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女子寮前A

部屋に戻って死王印の砂時計をポケットにねじ込んだあたしは、大急ぎでリリアーナの部屋に戻る気でいた。
レベッカのあの態度を見て、追いかけたいと思う人間は少ないはず。
メイリン探しにも大人数を投入できるよな!…と思っていたんですが。
騎「止まりなさいミルク!ミルク・パウダーシュガー!」
なぜか白百合の奴らに呼び止められました。
ミル「はいはいなんでしょう?
 最近は借金の取り立てもおとなしくしてますし、急いでるんでまた今度に…」
騎「あなた留学生のスクナ・ヒダノゴウのエスコート役だそうね!
 男を女子寮に連れ込むなんて何を考えているの!?」
ミル「いいっ!?」
(王様が女子寮…ってもう男に戻っちゃったのか!?
ていうかなんで見つかってるんだよ!
女子寮を男子が出歩いちゃ駄目な事ぐらいわかっとけーっ!!)

でも今はまず、責任がどうこう叫んでる白百合の連中をなだめるのが先だ。
ミル「んー。しょうがない。言っちゃうか。
 …ここだけの話なんだけど、実は今あたしたち、学園長の用事で動いてるんだよ。
 その一環で、どうしてもスクナにも女子寮に入ってもらう必要があった。
 しょうがないから、女のツイナと入れ替わって女子寮に入ってもらったってわけ。
 できるだけ早く済ませてもらうはずだったんだけど、時間切れで男に戻ったんじゃないかな」
ミル「それじゃ、あたしはスクナと合流して次の用事を済ませに行くから!
 ユリにも口止めしてあるから、騒ぎにならないよう協力よろしくね!」

女子寮を出れば、スクナを探すのは意外に簡単だった。
簀巻きにされて地面に転がってれば誰でも気づくだろうけど。
ミル「まったく…なんだってあんな無茶するんだか。
 王様ー、起きてくださいよー。
 生きてますか?生きてませんか?
 他のみんなはどこに行ったかわかりますかー?」
回復魔法が使えない身の悲しさ。

スク「う~ん・・・まふぇまふぇ・・・余とて身は一つ。
 愛でようにも限度がある・・・むふぇふぇふぇ・・・」
ミルクが気絶しているスクナに呼びかけると微妙にニヤついたスクナが朦朧としながら応える。
起こそうとしても、スクナは寝言を言いながらボケた事を口走るばかり。
ミル(こいつ人の苦労も知らないで!
 あー!ギューッと締め付けてやりたい!
 具体的にこいつの首とか首とか首とかを! )
スク「・・・っは!!ここは・・・ミルクではないか!
 いやな、先程王の寵愛を受けようとする女生徒達に囲まれもみくちゃにされてのう。
 安心せい、王の嗜みであって浮気ではないぞ?わっはっは!」
侵入者扱いされてフルボッコにされたこともスクナのお花畑フィルターにかかればこの通り。
モテル男は辛いと言わんばかりに高笑いをするのであった。
ミル「…まー浮気でも何でも好きなだけしてくれて良いですけど。
 てか、なんで男子禁制の女子寮走り回ったりしたんですか。
 女子寮に居たことは知らなくても、誰かが外に出るのを止めたりしなかったですか?」

スク「おお!それどころではないわ!
 余はリリアーナを泣かせたレベッカに天誅を与えにいくところでったわ!」
 スクナはミルクにリリアーナがレベッカのリボンを届ける為にレベッカの後を追ったこと。
 他のメンバーの多くはメイリンを探す為に散った事を話した。

ミル「レベッカに天誅って言っても、レベッカが居る場所も知らずに飛び出したんですか?」
スク「場所?安心せい。余とリリアーナは赤い糸で繋がっておるからのう!」
そして自慢げに左の薬指をミルクの前に突き出して見せる。
左の薬指からは二本の赤い糸が垂れ下がっている。
短く途切れているように見えるが、極細の糸となり見えなくなっているだけなのだ。
そのうち一本をゆっくりと手繰ると、途切れているように見えた場所に糸が出現し、やがてミルクの肩口へと繋がった。
スク「ん?おお、間違えたわ。リリアーナはこっちぢゃな。」
ミル「こやつめ、ははは。…なんて言うと思ったかーっ!
 なに勝手に人に糸なんかくっつけてるんだあんたは!?」
ミルクは慌てて両手をぐるぐる回したりして糸をぶち切ろうとする。

スクナは少し慌ててもう片方の糸を手繰ると、女子寮の中へと糸は続いていく。
そして糸からリリアーナとレベッカの声が小さくもれてきた。
「――― ・・・よ、私、この子が・・・・・・きなり・・・売ったり・・・しないから」
  生き残りたいな・・・首を斬れ。」
スク「糸電話の要領ぢゃ。イマイチ感度が悪いのう。」
首を傾げるスクナ。
話の内容は途切れ途切れで不鮮明だが、とりあえずはリリアーナとレベッカが一緒にいるのはわかったようだ。
ミル「ん?なんか小さく声が聞こえるんだけど、これは?」
ミル「糸電話ってそれは盗聴だよ!
 じゃあなに?ストーカー行為に加えて盗聴までしちゃってるの!?
 そういえばあたしにも糸つけてたけど、まさかあたしの話まで盗聴してたんじゃないでしょうね!?」
スク「わっはっは、安心せい!
 そちもリリアーナも平等に愛でているぞ!」


リリ(女子寮の外に飛び出したところで、スクナを介抱しているミルクと会った。)

ミル(スクナを問いつめていると、タイミングよくリリアーナが女子寮から飛び出してきた。)

リリ「ミルク!ミルクじゃない!」
スク「おお!こちらから探さずとも余の元へ駆け込んでくるとは!」
ミル「あ、リリアーナ!
 聞いてよ、実は王様が…ってうわっ!?」
スクナは大喜びで両手を広げリリアーナを迎え入れる体制万全!
一方のリリアーナは必死の形相でミルクに掴みかかった。
すっかり自分の胸に飛び込んでくると思っていたスクナはやり場のない手をわきゃわきゃと握ったり広げたり。

リリ「でいりぃ・ふぃじる編集部って全校放送入れられたよね?
 ねえ、ユリさんと連絡取れない?メイリンさんを女子寮へ呼び戻して欲しいの!!」
ミル「え?そりゃ出来るけど…そんなに急いで呼ぶような用事があったの?」
実は放送でメイリンを呼び出す事は、簡単そうに見えて色々問題があった。
なぜなら、メイリンは彼女の名前で来客申請をしていなかったのだ。

リリ「お願い、急いで!!メイファがレベッカさんの部屋に隠れてたの!
 今は眠ってるけど、起きるのは時間の問題よ。
 レベッカさんが通訳として残ったけど、彼女も一応魔法使いよ。このままじゃ・・・・・」
ミル「え。メイファって……そんなバカな!!
 スカーフェイスさんが封じて連れて行ったのに、こんな所にいるはずないじゃない!」
ドッキリ企画か何かかと一瞬疑ったけど、リリアーナの顔は真剣そのもの。
だいたいリリアーナがそんな嘘つくわけもなし。
でもそれじゃ……ってええい!そんな詮索してる場合じゃないよな!!
ミル「と、とにかくちょっと待って!すぐに連絡を取るから!」
あたしは急いで遠話の水晶を取り出して魔力を込める。
ミル「ユリ!緊急事態だから、急いででいりぃ・ふぃじる本部から全校放送してもらえない!?
 メイリンに、メイファがいたから大急ぎで女子寮まで戻ってきてほしいって!!」
ミルクはユリに連絡を取った。

ユリが博物館の事務室で遠慮なく4杯目のおかわりを注文した時、ミルクから連絡が入った。
ミル「ユリ!緊急事態だから、急いででいりぃ・ふぃじる本部から全校放送してもらえない!?
  メイリンに、メイファがいたから大急ぎで女子寮まで戻ってきてほしいって!!」
ユリ「メイリンに伝えたいの?それくらいチョー楽勝だね!
 早速編集長に連絡入れるから!」

しばらくして、学園内に編集長の声で放送が流れた。
放送「こちらは、でいりぃ・ふぃじる編集部であります。
   メイリン様、メイリン様。ご友人のメイファ様が女子寮でお待ちですぞ。
   至急、女子寮までお戻りくだされ」

スクナをそっちのけでリリアーナとミルクは緊迫した様子で話している。
まさに蚊帳の外を肌で感じたスクナの脳ミソが火花を散らすほど回転した!
リリ「そうだ!スクナさん、あのね、お願いが・・・・・」
スク「・・・おのれえ!押して駄目なら引いてみる!
 余の高等恋愛テクニックを思い知れええ!」
ミルクが水晶球でユリと通信していると、スクナは突然走り出す。
ミル「あ、ちょっとこら!!」
リリ「ちょ、ちょっと待ってよ!頼みたい事が・・・・・・」
リリアーナはスクナを追いかけた。
スクナは女子寮の角まで走り、チロリと後ろを向いた後、
スク「ぬははは、男は糸の切れたタコのようなものぢゃ!
 しっかり捕まえておかぬとどこぞへと飛んでいってしまうぞ~。」
と言って角を曲がった。
リリ「ちょっと待てって言ってるでしょうが――――!!」
走り去ろうとするスクナに目掛けて投げつけられるリリアーナの靴。
狙いは違わずスクナの後頭部に飛んでいったのだが、当たる瞬間その靴は消えうせてしまった。
勿論以前ケオスのコインを絡め取ったのと同じくハチマキが絡め取ったからである。
靴を投げつけられるなど結構酷い扱いだったりするのだが、スクナにとっては狙った通り。
元々本当に去るつもりなどはなかったのだから。
こうして気が引けただけで十分なのだ。
「ん~ふろ~らる!」
変態チックにニヤついてリリアーナの靴をくんくん嗅ぎながら振り返る。
その表情はまさに至福の表情であった。

リリ「お願いがあるって言ってるでしょう?そうよ、スクナさんにお願いしたい事があるの。
 今はあなたにしか頼めないの!
 ねえ、私の部屋にいたメイリンさんって子の顔は覚えてるわよね?
 あの子がここに来たら、レベッカさんの部屋に来るように伝えて欲しいの!ちょっと聞いてる?」
リリアーナはスクナをゆさゆさ揺さぶった。
スクナはリリアーナが頼んでいるのに夢見心地。
不安そうになるのも尤もだろう。

リリ「お願いを聞いてくれたら、ささやかだけど猫耳メイド喫茶のケーキセットをご馳走するわ!これ・・・・・・」
リリアーナはポケットをに手を突っ込んで引換券を取り出そうとして、はっとした。
リリ(しまったぁ―――― っ!!これケオスさんの服だったんだ―――― っ!!)
リリアーナは引きつった笑顔でポケットから手を出し、空の手をスクナのそれに乗せた。
リリ「ケ、ケーキセットは後払いね~。
 で、レベッカさんの部屋はあそこよ。ちなみにさっき居た私の部屋があそこだから」
奪い返された靴を名残惜しそうに見ながらも空の手をスクナの手に乗せられた瞬間カッと表情が引き締まる。
スク「案ずるな。そちがどこにいようとも余には手に取るように分かる。愛の力(ストーキング赤い糸)で! 
 メイリンが来たら直ぐに知らせてやろう!」
にっと微笑んだ後、チロリとミルクに視線を移す。
その眼は「そちも来てよいのだぞ?」と言っていたのはいうまでもない。
ミル(イヤイヤ、行きたくないです、人を変態の道に誘わないでください。 )

リリアーナは、スクナにレベッカと自分の部屋の場所を教えた。
その頃リリアーナの部屋では大変な事が起きていたのだが、まだ外観からはわからなかったようだ

リリ「じゃあスクナさん、くれぐれも伝言お願いね!ミルクはどうする?
 私は一度戻るわ、レベッカさんが心配なの!!」
ミル「あたしは王様の見張りで残ってる。
 さっきちょっと目を離した隙に女子寮を歩き回られて、大変な目にあったんだ…
 これ以上王様に暴れられたらあたし破産だよ、本当に」
リリアーナは心底気の毒そうな顔をした。
ミル「わかった。・・・・・・くれぐれも気をつけてね。
 それとスクナさん!二人でいる間にミルクに変な事したら私が絶対許しませんからね!」
リリアーナはちょっと赤くなりながらも、彼女にしては珍しくきつい口調でスクナに警告した。
変な事とは、さっきスクナがやったあれやこれやである。
かなりキツイ口調なのだが、残念!
今のスクナにはキツければキツイほど逆効果。
リリアーナと入れ替わりにスクナの元にやってくるミルクに独り占めさせないように釘を刺しているようにしか聞こえません。

リリ「それと、さっきメイリンさんが到着したら知らせてくださるっておっしゃっていましたよね?
 もし本当に出来るなら、ぜひお願いします」
リリアーナは他人行儀に頭を下げた後、慌しく走り去っていった。
愛の力で知らせるといったスクナの言葉を、きっとテレパシーか何かだと思ったに違いない。
―――― まさに、知らぬが仏である。



リリアーナを見送った後、ミルクはニヤけっぱなしの王様に近づいた。
正直近づきたくなかったけど、ダメもとで聞いておきたい事があったのだ。
ミル「あんまりニヤけてる場合じゃないですよ王様」
スク「う、うははは、げふんげふん。
いやいや、リリアーナもアレで嫉妬深い女よのぅ。
時間差で二人っきりになろうというそちの計略も見事だが、しっかり釘を刺していきおったわ!」
入れ替わりにやってきたミルクにいわれて慌てて咳払いをするが、そのにやけた顔は治ってはいない。
二人の思惑などどこ吹く風か。
折角二人っきりになったのだから、あれやこれやしようと思っていたのだがそうもいかなくなった。
スクナはスクナなりに二人とも平等に愛でようと思っているのだ。
これは3Pしかないか?と本気で思い始めていた時、ミルクの声で現実に引き戻された。

ミル「メイリンが来たら、レベッカの部屋の場所を伝えなきゃ駄目なんですから。
 もしかして、王様メイリンにも赤い糸つけてたりしません?
 居場所がわかればすぐ迎えにいけますし」

スク「う?あ、ああ・・
 ミルクよ、運命の赤い糸というのは相思相愛の者同士にしか繋がらぬのだ。
 よってメイリンとは繋がっておらぬぞよ。
 こういう時、王たるものは下々のように慌てずどっかり構えておるものだ。
 まあ座るがよい。本でも読んで・・・おろ?」
ミルクに諭すように一縷の希望を打ち砕きながらスクナはふかふかのソファーを作り上げていた。
ミル「本って何の本ですか。
 今は一緒に本読むって気分じゃ……どうしたんですか?」
メイリンが来るまでの間、例の絵本でも共に読んでいようと思ったのだが・・・
懐にしまってあったはずの絵本がないのに気付いた。

スク「お。おろ?おろろろろ???ない!余の本が!」
ミル「え。もしかして、あの絵本をなくしちゃったんですか!?
 どこか別の場所に持って、そのまま忘れちゃったんじゃないですか!?」
そう言ってみたものの、あちこち探しているのに本が出てくる気配もない。
先程のどっかり構えて発言もどこへやら。
体中パタパタと叩きながら慌てふためいて本を探しているのだから、女子寮に入っていったマオとヴァンエレン(女体形)に気付くはずもなかった。

ミル「…これは、どこかに落としてきましたね。
 可能性があるとすれば、博物館とか林とかリリアーナの部屋とか…
 ほかに落としそうな場所はありましたっけ?」
一方、肝心な本といえば。
アルナワーズの仮面によりユリの元へと運ばれているので、スクナがいくら探しても見つかるはずがない。

といってもまいったな……
メイリンへの連絡を頼まれてる以上、迂闊にここを離れるわけにもいかないし。
大切な物だろうから放置もできないし。
可能性のありそうなリリアーナの部屋から調べるべきか?
なんて考えていると、中庭の方から走ってくるメイリンを見つけました。
なんてグッドタイミング。日頃の行いが良いと、こんなところで助かります。

ミル「メイリーン!こっちこっち! 」
スク「よぉおおおし!丁度いい!この赤い絨毯をかけて余のリリアーナの元へ行くがよい!
リリアーナ!メイリンが着たぞ!」
大きく手を広げ糸を紡ぎ絨毯を形成するスクナ。
だが絨毯となるはずだった布は玄関マットくらいで途切れてしまい、赤い糸が女子寮内部へと続くのみ。
リリアーナへの通信も「・・・メ・・・が・・・」と空耳にもならない程不鮮明で、気付かれなかっただろう。
勿論これは糸を供給する使い魔の蚕がいないためであるが、この期に及んでスクナはさっぱり気付いていなかった。
スク「???ど、どういうことぢゃ?ええい、仕方がない!余に続け!」
考えるより体が動くスクナは原因究明をあまりにも潔く諦め、女子寮へと駆けていく。
後ろでミルクが女子寮の異変の声を上げるが既に聞こえていなかった。

一方のミルクとメイリンは
ミル「本物か偽物か知らないけど、メイファはレベッカの部屋に出たんだって!
 レベッカの部屋はあの部屋……って、な、なんだあれ!?」
指さす先に見えたのは、なぜか水没しているレベッカの部屋。
しかも、なんだかほかの部屋にも水が入ってるように見えるんですけど!?
一方メイリンは、女子寮の外でミルクに会い、レベッカの部屋の場所を知ることができた。
ミル「なんで女子寮に水が!?
 もしかして、これもメイファの仕業なの!?」
そこにフリージアとギズモ、クロウも到着する。
フリ「これだけ水があれば沢山氷が作れそうですわね」
ミル「のんきな事言ってる場合か!そういう問題じゃないだろ!」
クロ「本当にメイファが現われていたのかよ。」
二人はそのまま駆けて行った。
女子寮にたどり着いたときには、すでに大量の水が女子寮を覆い始めていた。

メイリンは、トントンとミルクの肩を叩き、首を横に振った。
ミル「え?違う?…じゃあ、誰がこんな事を…
  あ!ちょっとメイリン!?」
そして、すぐに女子寮のレベッカ部屋に向かって走り出した。
ミル「王様!あたしたちも女子寮に…っていないし!」
振り向いてスクナの方を見れば、すでに王様は女子寮目指して走り去っていた。
ミル「王様!あたしたちも女子寮に…っていないし!」
ゆっくり目を離していった結果がこれだよ!
仕方なく、あたしもみんなの後から女子寮目指して走り出した。

女子寮前にはクロウが一人で立っていた。
他のみんなは先に中に入っていったみたい。
クロ「そういえば白百合騎士団がいたよな。」
ミル「…うん。いたね」
クロウが気にするのも当然か。
白百合騎士団には極度の男嫌いもいて、侵入者には容赦しないと噂が流れている。
しかも困ったことに、ただの噂と笑い飛ばせないのだ、これが。
クロ「これは中にいる人たちに任せるしかねぇな。」
ミル「うーん、あたしは騎士団は大丈夫なんだけど、水がいっぱいじゃ入れないなあ…」
外から援護しようにも、核熱魔法を見えないところに撃ち込むわけにも行かない。

が、女子寮の中へと走って言ったスクナが直ぐに戻ってきた。
スク「おお??ミルクよ!女子寮が洪水ぢゃ!む~、これでは中に入れぬではないか!」
女子寮に入って直ぐにレベッカの呪いの水が女子寮を覆う為に広がっているのに遭遇したのだ。
目の前から迫る水の壁!
雪山育ちで海のない地方で育ったスクナは泳げないのだ!
すっかり水に覆われた女子寮を前に立ち尽くすスクナであった。
そうしていると、水の壁に邪魔されて中に入れなかったらしいスクナが外に出てきた。
メイリンとフリージアは中に入れたようだ。

クロ「その前に女子寮は男子禁制。
 普通に入ろうとしたらすぐにボコされて放り出されるぞ。」
スク「ふふふ、大奥然り、後宮然り、男子禁制といっても例外はあるものじゃ。
そう!王たる余は自由に出入りできるのぢゃ。
その証拠に先程なぞ大勢にもみくちゃにされてのう!わっはっは!」
脳ミソをどう弄くればこんなお花畑になるかは謎だが、優越感全開で胸を張るのだ。

ミル「クロウの言ったとおりです。
 さっきフルボッコにされた上、簀巻きにされて叩き出されたのをもう忘れたんですか?
 ナメクジでももう少し学習能力がありますよ?」
少し厳しいことを言うようだけど、王様にはこれくらい言わないと分かるまい。
スク「ミ・・・ミルクよ。余の事を蛞蝓以下といったのか・・・!
いくら妃といえどもそれは・・・・」
よほどショックを受けたのか、ウグググっと顔をしかめる。
が、それも一瞬の事。
クロ「それはツンデレという奴ぢゃな!
西方では流行っておると聞いたが、こうやって体験してみると中々いいものぢゃのう!」
しかめた顔がぱっと明るくなり更には鼻の穴まで広がっている。
Mなのかアホなのか、恐らくは後者なのだろうが、スクナはとても幸せそうだった。

(ユリ)「ミルクー!今どこにいるのー?まだ王様と一緒ー?」
遠話の水晶を通して、ユリの声が聞こえてきた。
ミル「そうだよ。女子寮前」
(ユリ)「わかった!王様にお客を連れて行くからねー!じゃ!」
居場所を伝えると、ユリは妙なことを言って通信を切る。
王様に客?だれだそりゃ?
…とりあえず、まずは中のみんなを援護する方法を考えるか。
ミル「クロウは確か時空課だったよね。
 時空魔法で女子寮の水抜きとかできない?
 王様も何か中の人を助ける方法を思いつきませんか?
 例の盗聴糸で情報を聞くとか、何か伝えるとか」
クロ「別の場所に転送できなくもないが量が多過ぎる。
 全部転送する前に魔力切れを起こすのがオチだ。」
ミル「そっか、やっぱりムリか…女子寮全部覆う量の水だもんなぁ」

一方、気を良くしたスクナは、意気揚々と女子寮の玄関前に立つ。
スク「有無、どうも呪布術の調子が悪いが、今の世には関係ないわ!
リリアーナとミルクへの愛で何とかしてみせる!
水よ!王の威光を畏れて退けい!」
玄関に向かって自信満々に吼える姿は周囲にはどう映るだろうか?
スクナが玄関に向かって吼えていた頃、女子寮内部ではレベッカがのろいの札を切り裂いていた。
その結果、女子寮全体を覆っていた水がその力を失い、ただの水と化す。
水は重力に従い上から下へと流れ落ちる。
ミル「王様王様、女子寮の前に仁王立ちして叫ぶのは辞め…」
とりあえず、可哀想な子にしか見えないスクナを止めようとしたとき。
いきなり玄関ドアが弾け飛んで、ミルクの視界が水に覆われた。

大量の水が出てくるところは当然建物の出入り口。
大質量の水が玄関ドアを吹き飛ばし、鉄砲水となって噴出したのだ。
玄関正面に立っていたスクナは、まずは玄関ドアの直撃を受け、そのまま濁流に飲み込まれてしまった。
クロ「separated room!!」
本日二度目の隔絶魔法を自分の周りに展開して迫ってくる水を防ぐ。
何度も似たような展開があったからまたひょっこりと戻ってくるだろう。

クロ「誰がやったかしらねーが本当にはた迷惑だな。」
まあ、これで中にいた白百合騎士団が全員流されていれば楽に入れるんだけど。

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最終更新:2009年01月15日 10:27
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