ユリが
博物館近くまで来ると…メラルが進路を遮り、立ち塞がった。
そのまま突撃して来ても対処できるように、
大量の斥力球を盾にするようにして。
ユリ「おおっとっと!」
メラルが斥力球を大量に配置しているのを見たユリは、斥力の力を利用して無事急停止に成功する。
ユリ「も~!飛び出すと危ないよメラル~!
あ。それよりさ、博物館から黄金の戦車が行方不明になったらしいんだよね。
今から博物館に入れそうかな?」
メラ「今博物館は封鎖中よ。どうせ白百合騎士団も重要参考人が
一人いる事しか知らないでしょうし…少なくとも貴方には
何も教えてくれないと思うわ。騎士団からすれば貴方も
当事者の可能性があると考えざるを得ないでしょうし。
最悪、貴方が今までの行動を根掘り葉掘り聞かれる羽目になるわ。」
ユリ「重要参考人!ねえねえそれ誰!?誰!?」
そこまで言って、一息つく。…メラルが体を殆ど動かしていないのに、
何故か頭の黒い帽子が小刻みに動いている。
メラルがため息をついて帽子を取ると、頭には何も変な所はなかった。
しかし、帽子の中に何が入っているかまでは…見えなかっただろう。
メラ「どうせ何があったのか知りたいんでしょ?
ならミルクの所に連れて行きなさい。そうすれば…
全て明らかになるわ。まず間違いなくね。」
言った後も、、メラルはしきりに帽子の中を覗いて
何か細工をしている素振りを見せる・・・が、
帽子の付近のごく一部だけに濃密な霧を発生させて
ユリに帽子が見えないよう徹底しているため覗くのは難しいだろう。
ユリ「ほんとに!?よーし分かった!
ちょっと待ってね、すぐに居場所を調べるから!!」
メラルの言葉に喜ぶユリは、遠話の水晶球を取り出し、魔力を込めて大声で呼びかける。
ユリ「ミルクー!今どこにいるのーっ!?」
ミル「学園長室だよ!今取り込み中だから後にしろ!」
帰ってきた返事は、慌てたような怒ったようなそんな声だった。
反応はともかく、得られた情報に満足したユリはメラルに言う。
ユリ「学園長にいるんだってさ!
早速ミルクに会いに行って、一緒にムウ大陸の謎を解き明かそう!」
ユリは、メラルもムウ大陸の事を調べているのだと勝手に勘違いしていた。
目を輝かせてメラルを見、そしてまた帽子に興味を引かれる。
ユリ「ねえねえ、その帽子なんだけどさ、さっき動いてなかった?」
メラルが隠そうとするのも気にせず、気の向くままに帽子をのぞこうとする。
博物館前で話すメラルとユリ。
その二人は突然の風に驚くだろう。
風が強いわけではない。
いや、風というより、空気の壁、という形容が一番高いだろうか?
それが緩やかに二人を圧迫し始めているのだ。
その直後、届く音は勇壮なる蹄の音。
ドドドドド****と音が近づいてくる。
見やると黄金の戦車が博物館に向かい一直線に突進してきているのだ。
その速さ以上に圧迫感。
それが空気の流れる事を許さず押し出すかのように壁と成して突き進む!
ユリ「むむむっ!?」
迫る空気の壁に気づいたユリが見ると、なんと探し求めた黄金戦車が走り寄ってくるではないか!
ユリ「うわっ!凄い!ほんとに走ってるっ!それ行けっ!!」
捕まろうとダイブしたユリの指先をかすめ、黄金戦車は壁に穴を開けて博物館に入っていった。
博物館の中では混乱する白百合騎士団の声が響き渡っている。
黄金の戦車は周囲の騒動を歯牙にもかけずもとの台座に戻り、嘶きを一つ残して以前のように彫像と化したのだが、中での出来事。
ユリ「うう~アイタタタタ……失敗失敗……」
うつ伏せに倒れていたユリがもそもそ起きあがってきた。
体についた汚れを払い、メラルを見る。
ユリ「誰も乗ってなかったよね、あの戦車。
一体どうして動き出したのかな…あれ?なんだろこれ?
アルナワーズの顔?」
落ちていたアルナワーズの顔をした仮面を拾い上げると、仮面は言葉を話し始める。
アル「はぁ~い。ユリ。面白いものを持ってきたの。
これで貸し一つ。でもぉ、これは多分、貸し五つくらいに膨れ上がると思うわ~。
そ・れ・か・ら・・メラル~。折角のお祭りなんだから楽しまなきゃダメよぉん。」
そういい残すとアルナワーズの顔を模した仮面は気配を立ち、ただの仮面になっていた。
ユリ「アルナワーズだ!さっきぶり~!
あれ?気配が消えちゃったけど、もう通信切っちゃったのかな?
ねえねえメラル、これって通信アイテムだよね?」
仮面をひっくり返してユリは、その下にある本に気づいた。
本の中には、砂漠の王様に関する御伽噺が記されている。
黄金の戦車がスクナを轢いた際に、仮面と本がスクナの懐から零れ落ち、戦車に乗っていたのだ。
(一方、スクナだが、跳ねられ宙を舞い、校舎上層の壁のシミになっていた。 )
ユリ「こっ!これはっ!やっぱりスクナは本物の王様だったんだ! 黄金戦車を動かしたのはきっとスクナなんだよ!
重要アイテムをありがとうアルナワーズ!」
新たに得た情報から結論を導き出したユリは、メラルに向き直る。
ユリ「ミルクも何か知ってるのかな!?
急いで学園長に行こうメラル!」
メラルも空を飛べる事を知っているユリは、デッキブラシに飛び乗って再び空の人になった。
学園長室には窓から入るのが最速なのだが、尊敬する人の部屋に突撃するほどユリもお馬鹿ではない。
大きく校舎を飛び越えて、窓→廊下→学園長室ルートを選択したユリは、いつもと違う校舎のシミにきづく。
ユリ「ごめーんメラル!ちょっと用事ができたから、先に学園長室に行っておいてね!」
メラルに声をかけて校舎のシミに近づくと、それはやはり人だった。
しかもユリアイの見立てに狂いはなく、スクナだった。
壁に叩きつけられて数秒後、スクナは目を覚ましていた。
にも拘らず、校舎の壁のシミのように張り付いたままでいるのには訳がある。
叩きつけられた衝撃で体が動かないからだ。
ユリ「やっぱり王様だーっ!はじめまして王様!
私はでいりぃ・ふぃじる突撃報道部のユリ・オオヤマです!
早速なんですが、博物館にあった黄金の戦車を動かしたのは、やっぱり王様なんですか!?
それから、こんな所で何をしてるんですか!?
やっぱり高い所からみんなを見守ってるんですか!?」
スクナが空を飛べない事を知らないユリは、矢継ぎ早に質問を始めた。
流石に愛馬に跳ねられて壁のシミになっていましたなどとは言えない。
また、動けるようになるまではまだ少しかかりそうだ。
何とかこの場を切り抜けるために、スクナの脳ミソはフル回転していた。
スク「ふふふ、王の宿命とはいえ変装をやめた以上仕方があるまい。」
こうやってインタビューされるのも満更ではなさそうにフーと息をつく。
スク「ユリと申したか。はじめてではないぞ?
そちは気付かぬだろうが、中庭でも会っておるわ。
焼き鳥塩は旨かったのう。」
質問には答えず、何気ない言葉を並べて一旦区切るのは勿論時間稼ぎだ。
体力の回復と誤魔化す為の言い訳を考え続けている。
ユリ「あれ?中庭で焼き鳥塩を食べたのは、ミルクとアルナワーズなんだけど。
ミルクはずっと一緒にいたから本人だし……あーっ!
じゃあじゃあ!アルナワーズに変装してたんだ!
全然気づかなかったーっ!!」
ユリの脳内に新しく、王様は変装が得意との新情報が書き加えられる。
スク「うむ、確かに黄金の戦車は余が動かした。
中々愛い奴でのう!
まあ、眺めがいいところを見つけたから今は放っておるのぢゃ!
しかし!余はフィジルに来て運命の出会いをしたのぢゃ!」
ユリ「えーっ!?相手は!?相手は誰なんですか!?」
黄金戦車を動かした事実を認めるのに続く発言に、ユリは飛びついた。
何とか動くようになった左手を壁からはがし、スクナはすっと小指を見せる。
そこには赤い糸が二本垂れ下がっていた。
スク「聞いて驚け!余はフィジルにて妃となる女と出会ったのだ!」
高らかに宣言をし、説明を加える。
運命の出会いをしたのだが、女達は慎み深く別行動をとることになった。
しかも片方の女は何やらただならぬ状況に置かれているらしい。
ただ女とくっついているより、ピンチになった時に颯爽と現われ救うのが恋のロマン!
今はこうやって、様子見をしている、というわけだ、と。
スクナの指に垂れる赤い糸によく耳を澄ませば、かすかにミルクの声が聞こえてくる。
ミル「ただ、あたし文化革命の事はよく知らないんで、教えられる範囲で教えてもらえれば助かるんですが……」
赤い糸は密かにミルクと
リリアーナの肩辺りに付けられており、糸電話の要領で音声が拾えるのだ。
スクナの説明を聞きながら赤い糸に耳を近づけると。
ユリ「えーっ!ミルクが運命の人なんだ!!
こっ、これは後で独占インタビューしないと!!」
一通り説明を終え、締めくくりにスクナは口を開く。
スク「恋のイベントの裏にはこういう地道な努力も必要という事ぢゃて。かっかっか!」
ユリ「なるほど!さすが王様!
恋の花を咲かせるには努力が必要なんですね!」
ミルクが盗聴の事実を知れば激怒しただろうが、スクナの説明に感心するユリはそこまで考えが至らなかった。
ユリ「じゃあこっちの赤い糸は、もう1人の運命の人とつながってるんだね。
どれどれ、誰なんだろー?」
許可も取らずに耳をもう1つの赤い糸に近づけるユリ。
その耳に聞こえてきたのは、予想を斜めに上回る声だった。
聞こえてきたのは、学園でトップに近い位置をキープし続けるケオスの声。
女ですらない点に普通なら疑う所だが、ユリの頭のなかにはある言葉が浮かんでいた。
BLという言葉である。
ミルクと繋がった赤い糸を通し、学園長室のやり取りが伝わってくる。
どうやら話は纏まったようだ。
それはスクナの思い描く危機の襲来ではなく、丸く収まるような形で。
スク「ぬ~。機会を逸したか。
いや、これは態よく学園長が島外に連れ出さるという更なる危機への序章と考えれば・・・。」
スクナはピンチにかっこよく登場するというシュチュエーションを諦めきれず、妄想に走ったようだった。
ちっと舌打ちをしていると、もう一本の赤い糸からも声が漏れ出てくる。
それは中庭での会話の様子。
ケオスの声が聞こえてくるが、周囲の音も一緒に拾うのでスクナは気にも留めていなかった。
が、ユリはすっかりケオスがその相手だと思い込んでいる。
ユリはさらに感動してスクナを見た。
ユリ「王様すごい!すごすぎる!
ミルクはともかく、運命の人がこんな秀才だなんて!
どんな出会いが2人の間にあったんですか!?
相思相愛でゴールイン間近ですか!?」
スク「そうか!秀才なのか!余の見る目に間違いはなかった!
勿論相思相愛ぢゃ!王の寵愛を受けることほどの幸せはあるまい!」
微妙な食い違いしながら会話が成立するユリとスクナ。
そんな二人の間に衝撃の言葉が伝わる。
音源が離れている為、聞こえてきたのは微かな音だったが、スクナは聞き逃さなかった。
副『 まさしく俺の理想としている姿だ。そう!!俺は君に惚れたっ!!』
リリ『 ふくかいちょ・・・・・・・・そんな・・・・・・こ、困ります・・・私・・・・・・」
スクナの高笑いが詰まったように途切れる。
あまりの衝撃に思わず思考停止してしまったが、それも一瞬の事。
我に返ると同時にスクナの額に太い血管が浮かび当たってくる。
スク「な・・・なぁにぃ~?やっちまったなあ!!!」
張り付いていた壁から無理やり体を引き剥がすと、スクナは飛んだ!
もはやユリの存在も目に入っていない。
布を広げ、ムササビのように滑空していく。
場所は変り中庭。
スク「蒼天に日輪の輝く限り!余は不屈!不死身!不可抗力!」
中庭にスクナの叫び声が響き渡る。
上手く三段オチで締めたかったのだが、スクナのボキャブラリーでは意味不明な三段締めが精一杯。
だが、その声の主はいない。
直後、轟音と共に何かが振ってきて土煙が舞い上がる。
土煙がはれ、そこに現われたのはスクナだった。
スク「くぅおら、そこな男!!
余の妃を誘惑するとは万死に値する!
今!ここで!決闘を申し込む!!」
ビシッと副会長を指差し高らかに宣言するスクナの左腕にはケオスの肩が抱かれていた。
リリアーナのメイド服の肩口に付けられた糸を手繰ってきたので、当然といえば当然の結果なのだが・・・
なんとも締まらない光景であるには間違いない。
(226で〆)
最終更新:2009年01月06日 17:11