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7:地下墓地:ムムム戦


桜「友達なんだから、か…」
桜花は自重気味に微笑んだ。
桜「聞いての通りだ。私の友が通る道を行きたければ私を力付くで退かす事だ。
見習い魔法使いだが噛みつけばそれなりの手傷は覚悟してもらう。」
両手には鉄製のナイフを 持ち、桜花の周りには魔力ナイフが次々と現れる
ムム「なかなかやるじゃない。でも、あなたはあの女みたいに非常識な力は持っていないの?
 頭を貫かれても大丈夫なら、体が真っ二つになっても生きていられるか試してみたいわ」
あの女、つまりメイレンの方を見ながらムムムはそう言った。
桜「心外だな。私は非常識なんかではけして無い。
ただの普通の見習い魔法使いの女の子さ。」

レン「聞くだけじゃいや~ん!誰だか知らないけど、助けて~!」
メイレンはすっかり涙目である。
桜「少々時間をください。今下手に動いて後ろからバッサリって言うのも勘弁願いたいので。」
戦力的にもメイレンを懐柔しておかなければじり貧必死な桜花
かといって今動けばバッサリ切り捨てられる
ムム「私が行かないでどうやって目当ての本を見つけるつもりなの?
 地下図書館の情報は、全部図書館の管理人から私が引き上げたわ。
 私抜きで必要な情報が得られるはずがない」
自分を封じる方法を探しているとは知らないムムムだが、仮に知っていても自信は変わらなかっただろう。
木を隠すには森の中、地下図書館に納められた知識の膨大さは、そのまま必要な情報の得難さにつながるのだ。
桜「…もしリリアーナさんたちが見つけられなかったら、貴女を喋れる“だけ”の状態にして連れていくだけさ。」
桜(実行するのはかなり……いや、多分無理だろうが)

レン「うわ~ん!私が悪ぅござんした~!何でもしますから命だけは助けて~ん!」
じたばたするメイレンの言動を見て危険性は低いと判断し、ムムムは再び桜花に目を向ける。
ムム「私の言う事を聞けば命は助けてあげるわ。
 あなたの近くにいる吸血鬼を永眠させてあげて。
 頭に槍が刺さっていても見えなくても、あなたの能力なら簡単でしょ?」
ヴ「ちょ!おま…!」
何を言っているのか、という前にメイレンと目が合った。
ヴ「そんなことしないよね?
 大丈夫だよね??」
レン「無理よ~!(うえ~ん!)」
ムムムの言葉を受け、駄々っ子のようになるメイレン。
オウカの言葉も、今の彼女の耳には入らないが、
それは幸い、ムムムの言葉にも耳を傾けない働きをしていた。

桜「騙されるな!彼女の行動目的は命在るものを眠らせる事!
そんな者が言う事を聞いたくらいで自分の存在意義を捨てる筈がない!」
メイレンの命乞いにムムムが反応した。ここでメイレンがムムム側についたら桜花は完璧にアウトである。

ヴァンエレンを攻撃するようメイレンに言ってから、ムムムは桜花に鎌を向ける。
胸元では、再び三つの玉が明滅し始めた。
ムム「朝目が覚めて、もっと眠っていたかったって思ったことはない?
 死んでしまえば眠っているのと同じ、悲しいこと苦しいこと痛いこと全部なくなっちゃうの。
 死は怖くなんかない、あなたの近くにいつもいる友達よ。
 目を閉じて、ゆっくりおやすみなさい」
そう言い終わったときには、ムムムは桜花の前にいた。
桜花にはわかるだろうが、時間を操作して近づいたのだ。
桜(なん……だと………?)
ムムムは桜花の目の前に現れた。しかも、ただ現れた訳ではない。
時間を操り、移動してきたのだ。
ムムムは下からすくい上げるように、鎌で桜花に切りつけようとした、まさにその時!
ルス「にゃんにゃ~ん!」
・・・・・・・・・空間の裂け目から現れた黒猫が、ちょうどムムムの足元を横切ることになった。
それは果たして、どちらにとって不幸だったのだろうか?
桜「……!!!」
振り上げられる大鎌をあわてて回避する。前髪が数本斬られる。
桜(間一髪とは正にこの事だな!)
ルス「カバメイドが襲ってきたのですわ~!大変なのでs・・・・・・へぶしっ!!」
哀れルズはサッカーボールよろしく、ムムムに天高く蹴飛ばされることになった。
鎌は玉の力を得て空間を切り裂く力を持っているので、どんなに固い物でも防ぐことはできない。
さらに切られた空間はすぐに元に戻るが、空間と一緒に切られた物は元には戻らないのだ。
近くの墓石を切り裂きながら振り上げられる鎌を桜花が避けたなら、ムムムは第二、第三の連撃を行うだろう。

ルス「あ~れ~!!死ぬ死ぬ死ぬぅ~!誰か何とかするのですわ~!!」
桜「…だから……どうして、こう厄介事が次々に起きるんだ!」
突如ムムムの足元に現れた黒猫。そのままムムムに蹴り飛ばされ宙を舞う。
桜「“時”よ、止まれ!」
周りの時間は緩慢になり、やがて止まる。大鎌も桜花の目の前で止まっている。
桜(やることは3つ!攻撃をかわす、猫を助ける、メイレンの拘束を解く!)
桜花は多数の魔力ナイフをムムムに向け、発射する
魔力ナイフはムムムの眼前まで迫り、止まる。
次にメイレンを拘束している石槍に向かって二本のナイフを投げる。
最後に跳躍し、黒猫を抱き止める。
桜「ここで時間は動き出す。」
ムムムの体には大量のナイフが突き刺さり、まるでハリネズミのようになる。
そして、メイレンを拘束している石槍に二本のナイフが同じ角度、同じ位置に刺さる。
一本が楔の役割を果たし、もう一本がそれを押し込む。メイレンを拘束している石槍が折れる。
その叫びだけは、妙に頭に残ったメイレン。
それもそのはず、その瞬間から自由になったのだから。
レン「死ぬ~!死んじゃう~!……ハッ!?」
もっとも、それに気づくのには若干時間を要したが。

ルス「ああん!フリージア女王様の次に素敵なおねいさまはっけーん!
 おねぃさまん、危ないところをありがとうございました~。おかげで助かりましたわ~ん!!」
ルズはドサクサ紛れに桜花の胸に頬擦りしたが、残念ながらナイフに阻まれ感触は楽しめなかった。
ルス「全く、一体何がどうなっていますの~?
 地上の図書室でお茶していたら、カバメイドに襲われましたし~。
 突然現れた空間の裂け目に逃げ込んだら、大鎌持ったメイドに蹴り飛ばされますし~!」
桜「猫君、すまないが今のここは大変危険だ。降ろすから早々に逃げた方がいい。」
ルス「わ、わかりましたわ~ん」
ルズは桜花から飛び降りた。
ルス「でも、おねいさまはどうなさいますの~」
助けた猫は地面に降りる
桜「私は友達と約束したからな。彼女をここで全力を以て食い止める。」

ムムム「まさか時間を止められる人間がいるなんて思わなかったわ。なかなかね。」
桜「お褒めいただき光栄だが貴女も似たような事が出来るみたいだな。」
全身にナイフが刺さったまま、ナナナはそれでも動き出した。
ルス「にゃ、にゃんですのあのメイドは~~~~!!!」
さすがのルズも、あのメイドが敵だという事くらいは把握したようだ。
そして、槍で頭を刺されていたメイレン(にしては若すぎるが)と敵対していることも。
ムムムが胸元を守るようにしていた片腕をどけると、3つの玉が再び明滅し、刺さった魔力ナイフが砕け散る。
少し前にメイレンに攻撃された時と同じく、ムムムの体はまた元通りになった。
ムムム「でも残念でした。何回攻撃しても同じ事の繰り返しよ。
 新龍の攻撃でも私を壊す事なんてできなかったんだもの。
 痛いのは最初だけなんだから、目を閉じて静かにお逝きなさい」
桜「………………」
桜(なに、予想していた事だ…私のナイフ程度で傷が与えられない事くらい)
メイレンの掌低をまともに受けてもピンピンしている相手にナイフが通じる筈もなかった。

レン「……ごほん!ごほん!…まあ、さすがといったところかしら?
 もしもあなたが私に止めをさそうとして近づいたら、
 油断しているところを逆に返り討ちにして倒すつもりだったけど、
 さすがに、そんな手にひっかかるほど幼くはないようね。」
メイレンは、先ほどの醜態がまるで演技であったかのように取り繕った。
レベッカに見られていたら、きっと『幼いのはてめーだろ(笑)』と言われていたに違いない。
桜「やれやれだな…」
石槍を頭から抜いているメイレンを見ながら溜め息をつく
どういう経緯はあれ、状況は“敵の敵は味方”になった

ムムムは、頭を刺されてもまるで平気なメイレンを見た。
ムムム「頭を刺されても大丈夫なんて、ゴキブリより生命力が強いのね。
 どうしたらあなたを掃除出来るのかしら?」
レン「さてと…私ももうそろそろ本気を出そうかしら?」
メイレンは頭の槍を抜きながらそう言った。
ムムム「悪いけど、あまり長くはお付き合い出来ないの。
 地下図書館に先に行った人たちのお手伝いをしないといけないし、1人で2人は相手したくないもの」
ルス「だ、誰か大事な者を忘れてませんこと~?!」

地団駄を踏んでいたルズは、ベルジンに気づきはたと動きを止めた。
彼女の目がきらーんと光る。
ルス「えーい、天誅ですわ~!」
ルズはだだっとベルジンに駆け寄ると、どーんと体当たりを試みた!
ベル「うぐっ……なっ…何のつもり…だ…」
いきなりの突進に流石のベルジンも痛みを隠せない
片手でぶつかった場所を抑えるとうめきながら理由を尋ねた
ルス「何をなさっておられますの~!こちらに来てわたくし達を助けて下さいまし~!!
 こ、この期に及んで高みの見物は許さないのですわ~!」
教師に向かっていい態度であるが、ルズも必死だった。
ベル「だ…だからと言って…物理的な攻撃は…」
ベルジンは積極的に関わるつもりが無かったのを見透かされているようだった
勿論 生徒たちに危険が迫るようであれば身を呈して戦う意思はあったが
他の教師も付いている事だし自分自身がわざわざ動く必要は無いとも思っていた
ルス「ついでに、ここはどこですの~?何でメイレン様が若返っておりますの~?
 私にも分かるよう状況を説明してくださいまし~
 あのメイドと桜花様の戦いをご覧になっていたのでしょう?な、何か攻略法とかありませんの~?
 ――――え?な、何なんですの・・・・・・・・?」
不穏な気配を感じたルズは、慌ててメイドの方を見た。
ベル「わ…わかった…状況が状況ではあるようだ…
私も力を貸そう…」

ムムムはポイと手にした大鎌を投げ捨てた。
大鎌は一度地面に当たって弾み、二度めの着地をする前に溶けるように消える。
ルス「お・・・・・・・おーほほほ!」
何を思ったのか、ルズは急に元気になった。
ルス「ついにわたくしの美しさ、気高さ、強さにひれ伏す気になったようですわね~ん!
 ま、まあ、あなたがどうしてもと言うなら、今までの無礼は水に流してもよろしくてよ~ん」
ムムム「武器なんて飾りよ。強くない人にはそれがわからないの」
バシンと大きな音がして、ムムムから離れた場所の墓石がずり落ちた。
また同じ音がして、今度はムムムの足下の地面が大きく裂ける。
ルス「・・・・・・・・・・・・」
ルズは決めポーズのまま、ぽかんと大口を開けている。
桜「……!!!」
ふと、やな予感がした桜花は身を屈める。
今まで桜花の上半身があった場所が無形の刃で斬られる。
髪をまとめていたゴムと後ろ髪が数本切れる。
桜「今日は本当に間一髪が多いな…!」
まとめていた髪が肩にかかると共に冷や汗が流れ出す桜花
ムムム「私は近くでも遠くでも、物を空間ごと斬ることが出来るの。
 狙いをつけるのも面倒だから、私に近づかない限りは適当に攻撃させてもらうわ。
 空間がずれるのを止めない限り防げないから、死ぬのが嫌なら死ぬ気で避け続けなさい」
レン「あら、ご丁寧に説明をありがとう。なら、私の能力についても教えてあげるわ。
 私は自分が触れたものと、すごく近くにあるものに対して次元を変える能力が使える。
 そして、もう私はあなたの弱点がわかっているわ。死ぬのが嫌なら私を避け続けなさい。」
桜「弱点………だと…?」
桜(今の戦闘だけで見切ったと言うのか?)
踵を返して地下図書館へと足を向けるムムムの胸元では、3つの玉が明滅ではなく光り続けている。
バシンバシンと空間を斬る音はますます早く多くなり、墓地に残った者たちに無形の刃が襲いかかる。
ルス「にゃ、にゃんですと~~~~!!」
まさに最恐vs最狂。
両者の戦いの場には、間違っても居合わせたくないものである。

レン「さてと、まずはこのうっとおしい攻撃をなんとかしましょうか。ねぇ、あなた。ダンスは好き?」
桜「嫌いではないが、たしなむ程度だな。今の状況と一体なんの関係があるんだ?」
レン「わかってるわよ。さっき私を助けたのはあなたでしょう?
 余計なことをして。後で命を落とすことになっても知らないわよ。」
桜「……あれはあなたが助けてといったんじゃ…」
メイレンににらまれた気がしたので口を閉じる。
そしてメイレンは、ちゃんちゃかちゃんちゃか踊りを踊った。
しかし、ただ無意味に踊ったわけではなかった。メイレンの足元の砂が、
彼女のステップと共に舞い上がる。それは、光の粉のようだった。
メイレンが次元を変える能力で砂の“重さ”を“明るさ”に変えたので、
その光る砂ぼこりは、もうもうと立ち昇るばかりである。
レン「見てごらんなさい。あのメイドの空間を切る刃、これでよく見えるようになったわ。」
無形の刃が通ると、光る砂埃にくっきりと筋が残る。
多少は無形の刃を避けやすくなっただろう。
桜「軌道さえ見えれば移動は容易いな。」
ルス「でも回避しやすくはなりましたが、刃が消えたわけではありませんわ~。
 空間ごと斬られては攻撃を受け止めることも不可能ですし~。
 これ以上速度を上げられたら、細切れ肉になるのも時間の問題・・・・・・ふぎゃ~!!」
ルズは間一髪で刃を避けた。

ベルジンは、ルズに体当たりされた患部をさすりながら、一歩をふみだした
ベル「………痛い………」
ムム「もっと痛い目にあいたくはないでしょう?
 あなたもあちらの人と一緒に大人しく見ていなさい」
一歩を踏み出したベルジンに、ナナナはミシェルを見ながら警告を発した。
そして警告通りベルジンの前方にも刃を飛ばす。
ベルジンがそのまま前に進めば、空間ごと切り裂かれてしまうだろう。

ヴ「あばばば!」
こちらはヴァンエレンサイド。
ムムムの絶え間なく襲ってくる空間斬撃をギリギリのとこでかわし続けるヴァンエレン。
メイレンのおかげで刃が避けやすくなったとはいえ、これではいつまでたってもキリがない。

ルス「それにしても、空間ごと斬ってるのなら、先に下に降りたフリージア女王様達はご無事かしら~ん?」
ルズは、ムムムに斬られた床を覗き込んだ。
ルス「ふむふむ、下の階の床までは切れてないようですわね~。」
ふと気がついたルズの一言にヴァンエレンに電流を走らせた。
ヴ「ならば下の階に行けば攻撃は止むというわけか。
 よし下までレッツらゴー!」
でもどうやっていくんスか?
ルス「あれ?今黒い犬がいたような・・・・にゃにゃっ!
 ぬぬ、頭が抜けませんわ~!大変ですわ~!!」
割れ目に頭を突っ込んだまま、ルズはじたばた暴れ始めた。
うまい具合に挟まっている。誰かが思いっきり引っ張らないと抜けないだろう。
ルス「ちょ、吸血鬼!あなたは不死者なんだから切れても平気でしょ~!
 ここはいたいけなわたくしのため、その身を盾にして守るのですわ~!!」
ヴ「くそう!見捨てたいけど見捨てられない!
 神様お助けくださいぃ~!」
戦場に神などいない。
それ以前に吸血鬼が神様に懇願すんな。
本気を出してひっぱると頭がもげてしまいそうで不安なヴァンエレンは力を加減して引っ張るがそれではビクともしない。
ルス「ちょっとちょっとー、吸血鬼がなに神様に祈って・・・・・・・・いたたたたたたた!!!
 もげる!もげる!首がもげるぅ~!!」
吸血鬼の力をもってしても、ルズの頭はびくともしなかった。
にゅーと伸びていた首がずきずきする。
ルス「ああっ、なぜ高貴でらぶりーなわたくしがこのような目に・・・・・
 はっ、わかりましたわ!それもこれも全部、さっきの黒犬の呪いなのですわ~!!」
ルズは裂け目から目撃した、黒犬の目つきの悪さを思い出していた。

ヴ「ええい!引いてだめなら押していけぃ!
 そのメイドはお二人に任せましたぞ!」
床を全力で殴りつけるとヒビが広がってヴァンエレンとルズがいた床が崩れ落ちる。
人間一人分くらいの穴を開けてそこから下の階へ落ちる吸血鬼と一匹。
ヴ「ぎゃふん!」
着地に失敗したヴァンエレンは頭から地面に落下してしまって不恰好な形で着地する。
ちなみに黒犬はこれを予知していたのか、あらかじめ離れた位置に移動している。
犬『がはは!ざまぁ!』

桜「ところで、彼女の弱点とは一体なんなんだ?彼女は…」
桜「時間“停止”、時は止まる…」
メイレンと話している途中で時を止める。
メイレンの『弱点はわかった』発言でも止まらなかったムムムの足がピタリと止まる。
桜花の周りに浮いているナイフが再びムムムに向かって飛んでいく。
足に狙いをつけて
桜「これで少しでも時間が稼げればいいんだがな。」
桜「そして時は動き出す…」
桜「貴女の攻撃を受けてもピンピンしている化け物だ。」
時が動き出すと何事も無かったようにメイレンとの話を続ける。
魔力ナイフはムムムの両足めがけ殺到する
レン「答える必要はない…と言いたいところだけど、教えてあげるわ。」
動き出す時間とともに殺到するナイフを、ムムムは避けようともしないで受けた。
すぐに足に大量のナイフが突き刺さるが、胸元の玉の輝きが強まるとナイフは次々に砕け散る。
レン「今見た通り、そして今まで見てきたとおり、
 私達が彼女を攻撃しても、胸の玉が光ると回復してしまう。
 つまり、あの玉を光らせないようにすれば回復できなくなると私は見ているわ。
 そして、それができるのが私の能力…“次元を変える程度の能力”。
 今、光る砂が重力を失っている、その逆の原理で…」
メイレンはムムムを追いかけた。とにかく、彼女に近づかなければならない。

ムム「あなたたち少し鬱陶しいわ。うるさい小虫は退治しておかなきゃね?」
桜花の攻撃は足止め効果を十分に果たし、ムムムは地下に向かわずに桜花とメイレンを攻撃対象にした。
そしてメイレンに向けて片手を突き出す。
桜「ちょっと待て!彼女は―。」
ムム「あなた、さっき私の弱点がわかったって言ったわね。
 でも私はあなたの弱点がわからないの。
 そんなの不公平だわ・・・だから、今からあなたの弱点を調べてあげる。
ムム 【時よ止まりなさい】」
桜(止められた!…………!!…見える!理解した!真に時を止める術を!)
止まった時の中に介入する事は出来ないが認識する事が可能な桜花は何か掴んだようだ。

桜花と同様に時を止めたムムムは、メイレンの周りに3本の刃を配置した。
ムム「【時よ動きなさい】
 体がバラバラになってもまた元通りになれるかしら?」
時間は動き出し、見えていても避けられなければ関係ないとばかりに、メイレンに3本の空間を裂く刃が迫る。
桜「メイレン、避けろ!」
レン「ひぎゃっ!?」
メイレンが短く悲鳴をあげた。メイレンは止まった時間を認識さえできない。
ムムムの刃を回避することは不可能だ。
メイレンは、まるでまだ時間が止まっているかのように立ち止まっていたが、
やがて、右の肩から先がボトリと地面に落ちた。光る砂の上に、赤黒い池ができる。
攻撃を避けも防ぎもできずに右腕を切り落とされたメイレンを見て、ムムムは満足して笑った。
桜「っく…!」
目の前の凄惨な光景に思わず目を伏せる桜花。し
レン「あなた…私の言うことが聞けるわよね?」
メイレンがオウカに呼びかけた。
桜「生きて……いるのか?」
レン「私は今…一体どうやったのかわからないけど、知らないうちにあの女に斬られたわ。
 右肩、胴、首…はっきりいって致命傷だわ。一歩でも動くとバラけてしまうでしょうね。
 でも、ここが大切なポイント。私はまだ生きている。」
メイレンは、うっかり体を動かしてしまわないように視線だけを落として、地面に落ちた自分の右腕を見た。
メイレンはその手が開いたり閉じたりするのを確認し、まだそれが自分のコントロール下にあることを確かめた。
レン「あなたが私の言ったことを信じるなら、とるべき道は二つよ。
 一つ目の道は、動けなくなった私のそばへあの女を連れてくること。
 二つ目の道、さもなくば、私の右手をあの女の胸の玉に触れさせること。
 そうすれば、私の能力であの玉の輝きを奪うことができる。
 どちらの道も、今動くことができるあなたが成就しなければならないわ。生き残るために。」
桜花はメイレンの言葉を聞き複雑な顔をした。
桜「私は…貴女の事がよくわからなくなってきた。
貴女は本当に世の中で言われている、最恐の大妖怪なのだろうか?
そんな身にありながら私に生き残る道を示してくれる貴女が…」
メイレンが気がついた時、桜花はすでにメイレンの腕を拾いあげていた。
桜「貴女の紡いでくれた可能性、無駄にはしない。グラッツェ(ありがとう)、メイレン」

次の瞬間には桜花はムムムの背後にいた。
桜「私はここに来て三つの出会いに感謝している。」
ムムム「なっ…」
今まで前にいた相手の声が、自分のすぐ後ろから聞こえる。
その事実にムムムは驚きの声を上げた。
時間を止めて近づこうとしても知覚できると思っていたのに、できなかったのだ。

┣゛ ┣゛ ┣゛ ┣゛ ┣゛ ┣゛

ムムムの背後から異様な雰囲気が流れ出している
桜「一つは私の事を友達と呼んでくれる人達に会えた事。
2つ目は偉大な大妖怪、メイレンに会えた事。
最後に……」
ムムムは振り向きながら、すぐに自分の周囲を広範囲に切り裂こうとした。
しかし、空間を裂く刃は発生しない。
ムムムに大量の魔力を送り込んでいた3つの玉は、すでにメイレンの能力で輝きを失っている。
ミシェ「響くん、大丈夫かな?」
ミシェルは桜花に声をかけた。
桜「真に時を止める方法を教えてくれた貴女に会えた事だ、ムムム。
貴女のおかげで紛い物の静止時間ではなく、本当の静止時間を操れるようになった。
グラッツェ(ありがとう)、ムムム。そしてアリーヴェデルチ(さよならだ)」
ムムムの胸元から3つの玉が外れて落ち、床に転がる。
振り向いて桜花を見たその姿勢のままで、ムムムは最初の時ように精巧な石像に戻った。
しかし、これで全てが終わったわけではない。
メイレンの頭を貫いた台座が元の姿に戻ると、ムムムは瞬時に台の上に戻る。
もしもう一度3つの玉がはめ込まれれば、ムムムは再び動き出すだろう。

大妖怪達の戦いは終わった。
オウカは、メイレンが思っていた以上によくやってくれた。
オウカがムムムの胸元に当てたメイレンの腕は、三つの玉の輝きを失わせたのだ。
そしてムムムは石j像に戻る。メイレンが、そのつもりでやったように。
しかし、一見勝利したかに見えるこの戦いは、犠牲も大きかった。

レン「私は、ただひたすら、強くあろうとした。それが大妖怪の生きる理由だと信じて…」
メイレンは、誰に言うでもなく、たんたんと語り始めた。
レン「やっと追い続けたものに手が届いた気がする…
 神竜…その称号は、私にこそふさわしい。」
次の瞬間、あたりにただよっていた光る砂はただの砂となって地面に落ち、
大妖怪はバラバラになった。

ムムムは石像に戻った。
ミシェル先生が何か言っている。
しかし、今の桜花はある一点しか見えていなかった。

崩れ落ちるメイレン

これしか見えていなかった
桜「…メイ……レ…ン……」
(マズイ……初めての…世界………消耗が…)
そのままふらふらと倒れる桜花
近付いてきたミシェル先生が桜花の顔をみると彼女は大粒の涙を流しているのが見えるだろう
「ミシェル先生……このまま二分…ほど……気絶させてくだ…さい。
二分経ったら…また起きますから。辛い事も受け入れるから……。だから、二分だけ………」
ミシェル先生にそれだけ告げるとそのまま桜花は気絶する。

ベル「シュスター先生…彼女はよく頑張ってくれた…」
ふと現れたベルジンはミシェルにそう呟くと
防虫剤の臭いが漂うコートを脱ぎ、横たわる桜花にそっと掛けた
ミシ「ええ………」

ベ「…私は何もできなかった…か………」
アナ「まだまだ活躍の場くらい、いくらでも残ってるぞー♪
 とりあえずー、桜花が起きたらこれ飲ませてやれ。
 回復薬だから飲めば少しはましになるだろ♪」
一方、階上の異変について聞いたアナスタシアは、図書館の事は放り出して墓場に戻ってきていた。
ベルジンに回復薬を渡した後、倒れた桜花の横にしゃがみ込んで頬をツンツンするアナスタシア。
それからやっと、バラバラになったメイレンと、石像になったムムムを交互に見比べる。
アナ「下ではロクーがクリムゾンヘッドォ!とか叫びながら暴れ出したんだけど、上も大変だったみたいだなー。 」
崩れ落ちた桜花をぼんやり見ていたミシェルにいつの間にか来ていたアナスタシアが喋りかけてきた。
アナ「なにがあったのか簡単に説明してもらっていいか?」
ミシ「ごく簡単に言うとですね、鎌を持ったメイドを倒すために桜花君が唐突に覚醒し、メイレンさんが命懸けで策を講じた。と」
アナ「命がけ?それじゃあメイレンとメイドはどっちも倒せたのか。
 ナイスな展開だなーおい♪」
メイレンは、ミルク以下の生徒たちを食べる宣言を撤回していない。
そのためアナスタシアから見れば敵であり、その死を喜びこそしても悲しむ事はなかった。
ミシェルは参った。と言わんばかりに首を振って話を続けた。
ミシ「この年代の娘が人体がバラバラになっていくのをまじまじと見たら、こうもなるでしょう
傷心の女の子のケアは同性に任せる事にします。私は下に行きますかね」
この優男はイマイチ女の心の機微というのが判らないらしい。
桜花がぶっ倒れたのも、魔法による疲労と目の前のショッキングな光景のせいだと思っている。
当たらずとも。といった所なのだろうが。
アナ「ほいきた。任された。そのかわり、下のフォローは頼んだぞ。」
そしてミシェルは宣言通り地下へ歩いていく。まるで散歩にでも行くかの如く軽い足取りでだ。
ヘブンズスマイル。主に影に対して効果がある。程度の認識だ。
魔法使いへの切り札のように使われるので対処法も考察はされているので必要以上には恐れなくともよい
その途中でイヤに耳障りな笑い声が聞こえる。魔法使いからしたら本当にイヤな声だ。

アナ「起きろー起きろー早く起きろー♪」
アナスタシアは桜花の横にしゃがみ込み、ほっぺた突っつき攻撃を始めた。
攻撃はリリアーナの悲鳴が聞こえるまで続いた。
「キャ――――!!」
アナ「ん?なーんか切羽詰まった状況みたいだぞ♪
 よーし。総員図書館に突撃ー!」
悲鳴を聞いたアナスタシアは、桜花を引っ張って走り出す。
気絶しているか気がついたのかの確認もせずに、だ。


(51で〆)










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最終更新:2009年11月14日 20:43
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