ナナナ 「はい!こちらが宝物庫になります!
正面に置いてある真珠玉は、地下通路にあった銀玉と同じで呪われているので、直接さわらないでください!」
宝物庫の中は案外乱雑に杖やら薬瓶やらが積み上げられていて、とても整理整頓されてるとは言い難い。
その中で真珠玉だけは台座の上に置かれてそれなりに見えた。
ロク「若返りの薬…?開発…?」
若返りの薬と聞いて、ロクーがひょこひょこナナナのそばに寄ってきた。
ヴァンエレンがミルクとナナナを引き剥がして止める隙にロクーが尋ねる。
ロク「ほ、本当に若返りの薬があるのか?メイドさん、おらにその若返りの薬を見せてくれ!」
ナナナ「はわわわ…め、目が回ります~
わ、若返りの薬ならありますから、ちょっと待って下さい~」
ミルクにガクガク揺さぶられ、目を回しかけていたナナナは、しばらくふらふらしてから薬棚に向かった。
そして彩り豊かな薬瓶の中から、最上段にあった大きめの金色の瓶を取り出す。
ナナナ「じゃじゃ~ん!これが、ムウ大陸の誇る若返りの秘薬です!
一口飲めばすぐに若返る脅威の性能ですから、用量用法をよく守ってお飲み下さい!」
ロク「おお~!」
ロクーの目がきらきら光った。
フリ「これが若返りの薬・・・・飲みすぎると胎児まで逆戻りして消滅してしまう
ある意味究極の毒薬ですの?」
不老不死の秘薬が強力な毒薬だったりすることはこの業界ではよくある事である
ギ「千年以上生きている人が飲んでもあまり変わりなさそう・・・・とか言っちゃ駄目かな?」
はたして妖怪であるメイレンが飲んでいかほどの効果があるやら?
フリ「ムーの人間じゃ無い人が飲んでも大丈夫ですのこれ?
人魚の肉みたいに人間じゃない怪物に変わるとかありませんこと?」
ナナナ「人魚の肉ってそんなに危険なんですか?
うーん…このお薬を飲んだ人が怪物に変わった、という例は無いはずです。
ムウ大陸以外の人はまだ飲んだことがないはずなので、絶対確実に安全とは言えませんけど…
あ、でもでも!もちろん飲み過ぎたら大変なことになりますよ!
昔こっそり盗み飲みした人が、消えてしまったって話を聞いたことがありますから!」
フリージアから安全性について聞かれた時、ナナナはそう答えていた。
ミル「そんなものより、あるんでしょ。早く出しなさいよ、女に戻る薬」
ナナナ 「すみません…若返りの薬ならあるんですけど、完全に性転換する薬はここには… 」
あっ!このムーンライトドローンなら…」
ミル「そんな一時的な薬なんかいるかーっ!!
さあ出せ!無ければ作れ!作れないなら開発しろーっ!!」
ナナナの肩を掴んでガクガク揺さぶってると、アホ姉が薬瓶持って横を通り過ぎる。
アナ「そんなに怒ってると禿るぞーミルク。
ほいっと…回復薬っぽいの集めてきたから、欲しい奴は適当に持って行くといいぞー。
昔のポーションでも腐ってないみたいだから安心しろ♪」
桜(あ……どうしよう。
ちょっと出遅れてしまった。)
ぼーっとしていたためみんなより出遅れ、桜花はメイドさんに質問しようかどうか迷ってまごまごしている桜花だったが
ミル「なんでポーションはあって性転換薬が無いんだよ!?
こっちは女の命がかかってるんだぞーっ!
あたしの人生を か え せーっ!!」
ヴ「やめなさいって!
そんなに乱暴しても薬はでてこないぞ!
ってか性転換の薬ならここより学園のほうがありそうだが?
そこらへんどう思う?」
ミル「だーっ!これが乱暴せずにいられ……学園に性転換薬?」
ヴァンエレンにぐいっと後ろから引っ張られ、言い返しかけてから言葉の意味に気づいた。
学園に。性転換薬。可能性はある。あるけど…
ミル「確かに学園に戻ればあるかもしれないけど、男になったなんてバレるのはイヤだ。
それに後回しにして直らなくなったら…後回し…後回し…あ。
そういえば、レベッカが後からなら性転換できるって言ってたっけ…」
そうだ、いろいろあってすっかり忘れてた。
今こそレベッカの力を見せてもらう時だよな!
ミル「レベッカ!確か性転換できないわけじゃないって言ってたよね!
もうそろそろ女に戻してくれても良いんじゃないかって、あたし的には思うんですけど!?
…あれ?
リリアーナ…どうしたの?」
レヘ「なんでも銀玉を無くしちまったらしいぜ。
何故かしらんが、リリアーナはあの女(ヴァンエレン)が持ってると思ってる。」
リリアーナはずんずんとヴァンエレンに近づいていった。
リリ「そんな事より!ヴァンエレン、私の銀玉返してよ!
ごまかそうとしても無駄よ!あなたの使い魔が銀の玉拾ったって事、ちゃーんと知ってるんだからね!
さあ、早く返して!それは私のものよ!私のものなのよ!
今すぐ出して!出さないつもりなら、今ここで全部脱いでもらうから」
リリアーナはそう叫ぶと、ヴァンエレンの胸元へおもむろに手を突っ込んだ!
ヴ「ちょちょちょちょちょ!
うわーーーん!リリアーナの脱がし屋X!!」
さあ脱げやれ脱げもっと脱げ!
リリアーナがヴァンエレン(女)を脱がしにかかる。
ミシ「天使先生、物への異常な執着って大罪でしたっけ?」
アナ「んー?そうだったかなー。そうかもしれないぞ♪」
一方、ミシェルに大罪について聞かれたアナスタシアは適当な返事を返している。
基本的に直感型なので、教義的な事はよく知らないのだ。
アスタナシアの答えを聞いて、ミシェルはポンと手を打つ。
ミシ「あぁ、思い出しました。傲慢と強欲だ」
アナ「それ何の話だ?…まあいいや。
それより、私の方は見ての通りだけど、おまえの方はどうだ?
何か新しいことでもわかったか?」
ミシ「新しいこと………ですか
そう、ですねぇ……………リリアーナ君はアレの日」
寸での所で口から出そうになった下ネタを飲み込む。
ミシ「失礼。ついさっきあのメイドさんが言っていた地下図書館に何か手懸かりがある。私はそうふんでいます。
予定では私が三つの玉を回収し、単騎で行くつもりだったんですが……」
あのメイドさんは見事にみんなに地下図書館へのお誘いをかけた。うん、みんな仲良くは良いことだ。コンチクショー
ミシェルはもう、生徒たちに危ないから自分独りで行く。と言う気はない。言ったところでそんな警告など聞きいれまい。
ミシ「これも良い機会ですから、生徒たちにも一緒に来てもらいましょうか」
なんて、にぱーと底抜けに明るく笑って言ってみる。内心で悪態吐いても仕方ない。という諦めのようなものだ。
ミル「ちょ、ちょっとちょっと!?落ち着いてリリアーナ!!」
服が乱れまくってしまい、かなりきわどいところを更に脱がしにかかってくるリリアーナ。
ヴァンエレンに掴みかかるリリアーナに驚いて、ミルクは後ろからリリアーナを引っ張った。
うわ、凄い力!
執念というか何というか、とにかく恐ろしい気迫と力だよこれ!
桜「リリアーナさんはいつもこうなのか、ミルクさん?」
ミルクと協力し、リリアーナを押さえる
ミル「違う!絶対に違う!なんの呪いか知らないけど、銀玉の呪いのせいだよこれは!」
レヘ「おっ!おっ!おっ!リリアーナ、服を脱がせるなら手伝ってやるぞ(笑)」
レベッカ大喜びである。
桜「貴女も煽るような事を言うべきでは無い、レベッカさん。」
こんな感じだからロクーの様子のおかしさに気付けない桜花
ミル「リリアーナの様子がおかしいよーっ!誰か引っ剥がすの手伝ってーっ!!」
レヘ「ヴァンエレンの服を引っ剥がすのなら手伝ってやるぞ?」
ミル「あんたは手伝うなーっ!!」
手伝いに来てくれた桜花とヴァンエレンを助ける努力をしていると、レベッカが余計な事を言い出した。
すぐに制止をかけたけど、時すでに遅し。
リリアーナから、レベッカが魔法を使うときに使うスペルカードが飛び出す!
レヘ「スペルカード!スールオ・ティエンフー!」
ミル「!それはさっきの…!!」
レベッカは先ほどカバメイドを武装解除(はっきり言えば全裸に)した呪符を準備した。
フリ「おやめなさいな!」
止めようとしてリリアーナの前に飛び出すフリージア
ギ「いけない!このままじゃお母さんがすっぽんぽんに!!」
慌てふためくギズモは、え~いままよ!とフリージアの前に飛び出す。
スペルカードは見事(?)ギズモに貼り付き、ぱっさり服が足下に落ちた。…多分。
なぜ多分かと言うと、先回の教訓に学んだあたしが急いで後ろを向いたからだ。
脱衣符の効果でわぁい丸出しのすっぽんぽんになるギズモ
男の子を脱がして誰得・・・・・どうやらレベ得のようである
ミル「ギズモナイスカバー。フリージア、ギズモに服着せてあげてね」
いそいそと脱げた服を着せるフリージア。使い魔の裸には慣れっこである
ギ「一人で着れるよ・・・・」
フリ「いいからじっとしてなさいな」
そういえば元から裸の連中にこのスペルカードを使うと やはり体毛が抜けるのだろうか?
なんだか怖い考えになったのでフリージアは考えるのを止めた
ヴァンエレンは、吸血鬼の力で引き剥がすと、飛んで瞬く間にリリアーナから遠ざかってクリスの背後へ隠れる。
ヴ「ひどいよ。
貧乳のばっきゃろー!」
クリ「・・・なぜ俺のところに来る。」
まあ確かにひどかったですが、人間の後ろに隠れる吸血鬼というのもどうかと。
ヴァンエレンに振りほどかれ、ミルクと桜花に押さえつけられたリリアーナはまだあきらめていなかった。
リリ「ふざけるな!放せ!あいつが持ってるんだ!あいつが持ってるんだ!」
髪を振り乱し、目は血走らせて獣のように吼える姿はまさに狂人である。
犬『ははっ!
無様だな』
そんな事を考えていたのは、あたしだけじゃなかったらしい。
でっかい使い魔の黒犬がご主人様をバカにして…あれ。
使い魔ってそんなに主人より立場が上だったっけ…?
リリアーナが黒犬を見ていることに気がつくと、ニヤニヤとしながらまた影へと姿を消していってしまった。
ミル「…ヴァンエレン…使い魔はちゃんと選んだ方がいいと思うよ…」
リリ「ふざけるな!返せ、私の玉を返せ!!」
ヴ「ひぃ!?」
黒犬の煽りに対して声を荒げて銀玉に執着するリリアーナ。
リリアーナの乱心は、ナナナが真珠玉をリリアーナに差し出すまで続いた。
ナナナはリリアーナの叫び声で異常に気づいて、瓶を持ったままナナナはオロオロし始める。
ナナナ「はわわ!も、もしかして、銀玉を持っちゃったんですか~!?」
レヘ「女が玉を握って何か問題でもあんのか?」
クリ(・・・そういえば真珠の玉にも銀の玉と同じ呪いがあるって言ってたっけ。
するとリリアーナはすでに呪いにかかっているのか? )
とりあえず争っているところはスル―してメイドゴーレムに尋ねることにした。
クリ「玉に呪いがあるって言ったよな?
その呪いの解呪法は知ってるか?
もしくはそれが書いてありそうな本の場所とか。」
フリ「なんだかわからないけどすっかり銀の玉の魔力にやられてるみたいですわねぇ・・・
ミシェル先生かアナスタシア先生、リムーブカースとか使えませんの?」
リムーブカース・・・解呪
この呪文は呪いを問答無用で解除してしまうという強力なものである
だがしかしかかし失敗すると同じ人間には二度と掛けられなくなるという大いなるリスクも同時に存在するのだ
アナ「一応使えるけど、あの呪いはちょっと強力そうだなー。失敗したら大変だから試さないぞ♪
ミシェルはどうだ?あの呪い、リムーブカースできるか?」
ミシ「解呪は無理ですね」
ミシ「そもそも、これは一般的な呪いとは少し違うと思います。良い品を手に入れたら誰でもみすみす手放したくないでしょう?
しかし、あのリアクションは一般人が魔法を手に入れ、失った時のそれに似ていますね。
まさか学園の生徒が魔法を扱えないハズなどありようがないでしょうに」
ナナナ「はうぅ…すみません、私は呪いの解除法はよく知らないのです…
メイド長ならご存じだと思いますから、少し聞いてみます!」
ナナナはそう言って、祈るように両手を組み合わせて目を閉じた。
ナナナ「メイド長~、銀玉に呪われる人が出てしまいました~。
解呪法か、解呪法が書いてある本はご存じないですか~?
…えっ!?…はわわわわ!そんな事して大丈夫なんですか~!?
それに、地下にはムムムさんが……はい、はい…
はう~。がんばってみます……」
しばらく独り言を言ってから、ナナナは若返りの秘薬を床に置く。
ロクーはナナナが床に置いた若返りの薬を手に取った。
ロクーの顔が映りこむほど磨かれた金色のビンにそれが入っている。
誰もロクーに気をとめない最中、ロクーを見つめるロクーの顔が不敵に笑った。
ナナナは真珠玉を台ごと持ち上げると、玉をリリアーナに差し出した。
ナナナ「え~と、とりあえずこの真珠玉を持っていれば、発作は収まるそうです!
呪いを解く方法は地下図書館の本に書かれているみたいですけど、みなさんどうされますか~!?」
フリ「当然行きますわよ!この姿のままじゃ満足に魔法も使えませんもの!!」
ナナナ「はいっ!それでは後でご案内します!」
その後、リリアーナに真珠玉を差し出すナナナだったが、勢いに押されたか威勢はいいが腰が引けている。
結局リリアーナが落ち着きを取り戻すまで、ナナナは特に何もしなかった。
リリ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぁ。」
荒い息をついて、地面にへたり込んだリリアーナ。
手にはしっかりと、レベッカと真珠玉が握られている。
どうやら正気に戻ったようだ。
リリアーナの目にまず飛び込んできたのは、武装解除されてしまったギズモ。
ぼろぼろになってクリスの背中に隠れているヴァンエレン。
心配そうにこちらを見ている皆。
リリアーナは右を見て、左を見て、そして自分の手を見た。
リリ「・・・・・・・・・・ぁ。」
リリアーナの顔がみるみるうちに青ざめていく。
どうやら自分が何をしたかは覚えているようだ。
真珠玉を手に入れ落ち着きを取り戻したリリアーナを見ながら
桜「露出狂では無く露出させたい狂だったとは驚きだ。
他人の性癖には興味が無いが私を剥こうとはしないでくれ。」
リリ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごめんなさい」
ぐうの音も出ないとはまさにこのことである。 リリアーナはその場に土下座した。
ヴ「ほんとにどうしちまったんだよぉ。
顔が怖かったし、まるで人が変わってしまったようだったぞ?」
リリ「言い訳はしない。だって自分がやったこと、ちゃんと全部覚えてるもの。
ミルクや桜花さんが止めてくれなかったら、私、何をしていたかわからない。
・・・・・・・・ヴァンエレン、ギズモ、それに皆、本当にごめん・・・・・ごめんなさい。」
最後の方は涙声になっているが、額を床にこすりつけているため顔は見えない。
桜「いや…あの……」
桜(泣かせるつもりじゃなかったのに……)
先程の言葉は桜花流の冗談だったのだが結果的にリリアーナを泣かせてしまったのである。
桜花は深く後悔した。
桜花の心無い一言でリリアーナは傷付いてしまったのだ
それからの桜花はずっと上の空だった。
桜(なんでこうなんだ…いつもそうだ……
人付き合いに向いて無いのかな………)
桜(なんでキツい言い方しか出来ないのだろう…
やっぱり一人で行動した方が…いいんだろうな、きっと。)
ロク「なぁ、メイドさん。もしかして、若返りの薬の作り方を書いた本とかもあんのかな~?」
ナナナ「始王様…ムウ王国最初の王様の墓が地下にあるんですが、そこに貴重な本も多数納められています。
確か若返りの秘薬の製造法が確立した時に、作り方を記した本は地下図書館に入れられたはずです」
ロク「へーそうなのかー。」
ロクーはある程度この答えを予想していたらしく、淡白な反応をした。
そもそもロクーの目的は、作り方を知って量産したいわけではなく…
リリ「ねえナナナさん、私、呪いを解くまで真珠玉を持っていて本当に大丈夫なの?
またヴァンエレンや皆に襲い掛かったりしない?」
ナナナ 「はい!それは大丈夫です!また手放さない限りは…ですけど……」
ナナナの声は、後半の説明部分に行くとどんどん小さくなっている。
リリ「それとヴァンエレン、さっきはごめん。
あんな事した私が言う資格なんか無いけど、その・・・・・・今、銀玉持ってるんでしょう?
体の方は何とも無い?
使い魔の性格がとんでもなく横柄になってるけど、それって銀玉の効果じゃないの?」
その問いを聞いてヴァンエレンはびくびくしながらクリスから離れたあと考え込んでから答える。
ヴ「く、詳しいことはわからないけど、銀玉のせいじゃないと思うよ。
リリアーナが玉をなくす前から様子がおかしかったから」
ナナナがロクーの質問に答えていると、アナスタシアがふよふよ近寄ってきて若返りの秘薬をのぞき込む。
アナ「ふーん。これが若返りの秘薬かー。
早速効果があるかどうかテストだぞ、フリージア♪
使い魔カプセルに押し込めてる、妖怪年増ババアを出して飲ませて見ろ。
どうなるか楽しみだぞ~ぷぷぷ♪」
ロク「おお!そうだ!そうだ!早速効果を試してみよう!」
ロクーもアナスタシアに大賛成した。
リリ「閉じ込めてないよ、治療してるだけだよね?
フリージア、あれからカプセルの中から返事はあった?」
レベッカいわく、妖怪は簡単に死なないらしいが・・・・・・・。
リリ「もしメイレンさんが息を吹き返していたら、お薬使って治療していい?」
リリアーナはレベッカに一応お伺いを立てた。
レヘ「どうせやめろと言ってもやるんだろうが。勝手にしやがれ。」
リリ「うん!」
フリージアの使い魔カプセルから出てきたメイレンを見てレベッカが大声を出した。
レヘ「なっ!?メイレンは生きていたのか!」
レン「おぉ…ぉぉぉおお?」
しかし、それは既にレベッカが知っているメイレンとはかけ離れた者になっていた。
蜘蛛の攻撃にあい、瀕死の重傷をおったメイレン。
蘇生してはいるものの、その姿はまさに老婆であった。
妖怪であるメイレンの、妖怪力の源は人肉食にある。
人肉を食べれなかったため妖怪力を補給できず、
若さを保つために使用していた妖怪力を、全て肉体の回復に使ってしまったのだ。
もっとも、妖怪とはいえ3000歳である。この姿が、本来の姿なのかもしれない。
レン「に…肉…」
リリ「え?・・・・・・え?!誰?!肉・・・・・って、まさかあれ、メイレン様?!」
ロク「なんだ?おわっ!?くすぐって~よ~(笑)」
メイレンはロクーによたよたと近づき、彼の腕をかじりとろうとしたが、
歯の抜けた顎が、ふがふがとロクーの腕を弱弱しく揉むだけである。
「あ…あわれだぜ。俺は今まで生きてきて、こんなあわれな妖怪を見たことがねぇ。
あのぼろぼろの布切れが、ピンク色の瀟洒なドレスだったのかぁ?
あのしわだらけでしぼんだ顔が、数時間前はぷにぷにだったのかぁ?
身長も230センチあったんだぞ…腰もひん曲がっちまって、ほとんどリーと変わらねーじゃねーか!」
ミル「一気に反動が来たというか何と言うべきか…取りあえず、レベッカは本人の前であわれ言うな」
リリ「・・・・・・・妖怪って、やっぱり人とは違うのね」
(こんな状態になっても死ねないんだ・・・・・)
それがいいことなのか悪いことなのか、今のリリアーナにはわからなかった。
リリ「傷のほうは完全にふさがってるみたいだね。
誰か、メイレン様に掛けてあげるものを持ってない?」
ロク「なあ、薬の作り方がわかれば、後からいくらでも作り出せる。
だから今ここにある薬は、この婆ちゃんに飲ませてやろうぜ!」
ロクーはそう言うと、薬の蓋を開け、メイレンの歯の抜けた顎の中に押し込んだ。
ギ(作り方がわかっても材料が手に入るか不明だというのに・・・ )
レン「アババババババ…!?」
リリ「え?ちょっと待って乱暴しないで!そんなにたくさん飲ませて大丈夫なの?!」
ミル「いや待て待て大丈夫じゃないから!用量用法を守れって言われてたから!」
と、止めた時にはもう手遅れ。
ロクーは問答無用で、瓶の中身をメイレンさんの口に流し込んでしまったのだ!
ミル「待てって言っただろうが!飲ませすぎてメイレンさんが消えたらどうする気だーっ!?」
な ん と い う こ と で し ょ う !(劇的ビフォーアフター風に)
メイレンの体に水々しさが戻り、肌の張りも戻ってきたではありませんか!
そう、メイレンは3000歳から、200歳くらいまで若返ったのだ。
ロク「すげー、俺よりも若くなったんじゃねーか、あのババア。」
今のメイレンの見た目は人間でいう17歳くらいである。
来ているドレスがぼろぼろなので、男性陣は目のやり場に困るかもしれない。
ヴ「なんと…薬の力によってこうも変わるものなのか」
リリ「元の外見に比べると、10歳か20歳くらいしか変わってないね。
あの薬全部で100年くらいの効果なのかな?」
容量を間違えて消滅してしまった人間の話を聞いていなかったため、リリアーナは外見で判断していた。
ミル「メイレンさん長生きだから、さすがにそれはないんじゃないかと思うけどね…」
キ「・・・・・あれって人間が飲んだら胎児まで戻って消滅するよ絶対」
ギズモにそう思わせるだけのすさまじい威力であった
3000年生きているメイレンだからこそ量を測らずに大雑把に飲ませて無事だったに違いない
どちらにせよこれでここにあった若返りの薬は消え
同時に最凶の妖怪が復活したのである
リリ「こらー!ロクー見ちゃダメ!!」
リリアーナはロクーを強引にあさっての方へ向かせようとしたが、彼は抵抗した。
ロク「ばかー!こんなすげーもん見逃せねーよぉ!」
“こんなすげーもん”とは若返り薬の効果のことで、メイレンの豊満な乳房のことではない。
リリ「他の男性陣もあっち向いて!!
誰かメイレン様に掛けるものとか持ってない?」
クリ(・・・ああ、そういやぼろきれになってたもんな。
俺はもう見てないからそのままでも関係ないが。 )
ヴ「む…?そうだな」
女性体とはいえ中身は男性のヴァンエレンもクリスにならってあさっての方向を向く。
リリ「えーと、メイレン様、今まで起こったこと、どこまでご存知ですか?」
レン「話は全て聞かせてもらったわ。」
レヘ「(…あれ?なんかキャラが変わってね?)」
メイレンははきはきとした様子で話を続けた。
レン「私自身に何が起きているのか、それも把握しているつもりよ。
どうやら、私は2800年ぐらい昔の、200歳の体に戻ったようね。
この若返りの薬は、どうやら性格や能力も当時の状態に戻してしまうみたいなの。
ただし、意味を操る能力が失われた今でも、あなた達と西洋語で会話できるということは、
知識や経験などはちゃんと引き継がれているみたいね。」
レヘ「なるほどなぁ。それにしても、昔のお前がそんなキャラだったとは意外だったぜ。
よぅ、なんなら久しぶりに母ちゃんと呼んでやろうか(笑)?」
レン「やめて。」
レヘ・リリ「「……えっ?」」
レン「さっきも言ったとおり、性格も200歳当時のものになっているわ。
悪いけどメイテン、あなたを娘だとは思えないのよ。」
レヘ「ふーん、まぁいいけどよ。だいたい、俺だっててめーを母親だなんて思ってねーよ。」
レン「それで結構。」
メイレンは冷たくそう言った。レベッカは顔には出さなかったが(?)、少し寂しいような気がした。
(え?え?つまりレベッカさんが娘と思えないってことはつまり・・・・・・。
「娘が死んだ復讐という本能」も消えたってことっ?!)
レベッカが死の報復を受けることになっているリリアーナ達にとっては、とても喜ばしい知らせである。
だが、それはつまり、メイレンと子供達との間の絆が切れた事を意味する。
リリアーナとしては複雑な心境だったが、確認しないわけにも行かない。
『ナナナさん、この若返りの薬の効果は一時的なものなの?
それとも永続的なものなのかな?』
口にすることは憚られたリリアーナは、テレパシーでナナナにたずねた。
『例えば、メイレン様が200歳になったのは一時的なもので、薬が切れたら元の3000歳に戻るの?
それとも今後は201歳、202歳って感じで歳を重ねていくのかな?
もしも前者なら右手をあげて。後者なら左手をあげて。どちらも違うなら、両手をあげてくれない?』
ナナナ「はうっ!?えーとえーっと…はわわわわ……」
リリアーナに念話で話しかけられたナナナは、最後まで聞いた後でおそるおそる左手をあげた。
どうやら、若返りの薬は永続的効果が期待できそうだ。
フリ「これで後はリリアーナさんとミルクさんの呪いを解くだけですわね」 リリ「いや私は別に・・・・・・」
リリアーナは言葉を濁した。
彼女にとっては、胸が大きくなったのは呪いではなく祝福である。
リリ「それよりフリージア、自分も呪われてるの忘れちゃダメでしょ!!」
フリ「ああ・・・そういえばそうでしたわね」
フリ「とは言っても私の場合は時がすべてを解決してくれるから大したことじゃありませんわ」
はたして本当にそうなのだろうか?
例えてみるならば今のフリージアさんは中盤のダンジョンでレベルドレインされてしまったようなものであり
何らかのパワーアップ手段をとらなければ足手まといの状態である
やはり恥を忍んでギズモと合体しサキュバスルックになるしかないのか?
フリ「・・・・私は嫌ですわ」
ミル「いやいやいや、リリアーナも玉の呪い解いておかないと、帰ってからの生活に支障がでるよきっと」
リリアーナの脳裏に、自室で玉を取り上げられたり戻されたりして遊ばれている自分の姿が浮かんだ。
リリ「そ、それは困るわ!!」
メイドが真珠の玉を持たせた事でリリアーナの狂乱状態は一時治まる。
しかしこれとて時間稼ぎだ。何時までも持つはずはない。
ミシェルはワザと床を蹴るよう音を立てて歩き、皆をこちらへと注目させる。
ミシ「しかしどの道、地下に行けば三つの玉は必要ですからね。向こうに行ってからあるだのないだの口論するのもアホらしいですし
ここで玉の在所をハッキリさせてしまいましょう。真珠はリリアーナ君。銀は暫定吸血鬼さん。金は………どこです?」
リリ「メイレン様、金玉の行方をご存知ありませんか?
玉が三つ揃わないと、色々不都合あるらしいんですけど」
クリ「・・・その前にレベッカ、地下の広間で金の玉をメイレンが食べたって言ってなかったか?」
レヘ「食ったぜ~、超食ったぜ~。」
ミル「えっ…どうするのそれ…まさか、消化とかしてないよね?吐き出せるの?」
ミシェル先生が言うには、どうも地下図書館に行くには玉が三種類必要なようで。
でもその金玉はメイレンさんが食べちゃってて…なんとか吐き出してもらうしかないよね、これは。
レヘ「仮に吐き出させるとしてもだ。そいつは後にした方がいいぜ。
さっきのリリアーナの様子、あれと同じような状態にメイレンもなってた。
一見人畜無害のリリアーナでさえあの騒ぎだ。メイレンが暴れたらえらいことになるぞ。」
フリ「私は嫌ですわよ!メイレンさんの口の中に腕を突っ込むなんて!!」
もし仮にそんなことをしたらフリージアの腕が食われてしまうだろう
ギ「僕かヴァンエレンさんなら・・・・でもヴァンエレンさんは元は人間だったし・・・
やっぱり僕が腕を突っ込まなきゃ駄目なのかな?」
別に吐き出させるのに口に腕を突っ込まなければいけないという道理はない
例えば空間転移系の術で取り出しても良いのである・・・・内臓ごと転移してしまう危険性もあるが
まあその事はその時になって考えればいいか・・・とフリージアは考えるのを止めた
ミル「能力最盛期の大妖怪に大暴れなんぞされた日には、あたしたち全員生きて帰れないって…
しかたない…金玉の事は後回しにしますか…」
リリ「ギズモも間違っても手なんか突っ込んだらダメだよー。今のメイレン様、あんまり冗談通じなさそうだし。
ところでレベッカさん、若い頃のメイレン様の能力って何だったか聞いてない?
とりあえず、言葉の意味を操る能力では無いっておっしゃってたよね?」
当人に聞けばいいのかもしれないのだが、いかんせん性格が良くわからない。
さすがのリリアーナも、いきなり地雷を踏んで死亡フラグだけは避けたいようだ。
アナ「おーい、おまえたち大事な事忘れてるだろ?」
話は聞いてるだけで宝物庫を漁ってたアホ姉が、そんな事を言い出した。
アナ「ターロンだよターロン。あの妖怪魔法使いを放っておいていいのかー?」
フリ「ターロンって誰だったかしら?」
ギ「ほら、あの・・・・え~と超選民思想の・・・」
ギズモもうろ覚えである
……。そういやいたっけ、そんな奴。
ミシェル先生のシモネタは理解できなくてもさすがは天使、アホ姉はちゃんと覚えてたみたい。
アナ「…空気すぎて忘れてたよ。何もしてこないから無害そうだし、スルーしていいんじゃないの?」
(176で〆)
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最終更新:2009年09月25日 18:48