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博物館(4) 事務室


リリアーナの部屋を出た後博物館に来たユリは、リチャードの所ではなく事務室に連れて行かれていた。
メラルの言ったように、重要参考人として博物館破壊について知っている事を色々聞き出すためだ。
ついでにリチャードの身元確認も出来るのだから、博物館側も一石二鳥の作戦となる。
ユリの方もカツ丼もご馳走になって満足し、女子寮での出来事以外はいろいろ話していた。
リチャードと出会ったいきさつと、スクナが戦車を動かすことができる事ぐらいではあったが。

ユリ「うーん、やっぱりこのカツ丼はおいしいね!おかわり!」
ユリが遠慮なく4杯目のおかわりを注文した時、ミルクから連絡が入った。
「あ、ミルク?今リチャードさんが来るのを待ってる所だよーん」
(ミル)「ユリ!緊急事態だから、急いででいりぃ・ふぃじる本部から全校放送してもらえない!?
   メイリンに、メイファがいたから大急ぎで女子寮まで戻ってきてほしいって!!」
ユリ「メイリンに伝えたいの?それくらいチョー楽勝だね!
 早速編集長に連絡入れるから!」
そう言ったユリは連絡用手帳を取り出し、ミルクの言葉を書き込んだ。
横に赤字で【緊急要請!】と書けば、後は編集長がなんとかしてくれるだろう。

しばらくして、学園内に編集長の声で放送が流れた。
放送「こちらは、でいりぃ・ふぃじる編集部であります。
  メイリン様、メイリン様。ご友人のメイファ様が女子寮でお待ちですぞ。
  至急、女子寮までお戻りくだされ」

その頃のリチャード・ロウは、博物館の中を見学していた。
傍らには『偶然』博物館で出会ったエスコート役の生徒が付き添っている。
だがその正体は白百合騎士団の団員であり、リチャードの監視役である。

放送「こちらは、でいりぃ・ふぃじる編集部であります。
  メイリン様、メイリン様。ご友人のメイファ様が女子寮でお待ちですぞ。
  至急、女子寮までお戻りくだされ」

放送を聞いたリチャードはふと懐の懐中時計を取り出した。
ロウ「おお、そろそろ時間じゃ」
危機一髪ショーで破壊されたネコミミメイドキッサとやらがそろそろ営業を再開するはずだ。
ロウ「逆転昔話!~歴史の矛盾に異議ありは大変興味深いものでしたな。
 では、そろそろわしは失礼させてもらおうかのう?」
「ああ、お待ちください。来客の方にはお茶をお出しするのが当館の慣わしなのです。
  どうか奥で少しお休みになってくださいませ」
そういって監視役はロウを引きとめようとする。
もちろん学園ではそんな習慣はない。
現状ではリチャードは不審人物なので、みすみす取り逃がすわけには行かない。
だが来客の可能性も五分なので、失礼は許されない。
そのための苦肉の策が、お茶を出すと言う時間稼ぎだ。
ロウ「そんな慣わしあったかのう?」
「お疲れになったでしょう?自分の顔を立てると思ってお立ち寄りください。さあさあ」
そういって監視役の生徒は、リチャードを事務室へと連れて行った。

ロウ「おや、ユリ殿ではありませんか。その後ムウ大陸の取材は順調ですかな?」
ロウは食事中らしきユリに声をかけた。
ユリ「おー!リチャードさんだ!久しぶりー!!
 リボンは落としちゃったの?
 ちゃんと付けておかないと、知らない人から怪しまれたりして大変だよー!」
4杯目のカツ丼をモリモリ食べていたユリは、丼から顔を上げてリチャードにあいさつした。
ロウ「ほっほっほ、怪しまれるどころか皆親切であったい?」
わかっているのかいないのか、ロウは積み上げられた空のドンブリを見ながら笑った。

ユリ「ムウ大陸関連の情報なんだけど、留学生の王様が、動かずの黄金戦車に選ばれてる事がわかったよ!
 ムウ大陸の王の資格を持つ人間が、伝承の通り学園祭の時期に出現!
 これはもうムウ大陸発見フラグと考えて間違いないよ!
 後は『かごめかごめ』に隠された秘密を解けば完璧だね!」
自信満々に答えるユリだったが、部屋にいた白百合騎士団の反応はあまり良くなかった。

「『かごめかごめ』って、歌った人が消える呪いの歌じゃなかった?」
「鶴と亀は東方では縁起物、それが滑るのは呪いの歌だという見方がある。
  ユリが言うように宝の在処を示す歌だという見方もある。
  諸説入り乱れて真偽の方は不明」
「黄金戦車がムウ大陸の王の乗り物って説にも、異論があるし…」
ユリ「その異論に私の発見で決着をつける!
 これこそジャーナリストの醍醐味だね!」
ユリの方は並み居る反論に動じる様子もない。
いつも変わらないユリの猪突猛進ぶりに、白百合騎士段団員達も苦笑するしかなかった。

「そういえば、さっき来賓のリボンを付けたムウ大陸研究家の人が、博物館に来てたわよ。
 博物館の片付けをしていたから、中には入れてあげられなかったけど。
 もうその人に話は聞いたの?」
ユリ「え!?そんな人がいたの!?
 これは急いで取材に行かなくちゃ!」
新しい手がかりが得られるかもと考えて、ユリは慌ててカツ丼の残りを食べ終わる。
ユリ「リチャードさんは、これから何か予定あるの?
 無いなら、一緒にムウ大陸発見ツアーに出発するのはどうかな!?」

ロウ「ふむ・・・わしはネコミミメイドキッサとやらを見学する予定だったのじゃが・・・・・」
「もうそろそろ再開する頃ですが、ちょっと確認してみましょうか?」
スタッフの一人が気を利かせて猫耳メイド喫茶の画像をロウに見せた。
ロウは誰かを探しているようだったが、やがて一つ頷きユリに向き直った。
ロウ「待ち人来たらず、じゃのう。ふむ・・・では、しばしユリ殿のお供をさせていただこうか。
 では参りましょうぞ、ユリ殿」
ユリ「やったー!さすがリチャードさん!
 ではでは!ムウ大陸発見隊、しゅっぱーつ!」
ロウ「 ところでその研究家と仰る方はどんな方ですかな?ご高名な方ですかのう?」
ユリ「そうそう、それを聞いてなかったよ!
 何かこう、特徴はなかった!?会えばすぐわかるみたいな!」
「大きなバイザーをつけて目を隠してたよ。
 後は、来賓だからリボンかな。
 名前はマリオ。聞いたことない名前だから、有名人じゃないと思う。
 急げば博物館の入り口辺りで捕まえられるかもね」

「いよーし!それだけわかれば十分だね!
 急いでマリオさんを捕まえに行こう!」
勢いづいて立ち上がるユリは、うっかり持っていたスクナの絵本を落としてしまう。
拾い上げようと手を伸ばし、そこで最終ページに書かれた謎の詩に気づいた。

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スクナが落とした本といえば。
アルナワーズの仮面によりユリの元へと運ばれているので、スクナがいくら探しても見つかるはずがない。
もしユリがほんの一番最後のページを開くならば、不思議な詩を発見するであろう。

加護女 禍娯雌
渦語の中の 虜 は
何時 伍 出殺る
夜明け の 晩に
鶴 と 亀 が 統べった
後ろ の 正面 誰?

「加護女 禍娯雌……?こ、これは!?
 リチャードさん!これってかごめかごめの歌だよね!
 この物語の王様の子孫がスクナで、そのスクナがムウ大陸王の乗る戦車に選ばれた!
 同じ本に『かごめかごめ』が書いてあるのは、この歌がムウ大陸と関係ある証拠だよ!」
ユリは急いで絵本を拾い上げ、興奮してリチャードに『かごめかごめ』の詩を見せた。
ロウ「ほう、・・・・・・これは驚きましたな。
 絵本もそうですが、そうですか、例の戦車に選ばれたという事は、彼が動かしたということですな?
 これは驚きですなあ。学園長ですら動かせない品を、その方がいとも容易く動かされたとは」
ユリ「それはもう!究極というか至高というか、とにかく大スクープだよ!
 砂漠の王様でムウ大陸の王様だから、W王様の誕生だね!」
話を聞いてもまだ半信半疑の白百合騎士団とは違い、ユリはスクナがムウ大陸の新王だと信じて疑っていない。
そんなユリの態度に気を取られ、ロウを案内していた生徒も、
ロウが今日戦車を見学していないという矛盾に気がつかなかった。
少なくとも、今のところは。

ロウ「おお!これはいかん!!」
ロウは急に絵本を閉じ、ユリに返した。
ロウ「マリオ殿にお話を聞くのでしたな、いやユリ殿、すまんかったのう」
ユリ「そうそう、そうだったよ!急がないと、マリオさんがどこかに行っちゃう!」
ユリはロウから絵本を受け取ると、大事にしまい込んだ。
ロウ「では皆さん、案内に感謝しますぞ。
 おお――――実に、心の篭ったもてなしの数々でしたとも。
 次こそはわしもリボンを無くさないようにせねばのう、ほっほっほ」
ユリ「カツ丼ごちそうさま!じゃあまたねー!」
ロウの微笑みに曖昧に笑い返す白百合騎士団員達に手を振り、ユリも博物館の外に向かうことにした。

博物館の出口に向かいながら、ロウはユリに話し掛けた。
ロウ「先ほどの絵本ですがのう、『逆転昔話!~歴史の矛盾に異議あり~』で展示していた話に似ておりましたな。
 ところで、そのスクナ殿とは一体どのようなお方なのですかな?」
アルナワーズに変身していたスクナしか知らないロウは、彼について質問をした。
ユリ「ん?うーん、言われてみればそんなタペストリーがあったような…
 あれって王様の国の話なのかなあ?
 こんど機会があったら一度聞いてみようっと」
ムウ大陸発見に気を取られすぎて、ユリはタペストリーの事実にまるで気づいていなかった。
しかし、今もムウ大陸発見がユリの最大の関心事になっている。
ユリの意識はすぐにロウの次の質問に向いた。
ユリ「スクナがどんな人かって言うと、黒髪で体にいっぱい包帯を巻き付けていてね。
 夜と昼で性別が入れ替わって、後、変装が凄く上手いんだ!
 リチャードさんと最初に会った時に、ヴァンエレンに暴行を加えてた女の人がいたよね?
 あれこそなんと!変装した王様本人なのでした!
 いやー。私もコロリとだまされてたよー」

ロウ「いずれにせよスクナ殿にも協力していただく必要がありそうですのう。
 もっともマリオ殿を見つけるのが先決ですがの、ほっほっほ」
ユリ「そうだね!王様には私の友達がついてるから居場所はすぐ分かるけど、マリオさんは分からないからね!」

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最終更新:2009年01月18日 18:49
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