学園祭のイベントで盛り上がっているのか、はたまた
博物館が広すぎるせいなのか。
館内は割と空いていたため、博物館出口に急ぐのはそう難しい事ではなかった。
ロウ「バイザーというと・・・もしかしてあの変わった服をお召しになられた方ですかのう?」
リチャードの見つけた人物は、つなぎとシャツを着て帽子を被った小太りの男だ。
胸には来賓であることを示す黄色のリボンが付いていて、『マリオ・マリオ』と名前が書いてある。
情報通り顔には大きなバイザーを付けているが、団子鼻の下には立派なヒゲを生やしていた。
ユリ「あっ!あの人だよあの人!間違いない!」
リボンの名前に確信を持ったユリも、ロウに続いてマリオに近づいていく。
ロウ「もし、そこのお方。もしやあなた様はマリオ殿ではございませんかな?」
「僕の名前はマリオだけど、君ターチは?」
ユリ「はじめましてマリオさん!
私はこの学園新聞の記者、ユリ・オオヤマです!
こちらは来賓のリチャード・ロウさん! 」
ロウ「帽子はちと脱げない事情があるゆえ、被ったままで失礼しますぞ。初めまして、マリオ殿」
ユリ「私たち、この学園に隠されていると噂の、ムウ大陸を探しているんです!
ムウ大陸研究家のマリオさんに、ぜひ知恵を貸して欲しくてやってきました!」
「そうデースか。お力になれれば嬉しいデース」
ユリにそう言ったマリオは、ロウの方にも帽子を取って軽く頭を下げた。
「はじめまーシテ。マリオ・マリオデス。よろしくお願いしマース」
あいさつを終えた後、ユリはスクナの絵本の詩をマリオに見せ、今まで起きた事を説明した。
詩を見ながら話を聞いていたマリオは、考え込みながらユリに答える。
「今聞いた話が本当なら、これは大発見デース。
スクナさんにぜひお話を聞いてみたいデースが、会えるでしょウカ?」
ユリ「王様の居場所ならすぐわかるよ!ちょっと待ってね!」
ユリはすぐに遠話の水晶を取り出し、ミルクと連絡を取った。
結果、スクナは女子寮前にいることが判明する。
ユリ「女子寮前にいるって!今ならきっとすぐに話が聞けるよ!
女子寮までは私が案内するから、リチャードさんもマリオさんも早く話を聞きに行こう!」
そう言ったユリは、はやくはやくと急かしながら女子寮へ2人を先導し始めた。
ロウ「それでは参りましょうかのう。
ほっほっほ、マリオ殿は足が速いですなあ」
「イエイエ、それほどでもありまセーン」
ユリに導かれるまま、女子寮に向かうロウとマリオ。
その中で最初に異変に気づいたのは、ロウだった。
ロウ「はて?なにやら水音のような音がしませんかな?」
「確かに、水が流れる音がしマース」
ユリ「水音?この辺りに川なんかないよ?」
しかし、ユリの耳にも確かにその音は聞こえてくる。
不思議に思い見ていると、女子寮の方から大量に水が流れてくるではないか!
ユリ「うわー!水がいっぱい流れてくるよ!
これって水害!?それとも津波!?」
「ツナーミ!?」
ユリの言葉に、マリオは驚いたような声を上げ、身長の数倍は高く飛び上がると近くの木にしがみついた。
そのまま、原因を探るように水のきた方角を見つめる。
「ツナミではありまセーン。
あちらにある建物から、水が溢れ出したようデース」
ユリ「あっちは女子寮のある場所だよ。
何かゲリライベントでもあったのかな?
あ!もしかしたら、王様とミルクはそのイベントを見に行ったのかも!
よーし、マリオさん!私たちも先を急ごう!」
マリオが木からスルスル降りてくるのを確認してから、ユリはロウのところに近づく。
ロウが首をかしげていると、遠くから水の流れに乗って一枚の板が流れてきた。
その上に人影が見える。
女子寮からの放水に流されたスクナは、なんとも情けない姿でリチャードに発見された。
すっかり溺れて白目をむいている。
ロウ「これはまた・・・・・・サーフィンボードではなくどこぞのドアのようですなあ。
川も無い場所に流れ着くとは。はて、これも学園祭の新しいアトラクションなのですかのう?
これこれ、どなたかは存じませぬが、こんなところでお休みになると風邪を引きますぞ」
ロウはびしょ濡れの生徒に近寄り、軽く揺さぶって起こそうとした。
スク「う・・ぅ・・・ぴゅーーーー。」
リチャードがスクナを揺さぶると、うめき声と共に口から水を噴水のように噴出すのであった。
ユリ「リチャードさん、女子寮でもイベントがあるみたいだから、早く行きましょー!
…あれ?この人は?」
ロウ「ん?黒髪に包帯姿・・・・・・もしやこのお方がスクナ殿・・・ですかな?」
ユリ「むむむっ!言われてみれば!どれどれ!?」
助け起こしてよく見れば、それは確かにスクナだった。
あまりに威厳のない姿に、さすがのユリも気づかなかったのだ。
ユリ「本当に王様だー!間違いないよ!
ここで会えたのはきっと天の助けだね!」
ロウ「なんと、これはこれはおいたわしい事ですなあ」
ロウは本気か適当かわからない声でそう言った。
喜んだユリは勇んで絵本を取り出し、最後の詩の部分を見せながらスクナをガクガク揺さぶり始める。
ユリ「王様!王様ー!この絵本に書いてある昔話って、王様のご先祖様のことだよね!?
この最後のページに『かごめかごめ』の詩が書いてあるんだけど、内容に心当たりとかないかな!?」
ロウ「ユリ殿、もう少しお手柔らかに・・・・・・」
「オウ!これは実に積極的なのデース」
スク「なに!?【かごめかごめ】とな!?」
ガバッと覚醒し起き上がって辺りを見回すと、見知らぬ場所、そしてユリと見知らぬ男が二人。
ロウ「・・・・・・何とも、タフな王様ですなあ」
「英雄にはタフさも必要デース」
スクナが王の資格を持つと聞いていたマリオは、うんうんとうなずいている。
ゴーグルに半分ほど隠された顔の表情は、昔を懐かしむようなものだった。
暫く混乱していたようだが、そこはスクナ。
直ぐに考える事を放棄して、目の前の事態への対処を始めるのであった。
スク「おお、それは余の本ではないか!
ユリよ、良くぞ世の元へ持ってきてくれた。大儀である。
そちらの二人は・・・余を介抱してくれたのだな。うん、褒めて遣わすぞ。」
とりあえず判っている事と、想像つくことをそのまま事実として認定し、胸を張る。
多少事実と違っていても言い切ってしまえばそれでいいのだ!がスクナクオリティ。
ユリ「あれ?この本、王様のものだったの?
アルナワーズが持ってきてくれたから、アルナワーズの持ち物だと思ってたー」
にこやかに言いながら、疑問も疑念も抱かずに絵本を返すユリ。
仮にスクナが嘘をついていたとしても、やはりユリは本をスクナに渡していただろう。
誰かを疑ったり嘘をついたりするのが上手な性格ではないのだ。
ロウ「いえいえ、礼には及びませんぞスクナ殿。
わしはリチャード・ロウ。こちらの紳士はマリオ・マリオ殿じゃ。
マリオ殿はムウ大陸研究家でいらっしゃる。
今日はスクナ殿の本に書かれていた詩についてぜひともお話が聞きたいそうですぞ」
「はじめまーシテ、スクナさん。お褒めに預かり恐悦至極デース」
スクナなりに事態の把握が終わったところで、自分の興味に忠実に行動に移すのが第一義。
本を受け取りながらユリへ説明する。
スク「ユリよ、この本は確かに余の王たる血統の証を描いた古文書。
しかし最後のは世の故郷に伝わる童歌で【矛盾遊び】といってな、【かごめかごめ】とは関係ないぞよ。」
そういいながら詩を指差して見せる。
スク「加護女と禍娯雌なんぞ正反対じゃし、そんな女が一緒にいることはあるまい。
それに夜が明けたのに晩になるなんぞ有り得ん。
鶴と亀は対になる事はあっても一緒になる事はない。
止めは後ろなのに正面って訳がわからんわ!と、ツッコミを楽しむ歌ぢゃ。
それより・・・」
呆れたように説明し終わった後、スクナは真剣な眼差しになってユリを見つめる。
スク「そなた今【カゴメカゴメ】と言ったな?
それは余の故郷では禁忌の歌として歌う事が禁じられ、ついには歌詞を知るものがいなくなったという幻の歌!
何故その名を知っておるのぢゃ?歌詞を知っておるのならば歌ってみせてくれ!」
そう、スクナはカゴメカゴメの歌詞を知らなかったのだ。
王たるもの禁忌なぞ恐れはせん!と言っちゃうスクナだが、誰も知らないのであれば知りようがなかった。
それを知っている人物が目の前に現われたとあっては聞かずにはいられないのだ。
ユリ「王様【カゴメカゴメ】を知らないの?
よし!それじゃ私が聞かせてあげましょう!」
まだ聞いたことがないと言うスクナのために、ユリはカゴメカゴメを歌い始めた。
ユリ「カゴメ カゴメ かごのなかのとりは いついつ でやる よあけのばんに
つると かめが すべった うしろの しょうめん だあれ
どう!?どう!?【矛盾遊び】とすごく似てるでしょ!?」
一曲歌い終わったユリは、どうだと得意げにスクナに笑いかけた。
ロウ「ほっほっほ、なかなかお上手でしたな」
スク「お・をおぉおをお!?」
ユリが一曲歌い終わり得意げに笑いかけられたスクナは、ムンクの叫びのような顔をしていた。
それもそのはず。
禁忌の歌としてもはや歌詞すら知るものがいなくなった【カゴメカゴメ】が、故郷では誰もが慣れ親しんでいる【矛盾歌】とほぼ同じだったのだから。
信じられぬその事実に混乱の一つもしようというもの。
ロウ「そういえば、でいりぃ・ふぃじる本部にあった『逆転昔話!~歴史の矛盾に異議あり~』は
確かヒダノゴウにまつわる伝承でしたな。
古代魔法文明のその更に前の時代の話でしたが、なかなか興味深かったですぞ。
・・・・・おお、そういえばヒダノゴウのリョウメン族の方々は、昼と夜では違うお姿をお持ちでしたなあ
もっとも、そのあたりはスクナ殿や実際に取材なさったユリ殿のほうがお詳しそうですがの」
ユリ「おー!そうそう!ヒダノゴウって所が昔は砂漠で、雷を使った戦争が大昔にあったって伝承だよね!
魔法で大雪を降らせて、砂漠を雪山に変えたみたいな所もあったし!
あれって王様の故郷と同じ場所なのかな。
もし同じなら、昔の人もやっぱり男女時間で入れ替わってたりして!」
更にスクナの知らぬ『逆転昔話!~歴史の矛盾に異議あり~』の話は大きな衝撃を与えていた。
スク「そ、そなたらは一体何者ぢゃ?
世すら知らぬ古の物語をすらすらと!」
「OH!ではもう一度自己紹介するデース。僕はマリオ、そしてこちらはリチャードさんデース」
マリオはもう一度二人分の自己紹介を始めた。
「すみまセーン。ちょっといいデースか?」
しばらく黙っていたマリオが、スクナに声をかけた。
「スクナさんは男女入れ替わると聞きましたが、それは矛盾遊びの言葉と一致している気がしマース。
『鶴と亀が統べた』の統べた者が、ムウ大陸の王の資格のあるスクナさんをあらわすとしまショウ。
もしそうなら、鶴と亀は男性と女性をあらわしているのではないでショウか?」
スク「むー、確かに我らは攻鶴の面、守亀の面に昼夜で分けられる。
夜明けの晩・・・もしや・・・
これはもしやこの瓶詰め砂漠の蓋を完全解放し継承する時期が・・・」
ロウ「瓶詰め砂漠?」
ロウは驚いた声をあげた。
ロウ「絵本の中で王が砂漠を瓶に封じて谷底に捨てたのでしたな。
伝承では、砂漠ごとリョウメン王が封じられているとか。
スクナ殿はその瓶詰め砂漠を本当にお持ちなのですかな?」
ユリ「伝承にあった瓶詰め砂漠だね!!
もしかして、王位継承権とかの超重要アイテムなのかな!?」
スク「こ、こりゃ!今重要なところなのにその方らどこへ行く!」
「オーウ!スクナさん!急に後ろに下がり出すとは、何かありマーシたか!?」
スク「なぬ?余が下がっているとな。そんなわけ・・・い~~~~?ッガ!!」
マリオに言われて漸く自分が何かに引っ張られて下がっている事に気がつきました。
勿論そんな不思議な体勢で移動する事事態無理があるので、気がついた瞬間バランスを崩し、後頭部を強打する事になる。
ユリ「王様―――――!!」
白目をむいたまま、スクナは引かれていった。
幸い下は放水した跡でそれほど硬くないので大きな怪我はしないだろう。
しかし、泥の中を引きづられていくので、みるみるうちにスクナは土に染まり雑巾のようになっていく。
このまま行けば女子寮へと入り、廊下を通り
リリアーナの部屋を通過してメイファの手元に釣り上げられるだろう。
ロウ「いやはや、実にエキセントリックな移動方法ですな。
もしやスクナ殿は、いつもああなさっているのですかな?」
ユリ「それは無いと思うよ!王様本人も驚いてたもん!」
スクナは泥しぶきをあげながら一直線に女子寮の方へと向かっていく。
ロウ「いかん、スクナ殿お待ちくだされ、
このままでは摩擦で後頭部の髪が残らず擦り切れてはげまずそ!・・・・・【浮け!】」
ロウはスクナに向けてステッキを振りおろした。
呪文詠唱後、泥まみれのスクナの身体が地面から10センチほど宙に浮く。
ユリ「リチャードさんナイスだよ!」
だが宙に浮く事で摩擦抵抗がなくなったせいか、スクナの移動速度がいっそう上がった。
ロウ「スクナ殿はあんなに急いでどちらに向かっておられるのですかのう?
ユリ殿、この先には一体何があるのですかな?」
ユリ「女子寮だよ!このまま行ったら、王様が罠ゾーンに突っ込んじゃう!
待ってて王様!すぐ行くから」
そう言ってユリは、全速力でスクナを追いかけ始めた。
すぐに追いつき、追い越してから逆向きに向きを変え、スクナを連れ戻そうとする。
しかしスクナを引っ張る力は強く、なかなか上手くはいかない。
ユリ「これは!もしかして、女子寮じゃなくて海に向かってる!?
噂に聞くムウ大陸の呪いが発動してるのかな!?
このままだと、王様が海底にに引きずり込まれちゃう!!」
ロウ「それはもしや、ムウ大陸を探す者は海底に引きずり込まれるという噂のことですかな?
そ、それはいかん」
根拠も証拠もないので噂なのだが、すくなくともユリはそう思ったようだ。
フィジル島は4方を海に囲まれているので、スクナは海に向かっているものとみえなくもない。
ユリ「リチャードさん!マリオさん!一緒に王様を引っ張って!
すごい力で引っ張られてるから、支えきれないかも!」
「わかりマーシた!」
ロウ「及ばずながら助太刀しますぞ!」
海底に引きずり込まれると聞いて、マリオもロウもダッシュで近寄ってきてスクナを引っ張り始めた。
それを聞いて覚醒したスクナはうろたえる。
泳げないスクナがこのまま海底に引きずり込まれては溺死は必死!
何とか抵抗しようとするが、いかにも体制が悪すぎる。
補助布筋を纏っているので力には少々自信があるが、10センチほど浮いてしまっているので踏ん張りようがないのだ。
結果として、ユリとリチャード、そしてマリオの三人に引っ張られるに任せることになるのだが・・・
糸の先、メイファとミルクが引っ張る力と三人の力の間に挟まれては溜まったものではない。
スク「いだだだだ!千切れる!輪切りのスライスハムになってしまううう!!!」
両方向に引っ張られるスクナの身体がボンレスハムのように締め上げられていき、ここに至り、何がスクナを引っ張っているかに漸く気付いたのだ。
使い魔の蚕がスクナの全身に巻きつけた糸が引っ張られているのだ。
色々気になる事はあるが、当面最悪の結果だけがその脳裏を過ぎる。
このまま抵抗を続ければスクナの輪切りが出来上がってしまうだろう。
流石にそんなスプラッターな死に方はしたくない。
ユリ「水死体になって海に浮かぶかどうかの瀬戸際だよ!我慢だ王様!」
スク「にゅ~~~!背に腹は変えられん!緊急脱衣術!」
スクナは輪切りになる事を回避する為、身につけていた着衣を全て解除し脱ぎ去ったのだ!
ロウ「なんと!」
ユリ「おっとっと!!?」
「オウノ――ウ!!」
引っ張っていた糸がほどけたため、三者三様の驚きの声を上げてひっくり返るユリ達。
一番被害が大きいマリオは、泥水に頭から突っ込む形になっている。
その団子状態の中で最初に立ち上がったのは、やはりそうなる事を予想していたスクナだった。
生命の危機を脱した直後だが、スクナは直ぐに立ち上がる。
その姿は当然全部脱いでいるので、褌一丁と腰につけた瓶詰め砂漠のみ。
そしてスクナの髪の間から、小さな蚕が顔を出していた。
これは前任の蚕が死んだ事を意味する。
スク「ええい!余の蚕が死んだ!一体何があったのぢゃ!追うぞ!」
生まれたばかりの蚕はまだ糸を吐くことができぬため、スクナは新たなる服を作る事ができない。
しかしそんな事はさっぱり気にしていない。
ロウ「蚕?」
ユリ「死んだ?」
状況がつかめずに、ユリもロウと一緒に頭に?マークを浮かべる。
それには答えず、褌一丁と腰につけた瓶詰め砂漠だけを持ったスクナは脱げた服を追って走り始めた。
ロウ「よく分からんが、とりあえずスクナ殿の後を追ってみましょうぞ。立てますかな?」
そう言ってリチャードは一緒に倒れてしまった相手に手を差し出した。
ユリ「ありがとうリチャードさん!それっ!」
まだ起きあがっていなかったユリは、ロウの手を借りて立ち上がった。
「服はあちらに飛んでいったデース。急ぎまショー」
泥で汚れたゴーグルの目の部分だけ拭いたマリオも、スクナの後を追い女子寮に向かった。
一方脱げた服はというと、女子寮の方角へと一直線に向かっていく。
服は女子寮の壁を登り、ガラスの割れた二階の角部屋の中へと吸い込まれていった。
ユリ「おーい!王様―――!!女子寮に入っちゃだめ……入っちゃった」
スクナは周りが止めるのも聞かず、女子寮の中へと突入してしまった。
- ・・・・・・程なくして女子寮の中が騒々しくなった。
「キャー!!不潔!!信じらんない!!」
「このド変態がっ!!」
「またか?この男なのかっ?!エスコート役のミルクは一体何をしているのだ!!」
建物の中であがる白百合騎士団らしき怒号と悲鳴が、ロウ達がいる外まで聞こえてきた。
ロウ「・・・・・・まあ、あの格好では誤解されても仕方ないでしょうなあ。ご愁傷様ですなあ」
スクナの脳内で「ハーレムでウハウハ」に変換されているとは知らないロウは、やれやれとため息をついた。
ユリ「女子寮には男嫌いな生徒もいるから、男子禁制になってるんだよ。
男が入ったら問答無用で攻撃されるんだけど、王様ちゃんと防御できてるかなぁ」
「入れないと分かれば入りたくなるものデースが、危険な音も聞こえてきマース」
さすがのユリも、女子寮にロウやマリオを連れ込むほど馬鹿ではない。
外で見ていると、スクナの服はまた外に飛び出した。
ロウ「おや、また服が動き始めましたな」
ユリ「ほんとだ!どこまで飛んでいくんだろう!?」
割れた窓から飛び出してきた服は、そのまま宙を飛び林の方角へと一直線に向かっているようだ。
「あちらの林に向かって飛んでいくようデース」
ロウ「ひとまず追いますぞ」
ユリ「うん!そうしよう!」
林に向かって駆けていく途中、ユリは女子寮から砂塵と一緒に飛び出す黄金の戦車を見た。
ユリ「あ!ほら!あの雲の上に黄金の戦車が乗ってるよ!
王様が服を追いかけるのに戦車を呼んだんだ!」
「黄金の戦車デースか!?」
ロウ「いやはや、本当にあの戦車を動かす者が現れるとは・・・・・・」
興奮したマリオも空を見上げるが、すでに戦車は砂塵の雲に隠れている。
ユリ「大丈夫!王様も服を追いかけてるはずだから、後で話も聞けるよ!
マリオさんも先に服を追いかけよう!」
ユリはまだ空を見上げるマリオの手を引いて、ロウと一緒に服を追って
林の中に入った。
中庭の林の中、糸をまき続けるメイファとミルクの元に泥まみれになったスクナの服装一式が姿を現すだろう。
その直後、林一帯に影が落ち込むことになる。
上空を見上げれば砂塵の雲。
その上には少々顔の形が変った褌一丁のスクナが黄金の戦車に乗って仁王立ちしていた。
褌一丁という変態的スタイルで女子寮に突入したのだ。
当然全ての罠にかかり、白百合騎士団の攻撃を受けてボコボコにされたのはいうまでもない。
とはいえ、今は女子生徒たちに揉みくちゃ(スクナ視点)にされている場合でもなく、瓶詰め砂漠を発動させ黄金の戦車を呼んだのだ。
尤も、砂塵の雲の上から林の中がわかるはずも無く、引っ張られる服も見失っていた。
当然メイファとミルクの存在にもまだ気付いていない。
林の中の広場になっている場所が、おいかけっこの終点になった。
ユリ「あ!あったあった!王様の服、ゲットだぜ―――!!」
ユリは泥だらけで落ちていたスクナの服を拾い上げる。
服ばかり見ていたユリは気づかなかったが、そばにいたミルクはユリたちに気づいた。
ロウ「おや、先客がいらっしゃったようですな」
ミル「ユリ?なんであんたがこんな所にいるのよ?
それにそれ、王様の服って…」
ユリ「おーミルクだ!女子寮前にいたんじゃなかったの?
私は上にいる王様に服を渡してくるから、ちょっと待っててねー!」
ユリはミルクとロウ達にそう言ってから、デッキブラシに飛び乗って砂塵の上のスクナの所にに向かった。
ユリ「うおーっ!すごい!本当に黄金の戦車が動いてるーっ!!
ねえねえ王様!触って良い!?触って良い!?」
べたべた戦車に触って満足したユリは、ようやく服のことを思い出す。
ユリ「そうだ、王様の服を見つけてきたよ!はいこれ!
下でマリオさんも戦車を見たがってるから、一緒に下に降りよう!」
最終更新:2009年01月27日 11:31