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7:図書室2

長「あらぁん。可愛らしいお客様ねぇん。
 ようこそ。ひ み つの花園へ(はぁと)
 私はこのお城のメイド長よぉん」
アイシャとルズが図書室前につくと、扉が開いて筋骨隆々なメイドが現れた。
しかし頭からシーツを被っているので、頭がカバであるとは正確にはわからない。
ルス「ひ――――!!妖怪ですわ~!!」
ルズは衝撃のあまり、アイシャの肩口までよじ登りぶるぶる震えている。
長「さぁさぁ。中に入って紅茶とクッキーを楽しんでちょうだぁい。
 久しぶりのお城のお客様なんだから歓迎するわよぉん。
 お城の中は、私が後からゆっくり案内してあげるからぁ」
メイド長は手招きして、室内にアイシャたちを招き入れようとする。

ルス「どうなさいます~?怪しさ満開なのですわ~」
そう耳打ちした矢先、クッキーの甘い香がルズの鼻をくすぐった。
おなかがぐうとなった。
ルス「・・・・・・・ま、まあ、どうしても食べて欲しいと言うのなら、食べてやらないことも無かったりするのですわ~」
長「まーあまあ、可愛い猫ちゃんねぇん!
 この子はあなたの使い魔なの?か~わいいわねぇん(はぁと)」
相変わらずシーツを被っているが、どうやらメイド長はアイシャに向かって不気味に微笑んだようだ。

ルズは椅子に飛び乗ると、もしゃもしゃとクッキーを食べ始めた。
ルス「お、おいしいじゃありませんの~。
 み、ミルクもどうしてもつけたいと言うのなら、飲んであげなくも無かったりするのですわ~」
長「それはもう、どうしてもつけたいわぁん。
 さぁさ。いっぱい飲んでちょうだぁい」
メイド長は窓際に置かれた四角い箱に一声かけ、それから箱を開けて中から温めたミルクを取り出す。
長「さぁどうぞ。
 あなたもミルクでいいかしら ぁん。
 それとも、紅茶か別の飲み物にする?」
ルズの前にミルクを置いたメイド長は、アイシャにも飲みたいものを聞いた。

ばくばくクッキーを食べていると、音も無くすうっと図書室の扉が開いた。
ミシ「先程邪魔していた者達の連れですが、誰か居ますでしょうか?
いらっしゃったら宝物庫の目録を拝見させていただきたいのですが」
ぶ――――!!とミルクを吐きだしたルズは、咳き込みながらミシェルに視線を移す。
ルス「びびびびっくりするじゃありませんの~ミシェル先生~。
 ノックぐらいするのですわ~。
 あら。先生、そう言えば、他のメンバーは一体どうしましたの~!」
長「あら~、こちら聞いていたとおり い い お と こ ねぇ。うっふ~ん」
ルズとは違い驚いた様子は見せないメイド長だが、ミシェルの事は気に入ったようだ。
長「宝物庫の目録ねぇん…どこにやったかしらぁ。
 図書室の管理担当の子が壊れちゃってるから、わかりづらいのよねぇ…」

ミシェルに言われて本棚を漁り始めたメイド長は、それでも一冊の本をすぐに持ってくる。
長「あったわぁこれよぉん。ゆっくり見ていってねぇん」
目録には、宝物庫に納められているアイテムの名前と形状の絵や効能などが乗せられていた。
【真珠の宝玉:王宮内の封印解除に使用。金、銀の宝玉同様呪い対策をして持ち運ぶように】
【若返りの秘薬:飲めば若返る神秘の霊薬。飲みすぎ注意】
【神鳴りの杖:内部に雷龍100匹を封じた杖。雷を自在に操れるが龍を制御できない者は持つべきではない】
【以下略】などなどだ。
ただ、文明を滅ぼせそうなほど強力な魔道具は見あたらない。
宝物庫の目録を目の前にして、ようやくミシェルは一息つけた。もしかしたら紛失していた可能性も十二分にあったからだ。
そこでふと見知った顔がいることに気がついた。気はついたが無理に絡んでいくことはないだろう。どうも悪魔憑きさんはミシェルのことを嫌悪しているし。
ミシ「猫くん、さっきは驚かせて悪かったね」
そう言いながらも凄いスピードでミシェルは目録のページを繰っていくが、めぼしいものは無かった。幾つか眼を引く物も有ったが。

長「これは上巻だから、王宮の宝物庫の目録ねぇん。
 下巻の地下王墓の宝物目録は、やっぱり地下の始王様の大図書館にあるわぁん。
 地下に大図書館なんて変わってるでしょう?
 ムウ王国を築いた初代の王様は、賢王と呼ばれるくらい知識に関心のあった方ですからねぇん。
 集めた本や強力なマジックアイテムは、墓場まで持って行ったのよぉ」

そこまで言って、メイド長は不思議そうにミシェルに尋ねた。
長「でも、宝物庫に行っていたのに、どうして宝物庫の目録なんか見る気になったのかしらぁん。
 ナナナったら、また間違えてメイドの控え室に案内しちゃったの?
 ごめんなさいねぇ。あの子のドジは生まれつきで…」
ミシ「あぁ、いえ。あの娘が特に何かしたのではありませんよ。無事に宝物庫前まで導いてくれました。
ただ私がものぐさでしてね。直接見るより楽かなぁ?なんて」
照れくさそうに笑ってみせるが半分は嘘である。ミシェルは門番とドンパチやってる時点てここには自分の目当ての物は無いかもしれない。というあたりをつけたのだ。
一応、もしもがあるかも知れなかったので宝物庫の目録は見てみたが予想以上の情報が手に入ったことになる。
もっとも、ミシェルの予想は武器庫だったのでそれはさすがに外れたが。

メイド長は、アイシャとルズにも質問する。
長「あなたたちも目録を見に来たのぉん?
 良ければ、私が宝物庫まで案内してあげるわぁん」
ミシ「あの、すいません。二つ質問です」
間髪いれずにその場の誰よりも早く発言権を得る。
ミシ「まず一つ。地下図書館はどこに?具体的には入り口が知りたいんです。
そして二つ目。ムーを滅ぼしたは人為的なものですか?天災的なものですか?
大雨が降って洪水が街を飲み込んだとか」
この質問でムーを滅ぼしたモノにあたりをつけようというのだ。人為的ならばまだ選択肢は多いが、天災ならば天候操作系のものである可能性が高くなる。
まぁ、どっちにしろ詳しくは見て触れなくては解らないだろうが

長「地下図書館の入り口は、あなたたちが入ってきた地下通路の縦穴の底、共同墓地の中にあるわぁん。
 盗掘に合わないように隠されているから、知っている人がいないと見つけるのは難しいのよぉん。
 二つ目の質問の答えだけど、あなたって詳しいのねぇ。
 化け物ドラゴンの襲来と同時に大雨が降ってきたから、それもムウが滅びた一因かもしれないわぁ」

筋骨隆々なメイドの話を聞いてミシェルは面は涼しげにすましている。
地下図書館の位置が判ったのは有り難いが、ムーが滅びた原因はまだ答えが出そうにない。
龍も上位種になると天候が荒れることはある。
しかしそんな上位種のものを人が操れるだろうか?無論完全な操作は不可能に近い。そんな上位種をムーの街まで誘導して暴れさせることなんて………
もしかするとムーを滅ぼした兵器とは魔法生物を意のままに操る魔導具なのかもしれない。
いやしかしその程度のものだとショボいかも……

メイド長は深く嘆息した。
長「でも、お城が浸水し始めたから、私もこの図書室に中から封をかけて眠りについたの。
 だからムウの最後の事はよくわからなくて…
 あまりお役に立てなくて申し訳ないわぁん…」

アイシャは、目の前にあるクッキーや、紅茶には一切手をつけず、ただ黙って虚偽の目でメイド長を見ていた。
アイ「私も2,3聞きたいことがあるんだけど」
そう言いながら、アイシャは先ほど書き留めておいた古代語のメモを出した。
アイ「地下墓地に書いてたんだけどさ…これなんて書いてあんの?
 それと…なんでこの地下都市には生物の死体や霊魂が無いのさ
 最後に…さっき、もう1人メイドを見かけたんだけど…それはあんたとは関係ない無いの?」
長「少しメモを見せてもらえるかしらぁん?
 …【完全なる従者、従者の三信誤る時、破滅の使者が目覚めん】と書いてあるわねぇ。
 聞いたこと無い言葉だけど、これはどこに書いてあったのかしらぁん?」
地下墓地のメイド像について聞いたメイド長は、納得したように頷く。
長」「大鎌を持っていたなら、それはきっとムムムちゃんの像ねぇ。
 あの子は地下墓地の管理が担当だったから。
 でもおかしいわねぇ…ムムムちゃんの像なんて地下にあったかしら?」
しばらく考え込んでから、メイド長は再び口を開いた。
長「ともかく、残りの質問に答えるわねぇん。
 地下に死体や霊魂が無いのは、ムムムちゃんが刈り取ってしまったんじゃないかしら。
 あの子の仕事は、死者が安らかに眠れる手助けをするものだったのよぉん。
 最後のもう一人のメイドというのがドジなメイドだったなら、それはきっとナナナちゃんねぇ。
 私はこのお城のメイド長をしているから、ナナナちゃんもムムムちゃんも私と関係あるわよぉん」

長「あらあらあらごめんなさいねぇ!私ったらすっかり忘れていたわぁ!
 ムムムちゃんの像は、地下図書館への入り口を開ける扉なのよぉ!
 従者の三信は金、銀、真珠の三つの宝玉の事だったわぁん!
 これを左から順番に台座にはめると、地下図書館にいけるようになるの!
 間違えてはめると番ゴーレムに襲われるから、注意してねぇん!
 こんな大事なことを忘れちゃうなんて、私の お バ カ さぁん!」
メイド長はそう言って、顔に両手を当てて体をくねらせた。

つまり地下図書館に入るには球が必要ということらしい。まるで出来の悪いRPGのようだ。
まさか顔パスは出来ないだろうと思っていたミシェルも、さすがにこの面倒な仕組みには殺意さえ憶える。
不遠慮に舌打ちして城の図書館を出て行くほどに。

ミシェルの行き先はやはり宝物庫。回収されていないならば真珠はまだあるだろう。それをミシェルが回収し残りも生徒から巻き上………借りて、地下に行く他にない。
彼は風の如く疾走して宝物庫にたどり着く。道順さえ記憶していれば決して距離は遠くない。
しかし宝物庫でもトラブルはあったようで………
ミシェル→7:宝物庫

アイ「………そーいう意味だった訳ねハイハイ」
メイドの返事を聞き、何かガッカリした感じで返事をしたアイシャ
アイ「私はてっきり、イカレたメイドのせいで滅びましたって思ってたんだけど…けど、そうでもなかったみたいだし
 仮にイカレてたり、ターロンにそそのかされていたのなら

 毒でも盛っててもおかしくないしね」
そう言って、元気なルズに視線をやる。
ルス「ふ~。お腹いっぱいなのですわ~」
ルズはクッキーを食い散らかし、まん丸お腹を抱えていた。
長「い、いやあねぇ。ターロンにそそのかされてるとか…
 おほ。おほほほほほほほほほ!」
頭から被っているシーツで表情はわからないが、メイド長は慌てているように見えた。
ルス「アイシャ様~、そちらのメイドさんと難しい話は終わりまして~?
 それにしてもフリージア女王様たちは遅いですわね~。
 皆様ここには戻らないおつもりなのかしら~ん。
 ねえ、アイシャ様は、これからどうなさいますの~ん?」
お菓子を食べることに夢中で、難しい話を完全スルーしていたルズはのんきなものである。

アイ「まぁいいや、聞きたいことは聞いたし、あのクソ天使に一発入れたいし…ルズ!行くよ」
ルス「ラジャー!」
アイシャは席を立ち、出口へ歩きだした。ルズは歩かずごろごろ転がりながら、彼女に続いた。
アイ「あ…もう1つ引っかかったことあったわ」
足を止め振り向く、その表情は悪意に満ちている
ルス「あらん、ブラックアイシャ様の気配?!」
長「あらぁん。なにかしらぁ」
アイ「なんで『最高』のメイドがメイド長の下なんかについてんのかな…
 ふっしぎだよね。『最高』のメイドってことは仕事が一番出来るってことだよね?
 普通その職の長に就くのはそういう奴じゃない?
 それとも、上につける器じゃなかったとか?
 それじゃ最高じゃないじゃん
 それに何でその最高のメイドが客人に茶も出さすに死体処理なんかやってんだろ?
 ………誰かが何か仕組んだ系?
 なら、納得出来るね。人も霊もメイドも全て消し去ってしまえば、残ってるのが最高のメイドだもんね~♪その後に誰が来ようとも、自分が言い張れば通るし」
果たしてルズは気付くだろうか
今こうしてまくし立てている間、魔銃の形態が突撃銃から散弾銃形態へ変化していることを
そして、メイド長の返答次第では、仕掛けるつもりでいることを
長「ムムムちゃんが作られたのは、メイドコンテストの666回目なのよぉ。
 あれはお題が戦闘力の回だったから、ムムムちゃんは戦闘力だけは最高だったわねぇん。
 でも、ご主人様の言う事を聞かないとか、完全とか最高とは違うし…
…地下のメイド像はムムムちゃんじゃないのかしら……あ」
ルス「アイシャ様~?何をしていますの~?」
アイシャの手にもった魔銃が変化しているのに気づき、ルズはのんきな声をあげた。

メイド長の頭が天井を見上げたため、シーツが頭から滑り落ちた。
隠れていたカバの頭には額に白い御札が貼られ、目は赤く光っている。
アイシャが白い御札の意味を知らなくても、メイド長の様子がおかしい事はすぐ気がつくだろう。
メイド長は、御札で言動をターロンに操られていたのだ。
ルス「ふぎゃ~!メイドではなく変なカバでしたわ~!」
ルズの黒い毛がぶわっと逆立った。
ルス「おまけにあのお札!もしかして怪物退散のお札かしら~ん?だったら全く意味が無いのですわ~!!
 というより、何かと交信しているみたいですわ~。
 もしかしてムー民という一族の者なのでしょうか~。」

長「はい…ターロン様…邪魔者…始末…」
うわごとのようにつぶやいたメイド長は、アイシャに向き直ると口を大きく開けた。
長「ぶるああぁぁぁ!!」
メイド長の口から光弾がアイシャに向けて撃ち出される。
光弾が何かに当たれば、大爆発が起きるだろう。

ルス「あぶなーい!!とうっ!!」
ルズはアイシャニ飛び掛り、押し倒すことで光球を回避させようとする。
ルス「心配いりませんわ~。この白百合の騎士見習のわたくしめにオ任せですわ~!!」
などと格好いいことを口走っているが、しょせんはルズ。
カバとの戦いより、ドサクサでアイシャの胸部分にへばりついている方が何百倍も楽しいだろう。
ルス「あのカバいいように操られているようですわね~ん。アイシャ様、何かいい方法はございませんの?!」

アイシャたちから見て前方、メイド長の後方に魔法陣が浮かび、その上に空間の裂け目が現れた。
ターロンは聞かされていなかったが、隠し陣は元々緊急時の召集にも使用されたものだ。
起動すると城内全ての隠し陣が発動し、全てが同じ場所に移動できるようになる。
空間の裂け目からは興奮したターロンの声が聞こえ、ちらちらとメイド像周辺の光景が見えるだろう。
「あっ!あちらに見覚えのある人影が!
 アイシャ様、あの空間の裂け目へ飛び込むのですわ~ん!!」
とうっ!という掛け声も勇ましく、ルズは空間の裂け目に飛び込んだ。
―――― 実に後先考えない、短絡的な行動である。
(196で〆)

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最終更新:2009年10月19日 21:59
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