ミル「あ、ここ空いてるね。ちょうどいいや、ここにしよう」
魔法の明かりに照らされた、校舎の近くの夜のカフェテラス。
四人掛けのテーブルにブルースとミルクは向かい合って座り、
ミルクの膝の上にちゃっかりルズが乗った。
テーブルの上のベルを鳴らすと、直立歩行のウサギ型使い魔が注文を取りに来る。
ブルースはそれを見て、きっとこれはとって食べちゃいけないウサギなんだと思った。
ミル「あたしはホットケーキとミルクで。
ブルースは何を注文する?
この店はサンドイッチ系が美味しいって評判だよ。
飲み物はコーヒーか紅茶にする?それとも烏龍茶?」
ブルースにメニューをあれこれ見せながら、ふと思う。
もしこんな所をレベッカが見たらなんて言いだすだろうか?
…ま、どうせ今は槍なんだからいいか。
ブルースに声聞かれたくないみたいだったし。
ブ「コーヒーと、ミックスサンドイッチをお願い。」
ルス「わたくしはイカリングを大盛で~。ああ、代金はこのブルースとやらに全部つけといてね~ん」
ミル「あっ!こら!そんなこと言わないの!」
ちゃっかりあたしの膝の上に乗っていたルズの頭を軽く小突く。
ルズの言葉を聞いて、ブルースの顔色が変わった。別にルズに怒ったわけではない。
ルズの言葉を聞いて、ある大変な事を思い出したのだ。
ミル「あはは、今のは気にしないでねブルース。
ルズってば猫の格好してるけど、実は女の子で白百合だから男に少し偏見を……どうかした?」
そこまで言って、ブルースが居心地ち悪そうにしているのに気づく。
ブ「あ…その…ごめん。お金…全部、赤い妖怪のファにとられたんだった…」
ミル「赤い妖怪のファってメイファの事?
そういや身ぐるみはがれてたんだっけ…」
ほとんど過剰防衛か強盗じゃないかそれは。
まー、服持って行かれたんだから予想すべきだったのかも知れないけど。
ミル「あーいや、お金は……」
ブ「ミルク…初対面だっていうのにこんな事をお願いするなんて心苦しいけど、
お金を少し貸してくれないかな?もちろん、後でちゃんと返すよ!誓ってもいい!」
ブルースはミルクに借金をお願いした。
お金は大丈夫だからと言いかけて、ブルースの言葉に続きを飲み込む。
あたしの脳内で、天使と悪魔が現れて作戦会議を始めた。
ミ天『人の弱みにつけ込むなんて最低な人間のする事ですよミルク。
後で生徒会に請求できるんだから、無償で貸してあげなさい』
ミ悪『鴨がネギしょってやってきたんだから、気にせず高利で貸すんだよ!
真面目そうな奴だからちゃんと払うだろうし、払えなければレベッカから取り立ててやれ!』
……よし、折衷案で行くか。
ミル「いやいや、メイファに襲われて困ってる人にお金なんか貸せないって。
ここの支払いはあたしが済ませるから大丈夫。
ルズも遠慮なく食べて良いからね」
ルス「そそそそそ、そんな――――!!あ の ミルク様が人に奢るだなんて――――!
ありえませんわ――――!!今日は空から鉄の雷が落ちますわ――――!!」
ブルースの訝しげな顔を尻目に、ルズは激しく驚いていた。
ミル「ちなみにブルースに教えてあげるけど、西方ではお金を借りたら返す時、感謝の気持ち分を上乗せして返すのが常識です。
またお金が必要になったらいつでも貸してあげるけど、これ大事なポイントだから忘れないようにね」
さりげなく商売の宣伝をしつつ恩を売ってポイントを稼ぎ、使ったお金は生徒会に請求して回収。
完璧だ!一石三鳥のパーフェクト回答!あたしってば天才だな!
ルス「女王様、ルズはミルク様を変態の毒牙からお守りすることは出来ませんでしたわ・・・・。
これでは白百合騎士団員及びフリージア女王様親衛隊長失格なのでございますわ~。よよよよよ」
ルズは身も世も無く泣き崩れた。
ブ「ありがとう、ミルク!」
ブルースは思ってもみなかったミルクの返答に感激した。
ブ「君は僕の天使だよ!」
君は天使のような人だ、と言いたかったらしい。
ルス「やかましいですわ!お前なんか彼女といちゃくらこいてれば良いのですわ~。
変態のくせに、わたくし達のミルク様に気安くちょっかい出すんじゃありませんわ~ムキー!!」
ルズはイカリングのつけ合せをぽいぽいブルースに投げつけた。
どうやらこの一言で、ルズのブルースへの認識はますます悪化したようだ。
生徒会の連中が、慌ただしくカフェテラスの前を走っていった。
なんだろうと思って見ていると、
招き猫広場の方で連続で雷が落ちる。
な、なんだなんだ?ユリから連絡がこないけど、あいつ何してるんだ?
ミル「ねえブルース、招き猫広場の方で何かあったみたいだから、ちょっと戻ってもらってもいいかな?」
ブルースにそう言ってから、手元のベルを鳴らして使い魔ウサギを呼ぶ。
ブ「OK、わかったよミルク。」
ブルースも何か異変が起きたことを悟った。
ブルースはテーブルの脇に置いてあったナイフの束をわしづかみにしてポケットに隠し持った。
ミル「お勘定お願い!領収書は上様宛てでよろしく!」
ブ「ミルク、用心した方がいいかもしれない。大妖怪が本性をあらわしたのかもしれないから。」
ルス「ブルースという大変態が本性を現すよりははるかにましなのですわ~」
ルズはブルースに当てこすると、ミルクの肩に飛び乗った。
ミル「…できればどっちも本性現して欲しくないね」
メイレンさんが本性現した日には、あたしもお腹入りだ。
聴力のいいルズは外に出たとたん、耳をぴくぴくさせた。
ルス「招き猫広場が騒がしいですわね~。雷だけではなく、ステージの方からもなにやら演説が聞こえるような~。
まだステージのイベント、残っていましたかしら~ん?」
ミル「イベントなんか残ってなかったはずだけど…まさかさっきの雷、イベント開始の合図とかじゃないだろうな」
ブ「この際イベントなんかどうだっていいじゃないか!」
それなら笑い話で済むんだけど、胸の中の不安の黒雲は消えるどころか増えるばかり。
ミル「ちょ、ちょっと待って、今から友達に連絡を…」
今まさに連絡を取ろうとしたその時に、ユリから連絡が入る。
ユリ「大変だよミルク!悪人ターロンがマリオさんとリチャードさんを鉄像にしてムウ大陸に行っちゃった!
リリアーナから伝言で、ブルースに大至急ライブ会場に向かってって!」
ブ「その声、さっき僕にインタビューしようとした魔女だね?」
ブルースは声の主はわかったが、言っていることは理解できなかった。
ミルクにとっても、それは同じようだった。
ミル「ちょっとこらユリ!それじゃ全然わからんだろうが!
もっと詳しく説明しろ詳しく!」
ユリ「おおっとっと!今運転中だからまた後でね!連絡は伝えたから!」
いつも通り言いたいことだけ言ったユリからの連絡は切れる。
悪人?マリオさんとリチャードさんが鉄化?大至急ライブ会場?
何があったのかさっぱりわからんだろおい!
ミル「…聞こえてたと思うけど、どうも大変な事になったみたいだよ。
とにかく急いでライブ会場に行こう!
何があったのか確かめなきゃ!!」
ブ「わかった!急ごう!」
(199で〆)
最終更新:2009年05月25日 05:45