スクナが放ったらしい布が、ミルクとメイファに巻きつき始めた。
だが完全に捕らえる寸前、メイファはふっと姿を消してしまった。
ロウ「しまった、瞬間移動か!」
ミル「ちょ、ちょっと待って王様!メイファが瞬間移動で逃げ……ギャ――――!!!」
間に合いませんでした。
ふわふわ布はミルクに覆い被さると、首だけだして体に巻き付いてしまった。
締め付けがキツいってことはないんだけど、あたしだけ封印とか何考えてるんだ!?
ミル「こらーっ!王様ーっ!!メイファは逃げたって言ってるでしょうが!
さっさとこの布を解…いて……」
あ、なんかこの布の中、心地よい感じ。
前に入った温泉みたいにくつろげるというか、冬場の布団の中というか。
別に出れなくてもいいや。むしろ出たくないや。うん。
ミル「あー。やっぱり今の無しー。
メイファを探しに行くのはまた今度にして、今はちょっと休憩しようー」
巻き付く布の心地よさに身を任せ、あたしは目を閉じて一休みする事にした。
ロウ「ミルク殿?これはいかん、忘却結界の一種ではないか!
スクナ殿、ここにメイファはもう居ない。ミルク殿を封印しても何もならんぞ」
リチャードが叫び、メイファが消えうせ、ミルクが忘却結界布団に包まれる。
三者三様の行動も目の眩んだスクナにはわからない。
ただ砂の感覚を通し、獲物を捕らえた事だけを把握していた。
スク「よおおおし!手応えあり!
馬を引けい!黄金の戦車よ!王の攻進であるぞ!」
その声に応えるようにスクナに破壊音が迫ってくる。
黄金の戦車が鏡を突き破りながら一直線にスクナの元に駆けつけたのだ。
前回はそのまま轢かれたスクナであるが、今回は一味違う!
スク「とうっ!」と言う掛け声と共に黄金の戦車に飛び乗ったのだ。
そしてそのままミルクの元へと一直線に進んでいった。
スク「あひゃひゃひゃひゃ!邪魔するものは全てなぎ倒す!
これぞ王の攻侵ぢゃああああ!!!」
メイファに逃げられた事も知らずテンション高くスクナは進んでいく!
バリン!バキャン!と鏡を突き破る音がミルクとリチャードの元へ近づいてくる。
一番近い鏡を突き破り現われたのは黄金の戦車!
そして戦車に乗るのはスクナ!
なぜならば血まみれミイラ状態で現われたのだから。
それもそのはず、超硬度を誇る黄金の戦車はいざ知らず、生身のスクナが鏡を突き破って進んできたのだ。
こうなるのも当然と言えば当然。
間違っても戦闘で受けた傷ではないのだが、勝手に満身創痍。
血まみれミイラ男を見て、ロウはミルクを守ろうと攻撃魔法を放とうとした。
だが実行する寸前、黄金の馬車を操れるのは王族だけだということを思い出せたのは幸いだった。
ロウ「もしかして・・・・・・・スクナ殿ですかな?
これはまた随分派手にやられましたな、大丈夫ですかな?」
ロウはスクナの怪我を、メイファと戦った時についた傷だと思ったようだ。
スク「よぉおおおし!下がれ、砂塵よ!」
ミルクとリチャードの元へ辿り着いた頃には視力も戻っていた。
そうなると砂塵は邪魔でしかないので瓶詰め砂漠へと戻すのだが、それと共に黄金の戦車の動きも止まる。
勿論この因果関係にスクナは気付いていない。
あくまでも自分が黄金の戦車を操っていると思っているのだから。
それはさておき、到着すると忘却結界布団に包まれているのはミルクただ一人。
メイファには逃げられたのだが、そんなものは二の次三の次。
スクナの第一声はこうだった!
スク「おお!まさに眠れる森の美女!姫を起こすのは王の特権!
しかしの前に・・・うひょひょひょひょ!」
メイファのことなどすっかり忘れ無防備に眠っているミルクの元へと駆け寄るのだ。
目覚めのキスはするとして、その前に役得と言わんばかりにあんな事やこんな事をする為に布団に潜り込む。
ロウ「あー。全くもって大丈夫なようですなあ」
ロウはやれやれと首を振ったが、スクナの暴挙を止めようとはしなかった。
無防備なミルクを前に自分の術もすっかり忘れていたスクナ。
布団にもぐりこんだ途端、術の影響はスクナにも及ぶ。
スク「うひょ・・・ひょ・・・ふぅあ~~・・・まあ、なんぢゃったか・・・・」
あえなくスクナの野望は潰え、目もトロンとなっていく。
ロウ「ミイラ取りがミイラになった、ですかのう」
ロウは大きなため息をつくと、処置なしとばかりに首を振った。
スク「な、なんぢゃあああ!?」
クワッと目が見開かれ布団を蹴飛ばし飛び上がる。
忘却結界布団の効力を吹き飛ばす程のプレッシャー!
それこそ学園屋上に召喚されたメイリンのものであるが、今はまだそれを知る術はない。
ロウはすかさずその端を握ると、思い切り布団を引っ張った。
結果、ミルクとスクナは布団から転げ落ちることになる。
ミル「うーん…後五分、後五分だけ寝たら起きるから……だーっ!?」
気持ちよく寝ていた所でいきなり天地がひっくり返って、あたしは何か堅いものの上に転がった。
ミル「乱暴なおこし方するなっていつも言ってるだろうが!?
…って、あれ?リチャードさん?ユリは?」
そこはいつものあたしの部屋じゃなく、鏡の乱立する
林の中。
ミル「あ、そっか。あたし寝ちゃってたのか…」
よいしょと身を起こして、いままでの事を思い出す。
ロウ「その通り。おふた方、仲良きことはよいことですが、今は遊んでいる場合ではありませんぞ」
ミル「別に仲良く2人で遊んでたわけじゃ……何かあったんですか?」
ロウは上空のピンクの雲と、屋上を指差し肩をすくめた。
ロウ「誰かが大いなる力を持った存在を召喚したようですなあ。
屋上に降り立ったようじゃが、生徒達が束になっても叶う相手では無さそうですなあ。
ほっほっほ、次から次へと忙しいことこの上ないですな。
さておふた方、屋上の人物と逃げたメイファの行方、どちらを優先なさいますかな?」
ミル「えっ!?あれ召喚魔法なんですか!?」
ロウは頷いた。
リチャードさんの言葉に再度屋上に目をやれば、確かに強力な気みたいなものを感じる。
なんだ?もしかして、メイファは何が召喚されるか分かったから怒り出したのか?
ミル「…メイファを探しても、言葉が通じないと説得も無理だし、瞬間移動で逃げられるだけだと思います。
で、屋上の人物の方は強力とはいえ、まだ敵か味方かわからない。
メイファはあの煙に驚いていたみたいだから、中つ国の関係者が屋上に来たのかもしれません。
レベッカかメイリンと合流して、事情を知らないか聞いてみるのはどうでしょう?
2人とも中つ国の出身者だから、メイファと出会っても話し合いになるかもしれないですし」
うんうんと頷いていたスクナは、ミルクの意見に従うのに何の問題もないようだ。
スク「うむ、逃げた者に用はない。行くぞ!ミルク乗れい!」
ミル「空を飛んでいくんですね!さすが王様!」
早速屋上へ行く為に黄金の戦車に乗り手綱を取ったのだが、黄金の戦車はピクリとも動かない。
暫く掛け声と共にひっぱたり押したりするが、勿論反応があるはずもない。
ミル「ちょ、ちょっと王様?戦車動いてないみたいですけど?」
ロウ「あースクナ殿、わしが思うに、戦車を動かすには砂塵を巻き越す必要が・・・・・」
スク「うがあああ!もうよいわ!」
業を煮やしたスクナ。
黄金の戦車に蹴りをかますと、中庭から屋上を見据える。
スク「かなり距離があるが、できん事はあるまい!
いや、そんな弱気でどうする!
余は王の中の王!そして今は日輪が中天に輝いておる!
できる!否!やる!やってやるぞおおお!」
大きく手を広げ、校舎屋上へ向かってその腕を振るう。
すると手から1m幅の黄色の絨毯が屋上に向かって伸びていく!
スク「皆の者!続けいいいい!」
まだ屋上まで全然届いていないのだが、それを待っていられるかと言わんばかりに走り出した。
屋上へ向かい形成される絨毯を追うように駆けるのだったが、果たして絨毯は無事に屋上まで届くのであろうか?
ミル「あ!ちょっと王様!?」
ロウ「参りましょう、僭越ながら私がしんがりを務めましょうぞ、ほっほっほ」
ミル「……分かりました。よろしくお願いします」
思いっきり来賓を巻き込んで心苦しいけど、いまさら『無かったことに』とも言えない。
ここは素直に好意を受け取っておこう。
そう思ってあたしは、リチャードさんに後を任せて王様の後を追いかけ始めた。
ロウはそう言うと、去り際に中庭の鏡に向けて杖を振った。
地面に散らばっていたガラスの破片が、少しづつ土に還っていく。
このまま放置すれば、ロウの魔法でガラスの壁もゆっくり地面へと溶けて沈んでいくだろう。
ロウ「これでよしじゃの、ほっほっほ。では参りましょうかのう」
ロウは振り向き、スクナ達の後を追おうとした。
ロウ「・・・・おや」
だが少し目を離した隙に、ロウは二人の姿を見失っていた。
ロウ「うーむ、これは困った。でもまあ見えているし、屋上を目指していけば大丈夫ですな。ほっほっほ」
そう言ってロウは、校舎屋上を目指して走り始めた。
だがロウ本人は校舎に向かっているつもりのようだが、実際のところ彼は森の奥へ奥へと進んでいたのだった。
どうやらロウは、極度の方向音痴のようだ。
メイファは瞬間移動で鏡の世界の外に避難した。
その後、ミルクがどうなったのかは死角になっているため見えない。
ひとまず、あたり一面に漂っていた砂と、怪しい布から退避できたことのみ確認できるだけである。
ファ『ぶっ殺してやる~!』
メイファは右手に力を入れた。このまま鏡の世界の中に拡散する光の矢をぶち込めば、
中の魔法使い達は全て蜂の巣である。
しかし、メイファはそれをしなかった。いや、できなかった。
校舎の屋上から、異常なプレッシャーを感じたからだ。
ファ『…来ちゃった。』
メイファは、構えていた右手をだらりと下げた。
ファ『この遊びも、もうおしまいね。』
「林に残ったみなさんは大丈夫デシょうか?」
マリオは少し離れた場所から林を眺めてそう言った。
林の中からは爆発音や鏡が割れるような音が聞こえるが、戦っている状況はわからない。
ユリ「大丈夫大丈夫!心配ご無用!
ミルクの魔法は破壊力バツグンだし、王様もリチャードさんも腕に覚えがありそうだったもん!」
そう言って戦いの終わりを待つユリだが、のんびりとしているわけにも行かなくなった。
悲鳴を上げながら誰かが屋上に落ちてきた事にきづいたのだ。
それも、強力な力の持ち主が。
ユリ「んっ!?屋上に誰かが落ちてきたよ!
この気配……もしかして、殺意の波動の使い手!?」
「殺意の波動は知りまセンが、かなり強力な力をお持ちのようデース」
ミル「よ~し!誰がきたのか、ここは突撃インタビューあるのみだね!
マリオさんも一緒に屋上に行ってみようよ!」
「オーケーデース!」
ユリはさっそくマリオをデッキブラシに乗せ、自分も一緒に屋上を目指したが、問題が発生した。
ゴーグルを触っていたマリオが急に叫びだしたのだ。
「オウノーウ!屋上の人物はムウ大陸発見の邪魔になるようデース!
このままでは、ムウ大陸を発見できなくなってしまいマース!
急いでスクナサンの所に戻ってくだサーイ!ムウ大陸の事を詳しく聞きまショー!」
ユリ「ええっ!?今から王様の所に戻るの!?
ううーん、大丈夫かなあ……」
ユリにしては、歯切れの悪い返事を返したのには理由があった。
まだ戦闘が終わっていなければ、マリオを危険な目に合わせる事になる。
屋上が危険とは欠片も考えていなかったユリも、戦闘地域に来賓を連れて行く気にはなれない。
遠話の水晶で戦いが終わったか聞くこともできるが、ミルクの魔法は集中力を必要とする。
いきなり声をかけられて集中力が途切れたから魔法失敗して大惨事、の可能性もあるのだ。
考えている間も、ユリとマリオを乗せたデッキブラシはぐるぐると校舎と林の間を回り続けている。
デッキブラシでぐるぐる飛び回っていたユリは、屋上に向かって絨毯が伸びていくのに気づいた。
見ていると、絨毯の上をスクナが屋上目指して走っていくのが見える。
ユリ「あ!あそこを走っていくの、王様じゃないかな!?
今ならきっとムウ大陸の話が聞けるよ!」
「それはグッドタイミングデース!
さっそくスクナさんの所にいきまショー!」
マリオとユリを乗せたデッキブラシは急加速して絨毯に近づいた。
絨毯に近づくと、ユリはスクナの上を大きく飛び越して旋回する。
ユリ「ミルクー!危ないから屋上に行っちゃダメだって、マリオさんが言ってるよー!」
ミル「ん?ユリ?」
えっちらおっちら走っていると、頭上からユリが降りてきて、併走して飛び出した。
良いよな、空飛べる奴は。
ミル「危ないって、なにが危ないのよ。
それに肝心のマリオさんはどこに置いてきたのよ」
ユリ「マリオさんなら、王様の所でムウ大陸の話を聞いてるよ。
なんか屋上に着た人は、ムウ大陸見つける邪魔になりそうなんだって。
リチャードさんはどったの?」
ミル「何言ってるんだか。リチャードさんなら後ろに……あれえ!?」
ユリに言われて振り向くと、後を追ってきているはずのリチャードさんの姿が、影も形もない。
道に迷った…訳ないよな?一本道なんだし!
ミル「し、しんがりを任せて来ちゃったんだけど、何かあったのかな!?」
ユリ「えー!?危ないよー!ちょっと探しに行ってくる!!」
ミル「どこにいるか分かるように、林の上から声かけて探せよ!」
ユリは林の上にすっ飛んでいって、『リチャードさーん!』とか叫び始めた。
まあこれで余程の事が無い限り、リチャードさんは大丈夫だろう。
後は、大丈夫じゃない王様から目を離さないようにするだけだ。
一方マリオは、デッキブラシからスクナの走る先に大ジャンプして飛び移った。
ちょうどスクナの行く先を阻む場所に移動した形だ。
中庭の林から校舎屋上へと向かって伸びる黄色い絨毯。
それは正に一本の架け橋となるべく伸びている。
スク「あひゃひゃひゃひゃひゃ!いまいくぞおおおお!!」
絨毯の形成スピードと同じ速度で先頭を走るスクナのテンションは高かった。
付いて来い!と言った割には後ろは全く振り向かず、リチャードがはぐれている事など全く気付いてもいない。
それどころか、後ろにミルクが付いてきているかどうかすらも埒外だった。
それもそのはず。
この架け橋となる絨毯はスクナが編みながら伸ばしているのだ。
足場を作りつつ移動するだけでスクナの集中力は全て使われており、他の事を考える余裕などないのだから。
架け橋の絨毯も中ごろまで伸びた頃、突如としてスクナの前にマリオが降って来た。
スク「ぬ、ぬああ!どけええい!!」
「スクナサーン!屋上に居るのはムウ大陸発見を邪魔する者のようデース!
会いに行くのは危険すぎマース!
それよりも、邪魔をされないうちにムウ大陸を見つけたいと思いマース。」
突然布って沸いたマリオ。
そして足場は正に一本道。
避ける事もできず、スクナのとった行動は・・・
スク「わっはっはっは!そなたも王と言うものがわかってないのう!
邪魔があれば粉砕して踏み砕きそのまま通る!
避けてゆくなど下賎の者のすることぢゃ!」
なんとスクナは激突する瞬間にマリオを小脇に抱え走り続けたのだ。
危険や邪魔と言うキーワードはスクナの足を止めるにはあまりにも不足。
と言うか、むしろ逆に燃え上がらせる結果になってしまった。
とはいえ、大の大人一人小脇に抱えて走るのはあまりに不便。
進むスピードが落ちたところで更にマリオの言葉が続く。
「『夜明けの晩』に何か思いついた事があったようデースが詳しく話を聞かせてもらえまセーンか?」
スク「ん?おお、そのことか!」
すっかり忘れていた矛盾歌とカゴメカゴメについて問われ、興味をそそられ足を止めた。
マリオを小脇から下ろし、少し腕を組み考え出した。
スク「うむ、【夜明けの晩】な。それについてはこやつに説明させよう。」
そういいながらベストをはだけさせ、胸元のツイナの刺青を露にさせる。
すると刺青の目が開き、ツイナが語り始めた。
語り始めに色々ネガティブな言葉が並ぶが、要約すると以下の通りとなる。
リョウメン族は昼夜によって入れ替わるニ身一体の一族。
太陽が空にある時はスクナとなり、対となるツイナは刺青としか現われられない。
夜の帳が落ちればツイナとなり、対となるスクナは刺青となる。
しかし、それぞれ逆転する事が可能なのだ。
ツイナの持つ誘光鐘は局地的に昼の状態にし、スクナの持つ夜陰香炉は局地的に昼を夜にすることができる。
つまり、夜明けに夜陰香炉を使えば局地的にではあるが、【夜明けの晩】を作り出す事ができるのだ、と。
スク「と言うわけなのぢゃ。」
説明が終わるとまるで自分が説明したかのように胸を張りうんうんと頷くスクナだが、まだ気付いていない。
屋上へ向かって伸びていた絨毯の架け橋は徐々に力を失いしなり、角度と共に高度を失い始めている事に!
「実にスバラシイ推理デース!
これなら一時的に、夜明けの晩という矛盾する状況が実現できマース!
やはりスクナさんは王の資格をお持ちのようデースネ!」
ミル「いや…今説明してたのはツイナの方なんですが…」
そりゃ確かにスクナも気づいてはいたみたいですが。
それと王の資格は関係ない気がします。
しかし、昼夜逆転が鍵ねえ…
もしかしてムウ大陸人って、スクナやツイナのご先祖だったりするんだろうか。
「これで時間の謎が解けマーシタ!
後は場所デースが、【かごめかごめ】の最後の言葉が場所を表していそうデース!
後ろでありながら正面の場所を見つければ、必ずムウ大陸への道が開けマース!」
ユリと同じくらい興奮しているマリオさんの体が、大きく揺れた。
地震?いや、ここは絨毯の上だから…もしかして!
下を見れば、ぐんぐん迫る固い地面。
ここから落ちたら墜落と同じだろおい!
ミル「ぎゃーっ!落ちる!橋が落ちてるーっ!!」
「これはいけまセーン!早く降りまショー!」
マリオさんはそう言って、ひらりと絨毯から地面に飛び降りる。
ちょっと待てかなり高さあるだろこれ!なんで無事なんだよ!
「そこはキケンデース!早く逃げてくだサーイ!」
ミル「無理ーっ!誰かたーすけてーっ!!」
スク「ああ・・いいのぅ。この反応。東方の女子達はこんな可愛い反応してくれなんだからのう。」
危機感が無いというか、物事の優先順位が間違っていると言うか。
とりあえず感無量と言った感じでミルクの悲鳴をひとしきり味わった後、漸く動き出す。
スク「安心せい、最早修復は不可能ぢゃ。ぢゃが余が付いておるぞ?」
ミル「その言葉のどこに安心できる要素があるんだよ!
それともなに!?修復は出来ないけど逃げ出す方法はあるの!?」
ミルクの肩をがっちり掴むと、スクナは忙しそうに印を結び始める。
それが糸を紡ぎ、呪布術を行使しているのだが、特に脱出に向け何を作っていたと言うわけではない。
変りに絨毯の架け橋の軋みが僅かに収まった程度。
特に先端部分は二人が乗っているのでしなりが大きくなっていく。
ミル「まだーっ!?橋は落ちなくても、このままじゃあたしたちが落ちるわよ!」
スク「王の攻侵とは!あらゆる障害を踏み潰してまっすぐに目的地に辿り着く事ぢゃ!」
その言葉と共にスクナの背後から大きな布が広がり、ミルクともども包み込む。
ミル「な、な、な、何これ!?
もしかして、毛布を抱えてここから転がり落ちるつもりじゃないでしょうね!?」
二人で仲良く顔を出しただけの状態の簀巻き状態になると、スクナは白い歯を見せてニッと笑った。
安心させようとしたのだが、正に無理心中5秒前。
ミルクの心中も知らず密着簀巻き状態にスクナの頭の中では【役得万歳!】が鳴り響いている。
ミル「いやだーっ!絶対死…ぎゃ――――――っ!!!」
しなっていた絨毯は突如としてその鎌首を元に戻した。
そう、スクナは修復を諦め、絨毯の一部を強化していたのだ。
具体的にいえばスクナたちの立つ先頭から10m程の距離のみで。
結果、絨毯はバネのようになり、二人の重みでしなるだけしなった後、反作用により二人を跳ね飛ばす事になったのだ。
スク「わっはっはっは!屋上に行くといったら何が何でも行くのぢゃ嗚呼!!」
跳ね飛ばされて吹き飛ぶミルクとスクナ。
力なく地面に落ちていく絨毯の架け橋。
対して、二人は人間大砲が如く屋上へ向かって一直線に飛んでいった。
ミル「これちゃんと着地でき……ないのかよ!」
スクナに問うても無駄な事は、その顔を見ればなんとなく判るだろう。
上がるところまで上がった布は、後はただ落ちるだけ。
屋上にいた人たちはそりゃびっくりした事だろう。
でも今は、こちらも人の心配をしてる場合じゃない!
ミル「あああぁぁぁ!たぁすけてえぇぇぇぇ!!!」
下にいた誰かさんがこちらに気づいて空を仰ぐ。
ちょうどあたしたちの着地地点で!
ヴ「にゃあああああああああぁぁぁあ」
ものすごい衝突音。
さすがに激突の瞬間目をつぶってしまったあたしには、何が起きたかさっぱりわからない。
レン「イ゙ェアアアア」
リリ「メイレンさん、大丈夫ぎゃふっ?!」
続けざまに悲鳴が起こり、体やら足やらに痛みが走った後、ようやく人間大砲は止まった。
ミル「た、助かった……?」
レン「う~~!あう~~!痛い~!死んじゃう~!」
近くで、見たことない大きな人がおなかを抑えて痛がっている。
他にも何人か倒れている人が……って大惨事だよ!
なんつー面倒なことしてくれるんだこの王様は!
ヴ「は…はちみつが舐めたい」>「ヴァ、ヴァンエレーン!!」
倒れたらしい
ヴァンエレンを心配する、マオの声も聞こえてくる。
蜂蜜はありませんが血の池ならあります。
今からあたしが王様の血で作ってやるからね!
キョロキョロ周りを確認し、スクナ以外の人を巻き込まないよう範囲を絞る。
ミル「メギド!」
魔法一発、あたしは自分に巻き付いてた布を吹き飛ばした。
一緒にスクナも吹っ飛んだけどかまうもんか。
どうせ後からぶっ飛ばすんだ。
ミル「王様……こんな大惨事を巻き起こしたんだから、当然フルボッコにされる覚悟は出来てますよね…?
腕の3本や4本で済まそうなんて、甘いことは考えないで下さいよ…?」
あたしは手の骨をポキポキ鳴らし、メギドの狙いをつけたままゆっくりスクナに近づいた。
(16シーズン 85で〆)
最終更新:2009年02月16日 18:31