ笑みを浮かべながら、シリルの遺体の引渡しを求める依頼人。
彼の提示した報酬は100万Gという破格の値段であった。
その時、実体化したシリルの霊魂が真実を語る。
「あの人はプロジェクト「ミシェル」の総責任者、そして研究所の所長…!」
それを聴いた冒険者達は微笑を浮かべながら、青年に国家予算並みの報酬を要求する。
払えない、と困惑する青年に、冒険者達は微笑を浮かべたまま詰め寄っていった。
国によってモルモットとされた少女の恨みを微笑みの裏に浮かべたまま、
生かさぬように殺さぬように、冒険者達は青年を痛めつけていく。
やがて青年が気絶したのを見届けると、冒険者達は踵を返して三々五々に散っていった。
後日、派遣された増援の特殊部隊が発見した物は、廃墟と化した教会と血に塗れた路地裏の惨状だけであった。
冒険者達と幽霊となったシリル、そして、気絶させられた青年の行方は、誰も知らない。
7/26 名も無き英雄達 ID:ruD58m8p
普段は静寂な森に、ただならぬ緊張感が走っていた。
静けさを切り裂く怒号、物を叩きつける音、そして、断末魔・・・。
たまたまその森を訪れていた冒険者達が見たものは、我が物顔で暴れまわるゴブリンの群れだった。
土を踏み荒らし、木を打ち据え、獣を追い立てる。
そんなゴブリンたちの所業を目の当たりにし、冒険者達は義憤に駆られる。
冒険者達は魔法を駆使し、ゴブリン達をあっという間に沈黙させていく。
最後のゴブリンが息絶えた瞬間、周囲の音が遠のいた。
圧倒的な殺気と暴力的な気配に、騒いでいた森の獣達が黙り込んだ。
木々をなぎ倒し、荒い息を吐きながら現れた“それ”は、無骨な剣と重装に身を包んだオーガであった。
繰り出される魔法をものともせず、その強靭な身体と膂力をもってオーガは冒険者達を圧倒していく。
冒険者達は一丸となって、オーガへと魔法を繰り出した。
四方から寄せられる魔法の波状攻撃に、オーガの気が逸れた瞬間を狙い、
ID:o/n0P1yL(炎鉄×2)が全霊を込めた炎竜をオーガへと叩き込んだ。
オーガは炎竜と正面からぶつかり合い、周囲の木々をなぎ倒すほどの爆発が起こる。
その中心からオーガの持っていた巨大な剣がID:o/n0P1yL(炎鉄×2)へと飛んできた。
そして、剣は炎竜を放った隙を突き、ID:o/n0P1yL(炎鉄×2)の左腕を奪っていった。
凄まじい断末魔が終わり、そこに残っていたのは、炭化したオーガの肉体であった。
爆発を聞きつけた近隣の村人が駆けつけ、冒険者達には手厚い治療が施された。
数日後、一命を取り留めた冒険者達に、この村は貧しく報酬を支払えるだけの蓄えは無い、と村長は頭を下げた。
冒険者達は微笑み、報酬ならもらっている、と答える。
村人達の感謝と慈愛に満ちたもてなしは、幾万の金にも代え難い報酬であった。
この話は口伝され、時代を経た今となっても英雄伝として語られている。
7/26 魂を継ぐ者 ID:ruD58m8p
地図にも載らず、誰もその名を知らない村に、一つの洞窟があった。
洞窟の入口には一人の翁が佇み、訪れた魔法使いを洞窟へと誘う。
多くの魔法使いや戦士が名声を求めてその洞窟へ入り、皆、狂気にその心を蝕まれて出てきた。
カンテラが灯り、生温かい澱んだ空気に満たされた洞窟を、
戦士に憧れる隻腕の魔法使いID:o/n0P1yL(炎鉄×2)が歩んでいく。
洞窟を抜けた後で渡される報酬と、その身に戦士の魂が宿ることを夢見て・・・。
洞窟の広間へと辿り着いた彼が背後にあったボタンを押すと、広間の扉が軋みながら開いていった。
そこから、甲冑を身に纏った『虚空の騎士』達が現れ、彼に襲い掛かってくる。
重い甲冑をものともせず、巧みな連携を繰り出す虚空の騎士達の攻撃を避けながら、彼は冷静に分析を行っていく。
やがて、虚空の騎士達の身体には磁力に反応する金属が使われていることを悟った彼は、
彼らの甲冑の中の虚空を鉄で満たし、磁力によって虚空の騎士達を引き寄せた。
凄まじい磁力によって潰えた騎士達を尻目に、彼は歩を進める。
広間に据えられた3つの扉から、獣臭立ち込める道へと進み、辿り着いた先は、人骨が転がる異様な広間であった。
天井に幾つも空いている穴の一つから、静寂を切り裂いて何か異物が落ちてくる。
いきなりのことに火球を放った瞬間、彼の頭上から巨大な狼がその顎を広げて襲い掛かってきた。
牛ほどもあろうかという体躯、燃え盛る炎のように揺らめく真紅の体毛・・・。『紅狼』と呼ばれる魔物であった。
周囲の水分を蒸発させ、鉄製のナイフすら変形させるその身に秘めた熱量と、天井の穴を介した機動力。
やがて、彼は徐々に追い込まれ、紅狼の一撃で壁に叩き付けられる。
こちらの攻撃を無効化し、一撃で瀕死の重傷を与えてくるほどの強敵。
口から鮮血が迸り、絶望が彼を包み込む。紅狼は獲物に止めを刺そうと一歩を踏み出す。
瞬間、けたたましい音と共に閉じられた扉が蹴破られた。
そこには翁にID:o/n0P1yL(炎鉄×2)の救出を頼まれたID:3t23GCOo(雷水雷(水))が立っていた。
ID:3t23GCOo(雷水雷(水))の身体に付けられた魔物を退ける聖水の匂いに、紅狼はあからさまに敵意をむき出す。
しかし、放たれた雷撃に怯み、二対一という劣勢に陥った紅狼は天井の穴を巧みに利用し、2人を翻弄し始める。
紅狼の熱とID:3t23GCOo(雷水雷(水))の水魔法によって濛々たる水蒸気に覆われた洞窟内で、2人と1匹は戦い続けた。
やがて、紅狼の突進がID:o/n0P1yL(炎鉄×2)へと襲い掛かる。
避けられぬと悟った彼は身命を賭して紅狼へと鉄魔法を叩き込んだ。
数多の針が紅狼の身体へ突き刺さる。しかし、その突進は同時にID:o/n0P1yL(炎鉄×2)の命を奪っていった。
壁に叩き付けられ、事切れたID:o/n0P1yL(炎鉄×2)を見て、ID:3t23GCOo(雷水雷(水))の怒りが爆発する。
一方、数多の攻撃で疲労し左腕を奪われながらも、紅狼は猛然と生き残った者へと襲い掛かる。
叩き伏せられたID:3t23GCOo(雷水雷(水))は、己が腕を紅狼に喰らわせ、その対価として凄まじい電流を直接流し込んだ。
この攻撃にはさしもの紅狼も闘志を失い、天井の穴へと退却を始めた。
ID:3t23GCOo(雷水雷(水))は洞窟内に満ちた水蒸気と己の水魔法を使い、天井の穴へと向けて濃密な霧を発生させる。
紅狼が斬りに包まれていることに気付いた次の瞬間、全ての力を注ぎ込んだ電流が霧を伝い、全ての穴を満たした。
バチバチと高圧電流が爆ぜる洞窟内で、最後に立っていたのはID:3t23GCOo(雷水雷(水))だけであった。
やがて、全ての力を使い果たした彼は重力に引かれ、静かに地面へと崩れ落ちた。
遠ざかる意識の中で、彼はこちらへと向かってくる複数人の足音を聴いていた。
意識を取り戻したID:3t23GCOo(雷水雷(水))の目に、村人と翁の姿が映る。
翁曰く、洞窟の魔物はかつて高名な魔法使いが魔力に当てられ、変化した姿だったそうだ。
そして、荒ぶる魔物を鎮めるため、翁は洞窟への挑戦者を募っていたと言う。
魔物は倒され、洞窟は平穏が戻ったが、ID:3t23GCOo(雷水雷(水))の胸中には、苦い思いが渦巻いていた。
紅狼の突進に真っ向から立ち向かった男・・・。
魔法使いの弱き肉体に戦士の猛き魂を持つ男。
ID:o/n0P1yL(炎鉄×2)の残したガントレットが、鈍く光を反射していた。
それから後、傷の癒えたID:3t23GCOo(雷水雷(水))は村を離れた。
彼の腕には、いびつに歪んだガントレットが付けられていたと言われている。
4/24 スペルマスター ID:dc8yA1Nn(中断)
霞煙る山中に、その城はある。
周囲に吹き溜まる魔力によって、水は腐り、風は澱み、木は枯れる。
――魔王城。数多の魔法使いが挑み、散っていった魔の王の居城。
その城壁の前にID:/l91W/0x(炎氷鉄×4)は立っていた。
彼の目には光が宿り、城の放つ妖気を前に些かの怖じた様子も無い。
傍らに侍る巨大な鉄のゴーレムに命じ、城門をこじ開けさせ、彼は歩を進めた。
絢爛豪華な装飾に彩られた城内に、生ける者の気配は無い。
静まり返った虚ろな空間に、大理石を叩く彼の足音だけが響き渡る。
2階へ上った彼が眼前の扉を開けると、そこには濃密な霧が立ち込めていた。
前に突き出した手の先が霞むほどの霧。
次の瞬間、霧の中から硬質化された水の槍が彼を目掛けて飛んできた。
咄嗟に水を凍らせ、槍を叩き折った彼の眼前から霧が引いていく。
そして、部屋の中央には屈折した笑みを浮かべる男が一人立っていた。
魔王四天王の一人を名乗る者『マジタニ(炎水×4)』
水と炎を巧みに操り、霧を発生させ自由に姿を消すマジタニの攻撃を、
ID:/l91W/0x(炎氷鉄×4)は氷を機軸とした巧みな魔法を使って退けていく。
やがてマジタニの隙を突いて作り上げた、高魔力を一点に集中させた炎の塊を投げつけた。
今まで弱い炎魔法を難なく弾き飛ばしてきたマジタニは、それまでと同じように攻撃を防ぐ。
瞬間、轟音が響き渡る。高魔力の炎魔法の爆発によって、マジタニの姿は跡形も無く消し飛んでいた。
ID:/l91W/0x(炎氷鉄×4)はさらに先へと進む。
開けた扉の先は漆黒の闇に包まれ、炎の力をもってしても道を照らすことは出来なかった。
暗闇から何者かの声が響く。
『マジタニを倒したか・・・だが、彼奴は我等魔王四天王の中でも最弱!』
・・・どこかで聞いたような台詞を吐きながら、漆黒の闇を纏ったような黒ずくめの女(闇鉄×4)が立ち塞がる。
女は暗中を駆け、寄せ返す波のように怒涛の攻撃を仕掛けてくる。
ID:/l91W/0x(炎氷鉄×4)は持てる力の全てを使い、女と対峙する。
二つの力がぶつかり合い、大気が揺れ、地が爆ぜる。
そう、ID:/l91W/0x(炎氷鉄×4)の戦いはこれからだ!
ご愛読ありがとうございました。ID:dc8yA1Nn先生の次回作にご期待ください!
最終更新:2010年11月27日 14:54